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誰が為  作者: 月鳴
おまけ
5/15

出番のなかった王子様

タイトルは作中の役職名とは関係ありません。○○○の王子様だとかハンカチ王子だとかそういう感じです。


※このお話はパラレルワールド設定やゲームのシナリオ的なものです。

※シリアスがどこにもありません。メタ発言、コメディチックそういったものがメインです。

※おそらく今までの世界観がぶち壊れます。

以上のことが大丈夫でしたら自己責任でお読みくださいませ。


ではどうぞ↓


 


 乙女ゲーム『ラブラビリンス』


 それによく似たこの世界には、ヒロインのために用意された容姿端麗才気煥発な男児らがいた。しかし王太子以外の彼らは幸か不幸かヒロインに選ばれることはなく、そのうち何人かは序盤にて舞台を降ろされてしまう者が存在した。

 その哀れな王子たちの内訳はこうだ。

 次期公爵、王太子付き騎士、盗賊の三名である。


 彼らもまた各々の理由でヒロインとヒーローの出会いの場である夜会に居合わせていた。当然だ、その夜会にてヒロインが彼らの中から誰か一人を選ぶことはすでに決定されていたのだから。

 次期公爵は、王太子と同じように伴侶探しとして、騎士は王太子の護衛として、盗賊は夜会の喧騒に乗じて城の財宝を盗みに、というように。


 結局彼らはヒロインと縁を結ぶことはなかったが、このままでは出番のなさがあまりにも哀れで、いや乙女ゲーム要素が少なすぎる故に、いやいや作者の気まぐれな思いつきによって、───ま、まあ理由などどうでもいい。

 つまり、実際はあり得なかったが、それぞれの王子様(こうりゃくたいしょう)との出会いを、もし、という形で、あるいはゲームでのルートとしてお話ししたいと思う。




 次期公爵の場合──


 ……もう何度目になるだろうか、憂鬱極まりないこの夜会と言う名のお見合いは。今年19になる王太子より二つほど年嵩の私は、彼より早くにこう言った場に出ていた。彼は生まれてからずっと共にいる従兄弟であり幼友達であり良きライバルである王太子──アレクセイも、もううんざりだなんて言っていたけれど私の方こそもううんざりなんだ。そんなこと年上(あに)としてのプライドで言えやしないのだけれど。


 アレクセイは若干女嫌いの節がある──その原因はこの夜会に訪れる押しの強い令嬢(にくしょくけいじょし)たちとあやつの母上、私にとっては義伯母上の影響ではないかと睨んでいる──…話を戻すと、そんなアレクセイには確かにキツイものがあるのだろう。

 女性はどちらかといえば好きな私でさえ嫌になるくらいだしな。


 《アレクセイ:どの口が言っている。従兄上(あにうえ)みたいな男を女好きと言わずなんと言うのだ。次から次へと手を出しやがっ──……》


 おや? 今何か聞こえたような…

 ふふっ、まぁ気のせいだよね?


 次から次へと秋波を送ってくる彼女たちには悪いけど、興味ないんだ。もう用済み(・・・)だしさ。


 ──はぁ…僕の運命の人は一体どこにいるんだろう?



 人酔いしたと言い訳をして私はバルコニーへ足を向けた。今日は1日快晴であったから美しい星々が見られるだろう。

 そう期待して向かった先で見つけたのだ、僕の運命の女神(ヴィーナス)を───




 次期公爵(おんなのてき)の場合──

 夢見がちな彼は偶然という運命を信じ込み、簡単にいうとヒロインの容姿に一目でノックアウトされ自分に自信のある自己陶酔野郎な彼は自らが押せば傾くだろうとヒロインにアタックしまくり、逆に気持ち悪がられショックを受けるも、(ナルシスト)が持つ意味不明なポジティブさを遺憾なく発揮し、ストーカー認定寸前まで至りヒロインを追い詰め、いや追い込み、ゴホンッ─誑しこみ、ついに諦めたヒロインとゴールイン………という未来があったかもしれない。


 次期公爵殿の普段の一人称は僕。私というのは公用、というのは建前で本当の理由は「なんか『私』ってカッコいいから」


 周りは声を揃えていう、どうしてこうなった。


 誤解しないでほしいのだか彼は少し残念なだけでルックスもスタイルもいい美青年だ。腹黒系の。いや語弊があるな、彼は─そう策謀に秀でているのだ!なにせ将来は宰相予定だから!


「そんなに必死にフォローしてくれなくてもいいのに(にっこり)」


 以上で答弁を終了します!





