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  Mission!! 作者:Rach
2nd Stg第14話「I’m in Trouble」
3人が入国して初めてのフォイオンの朝だった。ボディガードの仕事を受けてこの国まで来たはずのサラだったが、ベンの策略かアンドレの婚約者という仕事?まで引き受けることになってしまった。
アンドレがサラを真剣に思っていることは確かだった。しかしサラには他の女性が歩んできたような、ごく普通の人生を送ってはいない。
なぜなら彼女は男の子と間違われ、イギリスの孤児院からアフガニスタンへ人身売買され、そのまま戦士として育った。幼少の頃に、人間らしい生活をしたことがなかった彼女にとっては、大人になった今でも何処か異質なところがうかがえるのは当然のことだ。
戦火のアフガンから、ひょんなきっかけで母国イギリスに帰国した後の生活は、まさしくすさまじいものだったといっても過言ではない。
とある家族に養女として迎え入れられた彼女だったが、家庭でも学校でも全くなじめなかった。学校は休みがちで時折行方をくらますこともあり、受け入れた家族は相当な迷惑だったに違いない。
英国陸軍に入隊できる年齢になったとたん、誰にも告げずに入隊をしてしまったらしいが、それを知ったときの家族の悲しみは、いかばかりだったろうか・・・。

翌日も天気は快晴だった。宮殿前にある噴水が、裏山から集まってきた新鮮な水を一箇所に集め、心地よい水の撥ねる音を立てていた。
アンドレ王の居室に続く白い重厚なドアを、ベンが心なしか丁寧にノックした。いつもならノック後返事を待たずに入室する彼だったが、今回は少し様子が違っていた。
ゆっくりとドアを開けると、中からアンドレがネクタイを結びながら近づいてくるのが見える。
入室したベンは、今日のスケジュールを伝えるべく口を開こうとしたとき、アンドレが口に指を当ててシーっと小さく音を立てた。そして彼はサラが寝ているソファを指さした。
「起こさないでください。きっとお疲れなのです。」

その時、二人のいた後ろのドアがノックもなしに大きく開いた。そこから顔を出したのは、またあのお騒がせ男、ホウィだ。
「ちーっす!!おはよー!サラ!!どんな顔して二人の朝を迎えてるのか楽しみな・・・あれー!!!なんでこんなところで?」
全くその場の空気を読むこともなく、ズカズカと遠慮もせずに部屋に入り、サラの寝ているソファを見ていたホウィにベンは大声を上げてしまった。
「おい失礼だぞ!」その一言が寝ていたサラを起こした。
「ん・・・あ、おはよう。ベン」
ホウィはベンから怒られたにもかかわらず、サラの寝ていたソファの隣に歩み寄ってきた。
「おいおい、そりゃないぜ!マドモアゼル!昨日、僕は二人の初夜が気になっちゃって、気になっちゃって全然寝むれなかったというのにさ!・・・」
その瞬間、ベンがホウィの顔面を張り飛ばした。
「いて!!」

「すみません、アンドレ王・・・なにせガサツな奴ばかりで・・・」
『ホウィが失礼な行動をこれ以上重ねるんだったら、いっそこいつをクビにしてやっても・・。』
ベンの企図する護衛計画には当初ホウィは入っていなかった。あの沈着冷静なオスカーには声をかけたが、この馬鹿ホウィは勝手に参加してきたのだ。
『サラになにか頼まれて、この情報を知ったことは間違いなさそうだが、ここでの指揮官は私だ。』ベンはホウィをにらんだ。
「楽しそうですね。えっと・・・ホウィさん。・・」アンドレは頬を押さえるホウィに近づきた。
「いてて・・・ホウィでいいよん」
「表向き・・彼女は私のフィアンセということになっていますが、本当は雇われたボディガードです。便宜上そうしておいたほうが怪しまれずかつ、いつも側にいることができますから・・・・そうですね。ベン」
「・・・・・・・まあ、そういったのは確かに私だが・・」
サラはその言葉を聞き、ソファの上で長い髪をかきあげた。
『婚約者なんていわれて動揺した自分が情けない。国王が狙われるという一国の危機に、助っ人として頼まれたボディガードの私が、こんなフラフラした気持ちで任務をしていてはいけない。』
サラはソファから立ち上がった。
「・・・・そう・・私は雇われたボディガード・・」
「・・・・・・違いますか?」二人はじっと顔を見合わせた。そして自分に言い聞かせるように静かにこういった。
「・・・その通りだ。だから私はいつでも・・昼夜問わず、あなたに張り付いて護衛をします。」その台詞を聞いてアンドレは微笑んで見せた。
「よろしくお願いします。では早速ですが、今夜スウェーデン王国の国王であるカール18世の親族で、このフォイオンの大学に留学しているマリア嬢の誕生日ダンスパーティが開かれます。是非、フィアンセとして同席をお願いします。」
「・・ダ・・ダンス・・・パーティ?」サラはそういったまま、昨晩と同様その場に立ち尽くした。
『ダンスなんてしたこともなければ、見たこともない。それに婚約者として出ろと?』
「Missionだ」ベンはそういいながら軽く、サラの肩を叩いた。心なしか笑っているようにも見える。彼は持ってきた資料を小脇に抱え、アンドレとともに寝室から奥へと続く書斎に消えてしまった。
サラはソファの横に立ち、困った様子で立ち尽くしていた。たしかに婚約者と題してそばにいることができるなら、公式行事上では怪しまれず、ボディガードをとして彼を守ることが可能になる。しかしその反面、彼女の住んでいた社会にはありえない、さまざまなシチェーションが彼女を待っていることになる。
あまりにも二人の生活スタイルにギャップがありすぎる・・・・・。

「練習の相手してやろうか?もち密着して」ふと気づくとホウィが困ったサラの表情を楽しむかのように笑っていた。それが気に食わなかったサラは、朝から腹が煮えくり返った。
「お前は敷地内のカメラ探しでもしてろ!」
「へーい。了解!!」

彼はそういって部屋から出て行った。
こうして二日目の朝を迎えた。しかし、アンドレを拉致しようとする者たちの新しい罠が、すでにこの宮殿まで忍び寄っていた。急ピッチで始まった王室敷地内の警備体制が整う直前に、スライディングセーフのタイミングで奴らはやってきた・・・・。
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