三六話 入学式
セリアは文官に仕事を任せて、今はごとごと馬車の中。
「のお、わらわは入学手続きをトキの分しかしておらんぞ?」
いきなりそんなことをセリアが言ってきた。
「ああ、レンは俺の使い魔だから別にいい」
いま、レンは俺の膝を枕にしてすやすや寝ている。
おいセリア!! なんでお前はそう言う目で見るんだ!!
「はぁ、あとお前今日から生活中ずっと風纏っておけ、慣れたら寝る時もな」
「風を纏うって言ってもわらわはそんなこと出来ないんじゃが……」
「まぁ最初のうちは出来ないかもしれないが、すぐ出来るようになるだろ」
そう言って、俺は体の周りに風を薄く張る。
「こうやってな。これすると魔力が体になじんでページも早く侵食できる。ちょっと触ってみろ」
そう言うと、セリアは恐る恐る俺に手をのばす。
バチッ
「つッ!!?……ぐす…」
触った瞬間、セリアの手がはじかれた。
「っておい!! なんですぐ泣いてんだよ!!? 全然痛くないだろこれ!? ちなみに俺の場合風と雷纏ってるから、はじかれて少痺れるるな。便利なんだぞ? 自分が拒絶したら触れられないからな」
「わらわはトキに拒絶されているのじゃな…えっぐ…」
なんでそうなる!!?
そんな事を言いながら涙目で見つめてくる。
「今のは試しにはじいただけだっつの!!? てかお前なんでそんな泣き虫なんだよ……」
「しらないのじゃ……わらわは初めからよく泣いていたのじゃ…」
そんな自慢気に言わなくても……。
「まぁいいや、ほら纏ってみろ。周囲の風を体に張り付けるような感じだ」
そう言うと、うーん。とか力んでいる、がまったく纏えてない。
「…ぐしゅっ……」
何で泣く!!!?
なんで息をするように泣くんだこいつ!!?
「うぅ…出来ないのじゃ……」
「はぁ……別に最初は出来なくて当然だろ? まぁページの侵食が進んだら楽になると思うぞ?」
「そうじゃの…気長に頑張るの…」
めちゃくちゃ落ち込んでるし…。
「でさー、今から行く学校ってどんなところなんだ?」
話題を変えてみる。
「そうじゃのー、全校生徒が1000人くらいじゃ。場所は中立国に建っておるのじゃ。5年制でクラスはA~Eまであるのじゃ。成績順になっておるので、わらわはEじゃ……ぐすん…トキとは別れてしまうの」
あああああああまた泣くコイツはーー!!
「だから泣くなっつの…、別に俺は学校になんて興味ないからお前と同じクラスでいい」
そもそも俺四属性なんて風しか使えないしな。
俺も落ちこぼれじゃん!!!
