第1話:人を見かけで判断しない
ピーチュチュ ピッチュチュチュ
小鳥が囀るうららかな午後の陽気に、一見平和そうに見える、森の開けた場所に、別の意味の妖気が漂っていた。
物語はここから始まる――。
*
「・・・・。」
ただひたすらに切り株の上の、山と詰まれた干草を見ながら、
黒髪の青年、フォート=ウィルスは何かを待っているようだった。
「・・・、来ませんね・・・。」
茂みから顔を出して言うウィルス。
先ほど、町でぺガサスとかいう翼の生えた馬を探す依頼を受けたのが2時間前―、ウィルスは気長に待つことにした。
「おかしいですね・・。馬なら来るはずなのに・・・。」
馬といっても、翼の生えた馬である。
「馬といったら、干草だし・・・。」
馬といったら、普通は人参である。
「来ませんねー・・・。」
ウィルスはもう一度言った。
この一見、弱そうな印象の青年が『バトルマスター』なのだが、何故かいつも一人で冒険をしている。それは・・・、本人も気づいてないのだが、いつも見た目で判断され、どこのパーティにも入れてもらえない・・・という、悲しい主人公フォート=ウィルスは今日も一人でがんばっています。
サァ―・・・。
木々が風に揺れて音を立てている。
「ふぁー、いいお天気ですねー。」
ウィルスはあくびをして言った。
こうしている間にも、時間は過ぎてゆく。と、いつのまにか辺りは不穏な空気に包まれていた。さっきまで聞こえていた小鳥の囀りも今は聞こ
えなくなっている。
――これは、何やら妙ですね・・・。
思わず、辺りを見回すウィルス。一瞬、帰ろうか、と思ったがすぐにそれは消えた。
幽霊が出るわけじゃあるまいし、まだお昼である。何がそんなにも自分を不安にさせてるんだろう・・・?ふと、ウィルスはそんな事を考える。が、その理由はすぐに分かった。突如、背後に生まれた殺気にウィルスは、反射的に横に跳んだ。
トスッと、さっきまでウィルスが居た場所に何か鋭いものが無数に突き刺さる。
「! ナイフ!?」
――こんな危ないものを投げてくるのはただ一人・・・!
ばっ、とウィルスは後ろを振り返って言う。
「出てきてください、居るのは分かってるんですよ。リーネさん」
ガサッ、と茂みから青い髪の少女が出てきた。
「ふっ、よく避けたわねっ!けど、その悪運もここまでよ!」
リーネと呼ばれたポニーテールをした青い髪の少女が、ビシィッとウィルスを指差して叫ぶ。ウィルスは心底困った、という顔でポリポリと頭を掻いている。
格好は一見『ファイター』だが、盗賊のようにナイフ投げが得意な『ファイター』である。しばらく前にあったことがあるのだが、盗賊の素質のある彼女に『ファイター』ではなく、盗賊に転職してみないか、とウィルスが言ってしまい、彼女のプライド(?)を傷つけてしまったのだった。
『盗賊ぅ!?あたしはそんなのにはなんないよ!ただの盗っ人じゃないか!』
『え?嫌なんですか?』
『あったりまえよ!盗賊になんかなったら、[盗賊殺し]で有名のあの人に殺られるわ!』
『えーと、誰ですか?』
『知らない方がいいわっ!』
『えーと、分かりました・・・。』
『それに、あたし『バトルマスター』を目指してるの。これくらいできて当然よ』
『えっ、そうなんですか!?(ならばここは一つ先輩としてアドバイスを・・・!)』
――と、思ったのが間違いだった・・・!
今となって後悔するウィルス。
『バジリスクの尻尾の攻撃には気をつけるんですよ。なかなか侮れませんから』
『!! あなた、まさか・・・!』
『ええ、『バトルマスター』です。良かったら色々と教えま―・・』
最後まで言えなかった。何故ならウィルスが言い終わらないうちにナイフが飛んできたからだ。
ヒュン トスッ
間一髪で避けるウィルス。
『な、何をするんですか?!』
『ふふふ、あなたを倒せば・・・』
ウィルスの必死の抗議に、リーネはシャキンッとナイフを構えた。
『『バトルマスター』とほぼ、同じって事ね!』
思考がおかしいうえに、ウィルスを本物の『バトルマスター』とは信じていなかったのだった・・・。
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