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正義の味方の仕官記録1
「ようやく終わった・・」

現在俺は文官達に自分が身につけた未来における帳簿の付け方や、
資料のまとめ方など様々な事務処理用の技術のレクチャーを終え、
ようやく一息ついたところだった。

「それにしても、こうもすぐにこき使われるようになるとは」

俺は苦笑しながら、このようになった理由を思い返した。

《回想1》
 
出会いから翌日。

「それで、あなたは文官の仕事もすると言ったわね」
「ああ、役に立つと思うが」

華琳の問いに俺が答えると、秋蘭が疑問をぶつけてきた。

「しかし、遠い異国から来たお前に読み書きができるのか?」
「問題ない。よほど特殊な文字じゃなければ。
それも他の文官に聞けばすぐ分かる範囲だろう」

昨日のうちに、通りかかった文官に書物をみせてもらい確認済みだ。

「本当に大丈夫なんだろうな?」

春蘭はまだ疑っているようだ。

「なんなら文官のする仕事をここでやって証明してみせようか?」

書物を見せてもらった後、
荷物運びを手伝った文官からおおよその仕事内容は聞き出している。

「良いわね、それ。では、さっそくやってもらうわ」

華琳がいうと数人の文官が竹簡を運んできた。

「やけに手際がいいな。というより・・、
最初からそうするつもりだったのか」
「当然よ。臣下の能力を把握していないと話にならないわ。
とりあえず、一刻の時間でどれだけのことが出来るかみせてもらうわ」
「やるのはかまわないが・・・」
「なにか?」
「別に、すべて片付けてしまっても構わんのだろう?」

俺が言うと周りの者達は呆気にとられた。

「ふ、ふふふふ、あはははは!いいわやって見せなさい」

華琳が言うと同時に俺は作業を開始した。
内容は・・街の治安を守るため警備体制の草案か。
それなら、あの時の方法を応用して・・・。

一刻後、俺は最後を仕上げた。

「これで終わりだな?」

「わたしだって本気をだせばそれぐらい・・・」
「はいはい姉者も『適材適所』があるんだから」
「それはどういう意味なんだ、秋蘭?」
「姉者は凄いという意味ですよ」
「そうか、そうだな。『適材適所』だな、うん」

春蘭・秋蘭姉妹が漫才じみた会話をする中、華琳が尋ねてきた。

「ところどころ不思議なことをしていたけど、いったい何をしていたのかしら?」

さすがというべきか、華琳は処理速度の秘密に気づいたようだ。

「私が住んでた国における作業法だ。
こういう作業をより効率的に行うために編み出された技術だ」
「それを覚るのは、文官たちにとって良いかしら?」
「作業速度は間違いなく良くなるな」
「そう、内容も確認したけど良くできていたわ。
それじゃあ明日から文官達に作業の役にたつ技術を教え込みなさい。
その間にあなたの案を元にした警備体制を敷く準備をするわ」
「分かった。だが今日からでもかまわないが?」
「今日は練習で私達に教えなさい。
そうすれば、教える時に疑問に思われることや、
理解しにくい点に注意して教えられるでしょう」

本当に華琳は頭の回転が速い。
こういうとこが、凡人と天才の差なんだろうな。
少し教えるだけで俺以上に使いこなすようになってしまった。
・・・俺が習得するのに三か月かかった技術のすべてを。
ちなみに、秋蘭も三ヶ月かかったが、
任務など他に割いてる時間を考えると一か月半ぐらいだろう。
春蘭は本人の名誉のため割愛させてもらおう。

