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  Mission!! 作者:Rach
1st Stg第10話「They Creep Upon Us」
「やつは携帯電話で、ここからそんなに遠くない者と連絡してますね・・・この電話番号はつい先日、誰かによって買われたばかりです・・・。アンテナの受信はここ・・・そしてここ・・・まさにこの近くの誰かと交信しています。・・残念ながらプリペイド携帯なので、名前までは特定できません。」
グリーンカラーの軍用大型ICCトラックの中では、ビル内から発信された電波情報がわかり始めていた。オスカーはモニター画面に映し出されたポイントを指差してそう説明した。
「近くにだれか仲間がいるということははっきりしたな」
「奴らだけじゃないってことか」取り巻いて見ていたのはベンとホウィだ。そのとたん、オスカーは別のパソコン画面に表示された地図に近づいた。
「ベン・・これを。アメリカの衛星からとったこの付近の写真です。これが3分前。丁度電話をはじめた時間です。」彼の人差し指が指す場所は、この現場から少し離れた小高い丘の上・・・。外出は制限されているはずなのに、怪しい車だ。
「これが2分前・・・話し終わった時間ぴったり・・・車が移動し始めました。」
「今はどこに?」
「I-40ハイウェイを西に向かっています。」
「まさか・・アンドレ王のいるレストランへ行くつもりか」

マシューとジュルジュはビル内で孤独な戦争の最中だった。相手はフォイオン陸軍102部隊の精鋭だ。さっきの電話で助けを求めては見たが、1流軍人でなければならないというマシューの勝手な理想に、その道も断たれてしまった。
そのマシューは必死に手榴弾によるブービートラップを仕掛けていた。
「こんな具合でOK・・」崩れたコンクリートブロックの隙間に、持ち合わせていた手榴弾を備え、ピンにワイヤーをに引っ掛けると、むき出しになっていた鉄の棒に固定した。ワイヤーに接触すると、ピンが外れ炸裂するようになっていた。
「上手くいってくれよ・・・」そこへフォイオン軍が射撃をしだした。大きくのけぞる二人だった。 
「!!やべ!!」
「ひけ!!」
とっさに身をかがめて、廊下を後退していく二人だったが、ただ後退するだけではいつかは捕まってしまう。かといってこのまま彼らの裏手にある非常階段に出たとしても、あのアパッチヘリが彼らを待っているだろう・・・。しかし今はここを出るしかない・・・。運がよければ、たとえあのアパッチの赤外線カメラでも、自分たちの姿は発見されないかもしれない。
「もうすこしで出口だ」
緑色のサインを点灯させた非常階段へ続くドアが見えた。そこまで必死に匍匐する2人。 ジョルジュはときおり振り向いては追ってくる軍隊に射撃をした。これはそこにブービートラップが仕掛けられていることを察知されないためだ。
二人はなんとか非常階段までたどり着いた。その瞬間、手榴弾が炸裂した。
「おわー!!」多数の人間の悲鳴と苦しむ声がビル内にこだました。

食事が咽喉を通らない様子のサラ・・・。突如、彼女のイヤリングが光った。ドレスの裾を直すフリをして、テーブルの下に前かがみになると、化粧コンパクトを慌てて開いた。
「何?ベン」サラは可能な限り小さな声で答えた。
「何者かがそっちに向かっている・・・気をつけろ」
「了解・・・ちょっと失礼・・・」そういって席を立つと玄関に向かって歩いていった。壁際に立っていたオーナーが、何事かと慌てた様子でサラに近づいてきた。
「どうかされましたか?」食事がまずかったのか、なにか気に入らないことでもあったのかと心配そうにサラの表情を見つめてたずねた。
「すぐここから避難を・・。テロリストが近づいています。キッチンのみんなにもそう伝えて・・・」
「え?」
「私は王の護衛を頼まれた、元フランス外人部隊 ブルックナー軍曹。ベンは私の教官です。慌てず急いで・・・」サラはわざとゆっくりそう伝えた。それは聞いているものをあわてさせないためでもあったが、それは全くといっていいほど効き目がなかったようだ。オーナーはしばし呆然とした様子だったが、急に慌てふためいてキッチンに続くドアに飛び込んでいった。サラはそのまま玄関口に出ると、アンドレとサラ自身が乗ってきた車のドライバーになにやら話を持ちかけた。すると、ドライバーは大きくうなずいて、車を走らせどこかに走り去っていった。そこで、周りの様子を伺うサラ・・・。

