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 すいません。文章おかしい部分があったので、修正いたしました。
読まれた方、申し訳ございませんでした。
ひき逃げ
作:カトラス


 私は深夜の国道を自宅に向かって一人車を走らせていた。
 車中は八月上旬ということもあって外気の熱気が車内にこもってしまってる為、体に纏わり付く蒸し暑さで不快である。さきほどから、車のエアコンを全開にしているが車が古い為か、それともエアコンの冷却用触媒が弱っているのか、わからないが全然冷えないでいた。エアコンの外気温を見てみると28度をさしていたので、どうりで暑いはずだと私は思った。
 深夜の国道は、ときおり長距離トラックが行き交うぐらいで、車の往来が少なく実に物寂しい。
 私はこのような物寂しい時間に帰宅しなければならない自分の境遇を呪ってみたが、お盆休み前に片付けないといけない仕事が山積みだったので、ある程度いたしかたないかと一人自分をなぐさめてみたりしていた。

 私の仕事場と自宅までは車で一時間ほどの距離があった。自宅は今走ってる国道沿いのマンションなのだが、仕事場が隣町なので途中、山越えをしないといけない。
 私は少しでも早く、自宅に帰って睡眠をとりたかったのでアクセルを踏みこむ。
 車の速度が上がったためか、さきほどよりもエアコンの効きがよくなった感じがして、額の汗がひきだしてきていた。車内が快適になってきたので私はさっきまで暑さでイライラしていた気分も落ち着き、気分が高揚してきた感もあったので更にアクセルを踏み込んだ。
 車窓の風景もさきほどまでは、ちらほら民家が点在していた町並みだったが、今は峠にさしかかる手前なので木々が生い茂る山道に変わりつつあった。そして、いよいよ峠道に入ろうかという時に、前方に見える点滅信号機が赤に変わった。私は少し考え事をしていたので、信号が変わったのに気づくのが遅れて慌ててブレーキを踏んだ。タイヤが「キキィ」っとすべる音がしたが、なんとか止まることができた。
 私の肝を冷やさすきっかけを作ってくれた信号機は、この先が道路舗装の工事をしていて片道通行になってる為、臨時に設けられたものだった。信号機の横には大きな看板がたてかけられており、私の目に留まった。
【七月二十六日午後四時二十分頃、下校途中の自転車に乗った少年のひき逃げ死亡事故あり、事故を目撃された方は下記連絡先または、最寄警察署まで御連絡お願いします】
 私はこの情報提供を呼びかける看板の”死亡ひき逃げ”という文面に過去の自分を思い出してしまった。
  
 私には、誰にも言えない秘密があった。それは、今から六年前の出来事なのだが……
 その出来事とは、今日のように蒸し暑い夜に、私は新車のスポーツカーを買った喜びのあまり、夜の街をレーサー気分でドライブしていた。若かったせいもあって、かなり無茶な運転とスピードを出して車を走らせていた。二時間ぐらいドライブを楽しんでそろそろ帰ろうかと思った時、その出来事がおこった。
 私は交差点に猛スピードで進入していた。信号は赤だったが深夜なので誰も通行しないだろうと思って交差点に赤のまま突っ込んでいった。
 すると、私の目の前には老婆がよろよろと横断歩道を渡ってる姿が目に映った。
 私はびっくりして思いっきりブレーキを踏んだが、スピードを出しすぎていた為、間に合うわけもなく、老婆を轢いてしまったのだ。車は老婆を轢いた状態で路肩のガードレールにぶつかり止った。
 私は慌てて車の外に出て老婆の様子を確認しに行った。
 老婆の状態を確認した私は、あまりにも酷い老婆の状態に愕然とした。
 老婆の恐らく白髪だったであろう髪は真っ赤に染まっていて、顔面を強く打ったのか左目の眼球が飛び出している。老婆の左腕は肩下から無残にもちぎれていて、ちぎれたところから血が噴水のように出ていた。
 両足は複雑骨折していて、左足のかかとから骨が飛び出していた。
 私は老婆の酷い惨状を目の当たりにして、即死だろうと思っていたら、
 老婆が、か細い声で助けを求めていた。
「おにい…さ…ん、タ・スケテください」
 私はその言葉を聞いてあたりを見渡した。周りには誰もいない。
「はや…く、救急…車を……」
 私は老婆の助けを無視して車に戻った。
 私は震える手で、エンジンキーをまわした。 
 幸いなことにエンジンはスポーツカー特有の低い音をたてて私に早くこの場を立ち去れとばかりに、
「ブオーン、ブオーン」と鳴っていた。
 そして私は老婆を見捨てて逃げた。
 翌日の朝刊とテレビのニュースで老婆が亡くなったことを私は知った。
 事故車のスポーツカーは、会社近くの道路に放置した。
 もちろん、足がつかないように、車内に消火器をまいてから、ナンバープレートと車体製造番号を取り外すと、買って間もない愛車とお別れした。
 
