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  Mission!! 作者:Rach
3rd Stg第40話「Car Chase」
ICCトラックにいるベンの腕時計が2時を指していた。赤外線カメラが密かに噴水前を狙っていることなど知らずに、マシューとジョルジュの二人は律儀に時間通りに現れた。
「ベン。来ましたよ・・・噴水の少し後ろがわ・・・地面が陥没しています。」
オスカーのその台詞を聞き、ベンがモニターに寄り眼を凝らした。噴水の手前部分の地面が動き出し、細い鏡の付いたスティックが顔を出していた。ベンは近くの森林に隠蔽している部隊指揮官パブロに無線連絡をした。
「やつらが出てきた後、宮殿内に侵入しようとするだろう。そのときを狙うんだ。」
「了解」

誰もいないと判断したジョルジュは、地上にひょっこりと顔を出した。
「うひょー・・・・なんて豪勢な庭・・・。」四周を警戒することも忘れて、彼らの前に聳え立つ宮殿に眼を奪われている。彼の下から突っつき上げるマシューとともに、穴からやっと這い出ると、泥と砂だらけになった服も気にせず、宮殿に向かって走り出した。
その瞬間、一斉にライトが照らされ、二人は度肝を抜かれた様子でそこに立ち止まった。
「な!・・・・」二人の周りを取り囲むライトの隙間から、フォイオン軍の兵士が見えた。そんな彼らの中央にパブロが立っているのを見つけると、彼らは驚愕のまなざしで彼を見つめた・・・。
「坑道作戦にしては、しけたゲームだな!マシュー、ジョルジュ!」
パブロはゆっくり彼らに近づきながらそう叫んだ。
「パブロ・・てめーこのいかれポンチ男が何をえらっそうに!!」
「マシュー、あんまりでかい態度をとらないほうがいい。俺を殺そうなんてことを考えたら、遠くでスコープを覗いている短気なスナイパーが、お前の左胸を撃ちぬくだろう。」
その言葉と状況を飲み込んだ二人は、ごくりと生唾を飲み込み、静かにこう言った。
「く・・・俺たちの作戦がばれていたのか!?」
「この調子じゃ・・・アンドレ王はとっくに脱出してここにはもういないぞ・・・」
二人はじわりじわりと近づいてくる彼らに、なすすべがなかった。逃げ場がない・・。
「・・・・どうせ死ぬなら、トンネルに仕掛けた爆薬を爆発させてドーンと花火でも打ち上げたい気分だ」マシューはそう言って、ポケットに入っているクレイモアのリモコンを握り締めた。
その瞬間、暗い闇夜にヘリコプターの舞う音が聞こえてきた。そこにいた全員が、驚いて空を見上げた。
「どこのヘリだ?!」

ICCトラックの赤外線カメラが、上空のヘリに視線を移した。そこに映し出されたヘリを睨んだオスカーがつぶやいた。
「彼我不明機。旧型のAH-1コブラ、2機です・・・しかし、どこにも所属を表す記号が書かれていない。フォイオン軍のヘリではないことは確かだ。気をつけろパブロ!」
オスカーの台詞の後、ベンは無線機にどなった。
「パブロ、二人を抑えろ!すぐライトを消せ!!」ライトが当たっていては、彼らの場所が丸見えだ。
「スティンガー!展開急げ!!間に合うか?」指示を出すベンの隣りで、オスカーは悔しそうに右手の親指を噛んだ。
「地下ばかりに目がいきすぎていた俺のミスだ。・・・ヘリは2機、機首の可動式ガトリング砲が、パブロを狙っています!!」
『今は落ち込んでいる暇はない・・・。』オスカーは画面を見て叫んだ。
「いかん!!パブロ!二人を捨てて退避せよ!アパッチ!スクランブル発進!!・・・・スティンガーまだか!?」彼の焦りが無線から伝わってくるようだった。
『オスカーのせいではない・・・。地下ばかりに眼が言ってたのは俺も一緒だ。』
ベンは右手のこぶしをぎゅっと握って、モニターを睨んだ。
ヘリから雨のようなマシンガンが照射される画像が飛び込んできた。パブロは縛り上げた、マシューとジョルジュをその場に置き捨て、森に向かって走り出した。
「ひけー!!」
彼は斜め斜めに走りながら、備え付けの自動機関銃からの射撃を交わし森に飛び込んだ。その後もひたすら走り続け、その森の奥にある武器庫に向かった。
『早くスティンガーでコブラ(やつ)を撃たなければ、宮殿が破壊されてしまう!!』
心配もよそに、彼の背後からけたたましい射撃音が聞こえてきた。それと同時に、マシューとジョルジュの悲鳴も耳に入ってきた・・・。
『あのコブラは、味方を殺したのか・・・』パブロは走りながら、背後の状況を背中で感じ取っていた。
マシューは地面を踏みしめながら、大きく眼を見開きヘリのパイロットを睨みながら倒れていった。
「・・・味方・・・だ・・・ぞ・・・」ものの見事に肉の破片と化し、おびただしい血が噴水の水に混じっていた。彼らが何のために穴を掘り、宮殿に侵入したのか。これから解るであろうその理由は、彼らに知らされることはもうない。

