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  Mission!! 作者:Rach
3rd Stg第31話「Family-1」
今からかれこれ数年前のことだ。時折この砂漠地帯に吹く風が砂を舞い上がらせ、そこに見えるブロックで作られた粗末な建物群を視界から阻んでいるかのようだった。それほどここでおきている実際の歴史事実を、隠蔽しようとしているかのようだ。
掘っ立て小屋が立ち並ぶその向こうでは、幾千もの簡素な墓が建ち並び、まるで疲れ果てたゴーストタウンのようだった。そう・・ここの場所は戦火のアフガニスタン。
ある建物内の壁に無数の銃が立て掛けられ、木箱に入った弾が山積みされているのが見えた。

「おい、ふざけんじゃないぞ!誰が女を連れて来いといった?連れてくるならもっと大人の女性にしてくれや・・・使えねえだろ?」
ひげ面で堀の深い顔をした男が叫んだ。彼はふてぶてしく椅子に座って目の前にいる細身の男を睨んだ。
「まあ、そういうなよ。ハイヤーム・・・てっきり男だと思って連れてきたんだが・・・その分半額でいいからよ」ハイヤームの前に差し出されたのは、幼い顔をした少年と少女の2人だった。
ハイヤームはこのあたりを牛じる民間組織兵のボスだ。彼は決して悪い男ではなかった。大国の軍事パワーに押され、ただこの土地と家族を守るために、こうして武器を調達し、はるばるイギリスまでバイヤーを向かわせ兵士を買っている・・。ただそれだけのこと・・・。
ハイヤームは、彼の前に突っ立ている幼いカークとサラを睨んだ。
「・・・・・可愛げない女だ・・・少しは笑ってみたりしねえのか。無愛想だな」
サラは彼を恐ろしく感じていた。『新しい家族ってこの人たちのことなの??』
「おめえら今、いくつだ?」サラの手を握っているカークが口を開いた。
「俺は7歳・・・サラは6歳・・・」
「確かにみんな死んじまって人手不足だからって、こんなガキ連れて来てどうしろって言うんだ」
「まあ、大人は少し厄介なんですよ。こいつらなら孤児院で育った身寄りのないかわいそうな子だからして・・・ちょっと里親の話をすればホイホイ差し出してくれるってなわけで・・」
「ま、いいか。今から俺の命令は絶対だ。わかったな。逆らったり逃げたりしたら、容赦はしねえ・・どうせ周りは果てしなく続く砂漠だ。逃げられはしないがな」
「じゃ、頂くもの頂いて、わたしはこれで・・」売人のその男は、そういって汚い手を差し出した。ハイヤームは、しぶしぶポケットの中から金を数えて売人に渡した。
「毎度あり・・・」短くそう言うや否や、売人は木製のドアを開け出て行ってしまった。
サラはカークの手をぎゅっと握った・・・。少し震えているようだった。
「・・・大丈夫だよ・・・サラ。僕が付いているから」
「カーク・・・・」
「おい、ガキ共。そこにある木箱を持って来い」
カークとサラは辺りを見回すと、弾薬がぎっしり入った木箱を見つけた。ゆっくり木箱に近づき恐る恐る、持ち上げようとするがとても重くて運べなかった。
「・・・・お前らそれを一人で運べなきゃ、飯は抜きだ。わかったな。」二人は呆然と立ち尽くした。突如勢いよく、あの商売人が去ったドアがいきなり開く・・・。しかしその向こうから現れたのは別の男だった。
「ハイヤーム!隣町がヘリで滅多撃ちされ壊滅したらしいぞ!今度はきっとこの街に来るに違いない」その男は血相を変えてそういった。
「くそ、ソ連軍め・・・なんとかヘリを撃ち落とす、いい作戦があればな・・・」

翌日の朝になると、けたたましいヘリの音が聞こえてきた。ブロックでできた建物の間を、女性や子供たちが逃げ回っている姿が見えた。砂埃が舞い上がり、ヘリはまるで狩りを楽しむかのように、そこに住む一般人を追いかけ射撃を繰り返していた。
「カーク!サラ!弾薬を持って来い!」
ブロックで作られた壕にいるハイヤームが、機関銃を撃ちながら叫んだ。ヘリが縦横無尽に飛び回る部落の建物の隙間を走りぬけ、二人は必死になって弾薬の詰まった木箱を運ぼうとした。
「だめだ・・・重い・・・」カークはその木箱を持ち上げようとしたが、とても重くて運べなかった。弾薬が詰まった箱は相当重い・・・。木箱だけでもかなりの重量がある。それを6・7歳の子供が運ぶには無理があるのは当然だった。
「怒られちゃうよ・・・どうしよう・・」サラは震えた・・・。ハイヤームの撃つ射撃音が止まると、大きな罵声が飛び交った。
「何やってんだ!!早くしろ!」
「あ・・・これを・・」サラはそこにあった料理に使う鉄板を見つけ、その上に木箱をスライドして載せると、鉄板の取っ手を引っ張り砂の上を滑らせてみた。
『これなら運べる!!』カークとサラはやっと微笑むことができた。ようやくハイヤームのところに弾薬を運んだ二人は、はじめてこの男から褒められた。
「やるじゃねーか二人とも!!・・いかん、伏せろ!!急げ!」弾薬を補充する前に、ヘリが3人のいるところへ向かってきた。
「サラ、ふせて!」カークはサラを、地面に伏せさせた。ヘリからの機銃が火を吹き、二人のすぐ側の砂を舞い上がらせる・・・。大きなヘリの飛行音と、悪魔のような射撃音がサラとカークを震えさせた・・・。
「カーク・・・怖いよ・・・孤児院へ戻ろう」サラは泣きそうな顔をしてそういった。
「・・・もう戻れないんだよ。僕達はあの男に買われたんだ。里親が見つかったと嘘付かれて、ここへ連れてこられたんだ。兵士として」
「兵士?・・それって・・戦争をする人たち?」
「そう・・・、孤児院でよく戦争ごっこしたろ?あれの本物が、ここで毎日のように行われているのさ」
「・・・・戦争・・・」
「次のヘリが来るぞ!隠れろ!!」ハイヤームは弾薬を補充しながらまた叫んだ。
その声に我に返り、二人は慌てて建物の中に飛び込んだ。大きなヘリの通過音と射撃を繰り返す音が聞こえてくる。
「大丈夫・・・サラ。僕がきっと守ってあげる。ずっと一緒だよ」
「カーク・・ありがとう」

どれくらいの時間がたっただろうか・・・。この国に来てたったの2日。イギリスの孤児院にいたカークとサラは、里親手続きの書類を済ませ、二人して同じ家族に迎え入れられるはずだった・・・。人手不足の戦場に来ることなど、まるで想像もしていなかったに違いない。サラのまだ始まったばかりの人生は、ここでもまた大きく軌道を変更したも同然だった。

夕暮れの町を赤く染めた太陽が、地平線の向こうに沈んでいった。今日もまた、そこに見える墓の前で誰かが泣いていた。死体を見ることに慣れてしまったカークとサラは、不幸にして、ここに来ることになってしまった自分の運命を、嘆いている暇などなかった。
救護所に足を運べば、そこでは重傷を負った者が、ろくな手当てもされずに寝そべっていた。 
「ここに住んでいる人たちより、僕達のほうが十分幸せだったんだね。親に捨てられ孤児院で生活するなんて、僕達は世の中で一番不幸だと思っていたけれど、この人たちに比べてみれば全然・・」カークの言葉にサラは黙ってうなづいた。
少しばかり大人の表情になった二人だった・・・。
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