六五話 地球との別れ。
―――マンション自室
結局、あれから数週間経ったけど、まだ地球にいた。
学園では、報道規制がされているのか、神とか天使のことはニュースでやっていない。
今は、ハクが完全にバックアップするまでの時間である。
涙子と五和は未だに泊っている、
学校とかどうなってるのか気になるが、涙子は確実に休んでいるだろう。
早く渡らないと絶対留年する。
中学で留年ってないのかもしれんが、この世界はわからん。
救いとしては、二人とも俺が渡ることには納得しているようだ。
涙子は、俺が心配しないで渡れるようにデートしたかったらしい。
テッラが来なかったら、俺と試合したとか。
五和は十字教ってのに入っているだけあって、神がどういうものか理解しているらしい。
最近は涙子に感化されて、全裸主義みたいになっているが。
涙子が裸で俺に抱きついているのを見て、俺の唯一のはじめてを奪われるとか。
奪わせるつもりなんて誰にもないけど。
実力、名声(童貞)ともに神でいたい。
最近はローラがよく、キスをせがんでくるが、失神させて送り返している。
アイツにだけは全開でやっても罪悪感ゼロだ。
年増だし。
いっそ、歳相応の姿にしちゃおうかと思ったけど、
そしたら死にそうだから、やってはいない。
ローラの話だと、ローマ生教+ロシア成教VS学園都市+イギリス清教はなくなったらしい。
ローマの教皇が普通の主教となったらしいのだ。
学園とイギリスはもともとパイプラインがあったらしく、仲良くやってるらしい。学園側になにか思惑があるらしいが、ローマがいなくなればなんとか出来るとか。
当麻とは仲直りしたけど、やっぱり俺のやりかたは気に食わないらしい。
うん。それでこそヒーローだ。
そういえば、エルに聞いたところ、天使はほとんど自我がないらしい。
二大天使はすこしはあるが、エルもなかったらしい。
エルには、サーシャの自我が根付いているとか。
あと、火のページの影響があるかも、と。
再構築されたせいで二大天使より、強大な力を得たらしい。
それなら、と。翼を6枚つけたら、何が何だか分からなくなった。
翼だけで、飛ばせて遊んだりしてるらしい。
さて、そろそろいくかな。
挨拶は二人でいいか。
「二人とも~、そろそろ俺出るけどいいかな?」
二人は一瞬、きょとんとしたものの、その意味に気づいて慌ててこちらにやってきた。
「マスタ~、戻ってきますよねー?」
「もう、行くんですか?」
うーん……、
涙ぐまないでほしいんだけどな……。
「そうだなー、時系列で言えば、来るときは数分後にまた現れるかも? その時俺が何億年歳重ねてるかわからんけど。見た目は変わらない。てか、もう行くって、結構長くいたぞ?」
うーん……。
「何か記念にほしいものとかあるか?」
なんか、いつももらってばっかりだしたまにはいいかな?
