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  Mission!! 作者:Rach
5th Stg第57話「Howie Ramark−1」
太陽の光をキラキラと反射させ、美しく輝く青い海をバックにして、木造の王族専用避暑地『セイレン』は静かにそこに立っていた。
そんな建物の会議室に呼び集められた物々しい男たちの一行は、外の眩しい輝きとはうって変わって、険しい顔つきをしたままオスカーの説明を聞いていた。プロジェクターでパソコンの画面を写しながら、流暢に話すその内容は当然、殺されたベルヌーイ弁護士の詳細と、カメラが録画したセイントホーン教会の音声の鑑識結果だった。
「このセイントホーン教会のオルガンから発生する音紋を、専門的な機関である音響科学センターに問い合わせてみたところ、ある一定の周波数が断続的に続き、それが人間の耳に長時間聞かせることによって、ある種の催眠状態になる可能性もあると指摘しています。」
オスカーの話が核心に迫ると、アンドレは身を乗り出して質問した。
「催眠状態?それは一体どのような・・・」
「はい、サブリミナル効果・・・といってもいいでしょう。過去にハードロックの王様といわれるグループの音楽を集中して聞いていた若者が、猟奇的殺人を起こしたというニュースもあります。ただし、当時の裁判では科学的立証は難しく、被疑者の無罪は証明されませんでしたが・・。」
「そのオルガンを調べて見る必要があるな。」ベンは持っていたボールペンを、くるくると指で回しながら言った。
「オルガンから発生する音も気になるところだけど、音楽という観点から考えてみれば、参列者のほとんどが持っていたという、MP3やIPod系の調査はどうなっているの?」
今度はアンドレの横にいたサラが、神妙な顔つきで尋ねた。
「ベルヌーイ弁護士がマダム、スンニの家に許可を得てMP3の回収に行ったのですが、残念ながら何者かによって殺されてしまいました。」話を続けようとするオスカーに、横にいたホウィがいきなり席を立ち話し出した。みんなの視線がホウィに集中した。
「そこで、ちょっと調べてみたんだが・・・この資料をみてください。なんと!この教会に通っている有名人は20人にも及ぶことがわかりました。これがそのリストです。しかも、彼らは全員・・・MP3プレイヤーなどを常に所持している・・。音楽を使った何かしらの犯罪意図が隠されているといってもおかしくはない。」
「何かが動き始めている・・というわけですね。」そこにいた全員が一斉にため息をついた。
警察の制服を着た男が、言葉を続けた。
「とりあえず、このリストにあげられている者たちは、私服警官による監視をつけましょう。教会のオルガンについては、それなりの策を講じる必要がありますな。・・なにせ、人一人殺されたのですから・・・。」
「・・・・・はやく3Xの使い道を決められればいいのですが。」
アンドレは視線を机に落としてそうつぶやいた。
「引き続き、この事件については調査をお願いします。」ベンが警察官に対し丁寧にそう言うと、ゆっくりと大きくうなづいて見せた。
「さてと、ちょっと知人が来るんでね・・・僕はこれから一週間のお休み〜〜」
会議に出席していた男たちが、次々と書類を片付けだすと、ホウィは勢いよく立ち上がりにんまり笑ってそう言った。暗かった会議室に電気がつき、オスカーはコンピュータの電源を落とした。
「また女?」サラは不機嫌そうな顔をしながら、ウキウキした様子のホウィに嫌味たらしくそう言った。しかしホウィは特別否定するわけでもなく、誰よりも早く出口に向かい、いきなり振り返ると親指を立てて笑ってこういった。
「Bingo!」部屋を出て行ってしまったホウィにため息をつくサラだった。
「こんなときに休暇だなんて。あ・・・ベン?聞いているの?」
「まあな。以前の彼女がフォイオン入りするらしい。」
「ふーん。何人目の彼女だか・・・」

アンドレの部屋から直接、海岸に向かって伸びているテラスでは、アンドレとサラがラフな格好でくつろいでいた。アンドレはパラソルの下で、そこにある椅子に座ってひたすら青い海を見続けていた。
『さっきまでの不穏なグループの活動報告のことなど忘れてしまいそうだ』
ぼうっとそんな事を考えていたアンドレだった…。
サラは時々、さほど遠くにない左右に突き出た半島の斜面に眼を向けていた。入り瀬になっているビーチの両側を固めているその部分には、フォイオン軍が警戒をしている様子が見えるからだ。
『どこまで信じたらいいのやら・・・。音で人間をコントロールできるとは思えないが、それが本当だったら、いよいよ彼を守ることが難しくなってくる・・・。』半島に二人の味方の動哨がいることを確認するサラだった。
「スンニさんからお手紙が届いていました。読みましたか?」
「え・・・ええ。」急に話しかけられ、驚くサラだった。
「その件については、ありがとうウィル・・。チャリティコンサートで彼女の借金も帳消しになったし、ソニンも毎日学校が楽しいみたい・・。」
「しかし、ロバート氏の自殺の真相が分からなかったのは残念ですね。」
「こんなときに1週間の休暇だなんて・・まったく馬鹿ホウィなんだから・・・」
そう言ってあきれた様子のサラを見て微笑むアンドレだった。
「ホウィは本当に女ったらしなんですか?」
「外人部隊にいるときにね、あいつ、休日だというのにずっと事務所やカフェテリア、図書館などにいて、全然外に出ないの・・。私を見つけるなり寄ってきて、必死になって口説くのよ」
「外に出ない?」
「いろいろ話を聞いたら、ちょうどそのころシャバの女とトラブル起こして、奴は彼女達に追いかけられていたらしく、それで外に出られなかったってわけ。馬鹿みたい」
「軍の中なら誰も入って来られませんからね。」
「ま、自業自得ってやつね!」
「でも、今日会う予定のその女性は、どうやらその頃の彼女らしいですよ。名前はハナンディ ガーナ。パチスタンからフランス長期留学中にホウィと出会ったそうです。」
「・・・え?そうなの?・・・そんな前からの彼女なの??」
「ええ、会議の前にホウィがパブロに、そう話しているのを聞きました。あいつはまだ俺を忘れられないらしいって・・・」
「はあ、・・・馬鹿ホウィ」そう言って椅子をリクライニングさせ、後ろに倒すと大きく伸びをするサラだった。

フォイオン空港では、今日も大勢の入国者が到着ロビーをにぎわせていた。楽しげな観光客に混じって、普段より多い警察官の姿が目に付く・・。入国検査も厳しくなって、いくらかの者は別室送りになっている様子だった。入国の制限はされていないとはいえ、イミグラントオフィサー達の目は厳しく個人をチェックしているようだった。

「ホウィ!」
一人のエキゾティックな女性が、薄いベールを頭からかぶった姿で現れた。そこに待っていたホウィはにこやかに笑い、両手を広げて見せた。
「ハナンディ!ひさしぶり!!おっと・・・いつもクセで抱きしめてキスしてしまうところだった・・」
腰にまわしたホウィの手が緩んだ。
「いいのよ・・」そういってホウィの頬にキスをするハナンディだった。
「・・・すっかり変わったなあ・・最初会ったときはこんな感じじゃなかったのに」
「うふふ。今は立派なシュルジールの職員、スイス人への帰化もできて、ほら今はスイス国民なのよ。」彼女は屈託のない笑顔と共に、スイス国のパスポートを見せた。

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