あるところに王様がいました。大変優しい王様で、国中の人々から愛されていました。
王様はみんなの期待に応えるために一生懸命がんばっています。時には苦しいこともあります。しかし国民の笑顔を見ることで、元気を取り戻しては、努力をしていました。
そんなある日平和なこの国にあくまがやってきて、悪さを繰り返すようになりました。
空から人に泥をぶつけたり、窓を割ったり、食べ物を盗んだり、家畜をおどろかしたり。
思いつくことをあくまは、どんどんやっていきました。
王様はあくまを捕まえるために兵士を送りましたが、あくまはすばしっこくて、追いつめても空を飛んで、逃げてしまいました。
しかし大人数に一人ではかないません。あるときあくまが油断し寝ているところを取り囲み、つかまえることに成功しました。
王様の前につれられてきたあくまに、王様はたくさん怒りました。そしてこうたずねました。
「どうして人の嫌がることばかりするんだ!!」
あくまは答えました。
「幸せそうな顔をみるとむかつくんだ。困ってる顔や嫌がる顔をみるとうれしくなるからさ!おれは悪魔だからな。」
それを聞いた王様の怒りは爆発しました。
「こんなあくまはすぐに殺してしまえ!!すぐに処刑の準備をしろ!」
命令をうけた兵士達が、中庭で処刑の準備をととのえました。
あくまはもうころされるのをまつばかり。
少し落ち着いた王様はあくまに言いました。
「最後になにか言うことはないか?」
するとあくまはいきなり泣き始めました。
「悪かった。わるかったよぅ。もう嫌がられることはしないから。許してくれ」
王様はしかし聞き入れません。
するとあくまはさらに泣きじゃくりました。
「本当は一人でさびしかったんだ。あくまだーって言ってみんな逃げてしまうんだ。
だから、みんなの注意をひこうとしたんだ。仲間になりたかっただけなのに……」
こう言うのです。
王様はドキッとしました。国を平和にするためにがんばっているのに、国民は自分達が困っているときだけやってくる。王様のこころも実はさびしかったのです。
あくまが可愛いそうに思えてきました。
「あくまは、ほんとうはさびしくて嫌がらせをしてたと言おう。みんなに仲間にしてあげるように言ってあげよう。」
こう言ってあくまを許してあげました。
あくまはもうこれ以上ないくらいの喜びようです。
王様は国の民を集めると事情を説明しました。みんなは一応納得して、あくまを仲間として受け入れました。
あくまは国に住み、生活を始めました。空を飛べるので、郵便やさんとして働きました。
国のひとの中にはよくしてくれる人もいて、あくまは幸せでいっぱいでした。
しかし。多くの人は係わりを持とうとしませんでした。それどころかあくまに嫌がらせを受けたことがある人たちが中心になって、すこしずつあくまをいじめるようになりました。
仕方ありません。憎しみのこころを抑えられなかったのです。あくまは我慢しました。何をいわれようと、石をなげられ、水をかけられ、笑われても、王様への感謝の心があったので我慢し続けました。
いじめはさらにひどくなり、ついにはしっぽを切られました。そして耳さえも片方切られてしまいました。あくまはもう我慢できませんでした。ついに怒りのこころに火がつきました。なにがなんだかわからなくなったあくまは、いじめられた人達の家やそこらじゅうに火をつけ周り、壊しました。その火が風にあおられて広がり、町のほとんどをやきつくしてしまったのです。
家を失った人々は怒り、あくまを探しましたが、どこにもいません。
怒りやら悲しみやらに包まれた感情はもう止まりませんでした。その矛先はあくまをゆるした王様に向けられました。人々は王様を殺して、お妃様や王の一族を全て殺してしまいました。
王様を失った人々は、多くの人がおれが次の王様になると言って争いを始めてしまいました。ただでさえ焼かれていた街も、畑も建物も焼かれ、疑いと憎しみであふれかえりました。多くの人が殺し合い、食べ物はなくなっていきました。
そうです。この国は亡んでしまったのです。
もしもあのとき王様があくまを許さずに処刑しておけば、こんなことにならなかったかもしれません。もしもあなたが王様ならどうしましたか?
そうそう、あくまはどこかへ消えてしまいましたが、今もどこかで生きているかもしれません。
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