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unconventional【スキル・メイク・オンライン】 作者:紺藤シグル
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90話 変化

 零が白フードのプレイヤーの馬に乗って去っていく姿を見送っていたリヒトは、隣にいる鉄次に食って掛かっていた。

 「おい鉄次!あいつはあの白い奴らの仲間なのか?もしそうならお前があいつと戦ったときに町の中にオークを引き入れた犯人も、謎のソロプレイヤーって奴だったんじゃねえのか?」

 「いや、彼は敵ではないはずだ。もしその気になれば彼1人の力だけで、ワシ等を混乱に陥れることが出来る」

 「だったらあれは何だ?何故あいつは白い奴が提供した馬に乗って後を追っている?」

 リヒトが遠ざかっていく零の姿を指差しながら、捲くし立てるように矢継ぎ早に質問を鉄次へとぶつけて来る。
 特に最後に放ったリヒトの問い掛けは、鉄次にも理解できないものであり、回答を口にすることは出来なかった。

 「この奇襲もあの黒い奴の自作自演なんじゃねえのか?わざと俺たちを混乱に陥れて、自分で助けてヒーローを気取ってるとかな!」

 「もしそうだったなら、わざわざ襲ったプレイヤーの仲間だと言わんばかりの行動をしたりはしないだろう。あれでは賞賛よりも疑念が強くなる。敵の提供した馬に乗って離脱するなど、疑ってくれと言っているような物だ」 

 鉄次は考えれば考えるほどに理解できない行動の数々に眉間に皺を寄せる。 

 (理由は分からんが、不可解なことが多すぎる……)

 白いフードのプレイヤー達も、謎のソロプレイヤーも、何が目的なのかがハッキリとしない。
 そもそもこの護衛集団を襲った明確な理由も分からない状態だ。

 鉄次が最初に思い浮かべた理由は、護衛集団を襲うことで賞金を争う上での有力なプレイヤーを皆殺しにして、ライバルを減らすということだった。

 しかしモンスターを操れることや、彼ら自身の戦闘力を加味すれば、むしろこうして全てのプレイヤーに認知されるような事件を起こさない方が利益がでる。

 (金銭が理由ではないのか?)

 鉄次もまた、零と同じ考えまでに辿り着いていたが、そこから先は幾ら考えても分からなかった。

 「本人に直接聞かなければ分からんな」

 隣で怒りを収められていないリヒトに対して、鉄次は一言呟いて考察を終わらせる。
 リヒトは尚も納得出来ていない様子だったが、そこにガッザが介入したことで意識をそちらに向けた。

 「話しているところに割り込んで申し訳ないが、皆を逃がすのを手伝って貰えないか?」

 鉄次とリヒトが悠長に会話をしている間も、護衛集団はモンスターに襲われて戦っている状況だった。
 撤退しながらの戦いは難しく、被害も大きくなる。
 だからこそマーセルはガッザに殿(しんがり)を頼んでいたのだ。

 「分かった。直ぐに参戦しよう」

 「話してる場合じゃなかったな……」

 鉄次は気持ちを直ぐに切り替え、リヒトは頭に血が上っていたことを反省しながら返答する。
 3人はまず事態を収拾することを優先し、すぐさま戦いに加わるべく走り出した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 護衛集団から離脱した零は、前を駆ける白フードに先導されるままについて行くと、草原から廃墟の一角へと連れて行かれた。

 するとそこには、先ほど鉄次たちに追われていたであろう3人の白フードのプレイヤー達が、零たち2人の到着を待っていたようで、比較的荒れていない民家の前で馬を降りてこちらを見ている。

 目的地に着いたのか、零を先導していた白フードが、比較的荒れていない民家の前で馬を止め馬上から地上に降りると、被っていたフードを()ぎ、民家の陰で暗くなっている所為か余計に目立つ白髪と共に、中性的で端正な顔立ちを零に晒け出した。

 「お前っ!?何やって!!」

 待っていた白フードの内の1人、(じん)が驚愕を露わにして(むせ)ている。
 まさか聖が零に素顔を明かすとは思っていなかったのだ。

 「そんなに驚かなくてもいいだろう?お互いに正体を明かさずに1度は会っているんだ。それに彼も直観的に分かったはずさ。そうだろう?零」

 最後に短く、黒いフードで顔を隠す謎のソロプレイヤーの本当の名前を口にした聖に対して、零は彼の問い掛けを否定せずにフードを脱いだ。

 「お前の目的は何だ?」

 単刀直入に馬上から見下ろす形で問い掛けて来る零に、聖は小さく笑い声を漏らすと、民家の扉を開けた。

 「取りあえず中で話そう。お互いに話したい事は多いはずだ。それに誰かに顔を見られても困るだろう?」

 そう言って先に民家の中に入って行った聖に対して、零も無言で馬から降りて彼の後を追いかける。
 零が中に入ると、多少傷んでいる木製のテーブルが1つと、同じく木製の椅子が2つ置かれていた。

 その内の1つに先に座っている聖を見て、零も向かい合わせの形で椅子に腰を下ろす。

 (他の奴らは見張りか)

 他の白フードたちが中に入ってこない様子から、外で誰か邪魔者が来ないか見張っていることは容易に想像できた。

 その為民家の中は零と聖の2人だけ。

 電球も無い民家の1室では、窓から入って来る太陽の光と、太陽の光が届かず陰になっている部分とで、綺麗にコントラストが描かれている。
 そしてそんな光と影と同じように、白髪で白いロングコートを着る聖と、黒髪で黒いロングコートを着る零の姿は、白と黒のコントラストを作っていた。

 「さて、早速本題に入ろうか。君をこうして連れて来たのは、もっと君の事を理解しようと思ってね。お互いに直観的に敵同士だと理解はしていても、本当に相手を気に掛けるだけの価値があるのかは半信半疑のはずだ」

 零はふざけた提案だと思ったが、相手の事を知る必要性があるとも感じていた。
 恐らく目の前に座る白髪の青年は、自分と同じ種類の人間だと直感している。

 しかしそれと同時に、相容れない存在だとも思っている。

 こうして会話をする機会を作ったのは、相手も同じように感じているからなのだろう。

 そして自分が何故そう感じるのか、その理由が気になっていることは確かだった。

 「いいだろう」

 どうせ聖たちをここで殺したところで、所詮ゲームの中だ。
 直ぐに復活して多少時間を無駄にさせるくらいの意味しかない。
 それならば会話をして彼らの目的を知り、対策を練る方が有意義だと零は考えた。

 「正直に言うと、ついさっきまでは君と会話なんてする気は無かったんだ。でも君を止めに行く為の道中で、君の影響を受けた面白い変化(・・)を見てね。君の事をもっと知る必要があると考えを改めた」

 「俺の影響を受けた変化(・・)だと?」

 「そう。君の影響を受けた変化(・・)だ。期待して観察していた1人が、面白い変化(・・)をしようとしている。それは俺にとって、途轍もなく価値のあることだ」

 楽しそうに、嬉しそうに、無邪気な笑顔を見せる聖を見て、零は彼の目的を悟った。

 「人の変化がお前の目的か。いや、『劇的な変化』と言い直した方がいいか」

 「流石だね。逆に君の目的も分かりやすい。君は戦いを求めている。それも唯の戦いじゃない。自らの力量を試せるような戦いを目的としている」

 お互いベクトルは違えども、知りたいのだ。
 零は自らの力量を、聖は人の変化を。

 そして聖は自らを満足させられるような変化を見たと言っていた。
 零はそのことに嫌な予感を覚えたが、今はまず聖が目的を果たすための手段として、何をしようとしているのかを知る事の方が先決だった。
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