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  Mission!! 作者:Rach
1st Stg第11話「Kiss」
レストランの倉庫にアンドレを避難させた後、さっきまで食事をしていた場所に続くドアを少し開け、そこからガラス窓越しに見える正面玄関の向こうの様子を伺っていた。その瞳には、先ほどのバンが玄関から少し離れた場所に停車してライトを消すシーンが映し出されていた。
中から2人の男が出てくると、あたりを警戒しながらレストランに近づいてきた。
「敵は4人。・・・車の中に2人、こっちへ来る男が2人・・・」
「無事か?」耳のイヤリングにベンからの通信が入った。
「ええ、敵は4人、視認したわ。」
「軍人か?」
「Affirmative.動きから見て間違いない。 何語を話しているかはわからない。マシューとジョルジュは?」
「今、特殊部隊が抑えているところだ。すぐそっちへ向かう」
「了解・・・ん?」
食事会場に、なにやら投げ込まれ床を転がる。暗い部屋にぼうっと浮かぶ黒光りしたものは・・・。
「スタングレネード!!伏せて!」慌ててドアを閉め、アンドレの上に飛び乗り彼の耳をふさいだ。そのとたんスタングレネード(音響爆弾)が鳴り響き、そこにうずくまっていた二人の領事館員は耳をやられて呆けて、ぼうっとしていた。
そこへライトを持って入ってくる男2人・・・・。

「大丈夫?」アンドレの体の上に乗っかっているサラは、彼の耳に当てた両手を離してそう尋ねた。
「はい・・・大丈夫です。今のは一体・・・あ・」アンドレは自分の体と密着している、サラの胸の谷間に視線が行き、おもわず目を背けてしまった。
「す・・すみません」とっさに謝るアンドレだったが、サラはそんなセリフも無視して、もう一度さっきのドアをそうっと開けると、そこにいた男に向かって拳銃を発砲しだした。。肩を撃ちぬかれて銃を落とす男 別の男も反撃をしてきた。サラはドアを閉め、鍵をかけると、倉庫にあった小麦粉を持って、エアコンの空気孔に放りいれた。小麦粉がサラやアンドレにも降りかかってきた。
「サラ・・・一体何を?」サラには彼の声が全く聞こえていない様子だった。そのとたん、鍵をかけたドアを蹴る音が聞こえてきた。
『ここで射撃をしなければ、敵は私たちのほうに向かっては来なかっただろうに・・・。なぜ??』
アンドレは比較的冷静にサラの行動を分析していた。なぜ、射撃して自分たちの位置を知らせてしまったのか・・・。この小麦粉の袋をエアコンのダクトに入れているのはなぜ??
「ウィル!いくよ!!」アンドレことウィルの手を引っつかみ、倉庫からキッチンへ抜けた。裏口から脱出する瞬間、サラは電気ブレーカーのスイッチをオンにし、そのまま外へ飛び出した。
エアコンが回り始めると、レストラン中に小麦粉が充満し、二人の男は真っ白になってしまった。むせながらも、アンドレを捕獲しようと躍起になり、やっとのことで蹴り開けたドアの向こうに見えた、サラとアンドレに向かって銃を放った・・・・。
その瞬間、粉塵大爆発がおき炎に包まれる男達・・・。
「うわーー!!」地中海の乾燥した「空気(酸素)」「爆発下限濃度以上の粉塵」「最少着火エネルギー」の三条件がすべてことをうまく運んでくれた。

おんぼろビルの非常階段出口にたどり着いたマシューとジョルジュは、そこへしのびよるフォイオン軍から、なんとかして外へ出ることができる最終決断を迫られていた。
二人は非常階段に続くドアが開くことを確認すると、マシューは胸のポケットから先ほどのリモコン装置を取り出した。
「ふん!あばよ!くそったれ3流兵士!」スイッチを押した。

