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  Mission!! 作者:Rach
2nd Stg第19話「Fragment」
ホテルが隣接する海岸では、観光客がビーチを覆いつくしていた。派手な水着をきた女性たちが、羽を伸ばした鳥のように自由奔放に遊んでいる姿は、そこにいるホウィにため息をつかせた。
「いいなあ・・・俺もバカンスしてーなー・・・・」オープンカフェテリアから、じっとそんな風景を見ていた彼は、不意に後ろから声をかけられた。
「お待たせ!ホウィ!!」元気な女性の声。ポニーテール姿の彼女は、どこか素朴な感じのする娘だ。
「やあー!リンダ!!おっと今日はまた大胆な格好だね!目の覚めるようなきれいな色のワンピースだ」振り返ったホウィは、今までビーチの女性をロックオンしていたことなどすぐ忘れ、そこに現れたリンダという元気な女性に食いついた。
「まったくフランス男はこれだから・・」
「本当のことを言ってるだけだよー。」こういうしぐさは、誠に少年っぽく、これが彼の女性を落とす一つの手段でもあった。そういわれた彼女もまんざらではなさそうだ。
「ま、いいわ。例のこと聞きたいんでしょ?」
「歩こうか?」ホウィは彼女の肩を抱き、寄り添うようにして歩き出した。
「グレッグの家族は、昨日の夜アパートから消えたわよ」
「なるほど」グレッグとは、ダンスパーティ会場で忍び込んでいた、あのベッドの配送人のことだ。
「私が勤めてる花屋のまん前に建つ、彼のうすぎたないアパートなんだけど、昔から浮浪者の集まりでね。誰が本当の居住者なのか、まったく判らないくらい、いろんな人が入ったり出て行ったり。グレッグの家族は、奥さんと子供2人の4人家族。あのアパートの住民の中じゃ、まあ、まともなほうだったわ」
「どっちかというと貧困層だったんだ」
「そうね。でも・・・ときどきものすごい高級車が、そのアパートの前に停まるの。」
「高級車?その人物を見た?」
「ええ、一度だけ・・・とてもハンサムで、なんとも美しい男性だった・・・」
ホウィは眼をしかめて見せた。
「こう軍人っぽい感じじゃない?」
「いいえ。そういう雰囲気はなかったわよ。どっちかというと高貴なイメージだったわ。その男は私のいる花屋で、あなたのように全部の花を買い占めていったから、よく覚えてる。」
「そのとき、お金はキャッシュで?それともカード?」
「確か・・・ああ、覚えてないわ。ごめんなさい」
「車の型、覚えてる?」
「白い外車としか・・・でも男は身長175センチくらい。細身で、髪は薄いブラウン。目の色はブルー。まるでどこかの貴族のようなイケメンよ。」
「男のほうの記憶はよく覚えているね?」
「あはは、まあね。かっこよかったから!!」彼女は恥ずかしそうに笑った。その笑顔にホウィも笑って見せた。
「わかった。どうもありがと!!またなにかあったら連絡してもいい?今度はきっとこんな話は抜きで・・・」
「そんなこというと、期待しちゃうぞ・・」
「任せておけ、君をがっかりさせないよ。」そう言って、ホウィは頬にキスをすると、軽く手を振ってその場から離れていった。

例の、花屋の前の汚いアパート付近で、タクシーが止まった。そこから現れたのはホウィだった。あたりはゴミが散乱し、通りを隔てて花屋のある側には中流家庭の風景、そしてこの通りから古いアパート側に向けては、スラム街・・・そう呼んだほうがふさわしいに違いない。
ふとみるとアパートの前には、まだ使えそうなテーブルや食器などが捨ててあるのに気づいた。
「・・・・全部捨てて出ていったって感じだな・・・パブロの言うとおり、どこからか多額の金をもらったに違いない・・。」

