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  Mission!! 作者:Rach
5th Stg第61話「Hostage-2」
島国フォイオンの国営ワイナリーは、その広いブドウ畑がどこまでも続く広大な土地だった。そのワイナリーのど真ん中に位置する木造小屋のサイドに、白いテーブルと椅子が並べられ、料理人のレミーがそこで腕を振るっていた。ゆっくりとICCトラックがその建物まで侵入してくるとエンジンがカットされ、代わりに予備電源が作動し始めた。
その助手席から飛び降りてきたのは、休暇明けのホウィだった。

「これが有名なフォイオン名産のワイン、スタインベックの原産地か!!すげー広い農場!」
続いて降りてきたオスカーも、はるか遠くまで見渡す限りのぶどう園に驚いた様子だった。
「OK!あとでゆっくりワイナリーを楽しむとして、ホウィ、システムの作動を手伝ってくれ」
オスカーは性格上早速、仕事に取りかかろうとしていた。
「ちょっと、オスカー君ってば・・・人使いの荒いところ、ベンジャミンゴードン中尉に似てきたんじゃないの?」
そう言いながら、トラックの後方ハッチをあけるオスカーの後に続くホウィだった。

あたりはすっかり夕暮れに染まり、そこから見えるワイン農場のかなたには、その赤い図体を地平線に沈みこませようとする太陽があった。買い物を終えたばかりの、国王を乗せた車列が3台、黒い車体にオレンジ色の太陽光を反射させながら木造小屋の近くまで来て停まった。最初に中から勢いよく降りてきたのは、やはりベンだった。
「オスカー、レーダーは回っているか?」
ベンの仕事柄、セキュリティのことを真っ先に尋ねた。『オスカーと性分が似ている証拠だ。』そう思ったホウィは、クスッと笑って隣にいたオスカーの顔を見て、『ほらね』と言わんばかりのジェスチャーをして見せた。
「もちろんだ。上空監視モードに設定、フォイオン空軍のバッジシステムにもアクセス済みだ。問題ない」すぐホウィも言葉をつづけた。
「建物のセキュリティも確認済み!」
そこへ王室警護の長である男と、軽機関銃を肩から吊したパブロが、ベンのもとに駆けつけてきた。
「ルーテナント!四方5キロ範囲に各歩哨等配置終了しております。また腕利きのスナイパーと監視システムの導入も終わりました。」
「ご苦労!」敬礼して去っていくダナン警護長だった。残ったパブロは機関銃を静かにテーブルの下へ置くと、そこにあった椅子に腰かけた。

もう一台の黒塗りの車のドアが開かれた。アンドレ王が姿を現すとその後に続いて、真っ白なドレスを身にまとい髪を下ろしたサラがアンドレの手をとり現れた。
「おおーーー!!」みんなそんなサラの姿にびっくりした様子だった。少し照れくさそうにうつむくサラに、気が利くオスカーが彼女の椅子を引いた。
「こちらへどうぞ・・・プリンセス」
「あ・・ありがとうオスカー。・・ベン、ここの警備は大丈夫?爆破物等のチェックは・・・狙撃される恐れはない?」
彼女はその椅子に座るや否や、セキュリティの確認を急いだ。
「安心しろ、警護長のダナンは信用がおける。」
ベンはそう言いながら、自分も椅子にどかっと座って見せた。さっきまで自分が一番心配していたにも関わらず・・・、まるで『心配無用!』とでも言いたげだ。
サラの隣に座ったアンドレが、テーブルに置かれた彼女の手をやさしくタッチして言った。
「ほら・・サラ。また・・・。全部自分の目で確かめたい気持ちはわかりますが、少しは仲間に任せてあげてください。」
「国王の言うとおりだ。今回のMissionは長期戦だ。今までのような単発任務ではないから、任せるところは任せておいたほうがいい。ま、今までそんなサラだからこそ、同じ軍人として尊敬してきたわけでもあるが。」
大きく体を椅子に預けたパブロがそう言うと、みな大きくうなずいた。そこへメイドがやってきた。
「まず、ワインをお持ちしましょうか?」
「待ってました!!」ホウィが大喜びの表情で笑って見せた。

