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ふるさと
作者:鈴蹴

 君たちは、まだ泳いでいるんだろうか。
 透き通っていたはずの水は緑色に染まり、油膜がぷかぷかと浮き沈む、この川で。

 久々に田舎へと帰省した僕は、夕方の散歩に出かけた。
 このあたりは見渡す限りの田舎景色。コンビニもなければ、民家もまばら。目に付くものといえば、田んぼに畑に用水路といったところだ。

「ほんとに、変わってないや…。」

 懐かしい気分で、僕は幼い頃に歩きなれた道を歩いてゆく。

 やがて、小川にかかる小さな橋へと差し掛かる。
 僕は幼い頃と同じように、橋の手すりに手をかけて川を眺める。

 …変わっていたものが、あった。
 そういえば、ここから少し上流の方に大きな工場が出来たって言ってたっけ。

 幼い頃に見た景色と、全く違う。
 透き通り、橋の上からでも底がはっきり見えたはずの川は、今ではすっかり緑色に染まり、水面にはぷかぷかと夕日を反射して七色に輝く油膜が浮かんでいる。

 昔は、フナやらコイやら、いっぱいいたんだけどな…。

 変わってしまった川の様子に、どこか寂しさを感じた。
 ふと川べりを見ると、油膜とともにぷかぷかと浮き沈みを繰り返す小さな魚の屍骸。

 君たちは、もっと泳ぎたかったんじゃないか?
 小さな魚たちの屍骸から目を離し、もう一度川を見る。

 だけど、泳いでいる魚たちの姿は見えない。

 僕自身、この川で釣りをすることはないだろう。
 それでも、もうここで魚を釣ることが出来ないと思うと…。

 うさぎ追いし、かの山
 小ブナ釣りし、かの川…。

 気付くと、僕はそう、口ずさんでいた。

 夢は 今も 巡りて
 忘れがたき ふるさと…。
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