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  Mission!! 作者:Rach
5th Stg第59話「Howie Ramark−3」
狭いダウンタウンの路地を走って逃げるハナンディ その後を追う兄バルベス・・。そんな2人を追いかけるホウィがいた。走る3人はそこで働く商人や大勢の買い物客から悲鳴を浴びながら、それでも走ることをやめなかった。
「おおい!だれかその男を止めてくれ!!」ホウィは叫んだが、息が荒くなり苦しくなるだけだった。なかなか人間全速力で走りながら、しゃべれるものではない。そこにホウィの携帯がなった。
「こんなときに・・・」電話のディスプレイにはレベッカの名前が出ていることを知ると、急に声色が変わるホウィだった。『きっとデートの約束でも・・・』
「Hi My Angel」いつも通りの声色で電話に出たホウィだったが、それはとんでもない勘違いだったようだ。
「ちょっと!!大学の門に4・5人の女性が出待ちしてるわよ!あんたが現れるのを待ってるらしいわ!」
「え?・・・おっと・・失礼・・・」花屋の前で花を持った女性とぶつかりそうになる。
「早いとこ、解決しなさいね!!私にも血相変えて、あんたが今どこにいるのか聞いてきて、いい迷惑よ!!」
「・・・レベッカ!今、どこ?時間ある!?」他人をよけながら走るのもそろそろ限界かも・・・。そう思ったホウィはレベッカに警察への通報を頼もうとした。
「デートの申し込みはだめよ!!」
「ちがう!!ハナンディが、ナイフを持った男に追いかけられているんだ・・警察に連絡を!」
「・・マジなの?」
「俺がうそを言ったことあるかよ!!」
「・・・あるわよ」彼女の返事を聞いて、がっかりするホウィだったが、今は争っている場合ではない。
「あー!!もーー!!場所はメルディアン通り、ドナテロホテルの近くだ!!ハナンディが危ない!!」この台詞にはさすがのレベッカも驚いた。しばし無言だったが、携帯の向こうから聞こえてくるホウィの息の荒さに、ただ事ではないと感じ取った彼女はこう告げた。
「今回だけ信じてあげる!!」その言葉を聞いて携帯を切った彼の視線の向こうでは、走るハナンディが急に進行方向を変え、そこに建つドナテロホテルに飛び込んでいった。そのとたん、女性の悲鳴がこだました。

ドナテロホテルのロビーでは、偶然居合わせてしまった宿泊者たちが、ナイフをもったバルベスを見るなり身をかがめてうずくまった。ロビーカウンター近くで逃げ場を失ったハナンディは、近づくバルベスからなんとか逃れようと必死の様子だ。
「名誉のために、お前を殺す!!」
「私は何もしていないわ!!本当よ!!」
ホウィは『やはり・・』と事の真相を確信すると、息を荒らしながらも叫んだ。
「ハナンディ!!大丈夫か?」
「来ないでホウィ!!」その台詞を聞いた瞬間、兄バルベスはホウィのほうを視線を向けた。いつの間にかあたりは騒然とし、たくさんの野次馬が取り囲んでいた。
「お前が・・・ハナンディを・・」ナイフを持つ手が震えている。
「兄さん!この人は違う!!」
「おいおい・・・俺は何にもしちゃいねえぜ・・そのナイフを放しな・・兄さんとやら・・本当に妹を殺すつもりなのか?ここはフランスだぜ?」
そう言ってなだめようとしたが、それは無理な話だった。なぜならホウィはこの町であまりにも有名だったからだ。近くにいた女性の野次馬が、なぜか大きな声でこんなことを話していた。
「あのホウィって男、女好きで有名なんだよ・・。また何か女でトラブル起こしたのね。」
「この前友達が、彼女をこの男に寝取られたって怒ってた。」
「ひどい男だ・・・」そんな話が自分の後ろから聞こえてくると、がっかりと肩を落とすホウィだった。
「あちゃ・・・全然かっこよくない俺・・・」

ちょうどそのとき、汚いバックパック一つを背負ったサラがホテルに入ってきた。まったく周りを気にする様子もなく、ナイフを持ったバルベスの前をツカツカと歩いて通り過ぎていくと、受付カウンター前に立ち財布とパスポートを取り出した。
「い・・・いらっしゃいませ・・・」
「予約をしたサラ・ブルックナーだが・・」
「はい・・・」受付嬢は戸惑いながらもこわごわ、パソコンを操作しだした。こんなことをしている場合ではないとも思いながら、仕事の習慣でついつい作業を進めてしまったようだ。
「あ、外人部隊からの予約ですね・・・承っております・・・」
突如、サラの後ろで花瓶が割れる音がした。さすがにこれには受付スタッフも身をかがめた。バルベスが怒り狂って、そこにあった花瓶を割ったのだ。
「お前はもはや、家族の名誉のため・・殺されなければならない・・・。俺たちに恥をかかすつもりか!!!」そういって花瓶の破片をハナンディに向け投げつけた。
「危ない!!・・・」ホウィは叫んだ。
「キャー!!」破片がハナンディの体に当たり粉々に割れた。
「・・・よせ!!ここではそれは殺人なんだ!!そんなことをしても名誉でもなんでもない!!」ホウィのこの言葉にサラの眉間がぴくりと動いた。
「・・・・名誉?」
「俺は英雄になる!!この恥さらしな妹を殺して、俺は英雄になるんだ!!」
サラは体を翻した。
「・・・・・馬鹿な。人を殺して英雄になんかなれるものか。」
「お前には関係のないことだ!!・・・・こっちへ来い!!」ハナンディに手を差し出すバルベスの姿に、サラは荷物を床にどさっとおくと、ツカツカとバルベスに向かって歩み寄った。ホウィは無茶なことをする女がいるもんだと慌ててサラに叫んだ。
「やめておけ!!奴はナイフを持っている狂人だぞ!!」

