ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  Mission!! 作者:Rach
3rd Stg第38話「His Dirty Trick」
異変は突然起きた。妙な男の声が聞こえただけではなかった。古い教会には歴史があるとおり、ここでは古くから多くの兵士が死んでいった・・・。その魂が教会を揺れ動かしているようなそんな叫びを聞いたようだった・・・。
「な・・・なんだ・・」
「オスカー!地震なの?」教会内に置かれた燭台がキーンと音を立て、それと同時に小さい机が小刻みに揺れだした。ベンとサラの無線機にはオスカーから連絡が飛び込んでくる。
「いや、違う!!こっちではそんな揺れは感じていない!!その教会内だけだ!」
ベンとサラはあたりを見まわした。確かに微妙に揺れている・・。しかもどこからともなく人間の声も聞こえてきた。
「もしかしたら・・これが警報システム?」サラはポツリとそう言い放った・・。燭台に注目した。3連になった蝋燭たては、その金属を微妙に揺らしかん高い音を放っていた。
サラはその燭台に近づくと、その真後ろに飾られたキリストの絵に手を当てた。
「この部分だけ薄い生地・・・もしかしたら共振共鳴現象?ベン、この絵を降ろすの手伝ってくれる?」
「わかった」二人してその絵を降ろすと、その後ろの壁の一部が空洞になっていた。ちょうど燭台の真後ろあたりだ・・・。
「これは・・・」そこからもっとはっきりした男たちの声が聞こえてきた。
「オスカー、今から音を送るわ。分析を急いでちょうだい」サラは小声でマイクにそう言った。

トラックにいたオスカーはキーボードをたたき、録音ソフトを起動させると、通信機から流れてきたその声をコンピューターに録音した。
このミステリー探検ができるのもこれが限度だ。もし、奴らが坑道作戦に出ているとしたら、逆にこちらの音を拾われる恐れがあることを心配していた。わざわざここで敵に自らがその情報を知っていることを露呈する必要もない。二人はそうっと教会のドアを閉め、宮殿に帰っていった。

翌日のフォイオンのビジネス街に、白いオープンカーから栗色の髪をなびかせながらドライブしているホウィの姿があった。交通量の比較的多いその道路の一端に、工事中のサインを発見すると彼は車をその工事現場に近づいていった。
「おい、工事人さん。ここの水道工事大変だね。現場監督は誰?」たまたま、マンホールに入ろうとした若者に車の中から尋ねた。突如現れた高級な車に眼を奪われたその若者は、驚いてこう即答した。
「ヒューラーという水道局の幹部ですが・・何か?」
「Thank you!君が女の子だったら一緒にドライブでもしたいところだったが、残念ながら男には興味なくってね。またねー!」
そのまま走り去ったホウィは、車を運転しながらつぶやいた。
「ヒューラーか・・・ビンゴだぜ!偽の宮殿排水図をベンに持たせやがった男だ。しかも・・・サビ止め作業にあんな泥だらけの格好をしているはずがない・・・」
彼の千里眼が鋭く工事人の容姿をチェックしたことは言うまでもない。
ホウィの乗る車のGPS装置には次の目標、水道局へ案内する表示が映し出されていた。
たどり着いたその場所は、全く飾り気のないオフィスそのものだった。雑多とした事務所内では、数々の用紙が散乱し、忙しそうに働く水道局員がなんとかその日のノルマを果たしている・・そんな雰囲気だった。
そんな事務所の一角にある、小さな部屋にホウィは通された。しばらくするとスーツ姿の男が、汗を拭きながらドアを開け入ってきた。
「私がヒューラーです。ミスター・ラマルク。」立ち上がったホウィは笑みを浮かべて握手を求めた。少々小太り気味で、黒い縁取りめがねのその男は、どことなく東洋人らしい雰囲気だ。
「突然、お邪魔して申し訳ありません。どうぞ、ホウィと呼んでください。」
「わかりました。どうぞおかけください。フランス系の方とお見受けしましたが、またなぜ、どのようなご用件で?就職でも・・・」そう言い出したヒューラーの言葉をさえぎり、少々威圧的な態度でホウィは語りだした。ヒューラーはまさかこの少年が、宮内庁の大物だとは思っていなかったようだ・・・。
「今、臨時で宮内庁に雇われているんです。実は、先だってこの図を同じく、宮内庁のベンジャミン・ゴードンに渡したのはあなたですね。」そう言ってオスカーが丸めたくしゃくしゃの宮殿地下排水図を見せた。
「ここにあなたのサインが書かれてある。」
「あ・・・ええ。そのとおりです。これが何か?」
彼のメガネの向こうにある眼球が泳ぎだした。ホウィは胸元から別の用紙を取り出した。
「こちらの図を見てください。こちらが本物で、あなたがベンに渡したものはニセモノ・・・なんでこんなことを?」ヒューラーはメガネをとり、額に伝う汗をぬぐって見せた。
「・・・なぜ、宮殿の排水図の本物が?どうやって手に入れたのだ?・・・」
目の前にいるガキッっぽいこの男、ホウィ・ラマルクを最初に見たときは、こんな少年が就職を請いにでも来たのかとタカをくくっていたのだが・・・・。
「まあ、・・・こういうことが大好きなコンピューターオタクが友人にいましてね。ものの5分くらいで手に入れることができましたよ。ははは!安心してください。不必要にこんなことするやつではありませんから。で、もうひとつ質問なんですがね・・。ゲオルグストリートで行われている地下排水管のさび止め作業。これの作業オーダーもあなたからですね。宮殿につながっている公共排水管に一番近いマンホール下で、本当にさび止め工事を?」
「・・・・・それは・・」
「ダメ押しに、もうひとつ。つい先日新しい銀行口座を作りましたね。まー、ちょっと調べてみたら・・・なんと3日前に巨額のお金が振り込まれていた。その会社名は『アーネスト』。会社の名前のように、正直に答えてもらいましょう。誰に依頼されたんです?言わなかったら、それなりの公表をさせてもらいますよ。」
「・・・私は何も知らない・・・」彼は黙ってうつむき、それ以上何も語ることはなかった。

