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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

新しい世界へ

作者:nyaok
 生まれ変わりたいと思ったことがありますか?



 夏の真っ白い光で埋め尽くされた花壇の上で、モンシロチョウがカマキリに身を捕えられ、貪られている。

 蝶は、虫は必死にもがきながら、力を失いつつありながらどこかぼんやりと考えていた。
 これまでの自分は一体いつが一番幸せだったのだろう。何を考えるでもなく卵の中でじっと密やかな呼吸をしていたときか。そこから這い出して初めて外の空気に触れたときだろうか。会ったことのない母親に宛がわれた一面の緑を貪っていたときか。蛹の中で、どろどろに溶けて死ぬこともできずに不安で不安で堪らなかったときだろうか。それともさっきすれ違った異性と一度きり交わったときなのだろうか。少なくとも今ではない。今では、ない。

 巨大で歪な眼が自分を見据えている。今、自分はこの世界からどんどん失われていく。それは決して取り戻すことはできない。捕食者が自分を食べている音が聞こえる。体液の匂いがする。破滅的な痛みがある。だが希望があるのだ。自分は、そうして生まれ変わったことがある。
 絶望の中で死に体の中で、本能のまま梢に括り付け硬くなった殻を脱ぎ捨てた。軟らかに羽化し飛び立った。そして新しい世界を奔放に飛びまわった夢のような奇跡。目の前しか見えず、地面を這いずっていた頃の自分がどうしようもなく惨めで哀れで古めかしく思えたこと。
 だから今しも、この絶望の中で自分はもう一度変身することができるはずなのだ。そう、再び想像を超えるような新しい何かに成り変わる。そう決まっているはずなのだ。そして今まで見たことも感じたこともなかった新しい世界にまた飛び立てるはずだ。そのためには、そのためには。

 虫はもがいた。懸命にもがき、自分を食べているものの腕の中から遂に抜け出すことに成功した。それほどまでに、致命的に崩れかかっていたから。そして虫は最早どれが本当の自分なのかも分からないほどにバラバラになって遥か地面へと落ちていった。

 虫は変身を遂げただろうか。虫が何になったのかは誰にも分からない。誰にも分からないだろう?新しい世界の景色とは…。




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