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  Mission!! 作者:Rach
3rd Stg第39話「Secret Escape」
地下排水溝の中から、そこで働かされていた作業員が、その工事内容の最終目的をを知らされることもなく、作業を終え引き返していった。
そこに残ったのはやはりマシューとジョルジュの二人だった。斜めに彫り上げたトンネルに梯子がかけられ、いくつもの中継地点をたどりながら、上へ上へと続いているようだった。
「あっちこっちにリモコン式クレイモアを細工しておいた。アンドレ王拉致してこのトンネルに引き返したあと、ここを破壊しながら撤退する。ピックアップポイントはここ。」
マシューは地図の一点を指差した。
「公園につながるマンホールから地上に出る。迎えの車が来ているはずだ。」
「地下通路を3クリックほど、人を担いで移動ってわけか。まったく人使いが荒いぜ。」
「スタンガンと手榴弾の軽装で行こう。時間は2:00だ。」
「了解だ。」

彼らのその会話はICCトラックにいるベン達に筒抜けだった。教会内壁の空洞部分に集音マイクをセットし、ICCトラックに送られてきていた。パブロはオスカーの作業する、コンピューター作業を見ながら感動していた。
「太古のハイテク技術とオスカーのスキルに万歳三唱だな。」
オスカーはパブロの万歳三唱という日本語に笑った。彼が日系3世であることを知ってて、わざとそう言ったことに口元が緩んでしまったのだ。オスカーはパブロの言葉に続いてこう言った。
「あの空洞を小型カメラで調べたら、等間隔置きに金の燭台が吊るされてあった。地下通路で発せられた音を拾い、それが共鳴して教会内の燭台に音を伝える仕組みだったんだ。」
「これではっきりしたわね。やつらは地下から宮殿内に侵入しようとしている。戦闘開始ね。」サラはベンをチラッと見た。
「先人の技術をあなどったやつらのミスだ。この前の借りを返してもらうぞ。サラはアンドレとともに、2300にビーチの王室専用保養所に移動。警察車両の先導護衛はつけるな。すべて極秘だ。パブロはフォイオン特殊部隊とともに待機。やつらが地上に顔を出した後、捕獲作戦に入る。」
「了解」
いつも回っているはずの上空監視レーダーのかわりに、赤外線探知レーダーとビデオカメラが数多くセットされたICCトラックが、いっせいに前庭の噴水付近を狙った。

夜遅くなっても、アンドレは自室で書類に追われていた。今回のことは何も聞かされていないアンドレは、突如サラが汚いカモフラージュカラーの、でかいバックパックを背負って入ってきたことに驚いた。
「いったい・・・どうしたのですか?」アンドレはまさか、彼女がここを出て行くのではと、心配になってしまった。
「ウィル、確か・・・前に王室専用のビーチがあるって言ってたわね。」
「はい、それがどうかしたのですか?」彼は持っていたペンをそこへ置いて立ち上がった。
「これから支度して、行きましょう。23時に車が出る予定よ。2,3日の予定のつもりで準備して。携帯電話は、GPS機能がついているから置いていって。それから・・・」
彼女は早口でそういいながら、高級な家具の引き出しを開け、中から銃や弾薬、ナイフ、手榴弾などを取り出し次々とバックパックに放りこんでいった。
「・・・・いったいまた急にどうして?」アンドレはサラ専用にと場所を与えた家具の引き出しに、いつの間にかそんなものばかり入っていることに驚いたが、それよりも急に王室専用リゾート『セイレン』に出かけると言い出した理由を知りたかった。
彼女のそばであっけにとられて立っているアンドレに、サラは我に返った・・・。
「あ・・・ごめんなさい。今夜、3流軍人のマシューとジョルジュが、宮殿へ侵入を試みウィルを拉致するという情報を得たわ。でも大丈夫。どこに隠れてどのように事を運ぶかはわかっている。でも一応、念のために・・・」
「わかりました」その話を後ろのほうで聞いていたメイドの二人が、大急ぎで国王の身支度品を集めだした。武器ばかり入れたサラのバックパックとは違い、国王には高級な旅行用スーツケースが3つも用意されていた。
サラはそれを見て笑った。『3日分の準備でいいと言ったのに・・・。』
「そうだ!・・ウィル、これを」サラは自分のクロゼットから、黒色のハンチング帽と髪を結ぶゴムを取り出した。アンドレは拍子抜けた表情でそれを見つめた。
「椅子に座って・・・」さっきまで書類作業をしていた椅子にまた座らせると、髪ゴムで彼の金髪を後ろに一つに束ね、帽子を深くかぶらせた。鏡に映ったその姿は、いつものアンドレらしくない格好だった。
「・・・・・・」生まれてはじめてみた自分の姿に、言葉を失ったアンドレだった。
「いい感じ。これだったらアンドレ王だなんてわからないかもね。」
「??・・・・」
「間違ってもスーツなんか着ないように。だらしない私みたいな服装してちょうだい」
「だらしない服装?・・・」そういい残してサラはとっとと荷物を抱え上げ、部屋から出て行ってしまった。
しばらくすると、宮殿のゲートから小型のRVが走り出てきた。その車を運転していたのは、若くてそばかすだらけの料理人、レミーだった。料理人といっても、まだ皿洗いの修行中の身だ。
「王、すみません・・・。まさか皿洗いの私の汚い車に、王がお乗りになるなんて話、聞いていなかったものですから・・。」緊張した面持ちで運転するレミーの車の後部座席には、ホウィから借りた白い襟高のシャツに、少しぶかぶかのズボンを履いたアンドレがいた。こうやって見ると、いかにもいまどきの若者らしい格好だ。
「いいえ。こういう経験ができてとても楽しいです。それにサラのメイド服姿も見れたことだし。」
「見なくていい。」レミーの助手席に座っているメイド姿のサラは、ふくれっつらをしてすねていた。なぜならホウィにその旨を話し、彼の服をアンドレに着せようと話しを持ちかけた時、自分まで飛び火してしまい、黒いメイドの格好をさせられてしまったからだ。しかも、周りにいたメイドの女性陣までもが、寄ってたかってサラをおもちゃの着せ替え人形のようにして、ドレスアップさせてしまった。
『こんな髪型・・・』鏡を壊したくなる衝動を抑えるのがやっとだった・・・。
ルームミラーに映ったその髪形は、髪を二つに分け縛り、リボンを結んでいる・・・サラは不愉快で仕方がなかった。
「似合っていますよ。」アンドレが後ろの席でニコニコ笑いながら話しかけてきたが、彼女から出た言葉は、およそメイドらしからぬ台詞だった。
「馬鹿ホウィめ。民間人に化けるならこれを着ろなどと・・・。あいつ、またぶん殴ってやる。」
その怒りの台詞にアンドレとレミーは顔を見合わせて、冷ややかに笑った。

ICCトラックではベンがモニターを注視し、アンドレ王を乗せたRVがゲートを出て行くのを確認すると、彼の視線は前庭の噴水に注目した。
「よし。まさに飛んで火にいる夏の虫ってやつだな。」

彼はそう言ってにやりと笑った・・・。
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