2nd Stg第15話「The New Plot」
サラはシャワー室から出てきた。ひとり誰もいないアンドレの部屋に残されたサラは、濡れた髪をタオルで拭きながらぐるっと周囲を見渡した。
見れば見るほど豪華な部屋だ。中央には国王のキングサイズのベッドを構え、少し離れた場所にも、やや小さめのソファとテーブルが置かれている。
窓の外に続く広いテラスから見える、広大な庭の向こうには、正面ゲートが小さく見え、急ピッチで始まった警備強化策を施すための工事人の姿が見えた。
『私もそっちへ行かなくちゃ・・・・』
その時、メイドが廊下に続くドアを開け、なにやら4人がかりの男たちが、カートに乗せたベッドを運び込もうとしていた。
「こちらでよろしいですか?」
右頬に傷を持つリーダー格の男は、さっきまでサラが寝ていたソファがある部屋に、カートを寄せていった。メイドは本当にここでいいのか心配そうな表情を見せながら、サラにこう聞いてみた。
「プリンセス?本当にこちらでよろしいのですか?」
サラは、その台詞が気に入らなかった。軍隊では一度命令したことは、よっぽどでない限り意見具申することはない。それに、もしかしたら全員が私に、彼と同じベッドで寝ることを強制するつもりか!??
メイドの眼は、確かにそう言っている。あんなステキな国王に見初められたなら、普通は皆、即効でOKでしょ???
『そりゃ確かに・・・彼は優しくてステキだ・・・』そう思った瞬間、また彼女の心の中に不思議な感情があふれてきた・・・。『一体なんなの・・・。』
そんなサラを、メイドの女性は間近でじっと見つめていた。さっきよりにこやかな顔をしている。
「ベッドは返品もできますよ。」その言葉に、サラは顔が赤くなった。図星??
「わ・・・私の名前はサラだ!!2度とプリンセスなどと呼ぶな!ベッドは適当にそのへんに置いておけ!」
サラは高潮した表情を見せたまま、慌ててドアの向こうへと消えていった。
ベッドを運び込んだ男は、メイドが彼女のことをプリンセスと呼んだことを聞き逃さなかった。そしてあの女性がサラという名前だということも。
右頬に傷を持つ配送人は、3人の同僚とともに手際よくベッドを組み立てだし、そこへ一番重いマットレスを慎重に置いた。メイドが新品のベッドカバーを用意し、それをベッドにあてがった。普段ならベッドの配送人はこんなことまで手伝わないが、なぜか彼はせっせとその作業自体も積極的にやりだしたのだ・・・。
「ここは私たちがやりますから・・」そう言われてこの男はやっとベッドから手を引いた。
「サービスですから!!では、私たちはこれで!毎度ありがとうございます!!」
ほとんど作業が完了したのを確認すると、彼らは急ぎ足で部屋を出て行った。
宮殿の広大な庭をぼんやりと見ていたサラは、そこに咲いているきれいな花には眼もくれず、すっとアンドレのことを考えていた。どうしてだろうか・・。この気持ちって一体なんだろう・・・。彼が真剣にサラのことを思っている事が、そんなに嫌な気分ではない・・。
それと同時に自分の持つキャリアが、彼を守ることに役立つのなら、こんなにうれしいことはない・・・。
アフガンから帰国後イギリス陸軍に入隊するまで、彼女の特殊な経験は誰からも感謝されたことはない。当たり前だが平和な生活を送るものたちにとって、彼女の持つスキルはまったく無用のものといっても過言ではないからだ。
遠くに見えるゲートでは、オスカーが感圧式指紋認識センサーをチェックしている姿が見えた。また大きなトラックが警察車両に誘導され、そのゲートを通過していく状況も確認できた。
サラはそこへ行こうと振り返った瞬間、宮殿内から走ってきたベッドの搬送人たちとぶつかりそうになった・・・。
「おっと・・失礼・・・。」
「No problem Ma’am.」
男たちは急ぎ足で、そこに停めておいたトラックに乗り込んだ。傷を持つリーダーが、その右足をトラックのステップにかけたとき、サラはその男の靴が、底の厚い軍用の編長靴であるのに気付いた。
「・・・おい、ちょっと待て!」彼女は叫んだが、彼らはそれを無視して運転席に乗り込むとエンジンをかけ、急発進してゲートに向かってしまった。その時、不意に後ろからベンの声が聞こえた。
「サラ!!これからジョルジュとマシューを縛り上げに行く。ここを頼む!」
「了解した!」
非常階段で無念にも逮捕されたマシューとジョルジュは、二人同じ留置場に入れられていた。
金属音と共に、留置場につながるドアが開き、そこから警察官に誘導されたベンが靴音を鳴り響かせて入ってきた。
「このところ、不法入国者が多くて、大使館からの連絡待ちのものが大勢いるんです。部屋が足りなくて困っています。」
「ふむ・・・だから、あの二人は仲良く同じ部屋なのか・・あんまりよろしくないな。」
「他の部屋が開きましたら、早速別部屋に・・・」
二人は、ある鉄格子がかかった部屋の前で立ち止まると、暗いその部屋の向こうに視線を送った。彼らの目に飛び込んできたのは、あのむさくるしい二人だ。
「久しぶりだな。傷は痛むか?」
「お前か・・・説教好きの教官ベンジャミン・ゴードン中尉。」
ジョルジュが嫌味っぽくそう語った・・・。
「単刀直入に話す。他にお前達の仲間がいるだろう?話せ」
「はははは!!外人部隊で何があっても口を割るなと教えてくれたのは教官、あなたですぜ!!」
「まったくだ!!」
『全く、この二人はいつになっても変わらんな・・・。外人部隊にいた頃から何も成長していない。』ベンは頭の思考回路がプツプツと音を立てて切れるのを感じていた。
「開けろ」隣で鍵を持っている警察官に黙って一言そういった。
「しかし・・・許可が・・」表情が一変したベンのそのオーラに、若い警察官はたじろぎながらそう答えた。
「早く」若い彼は鍵をおもむろに出すと、ガチャガチャと音を立てて錠前を外した。ベンは中に入り、いきなり二人の腹を蹴り上げた。
「ぐえ!!」その行為を見ていた警察官は、唖然として立ち尽くした・・・。
「もっと痛い目にあいたいか?それとも、俺が撃ったお前のこの足の傷・・・もっと広げようか?」二人は腹を抑えながら、その痛みをこらえていたが、彼らの目はまだまだ反抗する気満々に見えた。そしてジョルジュが小さな声で言った。
「やるならやれ・・・俺たちが死んでも、絶対喋らない。」ベンは彼らをじっとにらんだ。
そしてジョルジュの台詞の後、マシューが続いた。
「ひとつだけヒントをやろう・・残念だが奴を敵に廻すとえらい目にあう。心優しいマシュー様からの忠告だ」
彼らのボスとは一体・・・。
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