この小説は二次創作であり、原作と異なる点、そしてオリジナル要素がいくつかあります。 そしてグロテスクなシーンもあります。 お気をつけください。
プロローグ
目を見開き、映ったのは純白だった。空や大地、その間に在るすべてがそれに染まり、他の色を見出だすことはできない。普段ならば優しく見えるそれは、今は何もかもを否定する冷酷なものに思えた。
よく目を凝らせば、その背景と同色の白い塊が舞っている。その一つが少年の唇に落ちた。瞬間的に冷たさを感じ、次に濡れた感触が神経を刺激する。考えるまでもなくそれは雪だ。どうやらここは雪原らしい。 少年はしばらくぼんやりとしていた。脳髄がとろけたように働かない。このままでは埒があかないと彼は腕に力を入れた。
だが、それは弱々しく震えるだけでその機能を果たそうとはしない。次に足を動かそうとするが、同様の反応しか示さなかった。それどころか体は鉛を付けたように重くなり、意志を拒絶する。
それを見届けると少年は静かに瞼を閉じた。心なしか体が楽になったような感覚を覚え、小さく息を吐く。
なぜこんな状況になったのだろうか。どうして自分はここにいるのだろうか。考えてみても、思い当たる節などあるわけがなかった。
しかし、このままではいられない。懸命に状況を理解しようと頭を働かせる。だが、脳の動きは鈍っていくばかりで期待に応えようとしない。
やがて身を刺すような冷気が少年の体を蝕み始め、温もりを奪った。無意識に体が震え止まらなくなる。
突然の異変に命の危機を覚える。しかし今の彼はどこか壊れていた。すべてがどうでもよくなってしまったのだ。
頭は戦意喪失、体は己の仕事をボイコット。さらには今自らが置かれている状況が分からないときている。命の保証さえない。もう、お手上げだった。
そして冷えていく体に命の覚悟が整った。あとは朽ちるのを待つばかり。落ち着く意識を感じながら少年は瞼を閉じた。
瞬間、何かを踏み潰すような音を耳が感じ取った。いよいよお迎えが来たか、と瞼を開く。しかし、実際はそうではなかったらしい。
その音は時を追うごとにだんだんと近くなり、ついに少年の眼前までやって来た。かと思えば突然体が何者かに揺すられる。同時に微かではあるが何かを話す声が聞こえた。
「…ぇ! ……じょう…!? …して!」
「う……」
「……。…を…て!」
すっかり朧げになった視線を向ける。その先に白く霞んだ視界に細い人影が見えた。防寒具、とは形容しがたい厳つい衣服を身に纏っている。
その人は何事かを切羽詰まった様子で叫んでいる。少なくとも、その存在が少年にとって悪いものでないことは分かった。
助かるかもしれない。そう認識して気が緩んだのか、少年は意識の底へと落ちていった。
Prologue End.
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