正義の味方の仕官記録3
「隊長っ!」
「あちらに逃げた者達はお前達四人に任せる!逃がさない事に集中しろ!
中央部に逃げた三人は私が対処する!」
「了解!」
現在、俺達は街の中を逃げているゴロツキ達を捕まえるべく走っている。
「はぁっっ!」
「ぐは・・・っ」
中央に逃げた者達全員を縛り上げた俺は、部下達の応援に行くべく駈け出した。
のだが、
「おお、士郎!ちょうど良い所に」
俺が見たのは倒れ伏すゴロツキ達と春蘭、そして呆然としている部下達の姿。
「どうやら部下達の手助けをしてくれたようだな」
「・・・全く、何をやっているのだ。お前の部下達は」
「あまり酷な事を言われてもな。つい最近入ったばかりで、鍛えている最中なのだ」
そう、だからこそこうして経験を積ませたり、応援に向かったりと手間をかけている。
「ともかく、礼を言わせて貰うぞ、春蘭」
縛り上げられたゴロツキを運んでいく、警備隊を見ながら、春蘭はためいきをひとつ。
それに対し俺は言う。
「警備隊には実践に投入できるまでに届かない者達も多い。
それを補う形で私が共に回っているのが現状だ」
ただそういう者達も少しづつ成長しているし。
警備隊の活躍もあって、入隊希望者も日に日に増えている。
最終的には今の数倍にまで増やすつまりなのだが、
それもそう遠くはなさそうだ。
「まあ、軍からも何人か出している現状を早く解決してもらいたいな」
「ああ、そのつもりだ。それで、今日はどうした?春蘭が街に出るとは珍しい」
「珍しくて悪かったな。私が買い物に来るのがそんなに不満か?」
「ふむ、どうやら機嫌を損ねてしまったようだな。おわびに案内でもしようか?
街の案内も警備隊の任務の一つなのでな」
「それを頼もうと思っていたのだ」
まあ秋蘭も案内したからな。
「それで、今日は何を買いに来たのだ?」
「下着だ」
春蘭はきっぱりと言い切った。
「・・・・・・なるほど、少し待ってくれ。女性の警備隊員に案内させよう」
・・・・なんとかこれで回避できるか?
「お前に案内を頼むと言ったのだ。おわびなのだろう」
無理だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まずはここだな」
「ここはダメだ」
「品揃え、質、共に評判だが?」
「前に来た事があるが・・・半裸の筋肉達磨が踊りながら接客に出て来て、
思わず叩き斬りそうになったぞ」
「変態ではあるものの、悪い存在ではないようだが?」
「・・・・人とは言わないのだな」
何件か回るが、春蘭は否定の言葉しか出さない。
「・・・・・春蘭はどういうのがいいのだ?」
「なんでもいい」
・・・・・随分とタチの悪い[なんでもいい]だな。
「ここで最後だ。街で下着を売る場所は全部回った」
「ここは知らないな」
「では、これで失礼させてもらおう」
・・・・ようやく終わったか。
帰って明日に提出する書類を仕上げなければ。
「ここまで来たのだ付き合え!」
不意を突かれ俺は店に引き込まれた。
「・・・・・春蘭、君は私が男だと分かっているかね?」
「ん?何を言う、士郎。分かっているぞ」
「いらっしゃいませ。今日は彼氏に下着を選んでもらいにきたのですか?」
俺達の会話に対し店員が言った。
「ちょっと待て!どこの誰が彼氏などと・・・っ!」
「でも、殿方に真名で呼ばせるなんて・・・ねぇ?」
「ねぇ?」
・・・・・普通はそう思うだろうな。
春蘭は店員の言葉と勧められるカップル用下着にますます怒る中、俺は頭を抱えたくなった。
って、まずい!
