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  Mission!! 作者:Rach
2nd Stg第20話「The wiretapping」
一台の黒塗りの車が、少しスピードオーバー気味で宮殿に続く坂を登っていった。
島国フォイオンの北側にある山々に向かって、徐々に勾配がきつくなっていく。
太古の昔、諸外国からの攻撃から守るため、ここに要塞を作ったのが最初のきっかけだ。この急勾配な坂が、攻めてくる幾千もの兵士を阻んだ。
裏山には切だった山々を背景に、ほぼ180度以上の範囲で、はるかな海が見渡せるその場所は、難攻不落の要塞としては世界でも有名な場所であった。現代では、この要塞フォイオン(Fort Foyon)をスタインベック王家の宮殿として使用していることは言うまでもない。

宮殿の中へと続くゲートで、その車は警備隊員に停車を求められた。
「すみません、ちょっと荷持検査をさせていただきますので、一度降りていただけますか?」
丁寧な若者だった。それもそのはず今日ここに集まってきているのは、フォイオン国のVIPばかり。そんな彼らに車を降りろといってるのだから、中には『なんで私が・・』とそんな表情を見せるものも少なからずいた。
しかしこの後部座席に座っていた男は、遅れてきたことを申し訳ないと思っているのか、笑顔で車を降りてくれた。
警備隊員は、てきぱきと車の各部を点検に取り掛かった。ある幹部隊員が、手に身体用のセキュリティチェックをする道具を持ち、彼に近づいてきた。
そのとたん、車体下部から爆発がおき、大きな爆音と閃光が辺りを包んだ。
「うわー!!」何人かが巻き添えを食らい、その場に倒れこんだ。彼に近づこうとしていた幹部隊員は、とっさにその政治家のボディを地面に倒すとともに、自分が彼の上になって彼をカバーした。そこへ黒い煙がかぶさっていく・・・。
「ゲートクローズ!衛生隊と消防隊に連絡を!」
煙が徐々に遠ざかっていくと、幹部隊員が犠牲になったその下で、ピクピクと腕が動いている政治家の姿を発見した。
「大臣!!大丈夫ですか?」そばにいた隊員が駆けつけた。
「いたたたた・・・この人が私を・・・」よく見ると、彼の右腕に車の破片が突き刺さっている。そこからしたたりおちる血・・・・。
「救急車を呼んで!!科学技術大臣が怪我をされた!!」
腕の痛さをこらえながら、一体何事かとしばし呆然としていた大臣だったが、ふとなにかに気づいたように、車のほうへ向かって叫んだ。
「カバンだ!!私のカバンは無事か!!・・・だれか・・・だれか!!」
そこにいた警備隊員がそれを聞いて、まだ燃えている車の後部座席ドアを無理やり押し開けた。煙の立ち込める車の中から大臣のカバンを取り出すと、大臣の元へ届けてみせた。
「よかった・・・」
救急車が駆けつけると、真っ先に大臣に駆け寄り腕の状態を観てくれた。しかし、それと時を同じくして駆けつけたサラとパブロは、一目散に車の下部へ注目した。
パブロがいきなりそこへもぐりこんでいく。
「爆発したのは何?」
「ゴホンゴホン!」まだ煙が残っており、むせてしまうパブロだった。
「M18クレイモアだ。火薬の量を調整しているな・・・本来なら50メートル以内にいた全員死んでいる。・・・リモコンで起爆させているぞ。」
その話を聞き、慌ててゲートの外へ出て周辺を伺うサラだったが、そこには車も人の影も見当たらなかった。