バルベスは思い切りナイフを振り上げ、サラに向かってきた。サラの頭めがけて振り下ろされたナイフを右腕で上受けし流すと、バルベスの右側にすばやく移動し、左こぶしで思い切りバルベスの顎にパンチを入れるサラだった。
受け流した右手はそのまま、奴の手首を掴み、左手でバルベスの右腕ひじ部分を下方向から、円を描くように上へそしてそのままねじれてまた下方向へ突き放していく。
大の男の体が、まるで飛ぶように地面にたたきつけられ、サラに押さえ込まれた。
「ぐ・・・」バルベスは瞬く間に、フロアーに伏せられてしまった・・・。これにはホウィも口をあけたまま唖然として見ているしかなかった。
『あの女、何者??』
そう思った瞬間、やっとレベッカの通報によって駆けつけた警察官が、軽快なステップとともに車両から飛び出し、四方を監視しながらホテルに入ってきた。しかしその様子を目の当たりにすると、一人の警察官が銃を下ろしつぶやいた。
「・・・これは・・・」か細い女性が腕を逆手に取られ大男をとらえているではないか…。
ホウィもふと我に返り、ハナンディに駆け寄った。
「ハナンディ!!」彼女は泣きながらその場に崩れてしまった。警察が、サラからバルベスを受け取り手錠をかけホテルから出て行くと、サラはまた何事もなかったように受付で宿泊の手続きを済ませ、荷物を手に取って歩き出した。
「ありがとうございました・・・」ホウィに抱えられたハナンディがサラに近づき礼を述べた。
「いや・・いいんだ・・」ホウィは職業病からか、サラに近づいたその短い瞬間に、彼女が外人部隊推薦の書類とイギリス国籍のパスポートを所持していることを知る。
サラは落ち着いた声で静かにこういった。
「・・・・スイスのローザンヌにシュルジール(Surgir)という財団法人がある。ECOSOC(国連経済社会理事会)からも正式な承認を受けた正式な団体だ。そこに助けを求めるといい・・・」
サラはそのままエレベーターに向け歩いていき、閉まるドアの向こうに消えていった。状況を一瞬にしてつかんでしまったその女性に、二人はしばしぼうっと突っ立って呆けてしまった…。そんな二人を我に返らせた声の持ち主はレベッカだった。
「ハナンディ!!ホウィ!!」振り向く二人がみたのは、警察官や怯えた客の間を縫って、二人の下に駆けつけるレベッカの姿だった。
「本当に心配したのよ・・・。」
「彼女が警察に連絡してくれたんだ」
「ありがとう・・・・ありがとう・・」泣いているハナンディをハグするレベッカだった。
「ね・・男女問わず、友達っていいでしょ?・・・だからこれからも、一緒に食事ぐらいしましょうよ。ねえ、ホウィ・・・・」レベッカが気づくとホウィはそこにはいなかった。あの女ったらしホウィは、サラの受付をした女性のいるカウンターで、にこやかに話をしているではないか・・・。
「マドモアゼル・・・君のような天使の瞳を持つ女性は、生まれて初めて見たよ・・。癒し系とか言われない?」
「いえ・・そんな・・」
「さっきの無表情の女と比べると、ホント・・今夜君が僕の夢に出てきちゃいそうだ・・・。さっきのあの女の名前はなんていうんだっけ?」
「サラ・ブルックナーと・・」そこまで聞いた途端、男勝りなレベッカに蹴りを入れられるホウィだった。
「いてー!!・・・サラ・・・サラ・ブルックナーね・・・」
「ハナンディ、やっぱりこの男とは食事なんて行くのやめましょう!!」

数日後の外人部隊カステルノダリのゲートに現れたのはホウィだった。彼は営門に立っている兵の制止も聞かず、まるで逃げ込むように慌てて営門をくぐった。息を切らせてハアハア言いながら荷物を床に置き座り込んだ・・。
「困るな、君!!何の用だ?」いかつい男が上から覗き込むように聞いてきた。
「あ・・・ごめん・・・これ、正式な辞令書・・俺、今日からここの事務員さんってわけ。」
その瞬間、営門の外から数人の女性の声が飛び交ってきた。
「ちょっと!!ホウィ!!出てきなさい!!」
「この女ったらし!!私のことが一番だって・・あんなにも言ってたくせに!!」
彼女たちの声を聞いて、ニヤニヤしながら正式な辞令書を見た警備兵は言った。
「・・・・・よし、いってよし!」彼の荷物を拾い上げ書類と一緒に手渡すと、ホウィはゆっくり立ち上がった。
「Merci Beaucoup」

時は戻りここはフォイオン 海沿いのオープンカフェで青い海を目の前に、ホウィとハナンディの二人は冷たいジュースを飲んでいた。
「サラ、ずいぶんと変わったんだぜ、あの時は無表情で冷徹な女だったけど、ここに来てからよく笑うようになった」
「恋の力ですね。」
「あれ?知ってるの?」
「噂ですけど、婚約者なんですよね、この国の王と」
「ああ・・・そのとおり。今からサラに会いに行ってみる?」
「はい。もちろんです!!」
二人は席を立つと、そこに停めてあった白いスポーツカーに乗り込んだ。
rachsmission@yahoo.co.jp
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