二人は少し考え。
そして―――
「「不老に」」
と、言いきった。
俺は目を丸くした。
「いや、お前不老って大変だぞ? 寿命延ばすとかじゃないと成長しなくなるし。まったくそのままの姿で一生だ。俺みたいにタバコも吸えなくなるぞ? 副作用として、病気にはかからないが」
不老だけはおすすめしないな……。
「いえいえ、これは契約なんですよ? 刻さんへの」
五和がそんなことを言ってきた。
「そうですねー、もし、マスターが帰ってこなかったら、私たちは永遠を生きなきゃいけなくなっちゃいます。つらいでしょうねー、初春とかの死に目を見なきゃいけないし」
あー、そう言うことか……。
「だからですね――」
二人は目くばせし、
「「絶対に戻ってきてください。私たちを、永遠の生から解放できるのは刻さん(マスター)だけですので」」
なんとも……。
「さながら呪いを受けたお姫様ですね~、呪いをかけたのは王子様ですが~」
けらけら笑いながら涙子が、
「もちろん断りませんよね? “記念”ですし!」
泣いてはいるが、満面の笑顔だな、五和。
俺は一回溜息をつき、
「わかったよ……契約を此処に」
ちゅ
「んっ……」
ちゅ
「あふ……」
二人に軽くキスをする。
同時に寿命を永久に再構築。
「これで、お前らは死ねないぞ。死が安息だとしたら安息はもうない」
二人は自分の体を見回していた。
「どこも変わりませんが?」
首を傾げる五和。
「あと10年たてば変化がすごいぞ。普通は大人っぽくなるのに、お前らはずっと子供。50年たてば全員ばあさんじいさんなのに、お前らは子供。俺が戻ってこなかったらイギリス清教でやっかいになるくらいしか道がないぞ。働けないし。まぁ、お前らなら喉から手が出るほどほしいだろうけどな。神の加護あるし」
そう言って、俺は二つの槍と、ナイフを創りだした。
レンの鱗製だから光輝いている。
それを二人に渡してやる。
「ま、涙子は能力あるから、護身用ナイフだ。五和には槍壊しちゃったから、変わりのな。両方所有者以外は使えない」
二人はその光輝く刃物を、うれしそうに見つめる。
「マスター……これって、もしかして……」
ま、そのとおりだな。
五和の長い槍が天井に……、って!
「あっ、待て五和!」
「え?」
五和が言葉を発した時には既に遅かった。
天井が完全に消滅した……。
「え? えぇ!?」
五和が焦っているようだが……。
俺は天井を創造し、二人の武器の刃にレン製鞘をつけてやる。
「五和、神が与える武器なんて普通なわけないだろ? 歴史でも見てみろ。神が与えたのなんて、どう考えてもオーバーテクノロジーか神秘だろ」
二人に渡したのは、サーシャやエルに渡したのと同じだ。
「あたった瞬間、相手は消滅するぞ? 鞘がない状態だと、お前以外が持ったら消滅するセキュリティー付き」
五和は驚愕し、恐る恐る、一緒に渡しておいた薙刀用の袋に収めた。
「ま、俺がいない間の護身とでも思ってくれ」
肩をすくめながら言ってやる、
いきなり、五和が胸の前で両拳を握り、
「がんばって処女を守ります!」
唖然とした、俺的には子供でも作って幸せになってほしいんだが……?
「ま、期待せずにいるよ」
俺はそう言い、
「じゃ、そろそろ行こうかな」
俺は立ち上がり、
「待ってください、お別れは海岸でお願いします」
海岸? エルと闘った場所か?
「んー、別にいけどなんで?」
二人は慌てたようで、
「え、えーと。ほ、ほら! お別れって海岸がベストじゃないかと」
よくわからない原理だ。
「ま、いいや。この家はお前達にやるから、権利書はめんどくてそこらの引き出し。管理人には話通してあるから。数十億もしたしもったいない。と、」
あ、忘れてた!
「下着くれ」
二人は一瞬時が止まったように硬直し、
せっせと脱ぎだした。
「「どうぞ!」」
全裸のまま、上と下の下着を手渡してきた。
俺はそれを収納する、
そして、そのまま二人が抱きついてきて、
俺はまた、アレか? と思ったが、
「ぐすん……マスター、やっぱりさびしいです……」
俺に抱きつきながら泣きじゃくる涙子。
「うう……、絶対もどってきてください……えっぐ……」
同じく五和。
俺は二人の髪をやさしく撫で、
「戻ってくるよ……、俺には時間なんてあってないようなもんだしさ。俺はこの世界の神だぞ? お前達に寂しい思いなんてさせないよ」
そう微笑みかけ、服を転移で着せる。
そして、俺達はその場から消える、
二人は数時間~数年後、
俺は数億~兆年後に再び出会うであろう場所を後にする。
――――海岸
ふむー、なぜだ?
「涙子、五和。連絡した?」
俺はしてない。
「あたしがしましたー」
元気よく、涙子が言うが。
二人だけでよかったんだけどな……?
空を埋め尽くす天使、天使、天使。
地を埋め尽くす、人、人、人。
更に空、地で転移魔法陣が光輝く。
あー、初めてだぞ……こんなの?