 過去の出来事を思い出し終わった時に信号が青に変わった。
 私は嫌な事を思いださせた看板を恨めしく思いながら、再び車を走らせた。
 車が舗装工事の道を出たところで、突然、大粒の雨が降り出してきた。
 大粒の雨はワイパーぐらいでは処理できないぐらい激しく車に降りつけていて、前方の視界を遮る勢いだった。私は車の速度をおとさないと事故ってしまう危険を感じたのでブレーキに足をかけた。
 その時である、一瞬、前方に自転車に乗ってる少年の姿を見たのだ。「ガシャン」と音をたてて車に、衝撃がはしった。
 私が「しまった」と思った時にはもう遅く、どうやら自転車に乗った少年を撥ねてしまったようだ。
 私は傘もささずに、すぐに車外に飛び出して少年の姿を探した。
 少年の姿はどこにも見当たらなかった。しかし、車の下にはぐちゃぐしゃにひしゃげた自転車はある。
 一体どうゆうことなんだ? 私は大粒の雨にうたれながらその場に立ちつくし考えた。
 でも、よくよく考えると、こんな深夜に少年が一人で大雨の中、自転車に乗ってる事などありえないのだ。そして、私は自分なりの結論をだした。自転車に乗った少年は、私が疲れていた為見た錯覚であって、車の下にある自転車は誰かの悪質なイタズラで元々道路に放置してあったのだろうと……
 イタズラにしては全くもってして「ひどい」と私は思って車に戻った。
 私は、エンジンをかけて、再び車を走らせた。
 車内はついさっきまでと違ってひんやりしていた。いや、ひんやりと表現するよりは寒いのだ。
 そして、得体の知れない寒気に襲われた私は、何気に助手席に目をやると、助手席には、私の顔を凝視してニヤニヤ笑ってる少年の姿があった。
 私は思わず「うわぁ〜」と声を上げていた。
 私はブレーキを踏んで車を止めた。
 少年は野球帽を被っていて年の頃は十二〜十三歳だろう。帽子のひさしごしから見える顔色は青白い。
 口からは血が出ていたが、気にせずに、相変わらず私の顔を見てはニヤニヤしている。
「おい、お前! いつ? この車に乗ったんだ、お前はさっき自転車に乗っていて、私にひかれたのか?」
 少年は私の質問に答えるべくでもなく、ただひたすらに私の顔を見ている。
 よく見ると少年の口には歯がなく、青白い顔にも泥のようなものがこびりついていた。
「おい、笑ってないで、俺の質問に答えろ!」
 私は怖さのあまり絶叫していた。
 その時、急に後ろから白い手がのびてきて、私の座ってるシートが後部座席の方にリクライニングした。
 私は急いで体を起こそうとしたが、全く体は動かないで目の前には車の天井が見えるだけだ。
 耳元から薄気味悪いうめき声が聞こえてきた。
 その声は女性のすすり泣くような声で「アア〜アア〜アアアア〜アア」と聞こえる。
 そして、突然、天井の視界の変わりに至近距離で女の顔が現れた。
 女は私の上に馬乗りなった形で私の首に白い手をかけて覗きこんでいた。
「ぼうやぁ〜この男がぼうやを轢いて逃げたのかい?」
 女は助手席にいる少年に声をかけた。
「ううん、違うよ!ママ〜、このおじさんじゃないよ!」
 私は、この親子の会話を聞いて初めて自分がおかれてる状況を理解した。
 恐らく、少年は信号待ちをしていた時に看板に書かれていたひき逃げされた少年であって、この母親は少年を思って後追い自殺かなにかでこの世に存在しない霊なのであろう。そして、夜な夜な犯人を捜しだすために、このような霊現象をひきおこしているのであろうと! 
 そうして、少年が母親にひき逃げした犯人が私じゃないといってくれたので、まもなくこの霊現象も終わる。
 もう少しの辛抱だと私は思った。
 案の定、私の予想はあたり、しばらくしてから体が動くようになった。
 親子の霊もいつにまにかいなくなり、私はリクライニングシートを元に戻した。
 しかし、体の寒気はまだおさまらないでいた。その時、「ピィー」とエアコンの外気温が0度を示すアラーム音が鳴った。
 私は一刻も早くこの場から立ち去りたかったので、車のエンジンをかけようとした時、またしても、後ろから白い手が伸びてシートが後部座席にリクライニングした。
 さきほどと同じように体の自由を奪われた私。
 そして、私の顔の上には間近に女の顔が二人覗きこんでいる。
 一人はさきほどの少年の母親で、もう一人は……
 もう一人は、そう、六年前にひき逃げした片方の眼球が飛び出した老婆が覗き込んでいた。
 老婆の左肩の付け根からは、あの時と同じように血が噴水のように出ている。
 母親の霊が怖い顔をして老婆の霊に話かけた。
「おばぁーちゃんをひき逃げしたのはこの男なのかい?」
「あぁ〜こいつだ! こいつは、まだ生きてる私を見殺しにしたんだよ!」
 少年の母親が再び私の上に馬乗りになってきた。
 白い手が私の首に伸びてくる。
 私は二人の霊に命乞いの哀願をした。
「私が悪かったよ〜頼むから助けてください!」
「……ダメェ〜、私が助けを求めた時もお前は見殺しにしただろう!」
 老婆ははきすてるようにそう言った。
 母親の白い手が私の首を絞めつける。
「く…るしい」
 私は遠のく意識の中で、ひき逃げした事に対して後悔の念にかられたがもう遅いようだった。
 どうやら、人の道をはずしてしまった罰を報いる時がきたのだった。 了。














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