この日の会議は、2時間は遅れてしまったことは言うまでもない。ゲートで死傷者が出るほどの騒ぎがあったとはいえ、重要事項を話し合うせっかくのチャンスを失うわけにはいかなかった。
会議室では、少々待ちくたびれた顔つきをした面々が、最後に入室するであろう科学技術大臣の登場を、今か今かとしきりにドアをほうを気にしている様子だった。
そこにやっと、腕に包帯を巻いた彼の姿を見つけると、ところどころから怪我の様子を尋ねる声や無事を喜ぶ声が飛び交うと同時に、今度は誰の番なのかといった話もささやかれていた。
「王、科学技術大臣のビル・オズワルドです。」中央の椅子に座り、資料を読んでいたアンドレ国王の横で、ベンが小さく報告した。ビルは彼のそばまで来ると、軽く会釈をした。
「遅れて大変申し訳ありません。アンドレ王・・・」
「車が爆発を起こしたとのこと・・・無事で何よりでした。」
「いや、参りましたな。今日は3Xに関わるデーターを持ってきましたので、誰かがそれを知ってか私の車に小細工したのでしょう。」
この台詞が、会議室にいた全員の口封印が解き放たれた瞬間だった。
「お互い、気をつけねばなりませんな・・恐ろしいことだ・」
「今度は誰の番ですか?・・・そう考えると外出もできやしない・・」
やはり3Xの専売特許権や開発共同権などを、各国政府やテロリストが狙っているだけあって、大物政治家たちはいつ自分が拉致されるのかとヒヤヒヤしているのは当たり前だろう。
誰よりもアンドレ国王が被害にあう可能性が一番高いのは否めない。なぜなら、ほかに代わりがいないからだ。残念ながらスタインベック王家は、立て続けに不慮の事故や病気が続き、宮内庁法典に基づくと、やはり彼しか国王を次ぐものがいないことになる。
しかし、実際問題としてここにいるVIP達は怯えてもいた。自分を拉致する可能性はゼロではないからだ。
『ほら、科学技術大臣をみろ・・・。誰かが彼を狙ったんだ・・。』
テロへの恐怖が彼らの心を支配していった。しかし次の気の利いた大臣の一言が、会議室の雰囲気を和らげた。
「このおんぼろの自分の体よりも、このカバンに入った機密資料のほうを心配してしまいました。」一瞬にしてアイスブレークした。
「では早速はじめましょう・・・」
ビルはアンドレ王の近くの椅子に腰掛けた。なぜなら本日の会議に大半が、彼の報告文書が中心であったからだ。ビルの着ているスーツの一番上のボタンが、一瞬光ったような気がした・・・。

クライブは寝床にしているホテルのスイートルームで、片方のヘッドフォンだけを耳にあて、無線機から流れてくる宮殿内会議室の声を聞いていた。
そう・・。あの爆発は彼らが仕組んだものだった。ビル・オズワルド科学技術大臣のスーツの一番上のボタンに仕組まれた盗聴器が、セキュリティチェックを受けないよう、わざとそのタイミングでリモコン装置による爆破を試みたのだ。この作戦はうまくいった・・。
彼はじっとその会話を聞いていた。
「というわけで、この3Xからでる特殊なエネルギーは、こういった方法により、石油や原子力よりもさらに強力なエネルギーを出すことになります。現在においては石油がメインの鉱物資源の一種であり、発電所の燃料として、また化学繊維やプラスチックなどあらゆるもの工業製品の素材として利用されてきていますが、今まで石油中心に動いていたすべての動力源がこれに変わるわけですから、機械的な技術開発も必要になってくるでしょう。」
「かつ、クリーンエネルギーで、しかも1kgで10年は劣化しない優れものとなれば、各国が手に入れたがるわけですな・・・・。」
ヘッドフォンを耳に当てながら、思わず微笑んだクライブだった。
『思ってた通り3Xはものすごい鉱石だ。この新しいエネルギーさえあれば、我々は・・。』
「・・・それは手に入れる価値がありますね。」彼の口元はそう告げた。
しかし次のアンドレの台詞が、彼の脳天を劈くような衝動に駆られた。

「・・・石油の枯渇リミット、原子力の安全性そして地球環境問題が取沙汰されている今、すべての問題をクリヤーする新しいエネルギー鉱石ということに・・」
アンドレは広げられた資料を見ながら、そうつぶやいた。

ホテルにいてその話を盗聴していたクライブが、急に頭を抱えてヘッドフォンを勢いよく取り外した。
「う・・・・」何の前触れもなく、頭を抱えて苦しみだすクライブは、確かにアンドレの声をきいた瞬間に、その激痛が彼の脳を苦しめた・・・。
『一体・・・今のは・・・』彼は苦渋の表情を見せながらも、そう心の中でつぶやいた。
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Rach
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