 王太子付き騎士の場合──


 昔から口下手で、人の目が異様に気になる子供だった。

 体格だけは立派になり見事王太子付き騎士に選ばれたがどうにも自信のなさを見せてしまいそうで口を開くことは苦手としている。

 だから必要最低限の事以外は絶対に口にしなかった。

 逆に言ってしまえば必要最低限のことだけなら間違えようがなかったから話せたのだ。

 そんな理由を知らない周囲の者たちは無口な自分のことを『寡黙な騎士(サイレンスナイト)』なんてちょっとこっぱずかしいあだ名で呼んでいるらしい。裏でひっそりと。

 ──もっとも本人の耳にまで届いているのだからどの程度のひっそりなのかは知れたものだ。


 本来の身分である侯爵家三男としての夜会なぞ自分からすれば地獄と変わらないが、アレクセイ殿下の護衛としてならばまだ耐えられる。何故なら自分はあくまで護衛という大事な職務の最中であり、その真っ当な理由を持ってご令嬢たちを跳ね除けられるからだ。

 跡も継げぬ侯爵家三男の自分などなんの旨味もないだろうに何故彼女たちは群がってくるのだろうか?

 確かに王太子殿下の近衛騎士としての名誉な地位も持ってはいるが次期公爵閣下…現シャルル子爵には及ばないし、かの方ように口達者でもない。──そういえば、かの方に集まるおなごたちはいつも決まっているような………いや、考えるのはよそう。なんだか嫌な予感がする。

 自分なんぞに理解できる方ではない、次期公爵閣下というお人は。


 アレクセイ王太子殿下には、そんな次期公爵殿や自分など比べ物ならないほど大勢の子女が集まる。子女どころかその親である重鎮貴族たちもよく集まる。それに嫌な顔や疲れた顔を絶対見せず王族として相応しい威厳とオーラを持って一人一人接する殿下に自分の頭は下がるばかりだ。…上がることなどありはしないけど。

 殿下は本当に素晴らしいお方だ。改めてこのお方にお仕えできる幸運を感謝したい。


 人の波が切れ殿下が次期公爵殿とバルコニーにて二人で話したいと仰るので、自分は声の聞こえない、しかし姿が見える適度な距離の中庭へと降りた。

 しばらく辺りを警戒していると、中庭にある壮麗な造りの噴水近くで淡いピンクのドレスを着た令嬢が辺りをキョロキョロとどこか不安そうに見回しているのが見えた。

 ──迷子だろうか。

 心細そうな顔にいてもたってもいられず、一度殿下の無事を確認しその令嬢に近づいた。

 自分はどこからか迷い込んでしまった猫などを放っておけないタイプなのだ。庇護欲をそそるか弱い生き物はどうしても守らねばと思ってしまう。


 彼女はそんなセンサーに見事に引っかかった、これが忘れもしないレイチェル嬢と自分の出会い──




 王太子付き騎士の場合──

 無口無表情大型ワンコ属性※父性付き、な彼は純情そのもので大変なロマンチスト。生真面目すぎてちょっとネガティブになったりすることもある。

 自分の容姿の良さや価値に疎く女慣れしてない。というか母親とメイド以外の女とまともに接したことがない。

 小さくてか弱いけど芯が強いという好みドンピシャなヒロインに庇護欲全開で慣れないことにわたわた赤面しながらも決めるところは決める甘酸っぱさは攻略対象中随一のほのぼのルート。鈍感だけど野生の勘がすごいんです。

 周囲はヒロインに関わると騎士の仏頂面が見事に崩れるので面白半分微笑ましさ一割残りその他で暖かく見守るどころか茶化されまくる。

 ヒロインと結ばれると騎士は辞し婿となり伯爵家を継いで二人仲良く切り盛りしていく。

 ちなみにヒロインの次に敬愛する王太子に対しては、これからは騎士としてではなく家臣としての忠誠を新たに誓う。


 ゲームファンの間ではその容姿や一人称も相まって「自分、不器用っスから」という文字入れスチル画像が流行った。


 ※時期的に不謹慎ととられたら差し控えます。なお先日亡くなられた俳優さんを意識した訳ではなく某漫画キャラのイメージです。





 盗賊の場合──


 この盗みが成功したら俺、結婚するんだ……って何死亡フラグ立ててんだよ俺!だいたいまだ結婚なんてしねーし!相手いねーし!それにこれ乙女ゲームだろうが!こんなヒロインと出会ってもいない序盤で結婚してどーすんだよ!相手誰だよ!つーかなんで俺だけこんなメタいんだ!!!


 ─あー、ゴホン。では改めて。


 この盗みが成功したら俺、しばらくなりを潜めてちょっとずつお宝を売っぱらって他国の田舎に引きこもるんだ。

 王城なんて大物の盗みに成功したら確実に大規模な捜索網が広げられる。そこに引っかからないよう巧妙に逃げ切って当分ここで得た金で暮らすんだ。

 待ってろ!憧れの田舎暮らし!