セリアはぱああっと顔を輝かせて抱きついてくる。
「ありがとうじゃー! 一人は寂しかったのじゃ!!」
「抱きつくな、レンが起きる!!」
頬を膨らませながら離れるセリア。
ってかコイツは全然王女らしくないな。
「むー、これくらい、いいではないか。 そう言えばトキ。なぜ制服を着ないんじゃ?」
俺は前と同じような服装だ。
生徒会の制服は予備がめちゃくちゃあるし服もたくさんある。
神がきてた羽織りとかいうのは一着しかないが全然汚れない。
汚れがついても勝手に落ちるからだ。
まぁ袖が長すぎて飯食うのも大変なんだがいいだろう。
ちなみにハクはずっと杖のまま。
「それにこの球体がきっと目立つぞ?」
セリアは俺の周囲に浮いている5つの球体のうちの、一つをつんつんしている。
この球体は常にふわふわ浮かんでいる。
はっきり言って、どこかの大魔道士みたいな姿の俺。
「まぁ別にいいだろ? 規制されてるわけじゃないし」
セリアは装飾がキレイな白い制服だ。
スカートが短いので、下になにか穿いてるのかと思い、
さっきめくってみたが下着の上に何も穿いてはいなかった。
ちなみにレンもこの制服の上に生徒会の制服を羽織っている。
「むー、そうじゃが目立つかも知れんぞ?」
「別にどうでもいいよ。そこまで興味ないし。」
またややこしいことになっちまう。
「むー、目をつけられてしまうかもしれないんじゃよ?」
「学生程度どうとでもなるわ」
教師だろうとな。
「……なんでトキはそんな強いのじゃ?」
セリアが真剣な様子で聞いてきた。
「なんでって言っても…俺28だし一回学校出てるんだぞ? そこそこ強いはずだろ?」
16の時点で学園でもめちゃくちゃ浮いた存在だったが…。
「わらわも……強くなれるかの?」
そう言うことか。
「さあな。でも王女なら心も強くなれよ? 俺も前に王女の友達いたけどな。強かったぞ。魔法より心がな」
俺の言葉に目を見開き、
「そ、その王女は恋人だったのかの?」
いやーあれはそんなものじゃないな。
「いやー違ったぞ? だが俺を王にするとか言ってひたすらに俺の貞操を狙ってきた」
セリアは真っ赤になっていた。
「はぁ…とりあえず出るぞ? お前気づいてるか知らないが、さっきから馬車止まってるんだぞ? なんで止まった馬車でずっと話し続けてるんだ?」
うん。結構前についてたっぽい。
「あ、ほんとじゃな。では行くとするかの? 入学式があるらしいのじゃ」
「おーいレン。おきろー? いくぞ?」
のそのそと起き上がるレン。
「うーん、おにーちゃんついたの?」
「ああ、だからいくぞー」
俺とセリアとレンは外に出た。
そして学校を見上げた。
うん。ひろいなー。
学園と比べたら全然狭いが
あれと比べたらすべてが狭い。
人がうじゃうじゃいるが……。
いるが…。
「トキ…すごい目だっているようじゃぞ?」
うん。めちゃくちゃ目立った。
不可視使いたくなる。
てか目立ってるの俺だけじゃないぞ!?
セリアとレンも美人過ぎて目立ちまくりだ。
「おい、俺はお前らの方が目立ってると思うぞ?」
「なにを言っておるのじゃ? わらわは普通の制服を着ているんじゃぞ?」
コイツは自分の顔を鏡で見たことがないんじゃないだろうか?
「お前今度自分で鏡を見てみろ」
「ふむ。わらわは毎朝みておるぞ? 変かの?」
ダメだ。
こいつの美的感覚がおかしい。
てか世間知らずすぎる。
「あ、そういや俺入学手続きしたって言ったけど、試験も何もうけてないぞ? いいのか?」
試験ない学校なんてあるのか?
「大丈夫じゃ。わらわも受けていないが、文官がやってくれたのじゃ」
権力スゲーー!!
しかも本人なんも知らねーー。
はっきり言ってコイツから目はなすと、どっかつれこまれて売られちゃいそうだ。
「はいはい。じゃぁ行くか。入学式あるし」
俺達は人の流れる方に歩きだした。
――――初日
「つかれたーーーーー入学式なげーーー!!!!!」
入学式が終わって教室へ移動中。
「何を言っておるのじゃ!!? トキとレンは二人で寝ていたじゃろ!!? わらわは恥ずかしかったのじゃぞ!!? 一回先生に怒られておったが、黙れ死に腐れ。って言ったんじゃぞ? どんな新入生じゃ!!?」
? まったく記憶にないぞ?