ビルの真ん中辺りから大きな爆発音がとどろいた。慎重な作戦計画を運ぶマシューの抜け目のない準備工作だった。証拠隠滅を図るため、前もってこのおんぼろビルのあちらこちらに爆薬を仕掛けておいたのだ。それも、念には念を入れて電源を確保できる場所イコールそれは赤外線からも探索しづらい最高の場所に設置したのだ・・・。ビルが大きく崩れていく。鉄筋でできた非常階段とビルの外壁をつなぎとめているボルトが次々と壊れ、不安定な階段に残された彼ら二人を残し、あとはものの見事に崩壊し砂埃が舞いだした。
「このビルは老朽化が進んで、どっちみち壊される運命だったのさ。・・・前もって爆薬仕掛けておいてよかったぜ」埃にまみれながらマシューが勝ち誇ったような笑いを見せた。
「でも・・・・」
「ああ?」そこへアパッチが飛来してきた。砂埃の中、二人は赤外線で探知できないことだけを願いながら、慌てて不安定な非常階段を下っていった。しかし、高性能なレーダー探知システムは、その彼らのささやかなお願いを見事に打ち砕いた。
30mm自動式機関砲が彼らに向けられると、威嚇射撃のように彼らの進むその先を見事に射撃して見せた・・・。たちどまる二人・・・。
「空飛ぶ戦車め・・・・これまでか・・」そうマシューが独り言を言うと、その場に座り込んで両手を静かに上げて見せた・・・。

爆発したレストランから勢いよく飛び出してきたサラとアンドレは、息を切らせながら町の小さな路地へと入っていった。息を切らして壁にもたれる二人・・・。
『あの白いバンは、追ってこないかしら・・・』サラは肩で大きく呼吸をしながらそんな心配をしていた。路地から顔を出しあたりを見渡してみたが、そんな兆候はなさそうだった。
「無事?」サラはそこに座っていたアンドレに聞いた。
「はい、あなたは?・・・・」アンドレのその声は、サラには聞こえない様子だった。
「・・・私の声、聞こえていますか?」
「・・・・?・・さっきのスタングレネードで・・・耳が・・」
スタングレネードを投擲されたとき、サラは思わずアンドレの耳をかばった。そのため彼女の耳は一時的に聞こえなくなっていた。
通常なら15分程度で聴力は回復するはずだ。

サラはアンドレの隣にしゃがみこむと、慣れないハイヒールを脱ぎ捨てた。
「自分の耳をかばうより先に、私の耳を押さえてくれましたね・・・ありがとう。」
「・・・・悪いんだけどさ・・・聞こえないんだよ・・」

そんな二人の潜む路地近くを、救急車が走り去っていくのが見えた。そんな救急車の大音響でさえも、サラの耳には届いていないようだった。
救急車が爆発後のレストラン近くに到着すると、イタリア領事館長とその付随者が、咳をしながら出てきた。二人は救急隊員から支給された酸素マスクを奪い取ると、そこから送り込まれる酸素を吸い始める。そこへベン達の乗車したICCトラックが走ってきて停まった。
高い位置にある運転助手席側から、ベンとホウィが出てくる。
「サラーー!!」
「どこだ!?」

「・・・・・サラ・・」二人がサラとアンドレを探す声が聞こえる中、アンドレはとなりに座っているサラの体をそうっと引き寄せた。
「・・・・・ウィル・・ちょっと・・」サラは驚いた表情をして見せたが、アンドレはかまうことなく彼女を抱きしめた。
「私にも・・何も聞こえません」サラの髪をそうっとなでると、その顔を両手で包み込むように、優しくキスをした。
「・・・・・・」
路地の向こうに人影が現れた・・・。あの能天気な女ったらしのホウィだ。サラとアンドレのキスを目撃した彼は、にんまり笑って見せた。
「おひょー!おあついこって・・・」
彼は自分に近づいてくるベンに、二人のいる方向を黙って指差した。
「怪我は・・・・・」ベンはそう言いかけるが、二人の長い、長いキスを見て、ほっとしたのか銃を胸へしまい、ひとりトラックへ戻っていった。
「こっちの声なんて聞こえていないようですよ。」
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