2nd Stg第23話「TSD2」
「Everybody! Down!!!」(みんな、ふせろ!)
そう叫んだ瞬間、森の中から軽機関銃が火を噴く。サラはアンドレを右手で掴み、一気に地面へと押し倒した。伏せ遅れた数人の警護員は、血しぶきを上げその場に倒れていく。
「・・・・・・」アンドレは驚いた表情でその状況を見ていた。
アンドレとサラは墓石の影に身を潜めると、サラは持っていた拳銃を手にした。黒いスーツの襟に取り付けられた通信機に怒鳴りだす・・。いつもは無口なくせに、こんなときは饒舌だ・・。
「ベン!聞こえる?何者かに襲われてる!!」
「任せておけ、発射地点は確認済みだ!」サラの耳に飛び込んでくるベンの声。彼は今、現場から少し離れた場所に駐車したあるICCトラック内で、オスカーとともにその状況を確認していた。
サラの背面方向から、大きな車両のエンジン音が聞こえてきた。180度振り返ると、フェンスの張られた道路沿いから、数台のストライカー装甲車に乗った兵士が応戦を開始した。前もって待機していたフォイオン陸軍102部隊の精鋭だ。彼らの装備する7.62mm機関銃M240が、先制攻撃を食らわしてきた敵方向に向け、射撃を繰り返した。
「みんな!頭を低くして!!前方の森まで匍匐前進!!」
そういってサラは一番近い森を指差した。周りにいた警護官たちは、頭をかがめ一斉に地面を這うように移動し始めた。そこへ投げ込まれた催涙ガス弾 軽い音を出しながら、地面を撥ねていく・・・。
「こっちへ!!」アンドレの腕を引っ張り、風上の方角へ移動し、また墓石の陰に隠れた。即座に、それがなんなのか判断できなかった警護官たちは、不幸にもガスを吸ってしまい、涙を流しもがき、そして苦しみだした。
「敵というのは・・この場では誰なのでしょうか?この墓地は関係者しか入って来れないはず・・なぜ?」比較的冷静なアンドレに、サラは苦笑した。
「裏切り者がいるのよ・・・ほら、よく見て・・・。敵も味方もこの国の軍隊。」
アンドレは、武装グループが放り込んだ催涙弾、彼らが射撃してくるその軽機関銃音から、わが同胞フォイオン軍であることを否定できなかった。
突如、向かうべく森林の方向から爆発音が聞こえてきた。やっとの思いで森に逃げ込んだ警護官たちが、木々に張られたワイヤーに触れ、仕掛けられていた爆発物によって倒れてしまった。その様子を見てサラは悔しそうな顔をした。
「前もってトラップを・・・」その時、パブロの声が無線機から聞こえてきた。
「今の爆発は、ゲートで使われたクレイモアと同じ種類だ、敵は同一犯にちがいない!・・・サラ、森へ逃げ込むにはリスクが大きいぞ!」
「Affirmative!!」(肯定だ)そう短く返答したサラの台詞の後、指揮官ベンジャミン・ゴードン中尉の指示が流れた。
「サラ、撤退ルートは墓石の多いその場所を通って、沿道へでるしかない!今から閃光弾を投げ込む。こちらの一斉援護射撃と同時に撤退を!!」
「閃光弾、了解!」
味方ストライカー装甲車が、墓地へ侵入してきた沿道へ逃げるには、閃光弾の投擲と同時にストライカーからの一斉射撃が始まる。その時一気に走り抜けるしかない・・・。
ICCトラックの後部ドアが開き、パブロがアンダーバレル・グレネードランチャーを抱えて飛び出してきた。墓地と沿道が見渡せる場所に向かって、重い銃をものともせず走り抜け、そして茂みに隠れ射撃体勢を確保すると、彼は無線機を口元に寄せた。
「準備OK!」
墓石に隠れ低い体制を維持していたサラとアンドレは、少しずつ移動を始めていた。
「ウィル、目を閉じて!」
「え?」彼女は不意にアンドレを地面に押し倒した。やさしく彼の顔を両手で包むと、眼をつぶるようにそうっと彼のまぶたを閉じさせた。
