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  Mission!! 作者:Rach
3rd Stg第37話「Ghost in the Church」
宮殿中央2階にある、アンドレの部屋へと続く重厚な白いドアを開けると、そこには広いリビングが広がり、その隣にはテラスへと続いている寝室があった。その寝室の向こうには洗面室を通して、また奥へと広がるバスルームがあり、その手前には衣裳部屋ことクロゼットルームと、アンドレ専用の執務室が設けられていた。
その執務室にはちょくちょくベンが立ち寄り、書類を裁いていることがあったが、今日はなにか歴史の勉強をしているようなそんな雰囲気だった。
そこからアンドレの声が聞こえてきた。
「その話は、前に父上から聞いたことがあります。かつてのフォートフォイオンが難攻不落の要塞であり、地下排水溝には敵の侵入を察知するための、策が施されていると・・・しかし、細部は父も知らなかったと思います。」
「やつらのことだから、そう簡単に王の拉致をあきらめるはずがない。もしかしたらこの地下でなにやら小細工をしているのではと・・・。ま、私の思い過ごしならいいんだが・・・」
そう言って、先日の教会で聞こえた話し声について、国王に報告と意見を求めているベンだった。
「念には念を入れて・・ということですね。水道局の方はどうでしたか?」
「残念ながら5日ほど前から、トンネル内のさび止め作業に入るとかで、ここ宮殿に通じる排水溝への進入許可は取れなかったのです。大量のシンナーが今頃充満しているころでしょう。」
「そうですか・・・大昔の人たちは、そんな通路からどのようにして敵の侵入を知ったのでしょうね・・。不思議です」
「とりあえず、裏庭にはセントリーガンを設置してあるので心配は要りません。怪しい声の出所を、ホウィとオスカーが現在調査中です。それと・・・国王の身辺警護にもっと人員を増やしておきましょう。」
「はい、よろしくお願いします。さて・・・そろそろ私は訓練に行かないと・・・」
そう言ってアンドレは腕時計で時間を確認すると、椅子から立ち上がった。
「例の・・・軍事訓練ですか?」
「はい、パブロ教官は厳しくってちょっと大変ですが」そう言って笑って見せた。
「サラが心配していました。・・・・本当に傭兵になるおつもりですか?あなたはこの国の王ですぞ」
「傭兵とまでは行かなくとも、サラが普段どおりに私とお付き合いできるような環境を作りたいのです。私の世界に一方的に入ってこいというのでは、あまりにも彼女が窮屈でしょうから。」
「普段どおりというのは・・しかし・・・」ベンは言葉を飲み込んだ。
『少しでも接点を持ちたいと思う気持ちはわかるが、彼女の日常生活は国王からしてみれば、かけ離れた生活だ・・・。』
「彼女の世界を知ることも、とても重要だと思っています。」
「危険すぎます。」
「わかっています。あなた方の世界は普通の兵士では経験しないような過酷な世界。でもお忘れですか?私自身、このフォイオン国軍隊の総司令官でもあります。アメリカ大統領のように、制服を着ることもできます。少し軍事のことも知っておいたほうがいいと思うし、ボディガードするあなた方も楽なのでは?」
「まさか、王室から出ることまで考えてはいませんでしょうな?」
「うふふ。ちょっとサラを脅かしてみましたが、現実的には無理でしょう・・・あるひとつの可能性を除いては・・」
「ひとつの可能性?」
「これは・・・私の推測ですけど。あ、じゃ時間に遅れるといけないので、わたしはこれで」そういうとメイドが開けたドアの向こうに消えていった。
「サラのやつ、何か隠してるな」ベンは書類を集めながら、つぶやいた。

噴水の場所ではサラとホウィ、オスカーが立ち話をしていた。裏山から噴水に流れてくる自然の水に写った自分の顔を眺めて、おおきくため息をついたのはホウィだった。
「だめだ・・何にもみつかりゃしねえ」
「電気を使わない装置を発見するっていうのが、こんなに難しいとは」オスカーが持っているコンピューターには宮殿の設計図が映し出されていた。
「電気で動くものなら、比較的探しやすい・・・か。太古の技術のほうがハイテクなのかもね。水道局からの排水図は?」そう言ってサラは噴水にもたれかけた。
「これだ・・・昨日ベンが局からもらってきてくれた。この宮殿で集まった雨水、生活排水は全部、宮殿裏の馬小屋の下に埋められている公共排水管へ流れていくらしい。」
「え?馬小屋?あのあたりの地盤は岩だわ。そんな硬い岩を砕いて排水溝をつくるかしら?」
「俺だったら、そんな面倒なことはしないね。」ホウィが振り返って答えた。
「この噴水は山に振った雨を利用してるって聞いたわ。私の推測だけど、大量の雨水が流れるこの近くに、一番太いメイン排水管が作られるはず。・・・それに・・・もしこのあたりまで公共排水管がつながっているとしたら、敵陣はいとも簡単に、誰にも悟られずに、宮殿に忍び込むことができたのもうなずける。・・・でも・・・太古の警報システムについては疑問が残るわね。」
「ふん・・この地図はガセネタかもな。・・・それともこちらを攪乱する意図でもあるのか?」
そういってオスカーは顔をしかめると、ベンが持ってきた地図をくしゃくしゃっと丸めた。

その日の夜、サラはアンドレの部屋からそうっと出てきた。内緒の様子で何処かに出かけるようだ・・・。しかも時刻は教会から妙な音が聞こえたのと同じ時間だ。
廊下で彼女を待っていたのは、彼女の元教官であり元婚約者であり、今は彼女の上官であるベンだった。二人ともラフな服装に手にはライトを持っていた。
「王は?」
「相当パブロに厳しく訓練されたみたいで、お疲れの様子」サラは笑った。
「なるほど。・・・サラ、昔教会は兵が常駐していた場所だったらしい。」
「だったら緊急事態対処も完璧ね。行ってみましょう。」二人は宮殿から抜け出て、同じ敷地内にある教会へ向かった。古びた教会であったが、歴史を感じさせる重みのある建物だった。その中央ドアをベンがそうっと開いた。二人はゆっくり入っていくと、床がきしむ音が鳴り響いた。二人は耳に無線機を装着していたが、ふとサラはそれをはずし耳を澄まして音を拾った・・。
「なんか・・・聞こえない?」ベンもその声を確認すると、無線機のマイクを口元に近づけしゃべった。
「オスカー、周りに人の気配は?」
森の中にあるICCトラック内ではオスカーはもちろん、ホウィ、パブロまでもが待機していた。ベンからの連絡を受けて、オスカーは周辺の状況をくまなくサーチした。
「赤外線で探索したが、それらしき人の影は見当たらない」トラックの中でオスカーが作業しているモニター画面を注視していたホウィが恐ろしげにこう言い放った。
「やっぱりポルターガイスト、心霊現象なんだぜ・・」その言葉はいつも威風堂々としている巨漢の男、パブロを震え上がらせた。
「普通の人間のほうが・・怖くないな・・」
トラックの隅っこに座って、ひとり怯えている様子だった。ホウィは彼を面白がって、彼の筋肉をツンツンとつついてみせた。
「ってことは、お前お化けが怖いってことだー」

「お化けは・・・怖い」
彼は体に似合わず泣きそうな顔をしてそういった。
そんな彼の姿を見て、ホウィもオスカーも、真夜中の森林に響き渡るくらい大声で笑い出してしまった。
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