そこへごみ収集車が走ってきた。ホウィは何気なくアパートから離れるように歩き始めた。
清掃職員は、そこに捨てられたゴミの山を見て、不平をもらした。
「おいおい、こりゃひでえな・・全部めちゃめちゃにして捨ててるぜ」
「分別してねーの?」
「地球温暖化について勉強してほしいねー全く!!」そういいながら、グローブをはめた手で、ポイポイとごみ収集車に投げ込んでいった。そのとたん、爆発音がとどろいた。
ごみが投げ込まれた車の後方部分から、たちまち煙があふれ出し、あたりになにかが飛散し路面を飛び跳ねていくのが見える。
「消火器!!はやく!!!」作業員の声が聞こえてきた。ホウィは驚き身をすくめながら振り向いた瞬間、なにかの破片が道路を跳ね回り、ホウィの目の前に転がって停まった。それを手に取ると、ホウィは愕然とした。
「・これは・・・」彼が偶然手にしたものは、アフガニスタンで使われている対戦車地雷の破片だった。

慌てて宮殿に戻ったホウィは、廊下を小走りで走りながら、ひたすらサラを探した。
不意にそこに筋肉モリモリの健康フェチ男が歩いてくる。
『ええい!この際だ!パブロに見てもらおう!!』
爆破物ならウクライナ陸軍に雇われたサラのほうが詳しいだろう、しかしこの事実を早く伝えたくて、彼はパブロに飛びついた。
「パブロ、これを見てくれ!!昨夜爆死した例の男、グレッグのアパートから出てきたものだ!!」
黙ってその破片を手に取り、そして語りだした。
「アフガンで何度もこれとおなじものを見た。やはりテロリストグループによる犯行か・・・家族はどうしていた?」
「昨日の夜、どこかに消えちまったよ。家財道具全部捨てて、新しい人生の出発ってわけだ。やはり、お前の言うとおり、裏で金が動いてる。マシューとジョルジュを雇ったのも、やはり金を積んだんだろう・・・」
そんな会話をしていた矢先、サラが廊下を歩いてきた。いつものように男物のトップにジーンズ姿の彼女は、髪を後ろで一箇所に束ね、なんともそっけない格好だった。
「テロリストグループだと、断定するのは早いわ・・・」
「サラ・・」彼女の表情を覗き込むように、パブロとホウィは次の台詞を待った。
「ウクライナで爆破処理教官をしてたとき、ある男がこういったの。それとおなじもの、アメリカも持ってると。おそらくアフガンで押収した数々の武器が、米軍ルートでどこかへ流れていると言ってもいい」
それを聞いてパブロは大きく相槌を打ってこういった。
「確かにな・・・アメリカじゃ戦争軍資金調達不足にあえいでいるからな。押収した戦利品はアメリカには持ち込まず、現場でどこかに売る・・・考えそうなこった・・」
「じゃ、グレッグはこれを米軍経由で手にしたってこと?」ホウィは破片をみつめながら言った。
「可能性としては否定できないわ。」
「OK。アフガン経由か・・・さもなくば、アメリカ経由か。わかった!じゃ、これの密輸ルートを探ってみる。そうすれば裏で動いている組織が見えてくるはずだ。」
「よろしく、ホウィ」そういうと、ホウィはにんまり笑って、その破片をサラに手渡すと、軽く手を振って二人と別れた。

パブロは腕組みをして廊下の壁にもたれかけると、なにか深く考え込んでいる様子だった。
サラにも彼が何を考えているのかは、容易に想像できた・・・。
「なんだか嫌な予感がするな・・・小さい軍事組織ではここまでできないだろう・・となるとどこかの国が関与していることもありえる。」
「確かに・・・」

これだけの組織と人数を動かしているとなると、かなりの資金と統制力が必要だ。宗教の影響力を利用し、その組織がなんらかの組織的軍事勢力を持ったとしても、その宗教団体が3Xの運用までできるほどの資金はないだろう。マシューとジュルジュは金で買えたとしても、近頃頻繁に起こるフォイオン軍部や警察内部に潜伏するスパイや、突如牙を向く反乱分子の存在は、どう説明ができようか・・・。
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