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Mission!!
作:Rach



3rd Stg第43話「I am Waiting for You」


数分後に探知機を持った男たちが、まんまとサラがトラップを仕掛けたバーへと侵入してきた。恐る恐るドアから侵入してくると、構えた銃を片手に靴音が出ないようそろそろと歩きながら、次のドアの前に近づいてきた。探知機はこの向こうに目標がいることを伝えている。
「アンドレ王がここにいるはずだ・・・」
地面に撒かれた水など気にもしていない様子だった。おそるおそるドアノブに手をかけた瞬間、バッテリーからの電流が男の体を感電させた。
「うううううわあああああ!!」
「電流が!!・・・」そのまま後ろ向きにばったり倒れる男だった。車のバッテリーからの電流が、ワイヤーを伝わりドアノブを通り、それを握った男の体から直下の水溜りへと流れ、またワイヤーを通りバッテリーへとめぐっていた。
「くそ!!」頭にきた短気な男が、思い切りドアを蹴り開けると、床にゴトっと手榴弾が落ち爆発した。
「おわーーー!!」そこにいた全員が床に体を預け、沈黙した。
その様子を近くのビルの陰から確認していたサラは、ほっとため息をつくとそこから離れようと振り返った。しかしその時にはすでに、自分の周りに3人の怪しい男達が取り囲んでいたことを知る。
「こんなところで、さっきから何をやってんの?メイドさん?」
「夜更けにご主人様に買い物でも頼まれたのーー?」サラは、彼らのその様子から、軍人でもなんでもないごく普通の酔っ払いだと判断した。ビールを片手に、臭い息を吐く男たちから顔を背け、一言つぶやいた。
「なんだ・・チンピラか・・」そう言うと、何もなかったように彼らの脇を抜け出ようとした。
「おい!!無視すんなや!!俺たちがせっかく可愛がってあげようとこうやって、声かけてやってるんだぜ!!」男がサラの肩をつかんだ。
「可愛がる?どうやって?」
「そりゃ、決まってるじゃねえか・・俺たちと楽しいことするのよ」
そういうとサラの肩を両手で押さえ込み壁に押し付けた。サラは思い出した。そういえば自分の格好はメイド服だった・・・。一人の男がサラの髪に縛られたリボンを引っ張り、別の男はナイフを持ち出し着ていたエプロンの紐を、荒々しく切り取った。地面に落ちた白いエプロンを踏みつけ、息を荒くしている男たちに彼女は言った。
「ちょうどよかった・・・。この暗闇にはこの白いエプロンが格好の標的となるところだった。やはり偽装するには周囲にあったものを選ばねばな・・・」
「なんだ?殴られてーのか!!!」そういうと一人の男が、サラの顔に向かってこぶしを振りかざした。そのときサラは肩を押さえていた男の腕に噛み付き、もうひとつの腕に腕十字をかける。
「いてー!!!」殴ったこぶしは、よけたサラの後ろにあった壁に当たって痛がる男・・・。
「おっと・・・催涙弾が残ってた・・・」サラはポケットから緑に輝く怪しげなものを取り出し見せた。
「催涙・・弾?」聞きなれないその用語に、少し戸惑う男たちは拍子抜けたように催涙弾をみつめた・・・。
「ご主人様は、軍事オタクなんでね」そう言ってピンをはずし男に持たせると、ダッシュしてその場を去ったサラだった。走り去る彼女の背後では、涙してもがく男たちの姿が見えた。

