3rd Stg第41話「Give It to Me!!」
サラは手榴弾のピンと抜き、1秒ほど待ってから、車ではなく空に向かってそれを投げた。車の屋根についたルーフから、身を乗り出して射撃をしている男が、空中で炸裂した手榴弾に倒れた。
「・・・なるほど、パブロ教官が手榴弾は投げてから約3.5秒で爆発すると言ってました。だからそれを見計らって投げれば、空中から敵を倒すことになるんですね!!」
「王子様はそんなこと知らなくっていいの!!」
うれしそうに語ったアンドレだったが、サラは複雑な気分だった。手榴弾を手渡してくれた彼に、訓練の成果が伺えてうれしい気分もするが、果たしてこの男にそんな事を知ってもらう必要があるのか・・・。間違っても一国の国王だ。
彼女のイヤフォンにベンの声が入ってきた。
「サラ!・・・こいつはでっかい陽動作戦だ。敵のボスは、はなっから地下下水路の坑道作戦なんて、当てにはしていなかったようだ!」
「でも、どうして私たちの位置がわかってしまったの!?レミー!!もっとスピード上げて!!」すでに車は時速60マイル(100キロ)を超えている。レミーは汗びっしょりになっていた。
「わからん!!宮殿の前庭をめちゃめちゃに壊しやがったコブラが、そっちへ向かっている!気をつけろ!」
「コブラですって?そんなヘリが来たら到底逃げきれない!!早く味方のアパッチでも何でもよこしてちょうだい!!」
「アパッチにはすでに連絡済だ!俺たちもそっちへ行きたいところだが、宮殿のゲートが壊れてふさがってしまった。急遽クレーンで瓦礫をどかしている最中だ!」
「とにかく、フォイオン軍でも警察でも葬儀屋でもいいわ!こっちの現在位置はわかってるんでしょ?早く支援を!!」射撃しながら叫ぶサラだった。アンドレは黙って考え込んだ。
「・・・・・現在位置がわかる?・・。もしかしてこの腕時計ですか?」
自分の時計をサラに見せた。時計はサラがこの国に入国した際に、彼の安全を考えて渡したものだった。山岳地帯の古い病院跡地に囚われたとき、この時計があったからこそ、アンドレとサラの居場所が特定できたのだ。今度は逆にそれを利用されているのか??
サラは窓から銃を引っ込めると、黙ってその時計を見つめ、そしてまだつながっている無線に語った。
「・・・・ウィルの持つ腕時計が発する電波を、奴らが傍受してる可能性はある?」
その数秒後に出た回答は、やはりオスカーからだった。
「Affirmative!サラ、その時計を海に捨てろ!!」サラはごくりと生唾を飲み込んだ。
「・・・・・レミー!ダウンタウンへ向かって!!」レミーは黙ってうなづいた。
「そこへ行ってどうする気だ?」とベン
「後で連絡する!!」
レミーの乗る車は、周りの車を蹴散らしながら、ダウンタウンへ向かった。行く先には警察車両が応援に駆けつけているらしく、青と赤のライトが輝いて見えた。
射撃を交わしながら、必死に走る皿洗いの車の前方車両が、タイヤに被弾してコントロールを失い、レミーの車へぶつかりそうになった。
「うわー!!」レミーはハンドルを思い切り右へと切った。その反動でサラはよろけてウィルの上にかぶさってしまった。
「大丈夫ですか!?」アンドレは彼女の体を抱きかかえた。一瞬サラはドキッとし、そして彼から視線をそらしてしまった。
「・・・・だ・・大丈夫。時計をはずしてくれる・・」アンドレは腕時計をはずすと、サラにそれを渡した。
「それをどうするんですか?」アンドレの質問には黙ったまま、それを自分の右手首にはめたサラだった。
『その理由を知ったらあなたは反対するでしょう。』
「レミー、ダウンタウンに入って警察車両が見えたら、私がスモークを焚くわ、そしたら車を乗り捨て、アンドレ王と一緒に警察車両に乗り込みなさい!その後は別荘へ向かって!!いいわね?」
「あ・・・あふぉーまてぃぶ!!」レミーはそう答えた。アンドレは彼女の横顔を見つめながら、心配そうに言った。
「サラはどうするのですか!?」
「海の別荘セイレンで会いましょう!」そういうと、袋の中からいろいろ武器を取り出し、メイド服のポケットに詰め込みだした。
