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聖家族 作者:門戸明子
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小坂菜穂の話(上)

新宿歌舞伎町、平日の昼下がり――。
靖国通りから北へ広がった路地を中に入っていく。

サボり中のサラリーマンや上下ジャージの怪しいオヤジとかうろうろして、ゆるくてだるい空気が流れてて。動き出す前のそういう雰囲気って、嫌いじゃない。
 あたしは意味不明な動物もどきがペイントされたシャッターにもたれて、タバコにライターを近づけた。ゆらゆら立つ火の向こうに、ゴミ収集車が回収しそこねた残飯をつつくカラスが見える。

きったねーな、お前ら、それうまいのかよ? 一体何が楽しくて生きてんのさ?

「でさ、こう真ん中にでっかい柱立てるんだ。壁は全部鏡張りにして、大きさ変えたミラーボールいくつも上から垂らしてさ。絶対きれーだぜー」

 隣にうんこ座りして延々と「(いつか)オープンする自分の店」を語る男は将人。ホストやってる。いちお、彼氏、だと思う。セックスするのに、金とられないから。ラブホ代は割り勘だけど。
でもこいつ、最近将来の店プランにハマってて、正直ウザい。アホじゃないかって思う。あたしが貸した5千円も払えないような男がさ、自分の店? ありえねえっつーの。

「客がコスプレすんだよ。セーラー服とかナースとか、CAとかさ」

「客が? なんで?」

「みんな変身願望って絶対あんじゃん? それをかなえてあげるわけよ。オレたちホストはさ、お客につきあって患者になったり、教師になったりするわけ。エッチな課外授業はじめまーす、みたいな!」

 おいおい、AVかよ。

「菜穂も絶対来てくれよ! セーラー服とかいんじゃね? すっげぇ見てみて~!」

 ようするにてめえの趣味だろ。
 タバコの火を将人の靴にジュッて押し当てて消す。

「うおっ! おいなほっ何すんだよー!」

 情けない悲鳴をあげる将人をほっぽって、あたしはうしって体を起こした。

「なあなあ、菜穂って絶対兄ちゃんか姉ちゃいるだろ」

「は? なんで?」

「我がままで気が強くて、でも実は甘えん坊の妹タイプ、みたいな。でもおれ、菜穂のそういうとこ好きよ」

 ぐいって後ろから抱き寄せられる。
 おいおい、胸揉んでんじゃねえよ。さっき3回もやったばっかだろーが。
 ぎゅうって手をつねってやったら、今度はお尻にもぞもぞって感触。男ってほんと触るの好きだよなぁ。ま……いいけどさぁ。

「はずれ。弟が一人」

「へえええ知らなかった! どんな奴? おれ、仲良くなれっかな」

「さぁ。一緒に暮らしてないし、そもそも父親違うし」

「うわ、フクザツ~」

「それに……」

「ん?」

「死んだ。8年前」

 「げ」とつぶやき、それきり黙った。
 へえ、気ィつかってるらしい。こいつなりに。
 純が生きてたら……こんな金髪の、サイヤ人みたいな頭した男になってたかな。うわ、なんかそれ、絶対嫌かも。想像したらおかしくって、「ふふっ」て笑っちゃった。

「なんだよ、思い出し笑い? 菜穂エッチー」

 エッチィのはおまえじゃ! て、ジャレてたら……横、めっちゃガタイいい2人組の男が通っていった。
 紺色のスーツ着て、なんか目力ハンパない。
 将人も気づいたのか、首をすくめた。

「今の、たぶんデカだろ。最近そこらじゅうにいるよなー」

「まだ見つからないんだ、翔也殺したヤツって?」

「そうなんだよ、あいつシャブ売ってたとかいって、おれまでオシッコとられたんだぜ」

 この街で死体が見つかった。それは全然珍しくもないことだったけど、殺されたのが将人の友達だったんだよね。名倉翔也ってやつ。あたしも何度か会ったことある。
 犯人はなかなか捕まんなくて、そのせいで友達みんな、「近くに犯人いるかもよ」「夜一人で歩きたくなーい」なんて怖がってる。
 でもさ、はっきり言ってあたしはどうでもよかった、そんなこと。どこで誰が死のうが、殺されようが。だって、いつかは必ずみんな死ぬしね?

