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夢見る鹿島の星間戦争 作者:茅野可南子

五章、ダーティーマーメイド

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五章プロローグ2 (アイリ・リリス・阿南)

 レジアーネ社の二足強襲機アクア・シレーナの開発を、川崎航空機が引き継ぎ、
「二足強襲機天太星(にそく・きょしゅうき・てんたいせい)」
 として完成させた戦術二足機。(*二足機=人形戦闘機)

 この二足強襲機天太星を集中運用するのがアイリ・リリス・阿南あなんの、
北斗隊ほくとたい」。
 北斗隊の別称は、
「ダーティーマーメイド」。

 これは隊長のアイリ・リリス・阿南の素行の悪さと隊章のマーメイドをかけた愛称で、もとをたどれば蔑称に近いが、星間連合軍内ではその呼び名が定着していた。
 そう、このダーティーマーメイドは、もともとはアイリ・リリス・阿南個人を指していた。

 ――汚れた人魚アイリ・リリス・阿南

 この尊敬と畏怖だけでなく、さげすみをふくむ二つ名は、北斗隊の隊章が隊長のアイリ・リリス・阿南の個人的な嗜好により、人魚だったことだけが理由ではないのだ。

 遠目から見ればアイリ・リリス・阿南は儚さを感じさせる綽約しゃくやくの乙女で、さしずめ容姿は水辺にたたずむ人魚を連想させる。周囲からすれば隊章の人魚とは、アイリ・リリス・阿南そのものへのイメージだった。

 だが、その人魚の姿色にかれて近づけば、
 ――痛い目を見る。
 これがアイリ・リリス・阿南の周囲の常識だった。

 軍はアイリ・リリス・阿南が人間関係で問題を起こすと、彼女の戦術機乗りとしての才能を優先しトラブルになった相手を移動なりの処置で対応していた。これはアイリ・リリス・阿南が第三艦隊のランス・ノールの管理下に入ってからさらに徹底される。

 軍規に厳しいランス・ノールが、アイリ・リリス・阿南が麾下に配置された当初、彼女の素行の悪さに再三手を焼いた末、アイリ・リリス・阿南の〝奔放な〟行動を抑止することをあきらめたことが理由だった。

 ――アイリ・リリス・阿南と関係を持ちトラブルを起こせば、一方的に罰を受けるだけ。

 そしてアイリ・リリス・阿南は躁鬱が激しく、妄想癖がある。関係が上手く続くことは絶対にない。いままで何人も軍人が処罰を受けてきた。

 つまりアイリ・リリス・阿南は、黙って微笑んでいれば岸辺にたたずむ美しい少女ローレライ。だが気を取られ、近づきなどしてしまえば盈々(えいえい)さの底にある嬌姿きょうしに囚われ身を滅ぼす。

 だがランス・ノールからいわせれば、
「彼女が真に望むものは、妄想上のお兄ちゃんだけ。その優しいお兄ちゃんは阿南の想像上にしかいない。現実で彼女が至福で満たされることはありえない」
 ということで、引っかかるほうがどうかしているというものだった。

 アイリ・リリス・阿南は、関係を持った後は相手に対し、
 ――満たされない
 という強烈な不満しか残らない。そして不満が憎悪となり、ついには逆恨みとなって相手を襲う。
 つまりアイリ・リリス・阿南と関係を持てば、必ず彼女の狂気にさらされるということだ。にもかかわらず阿南と関係を持ちトラブル起こす人間が後を絶たない。

「問題が起これば阿南は私へ訴えでてくる!」

 アイリ・リリス・阿南の戦術機隊は第三艦隊司令官ランス・ノールの直下にある。アイリ・リリス・阿南の直接の上官はランス・ノールだ。

 ランス・ノールは、アイリ・リリス・阿南のそのなにも映らない虚ろな目にさらされながら、怒涛の呪罵を聞かされるという災難にたびたび見舞われた。

「こんなことを再三繰り返される私の身にもなれ。そもそも簡単に体を許す女だからといって近づくほうがどうかしている。大体だ。阿南がまともでなはないのは一目瞭然だろ。彼女に引っかかるやつはむしろ遊びで捨てれると関係を持つ確信犯だ。重罰で臨む!」

 ランス・ノールついには業を煮やし、
 ――周囲がアイリ・リリス・阿南へ近づくな!
 と艦隊内へ宣言。

 これがランス・ノールのアイリ・リリス・阿問題への対応と結論となっていた。
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