「サラ?まさか、どこかへ行ってしまうんじゃ?」その時、宮殿を襲ったヘリが、車の前から現れた。サラとアンドレは驚いてコブラを凝視した。
「うわーー!!!ヘリまで!!!」レミーは半泣き状態だ・・・。
「なんとか・・・ダウンタウンまで・・持ちこたえて」
ヘリの機関銃がレミーの車を襲った。サラはとっさにアンドレの体の上に覆いかぶさった。ボンネットから火が吹き始め、スピードはがくんと落ちた・・。
「だめだ・・ヘリが相手じゃダウンタウンまで絶対に持たない。このまま海へ・・・。そのほうがまだ勝算はある。」海の上を走るハイウェイの下は、暗い海が広がっている。
「ベン!!これからウィルと皿洗いを海に投げるから、後はよろしく!!!」
そうサラが無線機に怒鳴ると、ベンからうれしいニュースが聞こえてきた。
「位置は確認した!!海軍に救助を要請する!!サラ、後30秒でアパッチが到着するぞ!」
「遅い!!」
『敵のヘリが先に到着したんじゃ、私たちに一体どうやって逃げろというの!!』
そんな事を考えながら、サラはレミーと運転を替わり急ブレーキをかけると、道路の端に助手席が来るように、車のタイヤを滑らせて停めた。そこで、窓からスモークグレネードを焚くと、あたりは一面煙に覆われた。
「レミー、海へ飛び降りて!!!」その言葉にレミーは驚いた。ここから海面まで11メートルはある。結構な高さを今すぐ飛び込めと???
「下は真っ暗だ!!怖いよ!!」声がうわずっていた。手は振るえ今にも気絶しそうな状況だ。そんな気持ちなんか気にもせず、サラはレミーを蹴りつけた。
「急げ!!死にたいのか!?」サラにいきなりアンドレがキスをした。一瞬、サラは放心状態になった。
『今まで危機的な戦闘状態で、私にキスをした男は誰もいない・・』
目の前にいる澄んだ眼をしたブロンドの男は、サラの肩を抱きしめながら言った。
「・・・必ず・・別荘で会えますよね?」吸い込まれそうな彼の瞳に、メイド服の自分の姿が映っている・・・。
「・・・・約束する。」それを聞くとアンドレはうなずき、真っ先に海に飛び込んだ。続いておっかなびっくりのレミーもそれに続いた。そこへまたヘリが向かってきて、サラの運転する車に機銃を向けた瞬間、間一髪サラは車を移動させその場から逃げおおせた。3台の高級車も、一台は民間車両と接触大破し、後方で煙を上げているのが見えた。
応援に駆けつけた最新のアパッチが、旧式のコブラに戦闘開始した。
「今のうち・・・・・」レミーの車も、後どれだけ持つかわからない・・・。目の前に広がる繁華街が、すごく遠くに感じられた。
サラの右腕に取り付けられた腕時計が1秒1秒進んでいく。走る車の後方で、アパッチに片付けられた敵のヘリが炎上し、海に落ちていった。
ようやく、サラの車がハイウェイからダウンタウンにはいり、あたりの景色は港町の酒場風景に変わった。湾岸の汚い倉庫とくたびれた酒場が混在する中、廃墟と化したディスコクラブの駐車場へ入ると、サラは持っていたスモークグレネードを、3つ4つ車の後方に投げた。
「うわーまた・・・減速しろ!!何も見えん!!」
後方の高級車の視界は、たちまち煙により失われ、追従車両はサラの車を見失った。彼女は急いで車を降りると、ダウンタウンの繁華街に消えていった。煙にむせながらも、男たちが彼女の車に近づいたときには、そこには無数の射撃を受けたレミーの車だけが残されていた。
「・・・この近辺にいるはずだ」
聞き慣れたその声の持ち主はクライブだった。彼の隣にいる男が、探知機を見ながらその点滅するインジケートを追っていた。サラが右腕に取り付けた時計から発する電波を拾い、それを伝に追跡しているのは本当だったようだ。
クライブは真夜中のダウンタウンで、ひとりつぶやいた。
「アンドレ・ウィルヘルム・スタインベック・・・おとなしく3Xをよこせ・・。時間がないんだ。」
男たちはそれがサラから発するものだと気づかず、少しずつ彼女との距離を縮めていった。
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