今日は待ちに待ったクリスマス。
『今日は−−に会えるかな…?』
恋する乙女達は大好きな彼と聖なる一夜をすごそうと、今日まで準備をしてきました。
そして今日。
待ちに待ったクリスマス・イブ。
彼と出会った場所、思い出の場所…思い思いの場所で彼を待つ姿が見られます。
ゴーン… ゴーン… ゴーン… ゴーン…
ゴーン… ゴーン… ゴーン… ゴーン…
そして今、夜の8時を告げる鐘の音が響き渡ります。
辺りはもう真っ暗。
ところどころに見える街灯の微かな光、クリスマスに向けた色とりどりの飾り付けの輝き、
そして、空高くに広がる満天のプラネタリウム。
舞台は整いました。
後は彼が来るのを待つだけ…。
1人、また1人と彼がやってきては冷え切った手を温かいその手で包んでもらって、
幸せそうに去っていきます。
ゴーン… ゴーン… ゴーン… ゴーン… ゴーン…
ゴーン… ゴーン… ゴーン… ゴーン… ゴーン…
とうとう10時になりました。
みんな彼と出会って幸せそうに去ってゆきました。
……あれ?
みんな幸せなのかと思ったけれど、まだそうではない女の子が1人いたみたい。
こんな寒いのに、たった一人で彼を待ち続けているんだ。
彼女は誰だろう…?お父様に聞いてみよう。
〔お父様、あの少女は誰ですか?〕
〔ああ、あの子は毛利蘭という高校生だよ〕
〔彼女の待つ人はだれですか?〕
〔彼女の待ち人は工藤新一という子でね、どうやら随分長い間あっていないようだな…〕
〔その人は今どこにいるのですか?〕
〔ふむ…。彼女のごく近くにいるはずだがな〕
〔それでは、なぜ彼女は待たなければならないのですか?〕
〔彼に会いたいのだよ。彼女は、彼がいつも近くにいることを知らないからね〕
〔そうなんですか…〕
〔しかし、もう大丈夫だろう。彼は彼女の元へ向かっているよ〕
蘭ちゃんは、新一君の事が大好きなんだね。
でも、新一君は蘭ちゃんに会えないみたい…。
蘭ちゃんを喜ばせることって、私にはできないのかな?
タッ タッ タッ
タッ タッ タッ
軽快な足音を響かせて誰かが近づいてくる。
タタッ
すぐ近くで止まったみたい。
でも、暗くて誰なのか、どの辺にいるのかはわからないな…。
新一かと思ったけど、そうじゃないみたい。
新一だったら、すぐに声をかけてくれるもんね。
新一…やっぱり、来れなかったんだね…。
新一は今、事件を解決しようって頑張ってるんだよね。
私が今1人なのと同じように、新一だって、1人なんだ…。
…もう、来ないよね。
今日は帰ろう…。
〔お父様、蘭ちゃん帰っちゃうよ?〕
〔うむ…〕
〔…!ねぇ、お父様?〕
〔なんだい?〕
〔今から雪、降らせられる?〕
〔お前がしたいと思うのなら、できると思うよ〕
〔…私、やってみる!〕
蘭ちゃんは、もしかしたら新一君と会えないかもしれないけど…
でも、ホワイト・クリスマスって、なんだか奇跡を起こせそうだから…
蘭ちゃんの気持ちが新一君に伝わって…
新一君の気持ちが蘭ちゃんに伝わるかもしれないから…
見てて、蘭ちゃん。
私、頑張るから…。
去年は新一とあの場所で待ち合わせして、クリスマス・プレゼントを交換して…
楽しかったな…
でも…今日は私一人ぽっちなんだよね。新一も、どこかで一人ぽっちなんだよね。
寂しいけど、それは私だけじゃなくて、新一もなんだよね。
ふと近くの家を除いてみると、小さな女の子と男の子がプレゼントを貰って、
赤々と燃えるロウソクの火を家族で囲んで楽しそうに笑っていた。
公園のモミの木は綺麗にライトアップされていて、闇の中で輝いていた。
フワッ
え…?
なんだか柔らかくって優しいものが降ってきた気がして、空を見上げた。
フワッ フワッ
サラサラサラ…
雪…だ…。
真っ白い雪。空からの贈り物。
去年、新一とホワイト・クリスマスを過ごしたくて毎日祈ったっけ…。
でも、結局満点の星空でホワイト・クリスマスにはならなかったんだよね…。
今年はお願いしてないはずなのに…
一緒に見たかったな、新一と…。
『蘭!』
え…?
「し、新一!」
なんだか誰かに呼ばれた気がして振り返ると、優しく微笑む彼がいた。
ったく…。
蘭の奴、こんな寒い中どこいったってんだよ…。
今日、5時ごろ学校から帰ってくると、家のどこにも蘭の姿が見えなかった。
不思議には思ったけれど、また園子とでも買い物に行ったんだろうと思って…
気がついたらもう10時を回っていた。
そして、ふと、"新一"の携帯を見て、蘭からのメールに気付いた。
『メリー・クリスマス!って、直接言いたいな。
去年と同じあの場所で、ずっと待ってるからね。 蘭』
それからすぐに家を出たはいいのだが…
ったく!
"去年と同じあの場所"ってどこなんだよ!
その示された場所が分からなくて、町中を走っていた。
そしてようやく見つけたとき、蘭はどこか寂しげで…
そして、気付いた。
自分の姿が"新一"ではないということに。
蘭の待つのは新一で、コナンではないということに。
しばらくどうしようか、と悩んでいると、蘭は立ち上がり、自宅へ向かって歩き出した。
そのままにしていた方がいいのかも、と思ったが、誰かが
"その姿でもいいから話しかけて"
と言っている気がして、それでも躊躇していると雪まで降ってきて、
気がついたら声をかけていた。
「蘭!」
蘭はパッと振り返り、俺を…いや、俺の中の"新一"を見て優しく微笑んだ。
〔お父様!蘭ちゃんと新一君、会えたみたいだね!〕
〔そうだな〕
〔やっぱり、ホワイト・クリスマスって、奇跡を起こせるんだね!〕
〔ああ〕
「あ…あれ?コナン君?」
一度瞬きをすると、いたと思った新一はいなくなっていて、変わりにコナン君が立っていた。
「ごめんね、なんか、今新一が居たような気がして…」
そう言うとコナン君はなんだかちょっと寂しそうに笑って、
「新一兄ちゃん、今までいたんだよ。蘭姉ちゃんが振り返るまでずっと。
…でもね、警察の人から電話が来て、急いで行っちゃった」
「そっか…じゃあ、新一、いたんだね?新一は、来てくれたんだよね?」
「うん」
「じゃ、私、ホワイト・クリスマス新一と過ごせたって思ってもいいよね?」
「うん!」
新一はどうして私に声をかけてくれなかったんだろう…?
あ、でも、"蘭"って名前を呼んでくれたっけ。
もっといっぱい話したかったけど…
また、きっと来てくれるよね?
ね、新一?
私ね、今日、幸せだったよ。
新一が、忙しいのに来てくれたってわかったから。
でも…今度会うときは、もっとたくさん話そうね?
ずっと、待ってるから…。
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