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  Mission!! 作者:Rach
4th Stg第51話「The Sullen Tones-5」
アンドレとサラが海岸にいる頃、一台の車が別荘の玄関に乗り付けてきた。王室専用の車に乗せられたひとりの初老の男が、古びたアタッシュケースを持ち車から出てくると、その反対側からホウィが、助手席からベンが降りてきて、その老人を建物の中に案内していく姿が見えた。
別荘内の廊下を歩いていくベンは、そこにいた第2秘書兼側近のフランツに問いかけた。「アンドレ王は?」
「お帰りなさいませ。ただいま、パブロ様と遠泳訓練の時間ですが、ついさきほど終了したとのことです。まだビーチでサラ様とご一緒なのではと・・」その返事を聞くとベンは、廊下の窓からビーチの方角を覗きこんだ。
アンドレとサラが二人きりで砂浜に寝そべっているその姿を見つけると、隣にいたホウィの顔をチラッと眺め、すぐ何事もなかったように歩き出した。
感受性が強く、他人の表情からなにか検索することが趣味でもあるホウィは、彼のその行動に興味を持った。
「なにか面白いものでも?」そう言ってすぐ窓のほうを覗き込んだが、ベンの右手が彼のスーツをとっさに掴んだ。
「行くぞ!」ホウィの背広を引っ張って歩き出すベンに、ホウィは体勢を崩してそのまま廊下を引っ張られていった。
「な・・なんだよ!!いきなり!!」
セイレン別荘の会議室に案内された初老の老人は、ホウィの隣に座って、テーブルの上にソニンの写真やその家族についての詳細が書かれた書類を広げて、なにやら意見を交換している様子だった。そこへ会議室に続くドアがメイドによって開けられ、アンドレがスーツをきちっと着こなして、会議室に現れた。
「申し訳ありません、時間に遅れてしまいました。」彼の声を聞くや否や、初老の老人ベルヌーイは椅子から立ち上がり、胸に右手を当て軽く会釈をした。
「これはこれは・・アンドレ王。私が今回の件を担当させていただくアンリ・ベルヌーイ弁護士です。」アンドレは彼に握手を求め、にこやかに笑った。
「どうぞよろしくお願いします。」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」
二人は席に付くと、ベンが状況を語りだした。
「少し、こちらでも彼らの家庭状況を調べてみたのですが、この女性ヤン・スンニの亭主、通称ロバート・ヤン、実名ヤン・ビョンホンは世界的にも有名な音楽家だったそうです。10年前にこのフォイオンに移民後、何不自由ない上流社会の一員だったのだが、突如彼の名声も評判も落ちていないし仕事も順調なのに、家族にまったくお金を入れなくなった。離婚の理由もいまひとつ不可解だ。」
その話が終わるや否や、ホウィも手元の資料を片手に語りだした。
「警察の調書によると、ロバートの方から離婚申し立てが起こり、スンニと子供の取り合いで大喧嘩になり、怒り狂ったロバートは焼身自殺をもって最終抗議をアピールしたとあります。まあ、彼らの国にはよくある抗議のやり方だそうですが・・・。この自殺によってまた不可解なことがおきた・・。彼の死亡保険金は、これまた一切家族には入っていないのです。」ベルヌーイは大きくため息をついてこういった。
「ほかに女性がいたとは考えられませんか?」
「その線もないな・・・。どこからもそんな埃は出てこなかった。で、俺様の考えた結論は、宗教団体!!」
持論を展開しだしたホウィに、ベルヌーイは興味を持って身を乗り出した。
「宗教?お布施に全保険金を?」
「ま、想像の域をでちゃいませんけど・・・」彼の直感的な持論にそこにいた全員が笑いを見せた。ホウィの想像の域というのは、結構な確率で当たっているのは全員が知ってのとおりだからだ。そしてアンドレが静かに語りだした。
「まずベルヌーイ弁護士には、スンニさんの借金返済処理をお願いしたい。この費用は彼女がきちっと払いますからご安心を。その後引き続いて、以下の詳細について是非調べていただきたい。なぜ、世界的に有名な音楽家ロバートが、急にお金を家に入れなくなったのか・・・。保険金の支払先が誰なのか。ここは私のポケットマネーで対処させていただきます。」
「わかりました」そこへ、サラがまだ濡れた髪を後ろで束ねながらドアから入ってきた。
アンドレはサラに微笑みかけるとまた、台詞を続けた。
「元検察官であったベルヌーイ氏なら、きっと確かな結果論証がでてくるでしょう。期待しています。」
「ははは・・いやいや・・法曹一元性をとっているフォイオンでは、検察官は国や州に雇用された弁護士の一種という位置づけではありますが、やってみるといろいろ違いがありましてね。時々仕事の範疇をとり間違えることもしばしばで・・。」
その後、玄関からベルヌーイ氏を乗せた送迎車が出発し、彼は別荘を去っていった。そこに残ったアンドレ、ベン、サラそしてホウィの4人は、無言で体を翻し別荘に向かった。
「さて、借金対策はOKとして、あの弁護士がどこまで嗅ぎつけてくれるかな?」
ホウィは、床の木をきしませながら歩いている3人の後ろで、ポツリとそう口にした。
「アーネストか。・・・」それに真っ先に反応したのはベンだった。
「ああ、例の水道局の幹部ヒューラーに資金を出したのもHonest(アーネスト)。そして、今回の保険金の振込先もアーネスト・・・。」
「どこの会社なのかさっぱりわからないんでしょ?」サラは振り返りホウィにたずねた。
「巧妙にからくりがされていて、さすがのホウィ様も今回ばかりはお手上げ!執拗にアンドレ王を拉致しようとするクライブ一味とも関係があり、クライブ自身も謎めいているときた・・・。これはそこらの弱小テロリストグループやスパイ団体ご一行様にはできない芸当だぜ。」
「いったいどんな組織なのかしら・・・・。」
「クライブという男、国王の言うとおり兄のロイだとしたら、こりゃとんでもなくでっかい組織が加担しているといっても過言ではないな。」ホウィはそういいながらまだ濡れているサラの髪に注目した。
「・・で、お二人さんはどうして会議に遅れたの?あれあれ?もしかしてもしかして?」
ホウィの目の前を歩いていたサラは、急に心臓が爆発しそうな衝動に駆られた。
『さっきまで砂浜で私はウィルと・・・』アンドレの顔をチラッと見たサラだった。
「はい、想像の通りですよ。さすがホウィですね。勘が冴えています。」
彼の台詞にもサラは驚いた・・・C4とクレイモアが、同時に爆発するくらいのインパクトだった。
「マジでー!!やっぱり二人とも髪の毛が濡れているし、今朝の服装とも違うし、やだなーもー!!」サラが真っ赤になって思い切りホウィをひっぱたいた。
「いて!!」確かにホウィが勝手に勘違いし、サラもまたアンドレの台詞に勘違いしていた・・・。
「遠泳訓練、きつかったですね、サラ」
アンドレはサラにそう言って問いかけた。サラは苦笑いを浮かべた。

「・・・・・あっそ」ほっぺに残ったサラの手形を押さえながら、二人の話に進展がないことにがっかりした様子で、全員の後ろをトボトボと歩いていった。


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