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unconventional【スキル・メイク・オンライン】 作者:紺藤シグル
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89話 直観

 鷹の姿をしたエリアボスを一刀で斬り伏せた零は、周囲の状況を確認しながら【挑発】のスキルの考察を行っていた。

 (これだけ数の差があっても恐れが勝るのか)

 護衛集団を囲うように進軍していたオーク達は、逃げ出すもの、動けないでいるものなど、様々な反応を示している。
 佇む零に対して襲って来ようとしないオーク達は、零に勝てないと悟って逃げ出して行った、これまで戦ってきたモンスター達と似た状態に(おちい)っているようだった。

 今までは数が減ったことで逃げ出す傾向が強かったが、今回は生態系の上位種であるエリアボスをオーク達の目の前で倒すことで、恐れを()していることは容易に想像できる。

 圧倒的な力の差を前にして、生物としての生存本能が逃げるべきだと判断し、【挑発】の効果すら無効にしてしまっているのだ。

 (想像していたよりも【挑発】のスキルは役に立ったか……)

 そもそも急降下して襲ってきた鷹型のエリアボスも、【挑発】のスキルによって感化されたことで、零に向かって攻撃しに行っていたのだ。
 ある意味では零の周囲にいたプレイヤー達は、零の所為(せい)で巻き込まれたと言っても過言ではない。

 しかし結果として誰も傷つくことなく、更に攻撃を仕掛けてきていたオーク達も大人しくなったのだから、結果オーライと言っても良いだろう。

 (ここはもう任せても問題ないな)

 恐慌状態に(おちい)っているオーク達が相手ならば、さほど苦戦しないだろうと判断した零は、この場を後にして一華の祖父である鉄次の捜索に行くことを決める。
 もしも鉄次がモンスターに殺されていれば幾ら探しても見つかるはずもないが、流石にこの程度の相手で死ぬことはないだろうと判断したのだ。

 取り敢えず護衛集団を一通り見て行こうと、護衛集団の先頭に向かって零は走り出したのだが、どうも様子の奇怪(おか)しなプレイヤー達が、オークの群れに向かって走って行く姿が視界に入ってくる。

 (何だあれは?)

 零が怪訝な表情となって思わず心の中で疑問の声を上げた原因は、オークの群れに突撃して行ったプレイヤー達を、オーク達が意図的に隙間を開けて包囲の外へと逃がしていく光景が映ってきたからだった。
 オーク達の包囲外へと逃げ出した彼らは、全員同じような真紅の鎧を装備していたのも、奇妙に映った原因の1つと言える。

 (何かのスキルでオーク達が彼らを避けたのか。それともチートのような不正行為を行ったのか。まだ判断はできないな)

 真紅の鎧を纏ったプレイヤー達が犯罪者プレイヤーであることを知らない零は、彼らの不審な行動を気にしつつも、彼らを追うことはせず先に進んでいく。

 しかし護衛集団の先頭まで残り半分といったところで、オーク達よりも足の速い豚型モンスターが包囲を狭めて来ていた所為(せい)で、モンスターが邪魔となり倒しながら進むことを余儀なくされることになった。

 (包囲の外に出るわけにもいかないか……)

 豚型モンスターの包囲攻撃を受けている護衛集団のプレイヤー達を放っておいて、包囲の外側から先頭まで回り込むということも可能ではあったが、護衛集団の救援もリア達から託された目的の1つだ。
 鉄次が居るかどうかを探しながら先頭に辿り着くまでに、余計な時間が掛かるが仕方がないと割り切り、豚型モンスターを大剣で斬り裂きながら先に進んでいく。

 零にとっては豚型モンスターを倒していくことは、単純作業に近い面白味の無い戦いだったが、零の(しら)けた気持ちとは裏腹に、零によって助けられた形となっている護衛集団のプレイヤー達からは、小さくない歓声が上がっていた。
 特に豚型のエリアボスをいとも簡単に倒して先に進んで行く姿は、マーセルのパーティーメンバーであるゼオンによって映されていた為、生放送を見ていた視聴者の目にも、零の活躍がしっかりと記憶されることとなった。

 しかしそんな事実を知らぬまま、零は先頭付近まで駆けて行き、漸く辿り着く。

 そこでは探し人であった鉄次と、その相棒でありライバルと呼べるリヒト、更には殿(しんがり)を任されたマーセルのパーティーメンバーであるガッザの3人が、白いフード付きロングコートで、零と同じように姿を隠す3人のプレイヤー達と交戦している光景が目に入ってきた。

 (3人だけ取り残されているな)

 護衛集団はマーセルの指示の(もと)、モンスターによる包囲から逃れるべく最後尾から一点突破し、来た道を戻るように廃墟の区画へと歩を進めている。
 その指示はマーセルのパーティーメンバーであるガッザが知らせたことで集団の先頭まで届いている為、彼らも追撃してくる豚型モンスターの攻撃を(しの)ぎながら、着実に後退して行っていた。

