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  Mission!! 作者:Rach
2nd Stg第18話「Refrain」
フォイオン国の南側から小高い山に向けて、広大なワイナリー農家が立ち並んでいた。フォイオン首都のビル街とは違って、ここではゆっくり時間が過ぎているように見えた。
時は夜・・。場所はひっそりと静まり返った穏やかな田園地帯の一軒屋。カーテンによって仕切られた窓の奥には、夜中だというのに電気がコウコウとつけられていた。

家の中では、なんとか留置所から逃げおおせたばかりのマシューとジョルジュが、腐った様子で椅子に腰掛けていた。
「ま、脱出劇にしちゃ結構上手くいったほうだな。」マシューはそういいながらキッチンからビールを持ち出し、ジョルジュのいるリビングに入ってきた。
「ふー・・・今頃、ベンジャミンの野郎、悔しがってるだろうぜ・・」ここでも勝手にタバコに火をつけていたジョルジュに、マシューはまたか・・と蔑んだ視線を送った。しかし彼はそんなマシューを気にも留めず、次の台詞を続けた。
「・・・・で、次の作戦について、ボスからなにか連絡あったのか?」
「まだだ・・慎重な男だからな・・・ボスは・・・」
「3Xを得るために、各国があの手この手で近づいて来ているんだ。はやくしねえと奴らに取られちまう。」
「ここは黙って、待とうぜ・・・せいては事を仕損じるってな・・」

地中海の海が遠くに見える、近代的なホテルの最上階スイートルームには、ある男がぼうっと街の様子を見ているのが見えた。太陽の光が窓から差込み、彼の薄茶色の髪を輝かせていた。きちっと背広を着こなしたこの男は、あの日マシューとジョルジュがアンドレ王捕獲作戦をおっぱじめたとき、白いバンの後部座席にいた男と同一人物だ・・・。
彼はそこから見えるフォイオンの街並みを、ひたすら観続けていた。テーブルの上にあったブランデーグラスを手に取ると、一口飲み、そしてまた何かを追い求めるように、窓の外へ視線を送った。
突如、彼の胸元の携帯が鳴った。彼はディスプレイに表示された、ハンスという名前を確認すると、イヤイヤながら電話に出た。
「はい・・・」
「よお、クライブ・・元気そうだな。」ハンスは彼をクライブと呼んだ。
「アンドレの捕獲は失敗したと聞いているぞ」
「ハンス、まだ、パーティは始まったばかりだ。・・・。」
「そういうと思ったよ。どうやら凄腕のボディガードを雇ったらしい。今資料をそっちに送ったところだ。一通り目を通しておけ。それと、来週月曜の午後、国王はオヤジの墓参りに行くそうだ。これは、奴を襲ういいチャンスかもしれないぜ・・・じゃあな」
それだけ伝えると電話は切れた。クライブは黙って携帯を机の上に置くと、ぼうっとまた窓の外を見つめて、一言つぶやいた・・・。
「・・・・なんだろう・・・この胸に湧き上がる不思議なデジャブーは・・」

宮殿内の会議室には、次々と政治界の大物たちが到着していた。全員がそれぞれにコンピューターや資料を運び込み、中央に構えるテーブルにそれらを広げると、これから始まる会議での要綱を確認している様子だった。
そんな会議に出席する要人たちが見え隠れする、宮殿2階の廊下部分を、裏庭にいたオスカーとパブロは時々チラッと覗き見していた。二人が作業しているのは、動くものを自動連射するセントリーガンの設置だ。
裏庭にある森林は、二人の裏手に位置する3X発掘現場を覆うようにそびえていた。まるで天然の偽装工作といってもいいだろう。
その木々の間にセントリーガンを設置し、コンピューターに接続して動作環境を確認していたオスカーが口を開いた。
「OK!設置は完了だ。」そう言って、取り付けたばかりのセントリーガンの砲塔を、軽く叩いた。
「これで全部か?」汗をぬぐいながら、筋肉で覆われたその体を、まるで見せ付けるかのように大きく伸びをしたのはパブロだ。
「ああ、これから全システムのチェックに入る。今夜にでも全装備フルアームドだ。」
オスカーはそう言って、また宮殿の方角をみつめた。やはりこのときも、そこから見える廊下に、かなりの数のスーツがたむろしている姿が見えた。
「今日は客人が多いな」オスカーは、細いメガネをかけなおしながらボソッとそう言った。
「さっきベンが言ってたが、政治界のお偉い面々らが集まって、なにやら会議があるそうだ。例の石っころの研究発表でもするんじゃないか?」
「なるほど。・・」彼らにとってみれば、3Xの専売特許の話などどうでもよかった。ただその未知のエネルギーが、石油資源に変わるほどのものだったとしたら、世界の工業システムは大きく変わることだろう・・。
そんな事を考えていたオスカーのメガネが、天高く上った太陽にキラッと反射して見せた。

