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  Mission!! 作者:Rach
3rd Stg第36話「Clive」
フォイオン国のビーチでは大勢の人が観光を楽しんでいた。ある男を除いては・・・。
オープンカフェテリアのカウンターバーに周りの雰囲気とは少し違う男が、クールに座ってブランデーを飲んでいた。白いYシャツに黒のベスト、黒いスラックスを身につけたその男は、薄い茶色の髪をビーチから吹く風になびかせて、なにか考え事をしている様子だった。
「ねえ、一人?」セクシーな水着を着たブロンドの女性が彼に近づいた。その男クライブはその女性をチラッと見るなり、すぐ視線をブランデーに移して見せた。
「・・・隣座ってもいい?」
「勝手にしろ・・・」女性は空いている彼の隣の席に腰掛けた。
「ねえ、名前は?私はシンディよ。」
「・・クライブ」
「そう。クライブはこれから一人でずっと飲むつもり?私たちと泳がない?さっきからビーチの女の子たちが、ずっとあなたのことを噂してるわ。いい男だって」
「・・・・・・・」クライブは無言だった。こういう女性は過去にいくらでも知っている・・。身なりや容姿、そして金にありつく女たち・・。
『俺はこういう女たちを五万と見てきた・・・・いや・・、そういう記憶があるわけではないが・・・。』

ぼうっとそんな事を考えていたクライブに、シンディが突然腕に絡みついてきた。
「・・・ん・・・じゃ、単刀直入にいうわ!私と遊ばない?そこのホテルに宿泊してるの。昨日彼氏と別れたばかりで、むしゃくしゃしてるのよね。よかったら来ない?」
クライブはシンディの顔をじっと見た。
『遊ぶのも悪くない・・・。』
グラスに入ったブランデーを一気に飲み干すと、テーブルに代金を置き椅子から立ち上がった。
「そうこなくっちゃ!!」

ホテルの一室ではベッドをくしゃくしゃにしたまま、シンディはベッドのなかでまどろんでいた。事を終えベッドに腰掛けているクライブは、窓から見える海辺をじっと見ていた。クライブの体には無数の傷跡が見えた。ベッドの中のシンディはいきなり、そんなクライブの傷だらけの背中に抱きついてきた。
「良かったら、私と付き合わない?」
「それはできない・・・」クライブはその瞬間、サラのことを思い出した。
『悪いが、俺は今サラ・ブルックナーという女性のことで頭がいっぱいだ・・・。お前のような軽い女などではなく、俺同様、家族を知らない同じ境遇のクールな女だ・・・。』

彼は病院跡地でのサラの言葉を思い出していた。
『俺のことを・・・ロイだと?・・・』
クライブはベッドに座ったまま、軽く前髪をかきあげて見せた。
「・・・この傷、どうしたの?なんだか・・・すごい痛々しいんだけど・・」
彼女はそうっと背中の傷に手をあてた。
「銃撃で負傷したらしい・・・。」
「そうなの・・・。そのときの記憶ないみたいな口ぶりね」
「お前にとっては他人事だ・・・」
「家族のみんなも心配したでしょう?」
「俺には家族なんてものはいない。・・・酒をもらうぞ」彼は立ち上がると部屋の隅にあるカウンターに行き、ブランデーを取り上げふたを開けた。
『家族なんてものを想像すると、気分が悪くなる・・なぜだ??』
グラスに注いだブランデーを一気に飲み干した。
彼の心の中では家族というものがどんなものなのか、想像できないでいた。事故後アメリカ中西部に位置する砂漠の中の病院で、記憶障害を持つ俺にハンスはこういった。両親は幼いころに病気で死んだと書類片手に懇々と説明してくれた・・・。両親とも米国片田舎の農業を営むごく普通のアメリカ人だったそうだ。俺はその一人っ子だったと・・・。
「うふ・・なんて引き締まった素敵な体・・・見とれちゃうわね。身長180センチくらい?見れば見るほど・・・男前」シンディはベッドの中で、彼の一糸まとわぬその体つきに見とれていた。
「弟はもっと高い。185センチある。・・・」
「弟もきっとかっこいいでしょうねー。え?でも、さっき家族はいないって言ってたのに。」
「う・・」ボトルを床に落とすクライブだった。じゅうたんの上にブランデーがこぼれた。クライブは頭を抱え、その場にうずくまった・・・。
「ちょっと!!クライブ。どうしたの??!大丈夫!?」
「今・・・俺はなんていった?・・弟だと?く・・・頭が痛い・・・」シンディが心配そうにクライブの側に駆け寄ってきた。
「薬を・・・」
「薬?」
「上着のポケットに入っている・・・」シンディはあわててソファにあるクライブのスーツに駆け寄った。背広の内ポケットから小さな小箱を見つけると同時に、銀色に輝く拳銃と、アメリカ合衆国のIDカード、巨額のお金と多種多様なクレジットカードが入った財布が彼女の目に飛び込んできた・・・。
「・・・マフィア?・・」彼女の表情は凍りついた。傷を負った謎の男、多額の金、とんでもない男と寝たのかもしれない・・。彼女は恐る恐る薬をクライブに渡すと、ソファに緊張した面持ちで座りこんだ。
クライブはいつものように薬を水に溶かし、ガブガブと飲み干すと深いため息をついた。
「あの・・・本当はさ。彼氏そろそろ帰ってくるんだ。本当は別れてなんかなくってさ。ちょっとけんかして別行動してるだけなの・・だから」
「・・・言われなくても帰る」そういうと突然服を着だした。背広をきちっと着こなすと、ベッドにお金を投げ捨て、ヨロヨロしながら部屋を出て行った。

彼が廊下を歩いて、そこに到着したエスカレーターに乗り込もうとすると、中から人のよさそうな青年が、手に花束やお土産などを持って降りてきた。その男はクライブに目もくれず、彼が今までいたシンディの部屋のドアノブをまわした。
「・・・・・・・」開いたドアから聞こえてきたのは、彼氏の帰りを喜ぶシンディの甲高い声だった。クライブは黙って到着したエスカレーターに乗り込むと、また深いため息をついた。
「弟だと?・・・・」脳裏にはアンドレの姿が浮かんだ・・・。
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