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青色吐息 作者:かいとーこ
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4話 竜の里 4



「まったく、どこに行ったんだろうねぇ、家をほっといて」
「そりゃいつ戻ってくるとも知れない君を待ってるはずないだろ。あの夫婦は活発なんだから」
 両親の言葉を聞きながら、アディスは初めて踏み入ったネルフィアの実家とやらを、感心しながら見回した。
 彼にとってはここも我が家である。人の暮らしを捨てる気はないが、竜の暮らしも捨てる気はない。これから長くなるのは、竜としての自分なのだ。
 この村では一つの家にギセル族が一家族住んでいるらしい。ギセル族が独立して新しい家を建てると、そこに独立したい竜が住む。住居に関して発言力があるのは、建てて管理するギセル族の方だ。だから彼らの趣味で家は造られ、彼等の好きなように家は管理される。
 この家に住むギセル族の夫婦は現在は森に入ってしばらく戻ってきていないようだ。なら他のギセル族に頼ればいいのだが、その夫婦が一番薬師としての腕がいいのだという。
 その夫婦はこの家を綺麗に維持してくれていて、室内の清潔で可愛らしい様子にセーラが喜んだ。セーラには少し大きすぎる家具が、彼女を実際よりも小さく見せている。
 そしてどういうわけか、好奇心旺盛らしいミラと一緒に家中を探索し、現在はなにやら気が合うところがあるのか熱心に話し合っている。
 ネルフィアとまともに戦えるような人間の範疇を越えた恐ろしい女相手に、何の気が合うのか理解を超えるが、彼女が恐ろしい存在にも慣れてしまえば脅えないのを目撃するのにはもう慣れた。
 竜達もミラも、彼女にとっては大差ないのだろう。
 それを横目に、アディスは大きなソファに腰掛けてくつろいでいる。竜が爪を立てても破れない素材で出来ていて、アディスは少し感心した。
 ネルフィアの生活が竜と比べてすら文明とほど遠いのだと知り、ラゼスが心配した理由が理解できた。
「ああ、見てよハノ。あのミラが女の子とおしゃべりしているよっ! 普通で無力な女の子と!」
 普通でなく無力でない場合、ネルフィアとのようなことが起こるのだろう。恐ろしいと思いながら、はしゃぐユイに同情の目を向けると、彼の目尻には涙が浮かんでいた。
「いや、泣いて喜ばなくとも」
「ミラが何かに興味を示すなんてどれほどぶりか。前に興味を示したのは、確かコックが新しいく仕入れたよく切れる肉切り包丁だったよ」
「もういくらでも感動してください」
 肉切り包丁レベルの扱いをセーラがされているというのも悲しい話だが、喜ぶ少年を止める権利はない。もしもネルフィアが花を愛でるようなことがあったら、アディスもきっと感涙にむせぶ。彼は可愛らしい美少年なので、涙する姿も女の子のようで鬱陶しくは無い。
 もう一人の客人、半悪魔のハノはそんな主と少女を暖かく見つめている。半悪魔のくせに彼が一番まともそうだ。
「ユイ、恥ずかしいから涙を拭いて。呆れられているよ」
「分かっているけど、ミラの女の子らしいところを見るのは初めてで」
「料理はしているじゃないか」
「刃物を使いたければせめて料理でしてくれって言った結果だよ? しかも切るだけ!」
 ハノは微笑みで曖昧に返す。彼の苦労が透けて見える笑みだ。親は悪魔で彼がここにいるなら、自分の子に興味のない悪魔の子ということになる。
 半悪魔は庇護者がいなければ、人間よりも多少優れているだけで、人間とさほど変わらない者ばかり。悪魔と契約しているだけでしかない魔女の方が強いことも多い。
 なのに人間は彼らを迫害するため、長くは生きられないことがほとんどだ。だから彼は苦労しているはずで、そのために得た大人の態度であろう。
「ところで、他の使い魔はどこにいるんです?」
「僕の使い魔は二人だけだよ」
「……器ちっさっ」
 思わず本音が口から漏れる。
 その言葉を聞いて、反論したのはハノだった。
