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読むと危険童話シリーズ

季節をめぐらせて

作者:あゆ森たろ
 小説家になろう『冬の童話祭2017』企画参加作品。

 黒童話コメディー。
 いくよー
 あるところに、春・夏・秋・冬、それぞれの季節をつかさどる女王様がおりました。
 女王様たちは決められた期間、交替こうたいで塔に住むことになっています。
 そうすることで、その国にその女王様の季節が訪れるのです。

 ところがある時、いつまでっても冬が終わらなくなりました。
 冬の女王様が塔に入ったままなのです。
 辺り一面、雪に覆われ、このままではいずれ食べる物もきてしまいます。

 困った王様は、おれを出しました。

『冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美ほうびを取らせよう。
 ただし、冬の女王が次にまわって来られなくなる方法は認めない。
 季節を廻らせることを妨げてはならない』

 なぜ、冬の女王様は塔を離れないのでしょうか?
 なぜ、春の女王様は塔に訪れないのでしょうか。

 お願いします。
 どうかこの季節を、廻らせてください――


 * * *


 冬のままの国。春が来ない理由――。

 冬の女王は恋をしました。その相手は、夏の王子。やや細っていて若くてイケメンです。
 ところが王子は、夏の女王の娘の、夏の王女と婚約をしています。
 叶うはずのない恋に、冬の女王は胸が苦しくて、ついには塔にやって来て、そこにいる秋の女王に相談してみました。
 すると秋の女王は「元気を出しなさい。これをお食べなさい」と言って、美味しそうな焼き芋をあげました。
「ああ美味しい……」
 さすが秋の味覚の代表、焼き芋。1本300グラムで、だいたい489キロカロリー。炭水化物が多く117グラム、たんぱく質が4.2グラム、脂質が0.6グラムぐらいとなっていて、ビタミン・ミネラルではビタミンB6とパントテン酸の成分が高いらしく。これを運動で全てカロリー消費しようとするのなら、ウォーキングで183分、なわとびで55分、お風呂掃除は145分かかるのでした。
 皮ごと食べた方が便秘にはいいということで、冬の女王は3本食べます。
「秋は実り。まだたくさん、他にもありますからね~」
 料理の大得意な秋の女王は腕を存分に振る舞って、次から次へとどんどんとできていく料理を、冬の女王はいっぱいごちそうになりました。

 ――そして。

 そろそろ、交替の季節がやって来ます。
 秋から冬になるのです。
「じゃ、またね(ウインク)」
 軽やかに秋の女王は、塔の階段をおりて、去って行きました。

 冬が来ます。

「ああ、美味しい」
 冬の女王は、秋の女王が残していった実りの食べ物や保存食を毎日と食べ続け、気がついた頃には体重が100キログラム。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーっ!!」
 雷が落ちました。ドンピシャラゴー。

 そうして、恥ずかしさと重みで、塔から出られなくなってしまったのです……。


 * * *


「なんということか……!」
 冬の女王が浮気うわきしているのだと!?
 冬の王子は怒り、あせりました。こんなことが冬の王に知れたら大変です、きっと怒り狂って塔に駆けつけて、火を放ち塔ごと女王を火祭りにあげてしまうでしょう。
 そうはならないように、先に何とかしなければ。王子はすぐに、塔へと向かいました。
頑張がんばってねー!!」
 冬の女王の秘密を王子に暴露ばくろした秋の女王は、悪気わるぎのまったくない顔で王子を見送りました。「ばいばあーい(ウインク)!」
 手を振られながら王子は馬車に乗りつつ、何だかな、と溜息ためいきれます。

 王子の乗った馬車が塔に着く前に、道中で知り合った仲間たちがいました。
 名は、キリバイ・ハルさん、ホッカイロさん、仮面ライターさんです。
 冬がいつまでも終わらないせいで国の人たちは寒さで凍えそうな生活をおくっていますが、彼らはなぜか平気です。しかも近くにいると暖かい。なので心強き味方でした。
「着いたぞ」
 仮面ライターさんの特技は火の放出。口から火が吐けました、なので雪の道を溶かしながら、馬車は進むことができたのでした。
「この塔のてっぺんに、冬の女王がいるはずなんだね?」「ああ」「じゃあ早く行ってみよう、ドキドキ」
 胸を押さえながらハルさんは先頭に立ちました。「私の中には何がまっていると思うかね?」「鉄」「はは、何言ってる、ドンと勇気さ」
 ホッカイロさんも「われもだ」と言いながらまた、「シッ、静かに」と王子に注意されながら、王子と兵士AとBと賢者けんじゃと仲間たちは、塔をのぼりました。