パブロは、森の中で向かわんとしていた武器庫から、スティンガーを抱え走ってくるフォイオン陸軍兵士らとぶつかりそうになった。
「遅いぞ!!」彼らを見るなり、パブロは怒鳴った。
「すみません、こんなことになるとは思っていなかったので、あわてて・・・」
「言い訳は後で聞く!」そういうとスティンガーをぶんどって、肩に担ぎ上げた。敵のヘリは機関銃を裏庭に向けて照射しだした。
弾はICCトラックにも当たり、車内ではカンカンと音が聞こえてきた。
「・・・20ミリとはいえ、至近距離だったらこのトラックでも貫通していたかもしれん。離れていてよかった・・・。ヘリにここの位置がばれたのか?」ベンは隣にいるオスカーに聞いた。
「いや、そうではないと思います。どうやら闇雲に撃ちまくり、裏庭のセントリーガンを狙っているようです。」
「セントリーガンを?・・・敵の情報収集もなかなかのもんだ。しかし、標準装備のTOW対戦車ミサイルをぶっ放されたら、体がミンチミートになっちまう・・。パブロ!どこだ?」
「スティンガー射撃準備完了!!」ベンが期待した台詞そのものが返ってきたことに、満足そうな表情を見せた彼は、心待ちにしていた次の命令を放った。
「OK!撃て!!」
パブロの担いだスティンガーミサイルが射撃されると、ミサイルはヘリに向かって軌道を修正しながら飛んでいった。暗い闇夜にまるで花火のような航跡を描き、旧式コブラは炸裂音とともに空に散った。
もう1機のヘリが噴水の近くのトンネルに向け、射撃を執拗に繰り返すと、マシューとジョルジュが仕掛けたクレイモアが爆発し、大きな音とともに前庭が大きく破壊されてしまった。その威力は甚大で、周りに草木に燃え移りだした。
「爆発物に引火したな・・・。くそ、消火いそげ!!」ベンは常時待機している消防車両を派遣させたとき、耳を疑うようなサラの声が聞こえてきた・・・。
「ベン!!何者かに襲われてる!!応援を頼む!」
「なに!?」
眼の前のコブラは、続いて宮殿のゲートをめちゃめちゃに壊した。パブロは次のスティンガーミサイルの発射体勢を整えたと同時に、コブラは彼らの視界から消えてしまった。

フォイオンの港町、ここでは渋滞回避のためハイウェイが海の上に作られ、まるでアメリカフロリダ州にあるセブンマイルブリッジのような風景を見せていた。夜中で交通量が少ないとはいえ、そこに走る民間人の車を回避しながら、ものすごいスピードで走っていく皿洗いの車があった。その背後には3台の高級車が後を追いかけている。
こともあろうに、その高級車から射撃を受けた。悲鳴を上げる運転手のレミーこと皿洗いは、慌ててハンドルを切り、車は大きく右左へと揺れた。
「ウィル!頭を低くして!!」手荒に彼の頭を低くさせると、サラは袋につめた銃を取り出し、応戦しようと窓から顔を出した。そこへも、背後に迫る車から連射モードで射撃された弾が、後部座席の窓を割った。
「うっく・・・皿洗い!!名前は?」あわてて首を引っ込めたサラだった。
「レミーです!この車、まだローンが残っているのに!!」
「OK、レミー!なるべく右左と交差しながら走って・・やつらはこっちのタイヤを狙っているわ!!」
「サラ、ベンたちの助けは!?」アンドレが身を伏せながらも、ひょっこり顔を出しサラに尋ねた。
「今、デリバリーを頼んだとこ!!」メイド服であることなど、すっかり忘れてしまっているサラは、スカートを揺らしながら銃を構えた。レミーの車の前を走る民間車両が、驚いて彼らの車をよけ、さながらハリウッド映画に出てくるカーチェイスそのものだった。
「どいてーー!!ぶつかっても知らないよー!!!」泣き叫ぶレミーの傍らで、応戦を始めるサラだったが、彼女が放った一発のブレットは、高級車の窓を傷つけただけだった。
「防弾ガラス・・・そうだと思ったわ。」サラは妙に落ち着いた声でポツリと言い放った。傍らにいたアンドレはなにやら、サラの汚いバッグに手を突っ込み、なにやら手伝おうとしている様子だった。
「このままだと、民間人まで巻き込んでしまう。ウィル、手榴弾をだして!!」
その台詞の通り、見事バッグの中から手榴弾を取り出し、サラに手渡した。
「正解!!」サラは笑った。『日頃のパブロの授業もなかなかのものね。』
危険な状況はまだまだ続いている。手持ちの武器も数があるわけではない。
今は援軍が来るまでどれだけ時間を稼げるかが勝負だ。サラは、追って来る男たちがサンルーフを開け、そこから射撃をしている姿をじっと睨んだ。
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