アンドレはそこに危険が潜んでいることも忘れ、一時だけだが、彼女の体が自分の上にかぶさり、体温を感じていることに心臓がドキドキしてしまった。
できれば、このままこうしていても・・・。
「撃て!」
彼女のイヤフォンから、ベンの命令がかすかに聞こえた。その声と同時に、パブロの構えたアンダーバレル・グレネードランチャーから閃光弾が投擲。
まぶしい光があたりを包み込んだ。その5秒ほど後、怒涛のごとく味方の援護射撃が始まると、サラはアンドレとともに、沿道のフェンスに向かって墓石の間を駆け抜けた。
ICCトラック内では、彼女たちが走るその様子をモニターで確認したベンは、次いでマイクに向かってどなった。
「アパッチ、現在位置知らせ!」夕暮れの大空に舞うアパッチヘリコプターから、即座に返事が届いた。
「目標視認!30秒で到達!!」その返事に満足したのか、ベンは軽くうなづいて見せた。
そんな墓地のそばには、ICCトラック以外に白い外車が駐車していたことを、彼らは気づいていなかった。白いスーツを着たその男は、ハンスに『病み上がり』と言われたアメリカ合衆国のエージェント・クレイブだ。少し青白いその表情が、不敵な笑いを見せていた。
「なかなかやりますね・・・さすが元外人部隊・・・こちらが読んだとおりの脱出ルートです。」
いつもなら後部座席に座っている彼は、今日は特別運転助手席に座ってその様子を映し出されたモニター画面を注視しながら、そうつぶやいた。
「Boss、行ってきます・・・」
そう、この日は高級外車の後部座席には、あのむさくるしいマシューとジョルジュが乗車していたのだ。
二人して車を降りると、ジョルジュは車のトランクからスナイパーライフルを持ち出した。そしてマシューは双眼鏡(距離計測)を手にしている・・・・。
「アンドレをかっさらってやる。ついでに、あの生意気な女、サラも・・」
閃光弾で一瞬おとなしくなった敵軍隊から、また怒涛のような射撃を受けるサラとアンドレだった。
「向こうにも新手か・・・もう少しなのに・・」何とかたどり着いた沿道の手前30メートル・・。この沿道を超えれば、下り坂になり一気に距離を稼げる。しかも私たちの後方をストライカーが援護するだろう。フェンスをよじ登るには少しリスクは大きいが、ここに誘導したベンに、なにか秘策があることをサラは信じていた。
そこへ飛来してくるAH-64アパッチヘリ 大きな音を立て旋回した。それを見つけたサラは小さく笑って見せた。そのとおり、無線機からの流れてきたベンの命令は、サラの予感を的中させた。
「アパッチ!データを転送する!このマークの鉄柵を爆破しろ!サラ、そこから退避を!」
「あれは敵ですか?それとも味方ですか?」無線機をつけていないアンドレは、心配そうにそうたずねた。サラは、黒いスーツについている無線機を外し上着を脱ぐと、それをアンドレの頭からかぶせた。アンドレはこの行動の意味がよくわからなかったが、サラの上着を借り、自分が何かから守られていることを、決して快く思っていなかった。
「サラは・・・」彼がそういいかけたとき、まるでそれを打ち消すかのように、次の台詞を広げた。
「味方だ。」そういった瞬間、ヘリから柵に向かって機関銃が発射された。破片が飛び散り、二人の周りに降り注ぐ。大きく柵がひね曲がり、なんとか人ひとり通ることのできる穴があいた。
「今よ!」そういってアンドレを走らせるサラだったが、次の瞬間全く予想していなかった方向から、狙撃を受けるサラだった・・・。左腕にささる注射筒 地面に伏せそれを引き抜くとその場所から血が噴出した。
先を走らされたアンドレは、その音に驚き振り返った。そこに倒れたサラのところへ戻ろうとするアンドレに彼女は叫んだ。
「行きなさい!ウィル!!・・・・」
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