「よさないか、春蘭!ここで獲物を抜こうなど正気か!?」
「おやめなさい!」
店内を貫くその声に、俺や春蘭はおろか・・・俺達を囲んでいた店員達まで、動きを止める。
「・・・まったく、どこの田舎者が騒いでいるのかと思えば・・・。呆れて物も言えないわ」
「か・・・華琳さまっ!?」
「礼を言おう、華琳。一時はどうなるかと思った」
俺の言葉に華琳は言う。
「あら、士郎。今日は仕事だと言っていなかった?」
「・・・・仕事として春蘭を案内したまではいいのだが、
・・・まさか買うところまで付き合わされるとは」
疲れた声で俺は返答した。
「まあ・・・・何となく予想は付くが」
華琳に付き添っていた秋蘭が言った。
「で、ですが、私と士郎のことを・・・そ、その・・・恋人などと!まったくもう、
ワケが分かりませぬ!」
春蘭は必至に言い訳をしたが、
「それは姉者が悪い」
「それは春蘭が悪いわ」
「それは春蘭が悪い」
「なんですと!」
全員から否定を食らった。
「女性物の下着を売る店に男連れで来れば、
その連れはそれなりに近しい関係と考えるでしょうよ」
「姉者。士郎が男だと・・・忘れているのではないか?」
「・・・・春蘭は私が男だと分かっていると言ったな?」
俺の問いに春蘭は頷いた。
「では、男と女がどう違うか分かるか?」
「ああ、それは・・・・」
「それは?」
「金的を蹴れば悶絶する!」
場の空気が止まった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「な、なんだその目は!」
・・・・・・あたりまえだ。
「・・・・今回ばかりは部下の無知を詫びさせて頂戴。士郎」
「いや、私も気付くべきだった」
まさか、そこからとは。
「姉者。姉者の下着は私が選んでやるから。な?こっちへ来い」
「お?おう・・・?」
「華琳さま。申し訳ありませんが、私は我が愚姉の面倒を見ねばならぬようです。
代わりに士郎がお相手をいたしますゆえ・・・それでご容赦していただきたく」
「・・・仕方がないわね。いいわ、言って来なさい」
「士郎。すまんが、華琳さまのお相手を頼むぞ」
・・・・俺にはここから出る選択肢が無いんだな・・・。
「・・・・了解した」
「しっかり私の相手をなさい。分かったわね?士郎」
「まあ、最善を尽くそう」
SIDE 華琳
「これはどう?」
「そうだな・・・・・、同じので色がもう少し淡いのがあったな・・・・。見つけた。
これのほうが、君に似合う」
「これはどうかしら?」
「ふむ・・・、少し余計な部分の装飾が多い。少し動きづらいと思うが?」
・・・・なんでこいつ動揺一つしないのよ?
・・・せっかく珍しい士郎が見られるかと思ったのに。
「士郎、あなた随分慣れているのね?」
私は内心の動揺を見せないように気をつけながら言った。
「・・・むかし家族に同じことをさせられてな」
「あら、家族と異性としての女性とは勝手が違うと思うけれど?」
「・・・少し特殊だったのでな」
どこか懐かしむ士郎に対し、私は探りを入れていく。
「特殊って?」
「・・・私は養子でね。血の繋がりがなかったのだ」
・・・・・・・なるほど。
「その家族とやらは知っていたの?」
「ああ。分かっていて、いろいろとからかわれたよ。
・・・・半分以上本気だったらしいが・・・」
・・?
最後の部分がよく聞き取れなかった。
まあ、あまり一度に聞くのも悪い。
士郎の過去の詮索は今度にして今は素直に・・・、士郎を動揺させることを優先するべきね。
「士郎、これは・・・・・どうかしら?」
・・・・正直、自分でも恥ずかしい。
だが、・・・よし!
少し効果があったようね。
「・・・・っ!・・・それは想い人が出来たときにでも見せるべきだな」
一瞬だが、顔色が僅かに変わった。
それに、言葉も少し詰まった。
この調子でいくわよ!
結局、・・・自身への損害も大きかったが、捨て身な作戦は効果も上々だった。
SIDE 華琳out
「ああ、楽しかった」
「・・・・それは良かった。・・・・でなければ、私の苦労は・・・」
・・・何故わざわざ、あのような下着を選ぶのだ?
・・・理由は分かるが、・・・あまり分かりたくない。
そこまで俺をからかいたかったのか・・・。
「あら、そんなに私といるのは疲れる?」
「あまりに華琳が綺麗なものだから、それに気疲れしてしまってな。
ああ、気にしなくていい。私も楽しんだ」
終始いつものバランスを崩された精神状態もようやく回復した。
同時に反撃を試みることにした。
「・・・・・。あら、嬉しいことを言ってくれるわね。
それじゃあ、機会があったら頼むことにするわ」
・・・・・手強いな。
すぐに切り返したか。
「華琳さま。こちらの買い物も終わりました」
どうやら春蘭の買い物も終わったようだ。
「で、春蘭はちゃんと買えたのかしら?」
「もちろんです。三枚ひと組の・・・」
「・・・秋蘭?」
「は。全身全霊をもって阻止いたしました」
「結構」
・・・・春蘭。
それを買おうとするのは女性としてどうかと思うぞ。
「・・・?良く分かりませんが、それは秋蘭に止められたので、秋蘭に選んでもらいました」
「それは、ちゃんと買えたとは言わないでしょう」
「はぁ・・・」
「今度は士郎にでも選んでもらいなさい」
華琳は聞き捨てならないことを言った。
「・・・・悪いが、私では力不足だ。秋蘭のような慣れ親しんだ者以外には荷が重い」
「なら、慣れる必要があるわね。幸い警備隊の仕事は終わったでしょう?」
まずい。
「悪いがしご「書類は明後日まででいいわ」・・分かった」
・・・・このあと、さらに二件回ったことを追記する。
これはいつもより少しハードな、正義の味方の仕官記録における一日である。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。