「違います。ユイは期待されていたほど器は大きい神子です。ただ、同族に近い私や、同族のミラさんを支配したら、無理があったらしくて埋まってしまっただけです。
 もう一匹ぐらいなら可能なんでしょうが、うちはミラさんで手一杯で、他の使い魔なんて面倒見られません」
 ハノが拳を握り締めて主を弁護した。
 相手はネルフィアと引き分けた女だ。支配するには、それなりの器が必要だろう。竜を一匹支配できるような神子は、かなり器の大きな神子である。
「ところで彼女は本当に人間ですか。何か混じってるんじゃないですか」
「ミラは人間だよ。魔術も肉弾戦も前例がないほど天才的な上、持っている武器が必要以上に強力な魔力を持っているだけの、どこまでも普通の人間」
 そんな説得力のないことを強調されても、もちろん誰も納得しない。
「だけって……それで対抗できるほどネルフィアは甘くないし、人間の身じゃ、山が裸になるような炎の中で生きていたりしないよ」
 ラゼスが呆れた様子で言う。
「ミラは……規格外なんだよ。人間が使い魔になるなんて、いわば神様に魔物扱いを受けるようなものだから」
 ユイは足を組んで膝の上に肘をつき、突然響いた『じゃきんっ!』という音に崩れる。
 セーラがなにやら長い棒を持っていた。
「わーすごぉい。伸びましたっ!」
「地面とか固定された物について伸ばすと、人間なら打ち所が悪ければ死ぬぐらいの勢いある。でも竜なら死なないから大丈夫」
「へぇ」
「支える物がないときは、腹とかに固い物を当てて、その中心に柄をついて伸ばすといい。ちゃんと踏ん張っていれば痛いのも倒れるのも相手。セーラじゃ竜だと負けるかも知れないから慣れるまでは気をつける。伸びる長さは二段階だから、一気に伸ばさない方が安全」
 アディスは考える。
 何の話をしていたのだろうか。
「こっちの先端の方が重いですね」
「こここう回すと刃が飛び出る。この刃が重りになっている。簡単には飛び出ないから安心して使うといい。
 振り回されたくないときは刃の出る方を手元に、勢いをつけて殴りたいときは刃のある方を先にして振り下ろす。女は力がないから頭を使って闘う。力任せの馬鹿な男、女と侮ってくるから簡単」
「ミラさん、格好いいです」
 可愛く無力なセーラが毒されていく。
「ミラ、なんで武器解説なんて女の子らしくないことを」
「セーラが身を守る手が欲しいと言った」
 ユイの問いにミラは彼に目も向けずに答える。
 他人に頼るのが苦手なセーラらしい発想だ。そんなセーラが、泣きついてくる一歩手前の強がりが可愛いのだ。本当に頼らなくても生きていけるようになったら、寂しいではないかと、アディスは憤慨した。
「セーラ、下手に武器を持っている方が危険ですよ」
「素人が武器なんて持ってもあまり意味がないことぐらい分かります。
 私はアディスから身を守りたくて相談してたんです」
 セーラは伸びた杖を元に戻し、麺棒ぐらいの長さになったそれを抱きしめる。
「セーラ、私が何をしたんですっ!?」
「寝ぼけて襲いかかって来るじゃないですか。悪意はなくてもアディスに手加減無しで抱きつかれると痛いんです。服も寝床も血で汚れるし。手作りの石斧は重くてとっさに振り回せません」
 確かに、目が覚めたらセーラが血を流していたことはある。だから最近は石で殴られることも多々あるのだが、それをもっと効率よくやろうというつもりらしい。
 アディスはいじけてソファーをかりかり引っ掻いた。それでも破れる様子はない。
「武器の話を振られたからおしゃべりしてたのか……」
「馬鹿な竜に寝ぼけて襲われて痛い。すぐに治っても、痛みはない方がいい。
 それに女は自衛できることがとても大切。これは一見刃物でないから、相手も油断する。刃物を持つよりも有効。杖としても使える。便利」
 ユイは大きくため息をついて、両膝を腕に抱えてつま先を交互に動かす。期待して損をした気分なのだろう。
 そしてハノは立ち上がり、ミラの前に膝をついた。
「ミラさん、彼女にそれをプレゼントするの?」
「ああ」
