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四話 表層と深層
「トキく~ん! ここです! この部屋です!」

 そんなことを言いながら、ハンネ先生は腕をぶんぶん振っている。
 なんだか無性に抱き締めたくなる。

「この部屋が、召喚の部屋です。…あ、あの。トキくん?」
「なんでしょうか?」
「なんで、先生の頭を撫でているのですか?」
「気にしないでください。」

 きっぱり言いはなった。
 ええ、きっぱりと。
 べ、別にロリコンなわけじゃないからね!

「はぁ…。まぁいいですが。それでは、入りましょか」

 そう言って先生は、部屋の中に入る。
 にしても…、この扉はなんだ…。
 5メートルはありそうな純白の扉。
 部屋にしては大きすぎるだろ…。
 の割には鍵もなにもない。
 出入り自由?
 後で聞いたのだが。
 この門は魔力に反応するらしい。
 個人の魔力の質を読み取るのだそうだ。
 だから教員以外には、絶対に開けられない。

 中に入ってみると、これまた純白。
 天井は高い。
 多分20メートル位あると思う。
 更に部屋の広さだ。
 たぶん奥行き50メートルくらいはある。
 ひたすら純白で、染みひとつない広大な部屋。
 窓もなにもない。
 一応、床には魔方陣らしきものが描かれているが…。
 ハッキリ言って、模様で気持ち悪くなる。

「えっとー。では説明しますね?」

 そういってハンネ先生は、空中に何か書きだした。
 魔力を放出して、固定化してるんです。とか言うが、
 魔法を知らない俺には意味がわからない。

「この召喚では、個人の深層世界から魔導具を作りだします。なぜそこから作りだすか? と言うとですね」

 そういって空中に円のようなものを描きだす。縁の外側に人がいて。中に怪獣みたいのが……。

「例えば、人族の5割は魔法を使えません。使えない人たちは、この表層と深層の間の壁に穴が開けられないんですよ。表層には魔力がありません。おもに心の部分を司ります。好きとか、嫌いとか、あーしたいこーしたいっていうのが表層です。表層までは自分の意思で変えたり出来ます。って言っても表層は、自分の意思や普通の肉体を動かすことしか出来ません。

 それで深層。
 これはその人の世界でしょうか。ここは、意思では影響を与えることが出来ません。つまり世界は個人の物であって、個人でも把握出来ないんです。
 先ほど壁。と言いましたが、この壁はあくまでセキュリティーだと思ってください。個人が深層を自由に使うって言うのは危険なんです。深層を表層と同じように使える人は、いなくはありませんが精神が壊れたり。体が崩壊したりします。
 魔力とは、深層って言う自分の世界から表層。つまり現実に反映する力です。表層の意思を介して。深層から力を借りるって思っていてください。
 後ですね、深層世界は無限ではありません。大きさは個人によって違いますし。密度も種類も違います。属性っていうのは深層に依存しています。深層世界のあり様によって使える属性があるんです。例えば、深層の世界に小さな炎の島が浮いてるとします。その島から炎を抜き取って現実に反映するのです。もちろん、炎も有限ですので。使いすぎたら最悪死んでしまいます。一応、世界の意思で時間をかけて元の島に戻そうとしますけどね。
 では、この島がこの世界より大きな島だとします。そうすると、この世界すべてを飲み込める炎が使えるんです。ただ、魔法使いとは壁に穴をあけて使いますので。そんなに大きな世界はありえません。
 
 基本魔法、合成魔法、古代魔法、神聖魔法というのは、その時の穴の大きさなんです。小さな世界で古代魔法を使ったら、世界がすべて出てしまい。使用者は死んでしまいます。それに小さな世界なので本来の古代魔法には到底及ばない上に、使用者は死と言う事になりえるわけです。」

 『以上、深層世界の話おわりー!』と言って、ハイネ先生はピースをした。
 癖なのだろうか? 
 それにものすごい量の文字やら絵やらを書き込んでる。
 ところどころクマのような落書きとかあるが…、気にしないでおこう。

「じゃ、その深層世界の一部を魔導具にするんですか?」
「んー。一部ではなくて全部ですね」

 おいおい。
 さっき全部取りだしたら死ぬって言ってなかったですかい? 先生。

「と言うよりもレプリカですね。深層世界を写し取り、それを魔導具として、表層世界に複写します。なぜ、同時に属性がわかるかといいますと。引き抜くときに、そこから漏れる属性の余波でわかるんです。」

 そう言って、また何かを書いていく。
 壁を面して、左側に人? 右側に星? みたいな? なぜ疑問形かと言うと。
 ものすごく絵がヘタだからだ。

「この壁が表層と深層のセキュリティーの壁です。その足元の魔方陣を壁として直接に深層のレプリカにつなげます。魔方陣の下に、複写した世界が在ると思ってください。つまり床の下が深層世界みたいな感じです。手を入れると穴が開きますよね? その穴から火だったら炎。水だったら水のように少量ですが漏れ出します。わかりやすいように壁一面白にしてるんですよー」

 と、言って。
 ハンネは、壁に描いた文字やら絵やらを全て消した。

「ま、とりあえずやってみましょう。そこの魔方陣の上に立ってくださいー」

 とりあえず俺は魔方陣の上に移動した。
 ハンネは何やら複数呪文を呟いているようだ。

「一応規律なんで、壁に結界と。私自身に防御結界をかけました。あ、トキくんは自分の魔力なんで炎とか出て来ても問題ありませんからね? それでは、準備大丈夫ですか?」

 そう言って楽しそうに笑っている。
 自分的には緊張とワクワク感の半々。

「では。魔法陣をトキくんの深層世界につなげます!」

 先生は自分の足元の魔方陣。
 俺の足元の魔方陣を、小さくしたような物に手をついて呟いている。


 瞬間、黒かった俺と先生の足元の魔方陣は、白く光輝いた。

「ふぅー。つながりました。ではトキくん。トキくんの深層世界から魔導具を抜き取ってみてください。」

 さぁ、はやく? みたいな感じでこっちを見ているハンネだが…
 何か足もとが膨らんでいる気がする…。
 風船の面にマジックで魔方陣を描いたように…、
 もしそうなら、手をいれた瞬間。
 風船に針を刺したようになるんじゃないかと…、内心びくびくである。

「あ、あのハンネ…、なにか足もとが、膨らんでいるような気がするんですがー…?」

 何を言っているんだ? と、ばかりに先を促すハンネ先生。

「大丈夫です。今まで魔導具召喚では、危険なことは起きてません! 使い魔召喚はちょっと危険ですが」

『それにですね? 私が見た限りだとトキくんは魔力が全然ないので危険はないです!』などと言っている。

 それはそれで傷つく。
 魔法学校に入って、魔力がないとは…。
 落ちこぼれまっしぐらだ。
 ひとつ溜息をついて。
 俺は諦め半分に、手を魔方陣に近づけた。
またまた説明ですね。


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