「悪い。記憶にすらないほどどうでもよかった。適当に教室いくぞー。かったるいし。速く寝たい」
俺は適当に返して、歩きだす。
「まだ寝るつもりなのか!? 寝すぎじゃ!!」
ぷんぷん怒ってるが…。
「いちいち怒鳴るな。行くぞ。あ? 教室ここじゃね? Fってかいてあるし」
とりあえず俺は入ってみるが…。
そのまま下がった。
「さて、セリア帰ろうか? 俺そろそろお前との約束果たしたんじゃないか?」
セリアの頭をなでながら言ってやった。
「だから何を言っておるのじゃ!!? 果たしたも何もまだ教室にも入っておらぬわ。はやくくるのじゃー」
そう言って、俺を引きずって中にはいるセリア。
だってさー。
なんか目立つし場違いだし~。
小学生の教室みたいにうるさいしー。
とりあえず俺達はあいている席に座った。
レンは俺の隣にイスをくっつけてしだれかかってくる。
やはり視線が痛いが気にしない。
だって使い魔だし?
「やっぱ目立つじゃーん。てかなんで皆使い魔とか持ってないんだよ? だから俺が目立つんだって」
交渉で手に入るはずだから、16になる前に持っていても不思議ではないだろう。
「使い魔は学園中に手に入れるのが普通なのじゃ。普通は入学前に持っていないはずなのじゃよ。しかもトキは人間が使い魔じゃし」
ん? そう言えば言ってなかったな。
「何いってんだ? こいつは姿変えてるだけだぞ? 元は違う見た目だ」
俺の言葉に目を見開く。
「そうなのかの? 姿を変える使い魔なんて聞いたことないので知らなかったのじゃ。ちょっと戻ってもらえないかの?」
ダメすぎる。
こんな場所で戻ったら校舎崩壊する。
「ぁーそうだな。見せる機会があったら見せるよ」
うん。そんな機会ないでほしいが。
「そうじゃの。楽しみにしておるよ。」
ガララララ
「お、先生きたぞ?」
「わかっておる。静かにしておれ」
うん。これこそが先生だろ?
ちゃんと身長高いしメガネかけてるし。
「皆さんはじめまして。今日からこのクラスを担当いたしますアネル・クラネスといいます。よろしくおねがいしますね?」
と言って、にこりと笑う。
普通の先生でよかった…。
「でわー…」
そう言って、こっちをじっとみつめる。
あれ?
俺何かした?
そう言って、俺は後ろを振り返る。
「おいセリア? お前何したんだいったい。見られてるぞ?」
「なんでわらわなのじゃ!!? 明らかにトキを見ておるじゃろ!!?」
まぁそうだよなぁ…。
とりあえずもう一度先生を見てみるとやはり俺か…。
あー…。
「先生…ひとつ質問してもよろしいでしょうか?」
まさかとはおもうが…。
「ええ、いいですよ」
うん。笑顔は消えたけど丁寧だ。
「もしかしてこの学校の先生って人の魔力とか見えちゃったりします?」
「そうですね。詳しくは見えませんが大体の量とかはわかりますね」
そうか……。
世界はいろいろあるな。
「そのー…なぜあなたのような人がこのクラスにいるんでしょうか?」
うわー、いきなり全否定されたー。
「あなたなら世界でもトップの『すみません。入学手続きおくれたので』そうですか。わかりました。」
ふぅ助かった。
いきなりバラされそうになるとは。
てかこの世界魔力見えるのかよ…。
危険だなここ。
「では、今日はレクリエーションをしたいとおもいます。いまから各施設のパンフレットを配りますので見て置いてくださいね」
そう言って、パンフレットを配りながら話を続けるアネル先生。
「基本授業は6時間体制で行われます。魔法理論 火 水 風 土 剣術 実技で一週間6日、各3時間授業のローテーションになります。学生課にいけば単位付きの依頼もありますのでそっちでとってもらってもいいです。おこづかいがほしいという人は行ってみるといいでしょう。更に自分の実力が知りたいという人は、数人でパーティーを組み洞窟に入ってみるのもいいかもしれません。賞金は出ませんが、各層までいくと単位がでます。倒した時の素材も高く売れますね。一応現在の最高は5年生の39層になっています。また、この洞窟は死亡しても学園は責任を負えません。なぜなら、学園というより国に管理されているからです。別に行かなくてもいい場所なので行かない方がいいでしょう」
お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
ダンジョンじゃねーか!!?