宮殿会議が始まるその時間、メイドもアンドレ王の側近も忙しそうに、その準備に追われていた。宮殿のゲートでは、いつもより入念なIDチェックと、参加者リストとのすり合わせのため、いつしか長い車列が宮殿敷地外にまで及んでいた。
そんなころ、第1秘書側近のベンジャミン・ゴードンも同じく、朝から大量のペーパーワークや、部下の質問をてきぱきと即答し返して見せ、その足で会議室のセキュリティチェックに立ち会い、ようやくゴールが見え始めてきた・・といった状況だった。
しかし、アンドレの部屋はまだ穏やかな時間が過ぎているようだ・・。サラがここで寝泊りしだしてから、あのメイドは彼を起こしには来なくなっていた。気を使っているのか、サラの仕事だと思っているのか解らないが・・・・。
アンドレはバスローブ姿で、洗いたての髪を拭きながらバスルームからでてきた。サラはまだ埋もれたようにベッドの中に沈み込んでいた。
彼はサラにそうっと近づき、ベッドの隅に座ると彼女の長い髪をそうっと直した。
「ん・・・・」
「あ・・起こしてしまいましたか?・・・すみません」
「・もう・・こんな時間・・・」腕時計をみるサラは、まだ寝ぼけた様子だ。
「よく眠れましたか?」
「・・ええ。」アンドレはサラのおでこに、優しくキスをした。
「それは良かった・・・」濡れた髪をタオルで拭きながら微笑むアンドレを、サラはしばしぼうっとみつめてしまった。『見れば見るほど端正な顔立ちだ・・・。』
ふと、我にかえるサラ 『何を考えてるの・・私・・』
「・・あ、私、いつも朝弱くて・・・」そういうと彼女は慌てて、上半身を起こした。
そこへノックと共にドアが開き、ベンが資料を片手に入ってきた。
『この時間まで寝てたのか!!』そう顔に書いてあるようだ。
『軍曹!お前が寝てた時間、自分はどれだけ仕事をこなしてきたか解ってるか??』
そう言いたげなベンは、その言葉を心の奥にしまいこんだ。
「まったく変わってないな。軍曹。朝はやかましい爆竹の音がしないと物足りないか?!」
「爆竹の音?」アンドレはその台詞に敏感に反応した。
「特に朝方に多い、奇襲を想定して行われる非常呼集訓練です。夢の中にいる自分から、瞬時に戦闘態勢に移行するのです。」
「そんな訓練をしてきたのですか?」サラは黙ってうつむいた。
「実戦または訓練・・そういう状況以外では、まったくのんびりやさんだ。」
「あんまり言わないで・・」
「今は、平時か?軍曹」きつい目でサラを見てしまった彼は、しまったと後悔の念がこみ上げてきた。サラは黙って髪の毛をかきあげて、ぼうっとしている・・・。
今朝の目の回るような忙しさもあって、彼女に対してこんな態度をとってしまったことは、われながら反省しなければならない・・。戦場での指揮官は、どれほど忙しくても、ぼやいてしまっては、チームの士気が下がってしまう。
彼は、優しい言葉を見つけて声をかけようとしたとき、アンドレが先手に打って出た。
「4日ぶりにちゃんとしたベッドで寝たのですから、許してあげてください。それに、私たち昨夜は夜遅くまで・・・・」
『夜・・・遅くまで???』サラはアンドレの台詞に驚いた。
「テラスでワルツという教練の練習でしたから・・・・」その瞬間ベンは大笑いした。
「さあ、バスルームの準備ができていますよ・・・サラ」
「了解・・・」

アンドレはベッドから立ち上がり、ベンとともにクローゼットにむかって歩き出した。
「11時からの会議は、主要メンバーは全員参加可能です。また彼らを招いての発掘現場の案内ですが、科学技術大臣の要請もあり、研究者・・・・」
ベンの報告を受けながら、二人はクローゼットのある大きな衣装室へと消えていった。

ガラス張りのバスルームで、サラは真っ先にジャグジーバスに足をいれた。スイッチを押すと泡がどんどん膨れ上がり、サラの体を包み込んでいく。
サラは大きく伸びをした。そしてため息をひとつ・・・。
「いかん・・ベンの言ったとおりだ。こんな生活環境に慣れてしまっては・・兵士として3流だ。」そういって右手をぎゅっと握り締めた。

視線を遠くに向けると、およそ血生臭い戦場とはかけ離れた、美しい青い海が見える。そして広くて豪華なアンドレ専用の浴室・・・。 
そんなサラの脳裏に映し出されるのは、ブロンドの髪をキラキラ輝かせたまぶしいアンドレの姿、そこにいるものを魅了させるほど、美しく優雅にダンスフロアーを舞う王の姿、暗い路地で抱きしめられ、長いキスをした彼の姿・・・。
「少し、彼と距離を置かないとだめだ・・・・。今は私にとって平時ではないのだから・・・。」
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