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第一話:覇王との出会い
「・・・・・痛つつ・・」

衝撃と共に俺は目を覚ました。

目を開けるとそこは・・・針の如くそびえる岩の山と、地平の果てまで広がっている赤茶けた荒野。

「なんでさ」

なつかしい口癖が思わず口から洩れた。

気を失う前の情報を思い出して、
俺は自分が気絶している間に並行世界に飛ばされた可能性に気づく。

「人を探して会話する必要性があるな。
大概の外国語を簡単な会話が通じる程度には習得しているから、
会話出来ないということはないと思うが・・・」

正義の味方を目指す以上、会話は必要不可欠だったため必至に言語を学んだ。
学んだのはそれだけでは無いが、とにかくこの努力によって、
今困ることはないだろうと俺は考えた。
並行世界ということに一抹の不安が残るが。

進もうとして、大事なことに気づいた。
目線が低くなっている。
肌の色は・・・未熟だったころの色に戻っている。
声も同様。
川があったので自らの姿を確認すると、想像どおりかつての自分の姿があった。

「人形に魂を移した結果か」

考えられるのはそれくらいだろう。
聖骸布とボディーアーマーは今の体に合わせられていたことに安堵した。
影響が魔術回路にもあるかもしれないので確認をすることにした。

「―――同調・開始<トレース・オン>」

身体機能・・・正常、ただし性能が60%増大
鞘・・・正常稼働確認、自動再生率3%
魔術回路・・・エラー、負担200%増大により固有結界は使用後99,9%暴走、
干将・莫耶以外の宝具投影時及び、全投影連続層写使用時86%身体異常発生、
通常投影、視力強化使用可
上記以外の魔術はエラーにより使用不可
・・・異常だらけだった。
身体機能の増大は蒼崎橙子製の人形である恩恵だろう。
鞘も以前投影したものが冬木の実家に置いてあったからわかる。
だが、
「・・・魔術師としては致命的だな」

何故こうなったかは分からない。
事実を受け入れ、干将・莫耶と夫婦剣用の鞘を投影して腰に固定した。
干将・莫耶の投影に五分もかかるのでは戦闘中の干将・莫耶投影は無理だな。

道を見つけ、歩くこと半日。
出発時は夜明け前で薄暗かった空は、今や頭上にある太陽に明るく照らされている。

「着いたか」

以外にすんなり町についてしまった。
先に人と会話をしておきたかったが、あまり贅沢も言えない。
それにしても

「町の姿から中国だと思うのだが・・・」

なにかが引っかかる。
町の人々の声に耳を澄ますと違和感が増大した。
騒ぎを聞いて駆け付けたところで、その答えに気づく。

「そうか!時代の差か!」

気づいた俺は小声で驚嘆した。

そう町並がやけに古めかしい。
言葉が古代の用法。
そして決定打が、

「漢代末期か。時代的には過去になるが、並行世界的にはどうなるんだろうな」

200メートルほど先に12人の、賊が、小さな少女を人質に
「俺達はこうでもしなけりゃ食っていけねぇんだよ!
それもこれもみんな何進を始めとした高官が悪いんだ!」
と、かってなことを周囲を囲んでいる衛兵に対してわめいている。
ここまで、声は届いていないが、唇の動きで言葉の内容が分かる
ちなみに何進は漢代末期の悪名高い高官の名前だ。

「そういう形でより弱き弱者に手を出している時点で、
貴様にそういうことを言う権利は無いがな」

聞こえてないことは分かっているが自然と言葉が漏れる。
全て救う方法を模索する。
俺は周りの人間に気づかれないように懐に手をいれた上で、弓と13本の矢を投影した。

「とりあえず、痛い目にあってもらうとしよう」

弓に矢をたがえ、続けざまに13本の矢を放った。
11本の矢は11人の膝に当たり、残り2本は人質を取っていた首領格の両手を射抜いた。
ひるんだ賊達は衛兵に捕らえられていった。

「こんなところか」
「たいした腕ね」

振り向くと威厳あふれる少女とかなりの実力者と分かる2人の女性がいた。

「協力を感謝するわ」

この言葉と立派な衣装にたち振る舞いで、この町の統治者かそれに準ずる人間と判断した。

「なに、たまたま余裕があり、この場に居合わせただけだ。
私がいなくともあの程度の賊ならどうとでもなっただろう」
「確かに。けれど人質はただではすまなかったはず」

少女は適格に指摘した。

「それにあの弓の腕はただごとではない。
私も弓を用いるから分かるが、この距離であの数の矢で精確に射抜くのは至難の技だ。 
しかも、人質に当たる可能性が十分あったにも関わらず、動揺もなかった。
それどころか成功しても淡々としている。当たるのが当然だと態度が示している」