「そう。だったら、危険がないように機能は全て伝えるんだよ」
「分かった」
 ネルフィアと喧嘩出来たのだから彼女が噂の本人であることは確信できたが、とても噂に聞くほどとんでもない女性には見えない。
 噂というのは、誇張されるものだ。
 彼女は血も涙も心もない命を命と思わず悪魔よりも冷たい血を持っている、と言われているが、感情をあまり表に出さないだけなのだろう。不器用そうだが、興味のあることについて尋ねられると喜んで話し出すなど、方向性は特殊でも普通に女の子だ。
「そうだ。とてもお礼になんてならないんですけどミラさんにこれを差し上げます」
 セーラは荷物の中から何か取り出してミラの背後に回り、彼女の手入れされているとはほど遠い髪に櫛を入れた。
 聖良は一部焦げた髪を痛々しく見つめている。
 不揃いなのは焼け焦げたからではなく、おそらく邪魔になったら自分で切っているためだろう。髪の手入れを怠っているのは、彼女が老けて見える原因の一つでもある。聖良は荷物の中から髪に塗る油を取り出して、それを丹念にすり込んだ。何をするかと思えば、彼女がいくつも持っている髪留めの一つで中央よりもずいぶんと右側に寄せて結った。金属に光る石がはめられた飾りのついたもので、可愛らしい。
「ミラさん髪が鬱陶しそうだから、こうするといいですよ。ゴムだから外すのも留めるのもとっても簡単です。あ、でも乱暴に引っ張ると千切れますからね」
 セーラは鏡を見せて、とっても可愛いと褒める。ミラは髪留めを外し、伸ばして遊び、再び髪を結う。
「簡単」
「でしょう。他の人がしてるみたいに、ヒモとか布で留めるのは難しそうだけど、これなら小さな子供でも出来ますから。あと、髪が傷んでますよ。乾かしてから寝ないとダメです。ちょっと焦げてるから、髪も少し切らないと」
 ミラは顔を顰める。嫌がっていると言うよりも、難しいことを言われたときの子供のような表情だ。
「簡単ですよ。ミラさんは魔術が得意だったら、髪は乾かせるでしょう」
「……うぅ……うん」
 ミラは困惑した様子で頷いた。
 セーラのように無力で害意のない──傷つけようとしたのに恨むことなく笑みを向ける相手に、彼女は手を出さないだろうから、今のところは安心して見ていられる。
 彼女が噂の通り行く先々の街を殲滅していたら、もっと大変なことになっている。
 何かのきっかけでそれは実際に起きたのかもしれないが、きっかけになるほどの脅威も敵意もないセーラでは、それが起きない。
「僕が何をしても鬱陶しがったのに……なんで」
 セーラがいとも簡単にミラを女の子として扱うものだから、ユイは困惑した様子で彼女たちを見つめた。
「思うに、女性の育て方がなっていないんですよ、貴方達は」
 アディスは戸惑うユイに忠告した。
 彼等は腫れ物に触るようなやり方をしていたのだろう。
「で、でも、頑張ってるんだよ。ドレスを着せたり、化粧をしたりしたけど、全部嫌がった」
「極端なんですよ。彼女はまだ化粧をする必要はありません。荒れた肌にクリームを塗るぐらいで十分でしょう。
 ドレスだってそうです。着たい物を着たいように着せさせて、少しだけこうすると可愛いよってアドバイスをするのが、彼女みたいな活発なタイプには向いてるんですよ。セーラがしたように」
 おしゃれに興味がない子にいきなりドレスを持ってきても、反発するに決まっている。邪魔になっていそうな髪の簡単な結い方を教えるぐらいから始めなければならない。いきなり髪を結い上げたら違和感を感じるに決まっている。
「アディス……お前は子供のくせに何で女の子を育てるとか語ってるんだ」
 ラゼスが息子の将来に不安を抱いて尻尾でつついてくる。アディスは適当にあしらおうとしたが、その前にセーラが口を開いた。
「アディスが食べたのは、生前とっても女性にもてる、女性のあしらい方の上手い男性だったんですよ。記憶がほとんどあるからたちが悪いです」
 セーラの告げ口でミラが睨んでくる。
「違いますよ。確かに女性のあしらい方は上達したかも知れませんけど、アディスはたくさんの子供達の面倒を見ていたからです。セーラ、そんな言い方じゃ変な誤解をされるじゃないですか」
