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  Mission!! 作者:Rach
2nd Stg第25話「TSD4」
その場所は冷たいコンクリートがむき出しになっている、殺風景な部屋。いや、部屋というより牢獄に近い。アンドレはここに閉じ込められてから、一番に心配していたことは、まだ彼の隣りで意識を戻さないサラのことだった。
目の前には鉄格子がはめられ、小さなドアに鍵がかかっていた。自分の背後を見渡すと、高い位置に小さな窓が取り付けられており、そこにも鉄格子がはめられていた。
『ここは昔、精神病棟だったに違いない・・・』鉄格子の向こうにも今彼らが囚われている場所と同じ大きさの部屋があり、汚いパイプ椅子がひとつ置いてあるだけだった。しかし壁には病院の名残か、医療で使われる酸素取り入れ口や、電気を供給するプラグなどが固定されているのが見える。
アンドレは自分のことを『役立たず』だと感じていた。確かに彼女をボディガードとして雇ったのは自分だ。そう彼女を説得しない限り、サラは決してフォイオンに来ることはなかっただろう。彼女をよく知っているベンのアドバイスだったのだが・・・。
「う・・・・」冷たい壁にもたれて気を失っていたサラが目を覚ました。
「大丈夫ですか?」目の前にいるアンドレをぼうっと見つめたサラは、まだ意識がはっきりしていない様子だった。しかし注射筒が刺さった腕が痛み、左腕の怪我の部分をそうっと右手で押さえた。
「まだ痛みますか?」そこにはアンドレが持っていたハンカチが巻かれていた。何とか血は止まったようだが、この不衛生な環境では、感染症の恐れがある。そう思ってはみたものの、戦場ではいつも携行していた殺菌消毒なんてものはここにはない。
「・・状況は掌握した・・・なぜ、戻ってきた?あのまま逃げろといったはずだ・・」
サラはいきなりアンドレを批判した。自分だけが捕まるならまだしも、肝心の国王が自分を助けようと戻ってきたのでは、何にもならないではないか。
「・あなたを・・・置いてはいけません。」アンドレは悲しそうな表情をしながらそう言った。サラはそれをあえて無視して、次の言葉を続けた。
「勝手な正義感か、同情かしらないが、・・・私はどうなっても、また新しいボディガードを雇えばいいだけのこと・・・でも、あんたの換わりはいないんだよ・・・・」
「・・・・・・」アンドレはサラの言葉にショックを受けた。
そこへいきなりドアが開いた。マシューとジョルジュだった・・・。二人は鉄格子の向こうでニヤニヤしながら笑っている。
「こんなところでまた会えるとは、思っても見なかったぜ、サラ。外人部隊以来だな」マシューは不敵な笑いを浮かべてそういった。
「あんまり見たくない汚い顔だな。マシュー・・・それにジョルジュ。麻薬稼業の後に人攫いとは、もっといい転職先はないのか?・・」ジョルジュはサラの言葉を聞き、いきなり胸元から銃を出し、アンドレに向けた。
「あんまりでかい口叩くなよ!この王子様がどうなってもいいのかい?」
マシューは鍵を出し、鉄格子についているドアを開けた。二人は冷たいコンクリートの上に座っていたアンドレとサラの近くまで来て、そこでマシューはいきなりナイフを光らせて見せた。
「ははは!聞いた話じゃ、お前さんこいつの婚約者だって?俺、本当に腹、痛くなるほど笑ったぜ!」ナイフをサラの顔に突きつけた。アンドレにはジュルジュの銃が狙っている。
『下手に手を出せば、こっちが危ない・・・。』サラの心の中ではこの状況が悔しくてたまらなかった。ましてやあのクズ兵士の2人に、こんな立場で会ってしまうとは・・・。
「よお・・・あの時よくも、俺たちの商売を邪魔してくれたな・・・苦労して密輸したヤクが、台無しになっちまったじゃないか・・・。その償いはさせてもらうぜ」そう言ってサラの髪を握り思い切り引っ張って、そこに立たせた。
「王を放せ」
「楽しませてもらうぜ」彼女の台詞など聞いてはいない様子だった。彼らは今、そこにある欲望に捉われ、まるで狂った動物が捕らえた餌にくらいつく・・・そんな目をしていた。マシューは、ナイフをサラの胸元の白いブラウスにあて、ゆっくり切っていった。
「やめなさい!!あなた達は私に用事があるのでしょう!?サラには関係ないはずだ!!」