 すると途中とちゅうで、小リスに会ったのです。
「こんにちは」
 足元で、ちょこんと首を傾げて、立っています。「君の名は。」
「ことり」
 リスじゃないか。意見は心の中で一致しました。
可愛かわいい可愛いことりさん。塔の上にいる冬の女王に会いに来たんだが、いるだろうか。あ、僕は息子むすこの王子です」
 お辞儀じぎをすると、小リスも同じようにペコリとお辞儀。ほめられたのがうれしかったのか、ぺらぺらと小リスは話します。
「冬の女王は流行はややまいにかかって寝ているよ。一生、目を覚まさないみたい。ムーンサルト、四回転半、ダブルクロス、へそで茶をわかすことができれば、眠りから覚めるらしいよー」
 何ということでしょう、小リスの言うことが正しければ、冬の女王は塔の上で病気にかかり、眠り続けているのです。
「なんだってー!!」
 王子はぶったまげました。浮気した挙句あげくそんな変な病気にかかるなどと。アンタ女王でしょしっかりしてよとチラッと思いました。
「ええと何だって? 月の猿と?」「ムーンサルト。月面宙返りだね」と賢者は王子に言いました。
「四回転半って何なんだ」「たぶんフィギュアスケートかな。四回転アクセルならんだ人いないよ」と賢者は王子に言いました。
「ダブルクロスって?」「勇者が使いそうな技じゃないの。奇跡的に」と賢者は適当に言いました。
「へそで茶をわか……」「まさに今」と賢者は尻をかきました。
「それらが全部できれば、母は治るというのだな!」「ちょおと待て! 信じるなよ勇者でなくて王子!」とナカイ君は言いました。
 ナカイ君は劇団げきだんすまっぺの一員でしたが、ケンカして「仲間たち」のメンバーになりました。人間なので中身は臓器ぞうきです。
「頑張ればできるかも……」「無理」
 王子が先に進もうとすると、小リスが必死になってそれを止めました。「いやほんと無理やめて」小リスはこの世とは思えないほどゆがんだ顔で言いました。
「ふうむ。それほどまでに行かせようとしないのには、何か理由があるのだな。もうしてみよ」
 剣をちらつかせながら王子は言います、小リスは見て観念かんねんし、本当のことを言いました。

「あれは100年前……」
 語り出しましたが、残念なことに兵士Aにあっさりと斬られました。ばしゅ。「時間がない」と兵士Aは王子に無慈悲の教えを伝授でんじゅ、王子はありがたく受け止めました。ひどいなーと思いましたが、あとで七つの玉で生き返らせてあげるねと約束しました。
 なぞ契約けいやくわしたのち、王子一行は塔のてっぺんへ。階段は1000段くらいあったのですが、仲間たちの熱さで何とかなりました。
 辿たどり着くと、その場で迎え入れたのは、なんと冬の女王でした。
 体重が、47キログラムでした。
「母上!」
 王子は、再会を喜びます。
「あら王子、久しぶりです。元気でしたか」
「ええ、ええ。前とはちっともお変わりなく」感動で、涙が出そうになりました。
 母である女王はにこやかに、王子をひしっと抱きしめます。
「なぜこんなことになったのですか。なぜお帰りにならず、ずっとここに居続けたのですか。春の女王は訪れなかったのでしょうか。ああ質問ばかりで」
 冬の女王は指先で王子の口をふさぎます、「それはね――」
 あれは100年前、と女王はゆっくりと、語り出しました。


 一週間後。
「……ということだったの。わかった?」
 話し終えた女王は、優雅ゆうがにハーブティーを飲みながら、組んでいた足をおろしました。
「そうだったのか……」
 用意していたハンカチで目を拭きながら、王子は納得なっとくした顔で、女王にうなづきます。
「まさか王が初生ひな鑑別師かんべつしであったとは……」
 そう、養成所ようせいじょに入所した人で鑑別師になれるのは半数程度であり、入所はそれほど難しくないのですが、なれるかどうかは自身の鑑別師としての適性てきせい次第しだいでした。
「まず年がバレないようにするのに苦労したわー」
 25歳以下でないとなれませんでした。
「わかりました……。そんなに努力なされていたとは知りませんでした。ではさっそくと帰りましょう、母上。ああいけない、春の女王を呼んでこなくては。ギガンテの泉にいるのでしょう? すぐに向かいます」
 スッキリした顔の王子は、寝ていた仲間たちらを起こして引き連れて、塔を去って行きました。

 美しい母、冬の女王。体型の変わらない、女王。
「さてと……」
 きらびやかな服を身にまとい、現れていた女王。女王は、魔法をきました。
 元の体型に、戻ったのです。じゃじゃーん。ぽよん。脂肪しぼうと皮が、あふれ出しました。
「王子が春女を連れてくるまでに、やせなくちゃ」
 体重139キログラム。太ってんのかい。ことりBは思いました。
 冬は続きます……。



 * * *



 童話温泉にて。
 春の女王は、まっていた旅館りょかんから、帰るところでした。「はあー、夢のようだったわ~」
 背のびをしながら、となりにいた王に話しかけます。「最高だったね」王も、気分がよくてとろけそうな顔をしていました。
「あのフォンデュがたまらん」
「トッピングが最高でしたわ~」
「あのほうには感謝かんしゃしなくては」
 まぶしい太陽が空高く。王と女王を、照らしています。
「また、おこしやんせ~」
 おかみが声をかけていました。

 さかのぼると、夏の夜のことでした。
 秋の女王がやって来て、春の女王にわたしたのです。
 秋の味覚、りんご狩りツアー、ご招待券しょうたいけん。温泉付き。世界一周付き。
 それに喜んで、春の女王夫妻は冬のあいだ、旅行に出かけたのでした。


 そういえば王様は、お触れを出していましたね。

『冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。

 ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。
 季節を廻らせることを妨げてはならない』

 さあつかまる前にいただくものはさっさともらって、南の国へトンズラしましょ。

 まさか王様があんなお触れを出すとはね、やばいやばい。
 春の女王が塔に来たら、何も知らずに交替するでしょうけど。
 冬の女王はどうなっているのかしら、ふふ。覚えておいて、夏の王子は渡さない。
 さあ、ミッション2へと、いきますか。ふははははぁ!

「秋の女王」
 ふいに呼ばれて、女王はふり向きました。
 すると矢がささって、秋の女王は倒れます。
 一体、誰でしょう? 顔を隠していたので、わかりませんでした。
「我は正義せいぎなり」
 声のぬしは――

 交替させた者には好きな褒美を。



《END》




 仮面(ボソ)。
 読了ありがとうございました。

 シリーズではブラックが好きでした。ではまた。

ブログ あゆまんじゅう。 こちら



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