 セーラは薄ら笑い、責めるような目を向けてくる。
 殺されかけても気にしない彼女が、何をそんなに気にしているのか。やはり奴隷商がいけなかったのだろうか。
「まあ、アディスの将来が心配なのは置いておくとしても、ユイくんの住んでいる所は、世話焼きな女の人がいないんですか? 噂で初めは怖がっても、長くいれば世話を焼きたくなるのが女の人の性なのに」
「神殿内に女性は使い魔しかいないんだ。だから人間の女性はミラだけ」
 聖良はきょとんとしてミラを見つめた。ミラも見つめられている理由が分からないのか、きょとんとして見つめ返す。
 賢いがこの世界の知識はない聖良と、知識はあるようだがずれているミラ。ちょうど良い組み合わせなのかも知れない。
「神殿には男神殿と女神殿ってのがあるんですよ。男神殿のある街は十二歳以上の未婚の女性は入れませんし、既婚女性はいてもほとんど外に出ず、顔を隠しています」
「宗教って、女性に顔隠させるのはやっぱ多いんですねぇ」
「その街でだけですよ。隣の女神殿がある街は逆に男性が肩身の狭い思いをします。
 だから主が男性のミラさんは、女性と会う機会が少なくなっても仕方がないんですよ。外に行くと使い魔ですしね。セーラのように話しかける人は珍しいんじゃないですかね」
 セーラは納得したようで、小さく何度も頷いた。
 せめてユイが女性だったら、もう少し細やかな部分にまで気を配れたのだろうが、変な格好をした、まだあどけなさの残る少年と、悪魔と差別されるために女性ともろくな交友などないだろう半悪魔の青年。細やかさを要求するのは酷である。
「ミラさんはオシャレとかには興味ないんですか?」
 セーラはミラを見上げて問う。
「よくわからない」
「そうですね。世間に合わせるとよく分かりませんよね。難しいです」
「そうなの?」
「ええ。普段は人間なんて迷い込みもしない場所にいますから。流行とか気にしているときりがないですよ。次行ったときには様子が変わってますし」
「そうか」
「最低限人間らしくしていればいいんですよ。あ、髪は人に切って貰った方がいいですよ。私も前に自分で切って後悔したことがありますから。髪が不揃いだと変な人に見えます」
「髪は人に切って貰う物なの?」
「そうですよ。男の人だって他人の髪を揃えるぐらい出来ますから、やって貰えばいいんですよ。自分でやるとバランスが難しいですし、危ないです」
「そうか。そういえば小さな頃は切って貰っていた」
「大人になっても普通は切ってもらうんです。スキンヘッドならともかく」
「あれは頭が寒くないのか?」
「さあ。したことないからわかりません」
「髪は頭を守るから、ないと困る。冬になると少し暖かい。ありすぎても面倒で目にかかって鬱陶しい。難しい」
「首を温かくしたいなら、こうやって」
 セーラは髪留めを外し、櫛で整えてから髪の上辺だけを取り結った。
「こうすると横の髪が邪魔にならないけど、髪は首を覆って暖かいですよ。それに可愛いです」
「……可愛い?」
「ミラさんはちゃんとすれば美人だから、手を入れないのはもったいないです。まだ若いから、化粧とかしなくても、髪を綺麗にして肌を清潔にしているだけで綺麗になれるんですから」
 セーラは同年代の女の子に構うのが楽しいのだろう。今までは男か子供か大人の女性ばかりを相手にしていたのだ。
 鏡を見ていたミラは、突然びくりと震えてユイを見た。
「ユイ、なぜまた泣く?」
 言われて見れば、彼は声もなく泣いていた。涙もろい男だ。可愛らしい美少年なので気にならないが、もしもこれでむさ苦しければ殴っていた所である。
「いや、今度こそミラが女の子らしく会話して、見た目まで気にし始めたと思ったら……」
 ハンカチで拭い、ユイは立ち上がりセーラの手をがしりと握った。熱に浮かされたような瞳に浮かんでいる感情は一体何なのだろうか。
 あのやりとりの後でなかったら殴り倒しているところだが、ここで殴り倒すのは可哀相だと思ってしまった。