 ……殺すなら、あたしにしとけばよかったのに。

 小さなつぶやきは、将人には聞こえなかったみたい。



「いらっしゃいませー」

「ご新規3名様ご案内でーす」

「いらっしゃいませー」

「生と緑茶ハイ、山盛りから揚げ、お待たせしましたー」

「いらっしゃいませー」

「ご注文ですか? はい今お伺いしまーす!」

「いらっしゃいませー」

 夕方から始まる居酒屋のバイトは、7時8時、会社帰りのサラリーマンが押し寄せる頃に忙しさマックスになる。次から次にオーダーが飛んで、あたしは店内を駆けまわる。

「菜穂ちゃん、これ2番テーブルね」

「うっす!」

 両手いっぱいに料理抱えて小走りに行き来して。そしたらだんだん頭真っ白になって、ランナーズハイっていうの? そんな感じ。
 めっちゃ疲れるけど、あたしはそういうの、嫌いじゃなかった。だってその時だけは、何も考えなくてすむから。いろんな……余計なことを。

 夜10時頃、今日は早めに最後の客が店を出て、あたしたちは「おつかれー」ってホッと顔を見合わせた。
 更衣室に引っ込むと、ひとしきり客やら社員やらの悪口で盛り上がる。ノリはほぼ女子高。

「ていうかさあ、見た? 本社ファックス。ワインフェア? 何それって感じ」

「安さがウリじゃんうちって。1本5万のワインなんか誰が頼むかっちゅーの」

 あたしはうんうんてうなずいて、

「アホ部長わかってないよねー、いい加減クビになんないかなあ」

「そのうちなるって。仕事できなさすぎじゃん」

 ゲラゲラ笑うあたしのところに、杏奈がすり寄ってきた。

「菜穂~またお願いできる?」

 って両手を合わせる。あぁまたシフト変更か。

「いいよ。あたしはいつでも。またオーディションあんの?」

「うん、今度はねーなんとメインキャラなんだっ」

 そしたら千夏がキャミ姿ですっ飛んできた。

「もしかして夏アニですかっ?」

「そうなのー。内緒なんだけど、アンバランス・アンサンブルっていう学園ものでねー」

「うわ、あたしそのマンガ、めっちゃ好きなんですよ! アニメ化するんですかっ!? うわ、うわ、すごーい!」

「原作おもしろいよねー!」

「絵がめっちゃかわいいんですよねえっ」

 盛り上がる2人を横目にあたしはさっさって着替えをすませて外に出た。
 黒い空を覆うように派手なネオン看板がキラキラ。その下を、うろちょろする客引きの黒服をドンって突き飛ばして、ブーツのカカトを鳴らしながら歩く。
 くっそ、やだな。なんだか心ン中が、モヤモヤしてた。
 理由は……わかってるけど。
 杏奈や千夏の、キラキラした目や、オーバーリアクションが頭の中に浮かんだ。
 フリーターっていうとさ、就職できないダメ人間ってイメージあるかもだけど、実際は敢えてフリーターって子、結構いるんだよね。夢をかなえるためにさ。
 声優の卵の杏奈とか、漫画家目指してる千夏とか。シフトの自由がきく居酒屋バイトなんか、特に彼女たちにはありがたいみたい。
 ま、あたしみたいに学校やめてブラブラしてるだけの奴もいるけどさ。