会食が始まると、おいしいワインに上機嫌になったホウィがジョークを飛ばしだした。いつも彼のトークには飽きることがない。普段『馬鹿ホウィ』呼ばわりしているサラではあるが、決して心底そう思っているわけではない。いつしか世も更け、あたりはすっかり暗くなっていた。そこへホウィの携帯がなった。
「おっと、これは失礼・・・。」
そう言って席を立ち、少し離れたところまで移動すると、いつもの上機嫌な彼の表情が一変した。サラはテーブルのプレートの上にナイフとフォークを静かに置くと、ナプキンでその口元を拭いた。
「その情報は確かか?」ホウィの声が聞こえた。やはりなにか彼の情報網に気がかりなことが引っ掛かったようだった。『だとしたらここに国王がいては・・・。』サラはアンドレをちらっと見た。

「何があった?」電話を切ったホウィに一番に尋ねたのはベンだった。
「ETAが動いている。」彼の言葉に驚いたのは、スペイン出身のパブロだった。
「ETA?まさか・・あいつらは今資金ルートを止められ、活動できず休止状態のはずだ。」
「ETAって・・・・」そういう情報に疎いアンドレはサラのほうを見て尋ねた。
「スペインのテロ組織であるETA(バスク祖国と自由)。バスク地方の分離独立を目指す急進的な民族組織よ。2006年中、スペイン国内において21件の爆弾テロ事件を起こし、フランスでも活動家が逮捕されているの。」
その後のセリフを知識派のオスカーがつなげた。
「そのころから無期限の停戦に入ると一方的に宣言していなかったか?」
「いや・・・SEGI(ETAの若年層メンバーが中心となる下部組織)による暴力事件は引き続き起こっていると聞いている。」
ベンがそう言うと、一気に不穏な空気が流れた。
決定的なセリフはホウィが携帯を握りしめながら、きっぱりと言い切って見せた。
「メンバーの幹部が数人、スペインから出国した。奴らの行き先は・・・・ここ、フォイオンだ。」
全員が『やはり』といったようにため息にも似たどよめきが辺りを包んだ。
「だから、父上殿が来るのか。今日手紙が届いたところだ。」
ベンはパブロの言葉に大きくうなづくと、席から立って携帯をとり出した。
「それはスペイン大使館からも連絡があった。パブロの父であるスペイン海軍情報部所属のグラナドス大佐が、隠密にフォイオン入りする。この状況は何かしらの危険要因が存在すると判断して間違いない。警備体制をひとつ上げよう」
ホウィが椅子に腰かけると、テーブルの上のワインをごくりと飲み込んだ。

「ETAがなぜ、この時期にフォイオンへ来るのか。資金不足で困っているって言うなら、おのずと何が目的か見えてくる。このホウィ様の推測じゃ、彼らの目的はまさか観光ではないだろうから、例の石ころを拾いにきたんだろうぜ。・・・・・」
ベンの電話の内容が聞こえてきた。
「空港と港の入国管理局に新しい情報を送りたい。すぐデーターを転送するので、各長官にはその旨連絡を。コーストガードにも連絡を頼む。」

彼らがワイナリー農場でひと時の平和を楽しんでいるころ、彼らの魔の手は確実にこのフォイオンに迫っていた。その日から2日後の朝、西側の海岸に謎のゴムボートが見つかり、かつ砂浜には数人の足跡が残されていた。
しかし街の様子は何一つ変わらず、普段通りの朝を迎えようとしていた。

世界中にひそかに噂されている新しいエネルギー鉱石3Xをめぐって、あちらこちらで不穏な動きを見せているテロリストたち・・。彼らの目標がその鉱石にあるとしたら、それはこの国フォイオンにとって、平和を乱す者以外何物でもないことは確かだ。
不幸中の幸いか、フォートフォイオンという陥落不可能な要塞であった宮殿内で見つかったことは、鉱石の安全点から考えてみると利点は多いが、その反面この国の王の身が危険にさらされることになってしまったことは言うまでもない。
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