この状況に耐えられず、アンドレはいつもあげることのない大声を出した。
「国王殿、商談は明日になりそうですので、それまでこのショータイムを楽しんでください・・・」
ジョルジュは銃をアンドレの頭に突きつけた。切り裂かれたブラウス 左腕の痛みを耐えながら、サラは身動きがとれずに立ち尽くした。

そこへまたドアが開いた・・・。そこから現れたのはクライブだった。白いスーツ姿がこの雰囲気とは相容れない雰囲気だったが、彼の低いその言葉は興奮した二人を落ち着かせるには十分だった。
「やめておけ・・・・」アンドレとサラは、その男クライブの顔をじっと見つめた。
「Boss・・・」マシューとジョルジュは少し悔しそうな顔をクライブにして見せた。
「もっと紳士的に美しく接待したまえ・・君たちはガラが悪すぎる。Ladyに失礼だ・・」
その言葉にジョルジュがキレた。
「Ladyだなんて、とんでもない女なんですよこいつは!全く男を立てることも知らん、生意気なやつなんだ!」サラはその言葉を聞き笑った。
「あんたらがとろいのさ・・・3流兵士が聞いてあきれる。」外人部隊では、何をやっても
サラのほうが一枚上手だったことを、まだうらんでいるらしい。
短気なジョルジュが、サラの顔を思い切りはたいた!!
「やめろ!!」アンドレが叫んだ。サラの左頬が赤くなる。
クライブは二人にここを出るように、首をドアのほうへ振った。しぶしぶながら彼らはまた鉄格子のドアをくぐり、クライブの横をすり抜けながらドアに向かっていった・・・・。
「ジョルジュ、マシュー・・・この仕事のカタがついたら、この女は好きにしていい・・・ただし、・・・・私の後でだ。わかったな」
「わかりました・・・使い物にならないくらい、やらないでくださいよ・・・。いこうぜ・・・」
「ああ」静かにドアが閉まる男が聞こえた。アンドレは自分の上着を脱ぎ、サラの破れたブラウスを隠すようにそうっとそれをサラにかぶせた。
「サラ・・・」アンドレは彼女の顔色を伺った。
「私は大丈夫だ・・・」
クライブは鉄格子の向こうの部屋で、そこにあったパイプ椅子に座り、じっと二人の様子を見ていた。アンドレはそれにかまわず、サラにこう尋ねた。
「あの二人は、フランス外人部隊のときの知り合いだったんですね」
「やつらは、金のためならなんだってやる男だ。密輸した麻薬を同期の仲間達に売りつけやがった・・・。最後には麻薬の原産国からの依頼をうけ、我々の持つ武器までも売りさばく計画だった・・。」
「なんてひどい・・・」
「それを・・・私が止めた。仲間や戦友がシャブにおぼれるのを見ていられなかった。しかし、・・・私は・・心のどこかで、あんな奴らでもやっぱり仲間だと信じたかった。・・戦場ではみな助け合って生き延びていたんだ。それを私は幼少の頃から知っている。家族のいない私には・・・戦友や同期が唯一の家族だったから・・・」
「サラは、悪くありません」
「パブロも一時期、私を襲い取り乱したけれど・・・やっぱり私には彼を倒すことなどできなかった。仲間は仲間・・あの時、なにかいいチャンスがあるはずだと思った。でも結局、ベンが負傷してしまった・・・」
「だから今、パブロはあなたに感謝して・・・このMissionに参加してくれたのですね。まるで本当の家族のようだ」
その会話を静かに聞いていたクライブは、じっとサラとアンドレのほうを注視していた。
「・・・・こんな話に興味があるのか?Boss」サラは突然自分達をじっと見ているBossに話し出した。
「私の名は、クライブ・・・」名前を聞いたアンドレが、すっくと立ち上がった。
「・・・クライブ、私はこの国の王、アンドレ・ウィルヘルム・スタインベックです。サラは腕を負傷している。なにか手当てをしたい・・・お願いできないだろうか・・・」
「アンドレ・ウィルヘルム・スタイン・・・・ベック・・・」彼の名前を呼称すると、なぜか頭を抱えたクライブだった・・。
「・・・クライブ?」彼の不自然な行動に違和感を覚えたアンドレは、鉄格子の向こうにいる彼をもう一度呼んでみた。
「な・・・なんでもない・・・」そういうと椅子から立ち上がり、頭を押さえながらその部屋から姿を消した。
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