「ところで、アンドレ王・・・ちょっとした噂を聞いたのですが・・・ダイアモンドよりも高価な宝石がこの国で見つかったというのは本当ですか?」サラが玄関口に消えて、レストランのオーナーのあわてた様子を気にしながら、テーブルではまことしやかな商談の話が始まりつつあった。
「・・良く聞かれる質問なのですが、私には何のことなのかわかりません」
「ここはひとつ・・わが国と契約を結んでいただきたい。何も、全部買おうという訳ではなく・・」
「これはあくまでも商売の相談です。王・・」こういった会話が始まったことを残念に感じたアンドレだった。

今まで忙しそうに料理を作っていたシェフたちが、オーナーの言葉に驚き、慌ててキッチン裏口から逃げ出していった。誰もいなくなったキッチンでは、オーナーがひとりオロオロした様子で、何を如何したらいいのかわからず、緊張した面持ちでサラを見た。
『私は如何したらいいのか??』顔にそう書いてあるようだった。
ドレスの裾を捲り上げ、ひとりズカズカとその部屋に入ってきたサラは、裏口ドアの近くにあった電気ブレーカーの箱を開け、レバーを操作し電気を落としてしまう。・・・。とたん、照明が落ちあたりは真っ暗だ。

「おお、一体何があったのだ?」
「何も見えんぞ!!どうしたのだ!?」
『これから肝心の商談が始まるというのに停電か!?』あわてた様子で周囲を見渡すブラマンテ領事館だったが、あたりは暗くて何も見えない。
「サラ?」アンドレは途中で席を立ったサラを心配しそう叫んだ。
「ウィル、こっちへ」暗闇の中彼の前に現れたサラは、アンドレの手をとって食糧倉庫へ通じるドアを開け、中へ走っていった。真っ暗な倉庫内・・・たくさんの食料がならんでいるのがうっすらと見えてきた。その向こうにはさっきまで料理人たちが忙しそうにしていたキッチンが見える。
「どうしたのですか?」
「し!テロリストがこっちへ向かっているそうよ・・・」アンドレの口を左手でふさいだ。
「え?」
「玄関にいた護衛のものは警察官よね・・・ここから離れるように命令したから大丈夫。奴らは警察なんかじゃとても手に負えない」
「ブラマンテ領事館長は・・・?」
「敵か味方か、識別するいいチャンスだわ。どうせ最後はくだらない経済の授業だったでしょ?」
「ええ。やっぱりその話かと、残念に感じ始めていたところです。」
「裏口から逃げましょう!・・・ん?」
裏口にはサラが命令したとおり、ドライバーが車をつけていた。しかしサラはその車の向こうに白いバンが走ってくるのを見つけた。
「今、ここを出るとあぶない・・・カーチェイスになってはリスクも大きい・・・」
裏口から顔を出したサラにドライバーが気づくと、彼女は身振り手振りでドライバーにここから去るように合図を送った。おおきくうなずいたドライバーは、エンジンをかけ発進していった。  
サラはその裏口のドアを閉め、倉庫のドアについている、小さな窓から外の様子をにらんだ。白いバンがレストランのコーナーを曲がり、表正面玄関の方向へ走り去っていくのが見えた。ハンドバッグから拳銃を取り出すと安全装置を静かに外した・・・・。
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