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孤高の青年は飽くなき強さを追い求める ~unconventional【スキル・メイク・オンライン】~ 作者:紺藤シグル
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69話 変わる勢力図

 最強プレイヤー決定戦が終わり闘技場を後にした鉄次は、孫娘である一華から一通りの称賛の言葉を贈られていた。
 鉄次に尊敬の眼差しを送りながら賛辞の言葉を全て言い切って一華は満足したのか、一呼吸すると最後に怪訝な表情になって疑問に思ったことを尋ねてくる。

 「御爺様。何故わざわざあの場で黒フードについて言及されたのですか?」

 普通なら自らが負けたことを周知させて自身の評価を落としたりしないにも関わらず、それを実行した祖父の行動が理解できなかった一華に対し、鉄次は何処かに居るはずの謎のソロプレイヤーの事を思い浮かべながら理由を口にする。

 「今すぐではないが、儂が強くなったらもう一度戦いたいからだ。だが儂は彼とは連絡が取れないし、本当の姿も分からん。ならせめて再び会える可能性を上げておこうと思ってな。それに彼の他にも名を明かしたくない強者が居るかもしれん」

 同じような格好をしたプレイヤーは大勢いるため、もう一度大会が開催されても見た目では判断できない。
 しかしそれでも、鉄次は本物かどうか見分けがつく自信があった。

 もし本物ならば、誰が見ても分かるほどに他を圧倒しているはず、その強さこそが謎のソロプレイヤーである証。
 だからこそ大会に出場さえしてくれれば、戦える可能性はグンと上がると考えたのだ。

 その鉄次の考えを聞いた一華は自分の視野の狭さを恥じていた。
 祖父は井の中の蛙になることなく、自分よりも強いプレイヤーも存在すると考え、このスキル・メイク・オンラインを通じて更に多くの強者たちと戦おうとしている。

 それに対して自分は盲目的になり、自らの価値観以外を全てを否定して祖父が負けた時もそのことを認めようとはしなかった。

 「お爺様。お願いがあります」

 「どうした?」

 「お爺様から離れてもっと多くの事に目を向けようと思うのです」

 意を決して自らの意思を伝えてきた一華に、鉄次も真剣な表情になる。

 「お前の実力では1人でこれから進んでいくのは難しいだろう。何処かパーティーを組んでくれる当てでもあるのか?」

 実際にこの港町に辿り着くまでにも、何度か危ない場面があった。
 特に強いエリアボスが相手だと、一華1人ではかなり厳しい戦いになると予想できる。

 「当てと言えるかは分かりませんが、入れて貰いたいパーティーがあります」

 「そうか。もし駄目だったら連絡しなさい。儂も組んでみたい相手が居る。ある意味お前が独り立ちする良い機会かもしれんな」

 昔からお爺ちゃんっ子だった一華の姿を脳裏に思い浮かべながら、鉄次は感慨深げに大きく頷く。

 「ではここで分かれよう。またな一華」

 「はい。お爺様」

 こうして2人はパーティーを解消し、それぞれ目標のプレイヤーを探しに行くために別々に分かれたのだった。


◆◇◆◇


 一華と分かれた鉄次が、闘技場の周囲をぐるっと回るように歩きながら目的の人物を探していると、その目的のプレイヤーは鉄次の予想通りまだ遠くに行っていなかった為、すぐに会うことができた。

 「今時間はあるか?」

 鉄次が問い掛けた先には、決勝の対戦相手であったリヒトが眉間に皺を寄せながら怪訝そうな表情で鉄次を見返している。

 「時間はあるが何のようだ?」

 「君とパーティーを組みたい」

 「いきなり何言ってんだ?」

 訳が分からないというのが、リヒトがまず頭に浮かべた感想だった。
 負けた相手の前にデリカシーも無く急に現れたかと思えば、パーティーを組んでくれと頼んでくるのは、嫌がらせか何かかと勘繰らずにはいられない。

 「いや、儂が更に強くなるには実力の近い相手と切磋琢磨するのが良いと思ってな」

 「確かにお互いメリットはあるかも知れないが、他にメンバーは居るのか?」

 「君が他にパーティーを組んでいないなら、儂と君だけだ」

 元々リヒトは他プレイヤーに足手まといになられるのが嫌でパーティーを組んでいなかったため、特に条件に問題は無い。
 何よりも鉄次にリベンジする機会が多く訪れる事は好ましく、自分のレベルアップにも役立つと結論付けた。

