挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE・BIRTH ~DESTINY外伝1~ 作者:把 多摩子
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

5/43

水の精霊、火の精霊

 心の底でチリチリと火種が燻っている。
 密かに愛慕を寄せるように、熱に浮かされ一心不乱に名を呼んでいたアースは身体中が痺れる感覚に眩暈がした。
 名を聞いただけなのに、顔すら知らぬ相手だと言うのに。どうしてこうも心が揺れるのか。
 惚けていると、耳の鼓膜が震える。

「これより、決勝戦を開始致します! 両者、入場!」

 惑星が揺れる程の大歓声が上がり、一気に熱を帯びた空気が充満する。その熱に、アースに芽生えていた“不思議な感覚”も溶けていく。
 会場である丸太の上に、二つの影が悠然と踊り出た。

「南! 火の精霊、トリプトル・ノートゥング! ついに決勝戦進出です! 幾多の大会で惜しくも決勝戦には出ることなく敗退、しかし、今回ついにその因縁を断ち切りました! 対敵、しかして親友でもある相手との対決です!」

 歓声が地鳴りとなり、周囲に圧倒されたアースは足を踏ん張る。

「北! 水の精霊、トロイ・ベルズング! 過去の大会において優秀な成績を収め、優勝回数なんと四回! 今回勝利を収めれば過去最多記録の五回になります! そして対戦相手であり、親友でもあるトリプトル選手がここまで来るのを待ち侘びていた人物は、彼以外他に存在しません! 壮絶な、しかして爽やかな決闘が繰り広げられることでしょう!」

 空気が振動するほどの興奮に、其の場の全員が騒然となる。

「二人は親友なんだ、知らなかった」

激しい興奮が心臓を凝結させる。茫然と呟くリュウの傍ら、アースは眩しそうに大木の上の二人を見つめた。
 二人は歩み寄り、中央で固い握手を交わす。正々堂々戦闘することを誓ったのだ。
 と。
 丸太の上にて握手を交わした二人は、同時にゆっくりと、ある一点を見つめた。
 盛大な拍手と歓声の渦の中でただ一箇所、暈される風景の中で一点だけ清明になる場所。

「…………」
「…………」

 二人は、その一点を見つめて言葉を失う。
 そこから目が離せなかった、今から決勝だというのに不謹慎だが集中力はそちらに向いた。
 無視できない光景がそこにあった。
 そしてまた、その二人の視線の先。
 同様にアースも、二人を見つめて、いや正確には『火の精霊、トリプトル・ノートゥング』を見つめていた。
 これが、“二人”の出会いだった。
 永久かと思われた幾度の転生を繰り返し、絶望に打ちひしがれて、ついに想いが届かなかった二人の、始まりの瞬間である。
 同時刻、優先席で何気に彼らを見やった光の精霊ベシュタも、リュウも、トロイも含め、彼らはどこかで歯車が回転する音を聞いた。
 キィィィ……カトン。
 若干軋みながら、今はまだ穏やかに歯車は動き出す。
 運命の歯車が紡ぐ、始まりの音が聞える。
 終焉を迎えるその日まで、休むことなく、回り続ける。
挿絵(By みてみん)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