的・得・地 発音は同じなのに……
今日のテーマは「的」「得」「地」の用法であるが、これらは発音が全部deである。
読み方は同じなのにもかかわらず、文法的役割はかなり違う。
・「的」 ~の
中国語の文章を見ていると「的」ばかりだなぁ、と思うかもしれない。「的」は日本語でいう「の」の意味でかなり多用される文字の一つである。
しかしこの「的」はかなり曲者で、様々な用法がある。
①所属・所有を表す
これは別に簡単である。A的Bといえば、「AのB」の意味になる。
我的日记 私の日記
中国的经济制度 中国の経済制度
しかし中国語は日本語のように「の」を連発しないことも多く、例えば「私の父」「私の学校」というときは「我爸」「我们学校」と「的」を入れない。
さらに、「幸福生活 幸せな生活」「通俗语言 分かりやすい言葉」というような常用される組み合わせでは「的」を省いてしまう。
この省くか省かないかの見極めも難しく、何でも省けるわけでもない。「我家 私の家」はよくて「我的照片 私の写真」はダメとか単語によって決まっているとしか言い難い。
※你要看我照片?(俺の写真見たい?)とか言うときは省けたりもする。イミフ
②名詞を修飾する
動詞・形容詞+的+名詞で、名詞を修飾することができる。よく中国人が日本語を喋ると「写真撮るの人こち来て!」と動詞と名詞の間に「の」をつけて言ってしまうのはこのせい。
新的车站 新しい駅
唱的人 歌う人
重要的问题 重要な問題
对政治的看法 政治に対する見方
現代日本語の場合、形容詞や動詞は直接後ろに名詞を並べることができる。「かわいい」に「犬」で「かわいい犬」とか「歩く」に「人」で「歩く人」とか言うことができてしまう。そうできないのは形容動詞で、「きれいだ」と「女性」を合わせると「きれいな女性」になって、「きれいだ」が連体形になる。この「的」は連体形に似ている。
③~なもの、~する人
日本語でも「これは私のだよ!」という感じで「の」を名詞のように使うことがあるが、同じ現象が中国語にもある。
这个是我的!
これは私の(もの)だ!
他にも「北京有什么好吃的」といえば「北京に何かおいしいものはあるか」という意味になる。「好吃」のうしろに「的」をつけるだけでも「おいしいもの」を表すことができる。
「的」は形容詞の後ろについてそのまま述部になることもできる。
他人很好。 彼は性格がいい。
→他人很好的。 彼は性格がいいよ。
この二つの文の違いの説明は難しい。上はただ事実を述べているのに対し、下は何か確証があって言っているように聞こえる。
先日紹介したABB型の形容詞の後ろに「的」をつけて、「井水凉冰冰的 井戸水が冷たい」「眼睛水灵灵的 目が涼やかである」という感じでそのまま述部にするのもよく見られる。
他にも、
他是男的 彼は男の人です。
她是女的 彼女は女の人です。
「男的」「女的」といえば「男の人」「女の人」という意味になる。「男性的」とか「女性的」という意味ではない。
⑤動詞について、肯定や既に行った動作であることを示す
你肯定知道的。 あなたは知っているに違いない。
它是怎么来的? それはどうやって来たのか?→それはどういう由来なのか?
この「的」をつけると強調する感じになる。日本語の「~なのだ」と似て「我去过他家 私は彼の家に行ったことがある」が単なる事実の報告であるのに対し、「我去过他家的 私は彼の家に行ったことがあるんだよ」というニュアンスの違いが出る。
さらに「的」にはそれが過去に行われた動作であることを示す場合もある。「了」と比較すると、
你怎么来了? なんでお前きたの?(キレてる)
你怎么来的? お前どうやって来たの?(方法を聞いている)
という感じでかなり意味が違ってくる。「是……的」という感じで「是」と他の動詞と同じ文の中で同時に使うのは最初戸惑うかもしれないが、単なる強い肯定の意味である。
⑥動作の対象につく
先日の離合動詞の話とも似ているが、「生气 sheng1qi4 腹を立てる」など一部の動詞は「生我的气 私に腹を立てる」という具合に動詞+人+的+目的語という構造になって、「的」がつくものが動作の対象になる。
・得
さて、次に「得」である。「得」は今まで何度か触れてきた。
①後ろに補語を導く
形容詞・動詞+得+形容詞で、~の様子が××だというのを表す。
字写得不清楚 字がはっきり書かれていない
白得像雪 雪のように白い
成語も後ろに来られる。
搞得乱七八糟 メチャクチャにしてしまう
搞 gao3は色々な意味があるので、とりあえず「する」という意味と考えてください。
②できる、してよいなど可能の意味
結果補語や方向補語の間に「得」が入ると、その動作がより可能かどうかに焦点があたる「可能補語」になると先日書いた。
実はそもそも「得」自体に「できる」という意味があり「这个苹果吃得吗? この林檎は食べられるか?」と言うこともできるが、私は「这个苹果能吃吗?」の方をよく聞く。
他にも「舍 捨てる」に「不得 できない」をつけて「舍不得 離れがたい」とか、動詞の後ろについて可能に関する表現を作ることができる。
・地
実はこれが一番簡単である。「地」は単に動詞・形容詞の修飾語を作るもので、英語の-lyのようなものだ。
慢 man4 ゆっくり slow
慢慢地 ゆっくりと slowly
→慢慢地就习惯了 そのうち慣れます
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さて、中国語はこれだけ声調も音節もたくさんあるにも関わらず、同音異義語が多い。例えば「在 zai4」は「再 zai4」と全く同じである。「在吃 食べている」「再吃 再び食べる」も全く同じ発音である。
他にも「li4」という発音の漢字は「力」「利」「立」「丽」「历」「厉」「栗」「例」「隶」という感じでキリがない。中国語は「形態素」と「語」の境が薄いのかもしれない。
いずれにせよこうした同音異義語を書き分けるためにも、漢字なしでは中国語は成り立たない。
△おまけ。
「的」「得」「地」は全て多音字である。
・得
得 de2 動詞。手に入れる
取得 qu3de2(取得する) 获得 huo4de2(獲得する)
得 dei3 ~しなければならない
我得走了 wo3dei3zou3le0 もう行かなくてはいけない。
・的
的 di1
的士 di1shi0 タクシー
的 di2
的确 di2que4 確かに
的 di4
目的 mu4di4 目的
・地 di4
地板 di4ban3 床板