「うっざ……」

 ぽつんて口に出して、ネオンの隙間にのぞく小さな空を見上げた。
 きっとあの子らもいつか知る。「努力すれば夢はかなう」なんて、嘘っぱちだってこと。走って走って、わき目もふらずに必死に走り続けても、たどり着けない場所があるってこと。
 その存在に気づいたとき、あたしは「趣味」なんてハンパな言葉で割り切ることなんてできなかった。すべてを捨てることでしか、忘れることでしか、自由になれなかった。

 でもその自由はどこか後ろめたくて。なかなか治らない風邪みたいに、未だにあたしをいらだたせる――。



 駅近くの雑居ビル、地下にのびた階段を下りてドアを開けると、大音量の音楽とざわめきが熱風みたいに一気にはじけ出した。
 カラフルなライトがレーザービームみたいに走ってく薄暗いフロアには、もう結構な数の奴がいて踊りまくってる。
 ブースにいた顔なじみのDJに手を挙げて合図して、あたしはその中に紛れ込んだ。
 さっそくいつものメンバーが寄ってきて、

「今日早いじゃん」
「将人は? まだ来てないのぉ?」なんて声をかけてく。

 あたしは手渡された酒瓶を時々傾けながら、音楽に合わせて縦ノリ。
 音にからみつく英語が耳に心地よく響いてる。意味なんてわかんない。でもいーんだ別に。このノリさえあれば。
 段々早くなるテンポに合わせて、頭を振って飛び跳ねて、体全体でビート刻んで……。体にこもる熱を散らすみたいに、あたしは酒臭い息をまき散らしながら、ただただ体を動かした。
 みんな同じような恰好で、同じようにクレージーに笑ってさ。うん、これでいい。これでいいんだ。自分に言い聞かせるみたいに。
 ひとしきり踊ると、あたしはグタッてパイプ椅子に倒れこんだ。
 いい感じに、なんだかとろんて体が疲れてる。

「あれ……」

 将人からライン来てんじゃん。

 「先輩と飲みに行くことになったから、今日は行けない」って、涙流すアホっぽいスタンプつき。バッカだねー、嘘なんかつかなくても、客とアフターならそういえばいいのに。変なとこで弱っちい奴。
 呆れつつネット検索すると、ダッシュすれば終電ギリギリ間に合いそう。

「……」

 少し考えて、あたしは久しぶりに家に帰ることにした。



 京浜東北線大森駅から5分くらい。あたしは薄汚れたピンク色の外壁の、5階建てマンションに入っていった。
 エレベーターがないから、階段をひいひい言いながら上がって。3階のどんづまりが我が家。
 玄関から伸びる廊下はしんとして、真っ暗だった。クソ親父は帰ってないのか。あたしはほっとしつつ、靴を脱いだ。
 部屋の電気をつけると、散らかしっぱなしのテーブルが目に飛び込んだ。

「ゲロ……なんじゃこりゃ……」

 弁当の空パック広げっぱなしじゃん。ホイコーロー? クッサ! コンビニの袋を覗き込むと、おにぎりが2個……うわ最悪、もう賞味期限切れてるし。
 ったく相変わらず家事能力ゼロだね、あいつは。お母さんと離婚して何年経つと思ってんの。進歩なさすぎだろ。
 イライラしながらソファに座ると、ギシギシッてスプリングがさびた音をたてた。
 あのくそブタが重量オーバーで座りつづけるから、ほら、こんな変な音がするようになっちゃったじゃん。
 ブツブツ不満漏らしたあたしは……なんだか違和感を覚えて視線を止めた。
 ん? テーブルの上に……トロフィー? しまってあったはずなのに、いつの間に? 
 安っぽい金色のそれを手に取って、刻まれた文字を指でたどった。

「全国バレエコンクール 第2位 小坂菜穂……」

 つぶやいた瞬間、あたしの目の前、暗くて埃っぽい居間は消えて、白い舞台がせりあがってくる。
 熱くてまぶしいライトの光。波の音みたいに広がってく拍手とどよめき――ドン・キホーテ第3幕、キトリのヴァリエーション――