理知的な雰囲気の水色に近い髪の女性の言葉に対し

「確かに、あの弓さばきは凄かったな」

長い黒髪の女性が素直な感想をもらした。

「そうね。それだけの腕を腐らせておくのはあまりに無駄だし、損失だわ。
あなた、私に仕えなさい。その腕を私なら誰よりも活用してあげられるわ」

少女の言葉に俺は苦笑しながら答えた。

「ありがたいとは思うが、やめたほうがいい」
「なぜ?」
「為政者とは十のうち九のため一を切り捨てる存在だ。
対して私は一から十まで救いあげることを目的とする愚か者だ。
もちろん全てを救うことはできない。
だが、可能性があるなら全力で全てを救う。
それで、救うことができたこともあれば、できなかったこともある。
私は正義の味方という名の破綻者だ。
言えるのは為政者という存在にとって私は害にしかならないだろうということだ。
一を切り捨てるのには理由があり、
その段取りを壊してしまうような要因をそばに置いていいことはないだろう」
「いいたいことはそれだけ?」
「ああ」

少女は俺に近づいてきて怒鳴った。

「甘く見ないで!!
私は曹孟徳!未来の覇王たるこの身にそれぐらいの者を扱えないと思うな。
切り捨てずにすむ方法を見逃しなどしない。
それにあなたは、本当に救えないと判断したらそれ相応の覚悟をしているでしょう」
「根拠を教えてもらえるか?」
「人を見る目がなければ上に立てはしないわ。
それで返答は?」
「・・・く、くくくっ」

「なにがおかしい!」

俺の笑い声に黒髪の女性が怒鳴る。

「いや、すまない。恩人が昔に怒鳴った言葉を思いだしてな。いいだろう。
条件付きでいいなら仕えさせてもらおう」
「内容は?」
「なに。客将とすること、戦う戦場は選ばせてもらうこと、の二つだけだ。
代わりに給料は最低限の衣・食・住をまかなえるだけでいい。
それと普段は文官としても働こう」
「いいわ。代わりにあなたが私の邪魔をしないというなら飲みましょう」

「よろしいのですか?華琳さま」
「実際、かなり癖が強いと思いますが」

二人に対し、
「問題ないわ。ああいう言葉が出てくる以上、それ相応の能力があると思うしね」
と少女は答えた。

「それじゃあ、自己紹介させてもらおう。私の名は衛宮士郎。士郎と呼んでくれ」

二人に俺は答えた。

「ちなみに真名はなんというの?」
「真名とは?」
「真名を知らないの?」
「遥か遠い国から来たのでな。この国の常識が多少欠けているのだ」
「真名は自分が心を許した相手にのみ預け、呼ぶことを許す名よ」

先ほど華琳と少女が呼ばれていたことを思い出した。

「悪いが、私の国には真名の風習はなかったんだ。しいていえば、士郎が私の真名だ」

生まれたときの名は士郎であり、それ以外の名は煉獄の炎に燃やされてしまったのだから。

「・・・・・っ!」
「な、なんと・・・」
「むぅ・・・」

三人はひどく驚いている。

「ならば貴様は初対面の我々に、いきなり真名を呼ばせることを許していた・・・・そういうことか?」
「この国の流儀に従うとそうなるな」
長い黒髪の女性の問いに俺が答えた。

「そう・・・。なら、こちらもあなたに真名を預けないと不公平でしょうね。
私の名は曹操孟徳、真名は華琳。華琳と呼んで良いわ」
「いいのか?」
「私が良いと言っているのだから、構わないわ。・・・あなた達も良いわね?」

「分かりました。私の名は夏侯淵妙才、真名は秋蘭という」
「華琳さまがおっしゃられるのなら。わが名は夏侯惇元譲、真名は春蘭だ」

二人が名のった後、城に向うことになった。

それにしても・・・。
まさか少女の「曹操」に出会うことになるとは。
セイバーのことといい、少女の王に縁があるのだろうか?
そこで華琳に仕えることを了承した理由の一つに、
彼女が一人無理をし続けたセイバーに重なって見えたことがあると気づいた。

「思っていたより、未練がましかったのだな」
「なにかいったか?」
「いや、なにも」

こうして新たな世界での運命の幕があがるのだった。

これは正義の味方と覇王の出会いの一幕
少しは楽しんでもらえたでしょうか。文章をよりよく書こうと試行錯誤です。

本作の士郎は必要に駆られ努力した結果、魔術以外はかなり優秀です。魔術は誰かの「うっかり」で制限されてしまいましたから(笑)。干将・莫耶は使用できるが、干将・莫耶投影に今までとは比べものにならない時間がかかり鶴翼三連は使えず、戦闘中の干将・莫耶投影は厳しいです。干将・莫耶以外の宝具の投影・使用は命にかかわります。かわりに人形の性能のおかげで、力負けすることはなく、鞘のおかげで怪我の治りがはやいです。(目に見えてはやいわけでわないので、戦闘中には意味があまりない)
多少原作の士郎と性格に齟齬があると思いますが成長したということで、許してもらえると有り難いです。


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