 「俺もソロプレイヤーだから問題ない。OKだ。パーティーを組もう」

 「決まりだな。宜しく頼む」

 「ああ」

 2人があっさりとパーティーを組むことが出来たのは、お互いの実力を認めているからこそ。
 こうしてスキル・メイク・オンラインでも屈指の実力を持つ2人組みパーティーが出来上がることとなった。


◆◇◆◇


 「すまない。今時間はあるだろうか?」

 闘技場から少し離れた街路で、食事をして今日はログアウトしようと歩きながら話していたリアと沙織の後ろから、一華が()しくも鉄次と同じように声を掛ける。

 「何でしょうか?」

 リアと沙織は同時に振り返り一華の姿を視界に収めると、面識のある沙織が率先して返答する。

 「1つお願いがあるのだが、その前に謝罪させて欲しい。闘技場で貴女の事を疑ってしまった。すまない」

 謎のソロプレイヤーと知り合いであるかどうか強く問い詰めてしまったことに関して頭を下げてくる一華に、零との約束があるとはいえ嘘を付いてしまっている沙織が、ばつが悪そうに顔を顰める。
 しかしすぐに頭を切り替えて元のクールな表情に戻した。

 「そのことは気にしていません。それよりもお願いとは何でしょうか?」

 「急な話で申し訳ないが、良ければ私とパーティーを組んでは貰えないだろうか?」

 あれだけ敵対心を剥き出しにしていた相手の転身を見て、沙織は訝しげに首を傾げる。

 「本当に急な話ですね。何か理由があるのでしょうか?」

 「明確な理由が有るわけでは無いのだが、私は貴女に言われて自分の世界の狭さに気づかされた。自分の成長の為にもその切っ掛けを与えてくれた貴女とパーティーを組みたいと思ったんだ」

 一華の実力的には何の問題も無い。
 先ほどの試合では沙織が勝ったが、本来は同程度の実力だ。
 それにこれからこのゲームを攻略して行くに当たって、2人ではそろそろ厳しくなってきたと話していた所だ。
 特にグレートクレイフィッシュに関しては、零から予め情報を聞いていなければ死んでいたかもしれないと戦っていて感じるほどだった。

 そのことを思い浮かべながら沙織がリアにアイコンタクトを送ると、彼女は頷いて了承の意を示す。

 「分かりました。一緒に冒険しましょう」

 「良いのか!?ありがとう。正直断られると思っていた……」

 沙織の返事に安堵した一華は、胸を撫で下ろしながら笑顔を見せる。
 そんな彼女の本音を聞いて、沙織とリアは苦笑(くしょう)してしまった。

 「話が変わるけれど、一華さんは食事は終わってる?」

 「いや、まだ食べていないが……」

 これまで黙って話を聞いていたリアが急にフレンドリーな口調で話し掛けて来た為、一華は驚きから返答が押され気味になる。

 「なら親睦を深めるついでに食事にしましょう。丁度私達もご飯を食べに行く所だったの」

 「分かった」

 腰が引き気味になりながらも一華が了承した事で、3人は食事をする場所は何処にしようかと話し合いながら、再び第2の港町を歩き出すのだった。


◆◇◆◇


 「そんなに簡単に決めて良いんですか!?」

 闘技場の周囲にあるベンチで驚きの声を上げているのは、優しい顔付きをした黒髪ショートヘアの少年――シン。
 何故彼がこんなにも驚愕しているのかというと、シンのパーティーのリーダーであるダメ男が、ゴスロリの少女――恵麻を即答でパーティーメンバーに加える事を了承した為だった。

 「そんなに驚かなくても……。実力的には何の問題も有りませんし、シンさんの時も彩矢さんの時も素早く回答したと思うんですが……」

 ダメ男に困った表情でパーティーに入れて貰った時の事を呟かれハッとなったシンは、ションボリした表情に切り替わる。

 「すいません。そうでした……」

 謝るシンを横目に、恵麻がニコニコと笑顔を咲かせていた。

 「じゃあ何も問題ないわね。これから宜しく」

 恵麻は砕けた口調とは対照的に、洗練された仕草でゴシック調のスカートの裾を両手で持ち上げ、小さく一礼する。
 その姿にシン達4人は目を奪われ一瞬返す言葉を無くすが、まず初めに意識を取り戻したダメ男が頭を下げた。

 「こちらこそ宜しくお願いします」

 「あっ!宜しくお願いします」

 「宜しくお願いします」

 ダメ男の声を聞いて我を取り戻した彩矢が慌ててペコリと頭を下げると、シンもつられて挨拶を返す。
 最後に紙装甲が声を発することなく金属音を立てながら一礼したことで、全員に挨拶を済ませた恵麻は、晴れてダメ男たちのパーティーの一員となったのだった。
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