「今後とも、ミラをよろしくお願いします」
「え……違う国に住んでるんじゃないですか?」
「どうせ神子なんて放浪していれば仕事をしていると認められるんだ。君の所に遊びに行くよ。おおよその場所を教えてもらえれば、どこにでも行く」
「いや……あの……来られるんならいいですけど」
 ここまで来た人間だ。問題なく来てしまうだろう。普通はここまで来る事すら普通の人間には不可能なのだ。
 ここで場所を教えなかったとしても、街で聞き込みをすれば、竜が住み着いたという噂は聞くはずだ。
 あの様子だと、ミラと聖良を会わせるための努力は惜しまないため、本当にやって来る可能性がある。
 だったら聞き込みをされるよりは、そのまま来てもらう方がいい。
「ディルニス山脈の麓に広がる森の崖に住んでいます。分かりやすい場所ですよ。お母さんは基本的に人間が来るのを気にしないですし、来たければ来ればいいんじゃないですか。どうせ私達は退屈ですし」
 アディスは諦めて場所を教えた。
 セーラと毎日遊んでいるが、飽きるものは飽きる。セーラは字の勉強を始めたのであまり退屈ではないかもしれないが、アディスは退屈だ。表音文字は覚えやすいと、彼女は絵本を読む事に専念するのだ。単語を口にすれば意味が分かるため、覚えるのは速い。読みにくい単語以外はほとんど聞いてこないので、アディスはその間退屈だ。もう飛べるし、短時間なら大きくなれるし、火も吹ける。竜の子供が練習すべきことはマスターしている。あとは人化の法やらの難しいことしかない。
 さすがにこればかりは一人では無理だし、ネルフィアに聞いても大ざっぱなことしか言わないのだ。ラゼスがいれば勉強にもなるのだが、ネルフィアが嫌がるだろう。
「知識がある子供なんて、遊ぶことしかすることがないんですけど、毎日同じ事をしていると退屈なんですよね」
 アディスの言葉を聞いて、ラゼスがその頭に頬をすり寄せた。
「学ぶべき事を全部その年で身につけてると確かに退屈だろうな。ネルフィア、この村に住めばいいのに。アディスも人間の友達しかいないってのは問題だろ」
 可愛い息子のためにという気持ちは理解できるが、かなり迷惑な話だ。竜よりも可愛い人間の女の子とお友達でいたい。
「嫌だね。誰が好き好んで口うるさいジジババどもがいる所に住むかい。アディスはエルフとも友達になってるんだよ。交友の輪は自分で広げていくだろ」
 ネルフィアは案の定拒否した。彼女のように乱暴なら、周りはそうとう口うるさい事だろう。
「……まあ、そうだけどさ。でも、君は用もないのに行くと怒るだろう。僕だって息子と会いたいんだ。
 それに君に育てさせるのはやっぱり不安だ。賢いと悪賢いは違うんだぞ。人間の記憶が強くあるなら、その人間の影響をどれだけ受けるか。人間ってのは賢い代わりにずるさもある。まあ見た感じだとそれほど深刻な人間じゃなかったみたいだからいいけど」
「だったらいいじゃないか。アディスはいい子だよ。反抗期なんてなさそうだし」
「反抗期はないかも知れないけど……君だけに任せておくのは不安だ。偏った子に育ちそうで」
 夫婦とも言えない男女が、アディスの将来について本人の前で語る。
 それを何となく見ていると、ドアがノックされた。
 アディスは暇なので立ち上がってドアを開けると、走り去る竜の子供達の姿が見えた。
 そして木の陰に隠れてから、おっかなびっくりこちらを眺めてくる。
 ネルフィアだったときのために逃げたようだ。
「何ですか?」
「ね、ネルフィアはっ?」
「お父さんとお話ししていますよ。何か用ですか? もうすぐ日が暮れますよ」
「頭蓋骨持ってきた!」
 アディスは振り返り、セーラを見る。
「頭蓋骨持ってきたそうですけど」
「やっぱり」
 目の前で人の姿になったから、彼らは興味を持ってセーラに問いつめたのだろう。
 子供というのは、種族にかかわらず笑えるほど素直なところがあり、可愛いものである。

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