クライブのいる高級ホテルの一室で、受話器を持った彼の声が荒々しく大声を放った。
「ヒューラーが自殺?」
「ええ、ついさっきです。局のトイレでピストル自殺を図りました。誰かが感づいているようです。このまま作戦を続けますか?」その時、思い切り彼の部屋のドアが開いた。こんなことをするのは、やはりハンスだった。
「よお!クライブ。作戦はうまくいってるか?」クライブが電話中であろうがお構いなしだ。
「コールバックする。」彼は静かにそう受話器に告げ電話を切った。
「今のところな。明日にはアンドレ王を掻っ攫って、そっちのエージェントに渡せるだろう。」
「OK!引渡し場所は第3埠頭に停留中の船の中だ。奴さんたちは首を長くして待っている。おっと、どうせなら君好みのあの女も、ついでに掻っ攫ったらどうだ?船の中に連れ込んじまえばこっちのものさ。」
「俺は紳士なんでね・・・そういう荒療治はしたくない」
「お前らしいな。昔っからいつもおぼっちゃま気性だ。山場は今夜だな・・期待して待ってるぜ。」
そういうと部屋を出て行くハンスだった。時折彼がこうしてやってくるのは、クライブが心配だからなのか?それとも作戦がうまく運んでいるのかどうか、確認するためかわからない・・。今度は彼の携帯電話が鳴った。ディスプレイにはマシューという表示が出ているのを確認すると、通話ボタンを押した。
「どうした?」
「もう少しでトンネルが完成します。今夜にでも、宮殿内に侵入して任務を遂行します。そのまま第3埠頭でOKですね。」
「そのとおりだ。」
「了解」電話が切れると同時に、彼は普段見せない笑みを浮かべた。
「すべて、俺の作戦通り・・・悪いな。マシュー・ジョルジュ・・・君たちの最期の任務は君たちの墓を掘ることだ・・・」そういうとまたどこかへ電話をしだしたクライブだった。

よろしかったら感想など送ってくださいね。
今後ともよろしくお願いします。
rachsmission@yahoo.co.jp
面白かったらここをクリック♪


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。