こうして文官の仕事をしながら文官達に技術を伝えるようになった。
同時に自分の出した案の責任をとって警備隊の隊長をすることになった。


《回想1終了》

「文官達の仕込みも終わったことだし、少し余裕ができるな」

その余裕をどう使うか頭を悩ませていると、
「士郎!暇なら訓練を手伝え!」
春蘭が大声で呼んできた。

せっかく呼んでくれているので、参加することにした。

と言っても、
「今日こそは勝たせてもらうぞ」
「そう簡単に勝たせてやるほど、甘くないが」
春蘭との一対一の模擬戦なのだが。

互いに構えながら、初めての春蘭との模擬戦を思い返した。

《回想2》

「そういえば士郎、あなたどうして夫婦剣を持ってるの?」

華琳の何気ない一言がきっかけだった。

「私は大抵の武器を使えてな、・・・もっとも二流だが。
ともかくその中で私の好みに合ったのが夫婦剣だ」
「見てもいいかしら?」
「ああ、構わない」

華琳は渡された夫婦剣を見て驚いて言った。

「これって干将・莫耶じゃない!どうやってこれを手に入れたの?」
「私が生まれた国にいたころ、偶然手に入れてね。以来近接戦で使ってきた私の愛剣だ」

嘘は言っていない。
正確とはいえないだろうが。

「だが、使いこなせなければ、意味があるまい」
華琳のそばにいた春蘭が言い放った。

「そう思うか?」
「違うと言うなら見せてもらいたいな。
恥をさらす覚悟あるのなら、わたしと勝負してもらおうか」

いつの間にか戦わなければならない方向に話が進んでしまったようだ。

「しかたがないか。まあ、訓練にもなるしな」

春蘭・秋蘭の二人が強いことは何気ない動作で分かっていたので、
この世界の武将の実力を知る試金石にちょうど良いと了承した。

「それではいくぞ!!せりゃあ!」

迫りくる大剣を双剣で防いだ。刃と刃が鳴り響き大剣は止まった。

「っ!想像以上に重い」

あの細い腕からどうやってこれほどの一撃を放てるのだろうか?謎だ・・。
身体能力は増大した現在の俺と互角、いや若干上か?

「っ!?やるではないか!まさか男に真正面から防がれるとは思わなかったぞ」

・・・どうやらこの世界では女性のほうが強いらしい。

今のセリフから俺はそう判断した。

というかいくらなんでも異常だろ。

爆ぜる音の後、避けた大剣が地面に大穴をあけるのを見て、
「本当に人間か・・?」
俺は小声でぼやいた。というかぼやくべきだと思った。

「避けているだけでは、どうにもならんぞ!」

バーサーカーを彷彿とさせる連激を捌きながら、少しずつ隙を見せていく。
そして、
「!?」
「そこだ!」
隙を突こうとした春蘭に対し、俺は干将で受け流し莫耶によるカウンターの一撃を放った。

自分の持つ心眼(真)による戦闘論理により勝利に届いたかに思えた。
が、
「ク、やるではないか!」
春蘭の大剣が莫耶を受け止めていた。

「わざと隙をつくることにより相手の渾身の一撃を誘い、それを受け流しての反撃。
見事なものね、けど・・。」

華琳が批評を呟く中、剣戟は続く。

春蘭と俺の戦いは均衡状態に入った。
春蘭は俺の守りを崩せず、俺は春蘭の猛攻で攻めきれない。

「いったいなんのさわぎだ?」

秋蘭がやってきたことにより、勝負は引き分けで終わりを告げた。

「まさか、ここまでやるとはな士郎」
「それはこちらの話だ春蘭」

秋蘭に経緯を話し終えた華琳が話しかけてきた。

「随分と経験を積んできたのね士郎」
「流石に天才な華琳は気づくか」
「ええ。あなたに剣技の才能はない、あったら最初の反撃で決まっていたわ」
「まあ、無い以上ああいう戦いしかないからな」
「謙遜する必要は無いわ。努力と経験だけで剣の天才である春蘭と互角に戦えたのよ。
あなたが自分を貶すといことは私の大切な春蘭を貶すということよ。
私はそれを許すつもりはないわよ」

その言葉に春蘭は

「ぐすぐす、華琳さまぁ」

うれし泣きをしていた。

「まあ、ようするに今回の件は姉者の嫉妬が原因ということだ」

秋蘭の解説でようやく一連の流れを理解した。

「やれやれ」

華琳に泣きながら抱きつく春蘭を見ながら呟くのだった。



《回想2終了》

「ちっ、また今回も引き分けか」
「言ったろう、甘くないと」

あれから暇があればよく勝負をするようになった。
30戦30引き分けが現在の結果だ。

「いいか!わたしが勝つまで誰にも負けるんじゃないぞ」
「それじゃあ、いつまでも誰にも負けられないな」
「言ってろ!」

もはやお決まりのようになった会話をして別れた。


これは、何も特別なことのない正義の味方の仕官記録における一日である。




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