RPGきたぞ!!!!!!?
必ず行こう!!!
一番奥に何があるか調べなくては!!!!!
にしてもクラス単位で授業受けるのか。
ずいぶんと違うな。
「一年の予定としましては。闘技大会やクラス単位の洞窟探索などがありますね。詳しいことはパンフレットを確認ください。では、明日は各属性の現時点でのレベルと最高レベルの計測をおこないます。説明は明日しますので今日は各寮に戻ってください」
おい、そう言えば俺寮どこだ!?
アネル先生が出ていくのをまって、後ろを振り返る。
教室は途端に騒がしくなった。
「おい、セリア? 俺の寮ってどこだ? 知らんぞ?」
「ふむ、わらわと同じ火の寮じゃ。ちなみに同室じゃ」
は?
「お前何言っちゃってんの!? 女子寮とかないのかよここ!!? なんでお前と俺が一緒なんだ!?」
「何を言っておるのじゃ? わらわの護衛なんだから当然であろう? それにもう肌も見られておるしの…ぐすん…」
なんでそこで泣く!!?
「あーもういいや…てか二人部屋なのかここ」
「違うぞ? 三人部屋じゃ。あと一人いるがの。ちなみに女子寮と言うのはないが、部屋は女子だけの階にお主を入れたのじゃ」
何してくれちゃってんのこいつ!!!?
それ女子寮じゃん!!?
「お前そしたらもう一人の女子どうすんだよ!!? いきなり男と同じ部屋になるんだぞ!!?」
「ふむ。考えておらんかった。なんとかなるじゃろ。」
ならねーっての!!? 俺の嫌いなケバイ女とか来たら化粧の匂いで俺は死ぬぞ!!?
むしろ俺が殺す!
そもそも、誰がきても嫌がるだろ!!?
「気にするでないぞ? では行くのじゃ。荷物は届いておるはずじゃからの」
「しゃぁねぇ…レンもいくぞ?」
そう言って、三人で寮を目指す。
――――迷子
「ってなんで迷ってんだよ!!? 最初から見えてただろ!!」
盛大に迷っていた。
「知らないのじゃ。わらわは一番近いと思った道をいったまでじゃ!!」
なんで王女は道に迷うんだ!!?
なんかそう言う法則でもあるんじゃないのか!!?
「だから最初にそのまま真っすぐ行けって言っただろ!!!?」
「しらんのじゃー!」
こいつは泣きながら俺にしがみついている。
なぜかというと。
『グギャアア』
『Automatisches Abfangen』
《自動迎撃》
ドドドドドドド
こいつのせいで学校から出て、森の中を迷っていたからだった。
「なんで寮に向かって、学校出て森入ってんだよ!!?」
「……ぐすっ…怖いのじゃー…」
『ギャグアア』
あー……帰りたい…。
―――――7時間後
「ついたぞ……セリア」
やっと寮についた。
入学初日からかなりの魔物を倒したのは俺達が初めてではないか。
と言うか迷った奴は初めてではないか?
だって目の前に寮があったのに迷ったからな。
「はぁはぁ……そうじゃな」
「疲れてるようだが、お前のせいな上にお前は何もしてないぞ?」
こいつはひたすらしがみついて俺の邪魔をしていた。
レンですら頑張ってたのに。
せめて後ろにでも居てほしかった。
「うぅー……えぐ…」
もうこいつが泣くのには慣れた。
水分をどこから補充しているんだろうか?
「ほら、泣いてないで行くぞ。二階だからすぐだ」
泣いてるセリアをお姫様だっこでつれていく。
「あったここだここ」
ガチャッ
ドサッ
「いたっ!!? いたいのじゃー……ぐすん…」
部屋に入ってすぐにセリアを落とした。
だってそうだろ?