 舞台上手奥から下手に向かって……美しいピケ・アラベスク、流れるようなグリッサードから膝を伸ばしてグラン・パ・ド・シャ……ダメダメ! 頭をブンブン振った。

 何やってんだよ。ったく。

 結局あたしは負け犬だ。カエルの子はカエル。そう。つまり、そういうこと。
 ったく、オヤジが変なもの引っ張り出してくるから、妙なことまで思い出しちゃったじゃんよ。
 だいたいさ、あいつどこ行ったわけ?
 ヤバい連中から金借りまくってたみたいだし、いよいよコンクリ詰めされて海に投げ込まれたかも?

「ぶぶっ」

 バカバカしすぎて吹くっつの。



 ピンポーン……

 遠くでインターフォンがなってる。おいオヤジ、早く出ろよ。

 ピンポーン……

 うわ、そういやあいついなかったっけ。
 あたしはめんどくさいなーって瞼をあげて、時計見て、がっくん。ウソだろ、まだ8時じゃん。何それ。ありえねー……。

 ピンポン! ピンポン!

 あきらめる気配なしかよ。なんなのこいつ。
 しょーがねーなー……のろのろベッドから這い出して。玄関のドア、ガチャ! て怒りにまかせていきなり開けてやった。
 ぼっさぼさの前髪の間からにらんだあたしの目の前に黒い手帳が突き付けられる。

「新宿署刑事課の石原と言いますが」

 スーツ姿の男を前に、あたしは「警察ぅ?」ってつぶやいた。寝ぼけた頭には、なかなか単語が入ってこない。
 何か近所で事件とかあったっけ? 最近テレビ見てないからなー全然わかんねーな。
 でもそいつはぐいって中をのぞきこんだ。

「小坂丈太郎さんいるかな」

「…………は?」

「小坂丈太郎だよ。君は娘さん?」

 ようやく、それがうちのクソ親父の名前であることが理解できて。

「……いないけど」

「出かけてるの?」

 こっくりうなずく。
 そっか……って、ゆっくり現実が見えてくる。とうとうあのオヤジ、何かやらかしたんだ。自暴自棄になって? それで家にも帰ってこられなくなってるんだ。ウケる。アホすぎてウケるぞオヤジ!
 何やったんだろ、万引き? 盗撮? ついにぶっ壊れたか。

「どこに行ったかわかるかな」

「知らない」

「いつ戻る?」

「さぁ」

「さぁ?」

「いちいち人の予定まで知らないって」

 イライラして言うと、石原って名乗ったそいつは、バカにしたみたいに大げさに肩をすくめた。

「ちょっと中入れてもらってもいいかな?」

 何なのこいつ。

「あまり玄関先で話すことでもないしね」

 そう言って意味ありげにこっち見る。
 何それって思ったけど……好奇心の勝ち。あたしは横にどいて、デカを部屋の中へ通した。


「へえ、君、バレエやってるの? 全国2位なんてすごいじゃないか」

 勝手にリビングを歩き回ってトロフィーを見つけると、デカはそれを手に取った。

「もうやめた。それよりうちのオヤジ、何やらかしたの?」

 デカはトロフィーからあたしへ、視線を移した。

「先日新宿駅で、会社員の男性が線路に落ちるという事故があったんだ」

「はあ……」

「幸運にも居合わせた人たちが協力して引っ張り上げてくれてその人は無事だったんだけど……。目撃証言の中に見過ごせないものがあってね……つまり、突き飛ばされて落ちたっていうんだ」

 あたしのイライラを知って、じらすみたいに、トロフィーをゆっくり置く。うわ、めっちゃ嫌な奴!

