挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
孤高の青年は飽くなき強さを追い求める ~unconventional【スキル・メイク・オンライン】~ 作者:紺藤シグル
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

81/134

72話 馬屋

 第2の村に向かって進んでいた零は、道中モンスターにはそれなりに遭遇したが、結局エリアボスには出会うことなく、この先に第2の村があると思われる白い外壁にまで辿り着いていた。

 そのまま外壁沿いに歩いていくと、門と思われる木製の扉が見えて来る。
 外開きになっているその扉を迂回して門の正面に出ると、外壁の中は木製の家々と放牧用と思われる草原が広がっていた。

 (村か?)

 村と聞いてはいたが、広さだけ見れば始まりの街の次に大きいと言っても過言ではない。
 放牧するための敷地が必要だったから外壁を広げたのだろうが、零が村なのか疑問に思ったのはそれだけが原因ではなかった。

 (中心に向かうほどに近代化されているな)

 外壁の近くは木製の家々が連なっていたが、中心に行けば行くほど煉瓦(れんが)で造られた家々が目立ってくる。
 それにNPCと思われる人々の数も多い。
 やはり村と言うには疑問を持ってしまう規模だった。

 (とにかく目的の馬と馬車を探すか)

 海路で進めない場所は空が飛べない以上、陸路で進むしかない。
 そうなると最大の問題となってくるのはダインをどうやって連れて来るかになる。

 鍛冶屋であるダインは戦闘が出来ないと言っても過言ではないが、別にダイン1人を護衛して陸路を進むことは零としては特に問題は無い。
 充分に守れる範囲だった。

 しかし真の問題はダインが制作している武器や防具などの商品をどうやって輸送するかだった。
 海路なら船で輸送できるが、陸路ならアイテムボックスに入りきらない物を全て売り払わなければ持って行けない。

 しかし毎回毎回全て売り払って貰う訳にもいかない。
 零自身について来ると本人は言っているが、彼には彼のゲームの楽しみ方があり、彼の事情がある。

 そうなると必要なのは陸路での輸送手段。
 自動車などの現代的な輸送手段が無いとなると、現実的な物は馬車になる。

 (出来れば開閉式の窓の付いている前後左右を確認できる馬車がいいな)

 布や木製の壁によって覆われた馬車では視界が(さえぎ)られて敵の接近に気づけないことも多くなってしまう。
 ならば窓の付いている物か穴が開いている物の2択になる。
 その中から更に1択に絞るとなると、今だに経験はしていないが、雨が降った時の事を考慮して開閉式の窓が付いている馬車がベストと言えるだろう。

 購入するべき物が決まったは良いが、何処で馬を購入すれば良いのか分からなかった為、近くの男性NPCに尋ねると、この村で1番大きいと言われる馬屋の場所を教えて貰えたので、零はメニューから地図を開いて道筋を確認すると、そこに向かって歩き出した。

 何百頭と言っていい馬を収容しているであろう馬小屋の横に建っている煉瓦造りの馬屋に入ると、そこには大小様々なモンスターの素材で作ったと思われる高そうな馬車が置いてあり、大勢の人々で賑わっていた。

 零は空いているカウンターと思われる場所に歩いて行き、40代ほどの髭を生やした男の店員に話し掛ける。

 「馬が買えるのはここで間違いないか?」

 「ああ。ここで合ってるよ」

 「なら早速で悪いが、馬車を引けるような馬が欲しいんだが」

 「馬車の大きさはどのくらいだ?」

 店員からの問い掛けを受けて、零は馬車の大きさや重さなどが分からなければ、どの程度の馬を買えばいいのか分からないことに気づく。

 「済まない。馬車はまだ決めていないんだ。先に馬車から決めさせてもらう。あそこに並んでいる馬車で全部か?」

 「いや、外にも置いてある。見に行くか?」

 「ああ」

 取りあえず全ての馬車を一通り見てから決めることにした零は、店員に連れられて店の外に出て行く。
 すると馬小屋とは反対の場所に、屋根付きの木製の馬車や(ほろ)馬車が置かれていた。

 「何か希望はあるのか?」

 「ああ。充分な量の武器や防具が乗せられて、開閉式の窓のある馬車が良い」

 零の説明を聞いて店員の表情が渋い物に変わる。

 「そのレベルの馬車となるとそれなりに金が掛かるが、予算は幾らだ?」

 「10万ディールほどだ」

 「10万か……。馬もまとめて買うとなると、あれが限界だな」

 店員が指さした方向には、人が1人乗るのが限界の大きをした、開閉式の窓の付いている木製の馬車だった。

 「あれか?」

 「ああ。木製の屋根付き馬車、しかも開閉式の窓付きはかなり値段が高い。更に他の馬車と比べて重くもなるから良い馬を買わなければならない。となるとお客さんの金額だとあれが限界になる訳だ」

 「そうか」

 店員から(もっと)もな意見を聞かされて納得しながらも、零は昨日騒動の時にレッドオークの剥ぎ取りをしなかった事を思い出して表情を歪める。
 あれを剥ぎ取ってギルドで売っていればそれなりの金額になっていたはずだ。
 そうすればもう少し選択肢も増えたと言って良いだろう。

 「少し考えさせてくれ」

 零は店員にそう断りを入れると左手で口元を覆いながら物思いにふける。
 手持ちの素材、換金時の金額、妥協して安価な馬と馬車を買った際のメリットとデメリット。
 様々な考えを巡らせた後に、1つの答えに行き付く。

 「済まない。馬車を買うのを止める可能性が出てきた。どの馬を買うのかも馬車をどうするか決まってからにしたい。たぶん後日になる。わざわざ案内してくれたのに悪いな」

 「いや、馬は確実に買ってくれるんだろう?なら後日で構わないさ。また来てくれ」

 「ああ」

 店員とその場で別れた零は、メニューを開いてメール画面を開く。
 送信先はダインだ。

 書き込んでいく内容は『馬車を作ることは出来るか?』という簡潔な内容だった。

 零はどうするか考えた結果として、ダインなら馬車を作ることも可能ではないかと想像したのだ。
 それなら素材は自分が集めればいい。
 もしかすれば木製の馬車よりもモンスターの素材を使った、更に良い馬車が作れる可能性すらある。

 後はダイン次第になるが、生憎(あいにく)今日はもう時刻が10時30分になっている為、ログアウトして東京から名古屋にある不動産屋まで行かなければならない。

 最終的な結論が出るには(しばら)く掛かりそうだと思いながら、零はその場でゲームからログアウトした。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