入った瞬間、部屋にいたやつと目あったし。
その女の子は下着姿のままこちらを見つめていた。
あー、そういえばもう九時だ。。
パジャマになっても不思議ではない
キレイな女の子だなー。
身長は160ないくらいかな?
158程度だとおもう。
胸は~CかDだな。
黒髪黒瞳で色白な女の子だ。
サラサラの腰まである黒髪。
頭には白いカチューシャ、カチューシャに双葉のようなリボンがくっついている。
下着は薄い水色だな。
これが日本人じゃなかったらなにが日本人なのだろうか?
これでもかってくらいにお嬢様な子だ。
でも変な感じだ。
全然赤くもならないし。
あれ?
「あ、同じ部屋の方ですね。私はEクラスのリリ-・シャルレと申します」
そう言ってペコリとおじぎをした。
思いっきり横文字の名前だった。
ってかあれ?
なにこの反応?
「あ、あれ? えっとリリー。お前男に見られてもはずかしくないのか? ちなみに同じクラスのトキ=キサラギだ」
? と首をかしげているが。
一応挨拶されたので俺も返してみる。
「そうですね。私の存在価値などないに等しいので別に大丈夫ですよ? それに私途中で亡くなるとおもうので。それまでよろしくお願いしますトキさん」
は?
なんか今までにないタイプだぞ?
てかなんだこのタイプ?
「なんで死ぬんだお前? そもそもなんでそんなキレイで存在価値ないんだ? 別に言いたくないなら言わなくていいが」
うん。もっともな質問だな。
「はい。別に隠すことじゃないですが。お父様に洞窟の深層まで行って、シャルレの名を残せと言われていますので。それか魔力の強い方の子を成せと。お強いお兄様が後を継ぐので私みたいな弱い人間は必要ないんですよ? せめて名を残すために死ねとおおせつかっています」
そう言ってニコリとほほ笑むが…。
これはひどすぎるんじゃないか…?
てかどんな父親だよ…。
「じゃぁお前はむざむざ殺されにこの学校に入ったのか?」
「はい。運が良ければ生きられるかもしれませんので」
そんな事を言ってるが……。
洞窟のレベルは知らないが、100パーセント無理だろう。
リリーから魔力なんてほとんど感じない。
「兄と父親はどれくらい強いんだ?」
「そうですね、お父様は軍の軍事総監をしています。お兄様は軍のトップですね」
俺はセリアを見る。
ブンブンブン
どうやらブレの兵士じゃないようだ。
ふむ。
つまりこいつは…。
「お前の家系は強い奴ほどえらいってことなのか?」
「はい。そうですね。女性であろうと強い方が家を継いでいたようです」
そうかそうか。
『Als die Tiefen zur äußeren Schicht』
《深層より表層へ――魔力放出》
ブゥゥゥゥゥン
パリィィィン
俺は属性など付加させないで、魔力だけを放出した。
息をするのもつらいほどの高密度の魔力。
セリアなんて座り込み青ざめて震えている。
リリーは床に倒れ、息が出来ないのか口をパクパクしている。
ピシッピシッ
部屋に亀裂が入りはじめ、窓なんて速攻で割れた。
数分後、俺は放出をやめた。
「さて、お前の父親や兄より。俺の方が強くてエラい。ってわけで」
「お前今から俺の奴隷だ!」
めちゃくちゃである。
たしかに魔力的には強いかもしれないが刻は家系でもなんでもないのだ。
「はい」
この娘も常識が通じない。
それも、小さい頃から魔力が弱い奴は存在に価値などないと父親に言われ続けたので、誰であろうと魔力が高い人=偉いという構図になっているのだ。
「命令だ。俺が許可するまで死ぬな!! そしていつか父親と兄を倒し家を継げ!!」
許可なんてするつもりないけどな。
「洞窟に行くことはしませんが、私ではお父様やお兄様には…」
そんなことはわかっている。
『Keine Notiz ruft Herausziehen aus』
《白の本――無記ページ抽出》
俺の手には透明な球体がおさまった。
「ご主人さま~またやるんですかー? しかもまた時間かかりそうな子ですし…ご主人さま、これだとなかなか渡れませんよ?」
そうハクが言ってくる。
「仕方ないだろ? 放っておけるか? このままだと、確実に死ぬぞ? それに俺の周りにいる雛だけでも羽ばたかせてやりたいだろ?」
「はぁ……ご主人さまがいいならいいですけど。まったく優しい神様ですねー…」
まぁ俺もそうだと思うけどさ…。
なんか見てると放っておけないんだよな…。
「よし。リリー脱げ」
「はい」
全く顔を赤くもしないで、脱ぎ始めるリリー。
「ってお前なんで脱いでんの!!?」
「はい? いま脱げと?」
違う!!