どうすっかな。
とりあえず、五和と涙子を近場の固定した空間の上に乗せる。
「あー、天使たち。なにこれ?」
俺は天使たちに聞いてみる。
「我らの主の旅立ち、駆け付けぬわけにはいかないでしょう」
「世界との同調で知り、駆け付けました」
あー、そういやコイツらまだ同調させておいたんだ。
俺が命令しなくても実体化できるように制限も切りっぱなしだ。
「これから頼むな。俺が戻ってくるまで。同調と制限解除は維持させておくから。あまり人を殺すなよ?」
俺は二人を見つめ、言葉を発する。
「「はい、我らの主の命、かならずや」」
二人がうなずき、
『ラーーーーーーーーーーーー♪』
天使達が謳う。
『ラーーーーラーーーー♪』
俺の旅立ちへの謳。
そのキレイな歌声を聴きながら、
「で、お前達はどうした?」
眼下の人間に問いかける。
「わ、わたしは責任をとってもら――」
「黙ってください馬鹿最大主教様」
「ぐす……」
最後までバカやってるな、ローラとステイル……。
結構お似合いじゃ?
片や婆さん、片や14歳だけどさ。
「あなたは――」
そこでステイルが口を開く、
「あなたは、ただの我がままで神の右席を殺したと言いましたが! それでも救われた人はたくさんいるんです! アビニョンの市民や観光客、術式の効果範囲! 利用されたローマ生教、ロシア成教の信者。我々、イギリス清教、学園都市。確かにあなたのわがままかもしれません。それでも―――」
ステイルが一旦言葉を止め、
「―――ありがとうございました。まだまだ、問題が多いこの世界ですが! 私達はこの世界に生を受けてよかったと思います。どうぞ見守っていてください。神よ」
そう言って、頭を下げる。
すべての人間が、天使が頭を垂れる。
この世界を創った俺に。
ああ、前の俺よ。
お前の創った世界はちゃんと廻っているよ。
力強く廻っているよ。
神がいなくたって、
これが人間、神の最高傑作の人間。
強く根を張り、小さき器で世界を廻す者。
さすがに、この人数に見送られると涙がとめられないな……。
俺は叫ぶ、
『我はこの世界の創造神 如月刻! 見守ろう人間たちよ! 世界が終るその時まで! 我は神として汝らを見守ることを約束しよう! すべてを包み込み、すべての成長を司る我が! 汝らを包み、成長させることを約束する!! 汝らも見守ってほしい! 神を! この世界の神はどんな神であるか! 汝らを見守るに値する神か!! だから―――』
俺はあふれ出る涙を止められないでいた、
歌声の中で、涙を流し続ける神。
『――― 一緒に、歩んでほしい! この星を! 世界を我と一緒に!! いつかまた会おうぞ人類よ!!! ありがとう!!』
俺はそこで叫ぶのをやめる。
「涙子、五和。世界は美しいよ。汚い部分もあるけどさ。それを差し引いても余りあるほどに美しい」
俺は泣きながら二人に笑いかける。
「当然です。マスターが創った世界ですよ?」
涙をこぼしながら俺に聞かせてくる。
「感謝します。私達を産んでくれて」
泣きながら微笑む五和。
「「いってらっしゃいませ、我らの神よ」」
二人がそう言い、頭を下げる。
すすり泣く声が聞こえるが、
ありがとう二人とも。
俺は今回も安心して渡れそうだよ。
俺は海岸に背を向ける。
「刻!!!」
俺の背に当麻が声をかけてくる。
「俺達は!! 友達だよな!! まだ、納得いかないけどさ!! 俺強くなるよ!! 意思が通せるくらいに!! だからさ! 友達なら遊びに来い!! いつでも待ってるから!!!」
ありがとう、当麻。
お前は俺のヒーローで友達だ。
背を向けたまま狭間へとつなぐ、
また会おう、俺の子供たち。
いつかまた。
俺も成長するよ。
お前(世界)も成長しろよ?
―――――ありがとう、世界よ
次の瞬間、俺は狭間へと転移した。
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