 しかし鉄次とリヒトとガッザの3人は後退することなく、その場で戦い続けている。

 と言うよりも、逃げようとする白フード3人を、逃がさず討ち取ろうとしているように見受けられた。

 零の基準からして見ても、鉄次、リヒト、ガッザの3人はハイレベルな戦闘力を持つプレイヤーだ。
 その彼らが苦戦しているのは、白フード3人の実力も()ることながら、それに加えて周囲にいる豚型モンスター達が白フード達の味方になっていることが大きかった。

 豚型モンスター達は白フードには敵対せず、鉄次、リヒト、ガッザの3人のみを狙って攻撃している。
 その光景はまるで、先ほど垣間見た深紅の鎧を纏ったプレイヤー達に道を開けるオーク達のようだった。

 (異常だ)

 鉄次たちと敵対し戦っているところを見ると、おそらくあの白フード達が護衛集団にモンスターを(けしか)けたのだと推測できる。
 しかしそれは()(まで)もモンスターを(なす)り付ける形のはずだと今の今まで思っていたが、どうやら違っていたようだと零は考えを改めていた。

 MPK【モンスタープレイヤーキル】は、自らがモンスターと敵対しているからこそ、モンスターを引き付けることができ、他のプレイヤーに擦り付けることができる。
 けれども白フードや深紅の鎧のプレイヤー達は、モンスターと敵対していなかった。

 つまり彼らは自分たちに敵意を持たれていないのに、モンスターを引き付ける何らかの手段を持っていたことになる。
 それがもしも不正(チート)行為による物だったなら、大きな問題だ。

 賞金という形で金銭のやり取りのあるゲームだからこそ、通常よりも騒がれることになるだろう。
 零は映像を撮られていることを知らないが、モンスターと敵対せず共に戦っている姿が、ガッザによって生放送で中継されているのだから、火に油を注ぐ形になることは明白だった。

 (しかし金が目的ではない可能性が高いな)

 モンスターを操る力を持っていながら、それを見せつけるように大規模な攻撃を仕掛けるのは、もし賞金を稼ごうと思っているのなら、愚策としか言いようがない。
 操れることを隠しておけば、エリアボスを操って一方的に殺すことで賞金を稼ぐことも可能だし、エリアボスを操れなかった場合も、他のモンスターを操ってエリアボスに嗾けることで戦いを有利に進めることができる。

 しかし大勢にその方法をひけらかしてしまえば、運営にクレームが行く可能性が非常に高い。
 正当な手段であっても何かしらの制限が掛かるだろうし、不正な手段なら制裁されることになる。

 (だとすると他に目的があるな)

 金銭以外の目的。
 行動だけを見ると愉快犯のようにも思えるが、この規模の混乱を起こし、これだけのモンスターや人間を意のままに動かせる人間を思い浮かべたとき、零の脳裏に1度しか会った事の無いはずの1人の白髪の青年が浮かび上がってくる。

 その瞬間、鉄次たちが討ち取ろうとしている白フード達と同じ格好をした馬に乗ったプレイヤーが、4頭の馬を背後に従えながら鉄次たちの戦っているど真ん中に割り込んできた。

 「3人とも馬に」

 馬上の白フードが鉄次たちから追われていた3人の白フードに短く声を掛けると、3人は急いで馬に乗って離脱し始める。

 突如乱入してきた新たな白フードに驚いて馬上を見上げていた鉄次たちだが、再度攻撃を仕掛けようと気を取り直した瞬間、乱入してきた白フードが鉄次たちの行動を制限させる言葉を、楽しそうに発する。

 「俺に攻撃を仕掛けると貴方達が犯罪者プレイヤーになりますよ」

 状況的に見れば明らかに嘘を付いているようにしか思えなかったが、彼の言葉には何とも言い難い説得力が滲み出ていた。
 その所為(せい)で、鉄次たちの動きが鈍ってしまう。

 そしてその瞬間を馬上の白フードは見逃さず、馬を駆けさせ鉄次たちから攻撃されない位置へと離脱して行く。
 しかし彼はそのまま逃がした3人の白フードを追おうとせずに、馬を止めて零に顔を向けた。

 すると零の前で白フードが引き連れていた最後の1頭の馬が、まるで乗れと言わんばかりに停止する。

 (この馬に乗って自分について来いと言いたいのか?)

 零本人が乗っていた馬は、オーク達に突っ込んで行く前に降りて、ダインたちの居る馬車の元へと戻るように指示を出している。
 幾ら零とはいえ、馬上での戦闘経験はほとんど無いに等しい。
 乗ったままオーク達に突撃しても本来の力を発揮できないだけでなく、馬も犠牲になってしまう可能性が高いと踏んで戻すことにしたのだ。

 (この馬に乗ると色々と不都合が生じるだろうな)

 護衛集団を襲ったと思われる白フードから提供された馬に乗り、彼の後ろをついて行けば、彼らの仲間だと勘違いされる可能性は大だ。
 そもそも罠の可能性も考えられる。

 しかし零は様々な不利益よりも、自身の脳裏に浮かぶ白髪の青年の真意を探る方が価値があると判断し、目の前に止まっている馬に乗る事に決めた。

 零が馬に乗ると、止まっていた白フードが動き出し、護衛集団から遠ざかって行く。
 そして零の乗った馬も、その後を追うように動き出していった。
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