サラはようやく海岸通りに出た。サラが銃撃戦から逃げ切った遠くに見えるハイウェイでは、警察車両が赤や青のライトを照らし、交通統制している様子が伺えた。
『ウィルは無事かな・・・』私にキスをして暗い海に飛び込んだアンドレが心配になったサラは、ベンにそれを無線で確認しようとしたとき、またもや背後に迫る靴音を聞いた。
「見事だな・・・サラ・・」自分の名前を呼んだその男は、クライブだった。いつもどおりきちっとスーツを着こなし、海岸から吹き込む潮風に、前髪を揺らしていた。
サラは彼の周辺を見渡したが、彼の部下は誰もいない様子だった。全員があの汚いバーで手榴弾の餌食になったらしく、彼自身も銃を構えているような様子はない。
「・・・クライブ・・やはりあなたたちの仕業?」
「まあな・・・。」
「・・・今回はけっこういいところまでいったじゃない?もう少しで危ないところだったわ・・・」
「しかし、どうやら失敗だったようだ。」
「ねえ、・・・・3Xを使って何をしようというの?アンドレ王を拉致しても、彼は絶対に3Xの発掘権をあなたたちには渡さないわ。」
「普通のやり方では無理だろう。」
「・・・・・どういうこと?」
「例えば、フィアンセを誘拐して殺すと脅せば、あいつは必ず要求に応じる・・・そんな男だ」
サラの眼がきつくなった。また一つ核心に迫る台詞をこの男はしゃべった。
「・・・昔っから、彼のことを知ってるような口ぶりね。・・・・」
「・・・・・」
「どうして?教えてよ・・・あなたたちはどこの国に命令されて動いているの?・・・アメリカなの?そしてあなた自身・・・誰なの?」クライブは笑ってサラのそばに近づいて来ると、サラは遠ざかろうと数歩後ろに下がった。その後ろは海だ。
「・・・俺のすべてを知りたいか?俺のホテルはすぐそこだ・・一緒に来るか?・・・・」
クライブはじっと彼女を見つめた。その瞳からは危険を感じることはなかったが、その逆に甘い誘惑を醸し出している・・そんな眼だ。この甘い台詞に何人の女性が惹かれてしまったことだろう・・・。サラは右手をぎゅっと握って答えた。
「・・・・私には待っている家族がいるから・・・行かない」
「孤児院育ちのお前が・・・家族だと?」笑ったクライブにサラは追い討ちをかけるような言葉を投げかけた。
「ロイ、私はあなたのことをよく知っているわ。あなた以上にね。もし本当の自分のことを知りたいんだったら、まだ今からなら間に合う・・・」
彼女はわざとロイと呼んでみた・・・。彼女の台詞が終わらないうちに、クライブの表情が険しくなっていった・・・・。
「うう・・くそ・・」頭を抱えだすクライブに、サラは近づこうとした。しかしそれを彼が止めた。
「近寄るな・・」彼の視線の向こうには、走ってくるジープの姿があった。頭を押さえながらサラから背を向けると、ジープの来る方向とは逆にゆっくり歩き出した。
「・・・・・・・」サラはこのとき彼を引き止めようかどうか悩んでいた。そこにいる彼がアンドレ国王の本当の兄だったとしたら、あの宮殿に連れ戻すのは彼にとって都合の悪いことなのかもしれない。しかも、彼には何か大きなバックが付いている・・。そんな事を考えている間に、ジープが近づき彼女の目の前で急ブレーキをかけ停まった。
「やはりこのあたりだったか。無事か?」放心状態の彼女にベンがシープから声をかけた。
「熱源探知で小さな爆発を感知したから、もしかしたらと思って・・・」そういったオスカーのひざの上にはコンピューターが置かれていた。
「早く乗れ」ベンは彼女に手を差し出した。
「Thank you」後部座席に直接乗り込むと、クライブが去っていた通りを振り返ったが、彼の姿はそこにはもういなかった。

警戒厳重な王室専用ビーチにある別荘セイレンに到着したジープが、玄関前でブレーキをかけ停まった。サラだけではなく、オスカーにとってもはじめて訪れるその別荘は、宮殿と同じく広く、しゃれた木造の建物がいくつも並ぶまさしくリゾートホテル一式が丸ごと別荘と化したそんな場所だった。 
「これが・・・別荘?普通の家の30倍はでかい・・・」すべてが木でできた建物らしく、玄関から中に入ると、優しい木と海の香りが3人を迎えた。
そこでようやくメイド服から解放されたサラは、いつもどおりのジーンズに飾り気のないシャツを着て、用意された食事を取るため食堂へ案内された。
「サラ!」彼女が入ると同時に、アンドレが急に椅子から立ち上がった。
「良かった!!無事だったのですね?」彼はサラに近づきそうっと抱きしめて見せた。
「ウィルこそ。海で溺れ死んではいないかと・・・」アンドレの目はやはり、あの男クライブとよく似ている・・・。サラは今日クライブと語ったことは、誰にもしゃべるつもりはなかった。アンドレは彼女の頬に受けた小さい傷を見つけ、そうっと右手でなぞって見せた。澄んだ彼の青い瞳がしっかり自分を見つめていた。
『この人は・・・本気でボディガードの私を心配してくれてたんだ・・・。』二人の世界には、そこにいるベンやホウィたちの存在はいないかのようだった・・・。
彼の体にそうっと腕を回したサラは、アンドレ同様に彼を抱きしめた。
そんな二人を邪魔したのは、今回はホウィでもメイドでもなく、皿洗いのレミーだった。
「お帰りなさいませ、プリンセス!!」食事を運びながら、無邪気に笑ったレミーにサラは駐車場で乗り捨てた車のことを謝ろうとした。
「あ、皿洗いのレミー・・・ごめん。ローンの残った車、町で粉々に・・」
「気にしないでください。おかげでこの別荘では皿洗いでなくて、料理を担当させていただくことになりましたから!!さあさあ、いっぱい食べてください!!」
食事が次々と運ばれ、テーブルの上にたくさんの料理が並べられた。ベンやパブロ、オスカー、ホウィが座ったテーブルにアンドレとサラも一緒に座り、全員で今回の事件のことを楽しそうに話し始めた。ホウィは水道局のことと、資金が振り込まれた『アーネスト』のことをしゃべりだすと、全員がその話に夢中になっていた。サラ以外は・・・。

「待っている家族か・・・なんて暖かいんだろう。」サラは全員の顔を眺め、そして隣にいるアンドレに目をやると、彼はじっとサラを見つめて微笑んでいた。


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