なんでこいつは下まで脱ぐんだ!!?
もういいや…さっさと終わらせよう。
俺はリリーの胸に球体を押しつける。
「あっ……んっ…あつい…」
っておい!!?
ここで顔を赤らめるな!
不意打ち反則!!
球体はずぶずぶとリリーの中に入っていった。
「はぁ…はぁ……」
リリーは真っ赤な顔で息を荒くしている。
「今お前の中に真っ白な魔力の核を埋め込んだ。それはお前が努力したらしただけ魔力を上げることが出来る。頑張って強くなれ」
こいつも自分で強くならないといけないしなぁ…。
まじ時間かかりそうだわこれ。
「はい。ご主人さまにもらった熱い核。大切にします」
そう言って、目を閉じて両手を胸の前で合わせているリリーだが……、
おい。
「なんでご主人さまなんだ? トキでいい」
「奴隷ならそう呼ぶのかと思いまして。ではトキ様ですね。しっかり仕えさせていただきます」
仕える必要なんてないんだが…。
「ご主人さま~世間知らずな子に奴隷なんて言うからですよー。いくら命令するためと言っても、もうちょっと方法があるでしょう? でもご主人さまって呼ばないで助かります。わたしとかぶっちゃいますからね」
どっちにしろディアに被ったよ!
「はぁ…あとリリー。お前人前で脱ぐな。そのまま襲われそうだ」
こいつも全然自分のことわかってないぞ。
「そうですか? でも今まで襲われたことなんてありませんが?」
それはお前が家から出なかったからだ!!
危険すぎるぞこの子!!?
てか危険×2預かっちまった!!
「まぁとりあえず脱ぐな。あとお前早く着替えろ。なんでずっと裸なんだ」
こいつずっと全裸だった。
リリーはゆっくりとパジャマを着始めた。
てか下着つけない派なのか!!?
「すみません。トキ様に着ていいと許可をいただいていなかったので、着てはいけないのかと」
めちゃくちゃこの子の扱い難しーーー!!!
「そうだなぁ…セリアは…だめだな。レンを見本にでもして、一般常識学んで自分で行動してみろ」
「はい。それでは」
そう言って、リリーは俺に抱きついてきた。
は?
「お前何してんの?」
かわいく首をかしげているが…。
「レンさんという子の真似を」
ああ、たしかにレンは今俺の腕に抱きついているが…。
「やっぱレンを見本にしちゃだめだ。はぁ…俺が教えるよ。今日は寝ていいぞ」
「ではお先に眠らせていただきます」
なんか疲れるな…。
また大変な雛が出来たぞ…。
「ご主人さま~私はいつまで杖のままなのですか?」
「お前はこの世界にいる間はずっとだ。」
「ひどいっ!!? なんかライバルいっぱいで出来そうなのに! この姿じゃ何もできません!!」
ハクの言葉を無視して俺はレンとベットに入った。
「セリア~いつまでも座り込んでないで寝ろ~って。あ! 俺風呂入ってないし。レン…とハクもいいや来い風呂入るぞ。セリアもちゃんと入るんだぞ? 汚かったら無理やり明日の朝洗うからな?」
そう言い、三人で風呂に向かった。
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