「そして防犯カメラやICカードの記録を分析した結果、それが小坂丈太郎氏である可能性が高いってことになってね」

 え……。それってつまり。

「うちのオヤジがホームから人突き落としたって?」

 重々しくうなずいたデカには悪いけど、あたし、思わずぶぶーって吹き出しちゃった。

「無理無理! 絶対無理!」

 あんな、言葉だけ勢いよくって、でも中身全然空っぽのチキン野郎に、んな大胆なことできるわけないっつの。

「取り立て屋のオニーサンにすごまれただけで、ビビって泣いちゃうような情けない男だよ。無理無理!」

「借金があったのかい?」

「まあねー。督促状っていうの? 毎日来てて」

「ギャンブルでもやってた?」

「さぁ……そんな風には見えなかったけど」

 そういえば何に金使ったんだろ? 借金の額、たしかめっちゃゼロがついてたような気がする。

「追い詰められてたわけだ」

「そりゃそうかもだけど……。あれ……でも」

 ……この前会った時。

「そういえば……借金はもう支払い済みって……言ってたかも」

 デカの目がキラッて光った。

「どこからそんな金が出てきたんだろうね?」

「それは……さぁ、知らないけど」

 まさか、あいつ、ほんとにヤバいことにクビ突っ込んだんじゃ……。

「でっでも、人殺す理由なんて……」

 あたしの声に、前みたいな力はなかった。

「お父さんに、今連絡をとってもらえるかな?」

 しぶしぶあたしは、自分の部屋へ行き、机の上に放り出した携帯でオヤジに電話をかけた。
 めんどくせえーったく。あいつ帰ってきたら絶対コロス。

『おかけになった電話は、電波の届かない場所にいるか、電源が……』

「ダメっぽいんだけど」

 って居間に戻ると、デカは「仕方ないね」って肩をすくめた。

「お父さんが最近誰かと会っていたとか、連絡をとっていたとか、そういうことはないかな?」

「顔合わせてもいないのに、わかるわけないじゃん」

 バカじゃねえのこいつ。

「じゃあ、誰かを恨んでいたとか、憎んでいたとか、そういうことはなかったかな」

「あのさぁ、あいつにそんな度胸あるわけ……」

 そこであたしは、「あ」て口をつぐんだ。

「誰か、心当たりがあるのかな?」

「……別に」

「隠すと君のためにもならないよ」

 むっつり黙り込んだあたしを、デカが覗き込んだ。



 そいつが帰ると、なんだかむしゃくしゃしたあたしは、猛然と家の中片づけ始めた。
 オヤジが出しっぱなしにした弁当とか缶ビールとか、パパパッて全部まとめてでっかいゴミ袋につっこむ。脱ぎ捨てた靴下とズボン下は洗濯機に放り込んで、ガバガバ洗剤をイン、即効洗ってやった。

――お父さんが誰かを恨んでいたとか憎んでいたとか、そういうことはないかな。

 頭の中、ぐるんぐるんて言葉が回ってる。
 実は……あたし一人だけ、心当たりがある。一人だけ、それは……

「仁科大樹……」

 お母さんの不倫相手、でもって再婚相手。社長やってるだけあって、金もカンロクもたっぷりあって。オヤジ、全然負けてた。案の定、お母さんは仁科を選んで家を出ていった。
 もしかしたらオヤジ、あんなにあっさり離婚届にハンコ押したけどさ、ずっと恨んでたのかも。確かにネクラっつーか、執念深いとこあったじゃん?
 でも……だからって、たとえばオヤジが仁科への復讐を考えるってのは、絶対ない。つか、不可能。
 だって、仁科はもうこの世にいない。8年前に殺されてしまったから――。
 リビングに散らばったエロい写真満載のスポーツ紙を集めてまとめて。紐でしばろうとした時だった。
 あたしは窓際のソファの下に潜り込んだタオルに気づいた。

 こんなとこにもまだあったのかよ。ほんとしょーがねーなあいつ。

 舌打ちして手を伸ばす。広げて……ギョッと固まっちゃった。黒く変色したシミが固まってて。

なんだかそれは……血みたいに見えた。
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