 俺は最近巷を騒がせている赤狼(せきろう)という盗賊だ。名の由来は一人で仕事をすること=一匹狼と黒尽くめの隠密服から見える唯一の瞳が真紅だからだ。

 案外安直だと思うだろ?俺もそう思う。ま、俺が自分で名乗り始めたわけじゃなくて、俺の鮮やかな手口が物語のようだと思った街の人間が勝手に言い出して定着したらしい。

 気配を悟らせず証拠を消して宝を跡形もなく奪い去る。

 ただそれだけのことなんだけどな。


 俺は、盗賊を家業とする隠れ里に生まれた。ごく少数の人間〈ほぼ血族〉で構成された里では老若男女関係無しに盗みの技術を鍛えられる。一部の例外もない。

 年寄りたちより代々その技術は受け継がれその精度は継ぐごとに向上する。一代ぽっきりの他の盗賊には真似できない洗練された技だ。時折この技術目当てで里が襲われることもあるくらい同業者にとって価値のあるものらしい。


 その技は幅広く、割と簡単で手軽なスリから貴族などの屋敷に潜り行う大規模なものまで様々だ。

 里にとって女は子孫を残すための大事な存在なので死の危険のある盗みは基本させない──まあ一部、例外はいるが──そういう大きな仕事は男のものだ。

 盗みの方針は長老たちが話し合って決めるが行うのは単独。失敗は許されないが、もし失敗した場合は技術漏洩を阻止するため消される(・・・・)らしい。実際失敗した案件を見たことがないので詳しくは知らない。


 そして里の男は一定の年齢になると、独り立ちの試練が与えられる。俺は、里の若い者の中で一番優秀だと言われていて、だからこの王城という巨大な標的を与えられたのだ。

 独り立ち出来れば里のルールから一旦解放されて、外の世界に行ける。


 何故なのか、─それは番を探すためだ。


 里の中で見つけるもよし、外より〈もちろん里のことを理解した上で〉相手を連れてくるもよし、但し相手の許可を得ずに無理やり連れ去ることは禁じられている。しかも内容が悪辣極まりない場合、そいつは里を追放されることもある。

 物は盗んでも、者は盗まないのが里の掟だ。


「王城つっても意外と楽に侵入出来たな。ザル警備かよ。

 ま、派手な夜会中じゃ浮れるのも仕方ねぇーのかなァ」


 宝物庫に続く隠し通路と普通の通路を巡りながらそうボヤいた時だった。


「そこに誰かおりますのっ?」


 驚きと不安の色が混じったような声が聞こえた。


 〈やっば…見つかっちったか?参ったな、この声女だろ……〉


 里の掟その二、人に死ぬような危害は与えてはならない。時間は奪っても、命は奪わない──か、もちろん殺すつもりなんて毛頭ないが、どうやって口を塞いだもんか。頭を掻きたくなる気持ちを抑え、声のした方を見る。


 そこにいたのは、俺の瞳のような真紅のドレスを着た美しい女だった。


 俺は一目見て思った。


 ──欲しい。 こいつが欲しい!


 身体中の血が滾り、紅い瞳はさらに色濃くなったのをどこか遠いところで感じていた。




 盗賊の場合──

 一族郎党盗賊で根っからの泥棒な彼とは甘くて優しいラブロマンスというよりもスリルショックサスペンスというような刺激に満ちた恋ができる。他のルートとは毛色が違うこともありファンが多かった。

 盗賊に見染められたヒロインは自分の倫理観と悪なのに憎めない盗賊のポリシーの間で揺れるのだが、ヒロインもまた一目見た瞬間から盗賊に惹かれていたことに気づき全てを捨ててついていくことを決める。

 逃避行中、盗賊よりその技を仕込まれたヒロインは盗賊と一緒に盗みに入ることもあり危険のドキドキと恋のドキドキを両方体験できるストーリーとなっている。

 最終的には掟の厳しい里を出て、遠い街にて足を洗った盗賊と二人で盗賊が元々望んでいた穏やかな田舎暮らしを始め、子供にも恵まれ幸せなエンディングを迎えるのだった。


 なんだか気持ちヴァンパイア的な匂いがしなくもないですが普通の人間です。雰囲気だけです。


 Q.何故里を出て田舎暮らししたかったのか?

 A.オカンの飯がまずかった。


 きっとそんな感じ。里の見た目は普通です。カモフラージュの意味もありますが、普通の生活をしてる人間のスキルがちょっと一般離れしている、というだけです。だから悪の組織という感じが全然ない。だって乙女ゲームだもの。




 ──いかがでしたか?

 これにて彼らの存在しない物語は幕を閉じますが、この世界とはまた別のその場所でもしかすると起きているかもしれません。

 その場所の彼らにも幸あらんことを。

 そして、この場所の彼らにも幸あらんことを。



ちょっと妙なテンションに成ってしまいました。読み返してあんまりひどいと思ったら一旦下げます…。

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