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unconventional【スキル・メイク・オンライン】 作者:紺藤シグル
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53話 それぞれの特徴

 闘技場に実況者の『試合開始』の一言が響き渡る。
 その言葉を合図に開始された最強プレイヤー決定戦は、プレイヤーの怒号と共に、武器や防具による金属音が響き渡り始めた。

 プレイヤーが密集していて尚且つ周りが全員敵同士という事もあって、乱戦になっている闘技場内は、混沌としているという表現が適切な状態だ。
 しかしそんな中でも、幾つかのプレイヤーたちはグループを作り助け合っている姿を見ることができた。

 「グループを組んで協力しているプレイヤーは頭が良いね。まずは生き残らないと話にならないし」

 「そうだな。戦いは始まった直後が一番混乱する。落ち着くまでは安全策を取るのは悪くない」

 殺伐とした闘技場内とは裏腹に、戦闘の様子を画面越しに眺めていた零とダインは、カウンターにある椅子にゆったりと座りながら、プレイヤーたちの動きをそれぞれ評価して談笑していた。

 そのまま開始から5分ほど経過すると、プレイヤーの数も少し減り最初の激しさも落ち着き始め、膠着する場所も現れだしてくる。
 それと同時に、ひときわ目立つプレイヤー達が目に付き始めていた。

 『凄いですね。紙装甲さんを恐れて他のプレイヤーが近づいてきません』

 実況が驚きの声を上げると、紙装甲が画面に映し出される。
 先ほどまで紙装甲は持ち前の全身フルアーマーの装甲と、全身を隠せるほどの盾で敵の攻撃を防ぎ、もう片手に持った斧槍――別名ハルバートと呼ばれる武器で敵を薙ぎ倒していた。

 名前が詐欺にしか思えないその姿は、正しく動く要塞。

 他のプレイヤーは倒すのを諦めて紙装甲から離れていってしまったのだ。

 『惜しいですね。確かに強いですが、機動力がない。他のプレイヤーに逃げられると追いつけない。強いことは間違いないですが、キル数を稼げずに予選で敗退してしまうかもしれません』

 解説から指摘された通り、紙装甲は重量の重さが災いして足が遅い。
 ルールに合った装備にしていなかったのが、予選で苦戦してしまっている原因だろう。

 『え~、映像が変わりましてこちらのプレイヤー。お名前はダメ男さんですね。順調にキル数を稼いでいるようです。今も1人倒しました!』  

 実況の言葉と共に、腹がどっぷりと出ている下半身太りのオッサンプレイヤーであるダメ男が画面に映し出される。
 ダメ男は重過ぎない鎧と、丸盾に直剣というオーソドックスなスタイル。
 体型のだらしなさは騎士風の鎧で緩和され、カッコよくすら見えてしまう。

 『彼はバランスが良いですね。盾でしっかりと相手の攻撃を受けて、隙を見て反撃し倒す。攻撃を受ける上手さと、相手の隙を見極める目がしっかりしている』

 安定という言葉がしっくりと来るその姿は、戦いのさなかも安心して見ていられる。
 派手さは無いが基礎がしっかりしている人間は強い。
 そう思わせてくれる強さがあった。

 『おっと!優勝候補の一角であるマーセルさんとガッザさん!他のプレイヤーを蹂躙しています!』

 『マーセルさんとガッザさんも凄いですが、試合開始まで一緒に居た2人も凄いですね。え~と名前は……。大和さんとゼオンさんですね』

 真っ赤な髪をツンツンに立てて、皮製の防具に身を包み、身軽な動きで敵を翻弄し剣で斬り伏せる大和。
 紫色の髪をオールバックにし、鉄製の鎧を身に纏ったゼオンは、逆三角形の盾で敵の攻撃を防ぎ、ロングソードで敵を貫いている。

 『素早さ重視の大和さんと防御重視のゼオンさん。2人とも見た目は高校生くらいに見えますが、かなり強いです。流石マーセルさんとガッザさんと共にパーティーを組んでいるだけはありますね』

 『凄いですね!そして本命の2人!マーセルさんとガッザさんも流石の強さを見せています!』

 マーセルはランスナイトと言った出で立ちで、身を隠せるほどの大盾で敵の攻撃を防ぎ、ランスで敵を貫いて進んでいく姿は、重戦車のような迫力があった。
 対して斧を振り回し、時には相手プレイヤーを真っ二つにしてしまうガッザも、他のプレイヤーを恐怖に陥れてしまうほど、鬼神のごとき強さを見せている。

 『スキル・メイク・オンラインは従来のゲームとは一線を画するゲームですが、それでも元プロゲーマーである2人は強いですね』

 『ゲームで強くなるためのノウハウがあるんでしょう。立ち回りの仕方や武器の特性の理解。あとは技スキルと自分自身の技術で攻撃するバランスが良いんだと思います』

 現在スキル・メイク・オンラインでは強くなるための議論が掲示板で行われることが多いが、特に技スキルを成長させるかどうかが議題にされることが多い。
 普通の人間は剣や槍で戦う機会なんてあるはずも無いため、そういうプレイヤーが直ぐにゲームで戦えるようになるための機能として技スキルが存在するわけだが、スキルは付けられる数に限りがある。

 そのためプレイヤーはどのスキルを付けるか厳選しなければならない。
 しかし技スキルを付けずに独力で戦う力があれば、その分他のスキルを付けることができる。

 それは他のプレイヤーに対してのアドバンテージになるはずだというのが、技スキル不要論を唱えるプレイヤーの意見だ。   

 逆に技スキル育成論を唱えるプレイヤー達の意見は、一から剣術や槍術などを習得するのは時間が掛かり過ぎると論じている。
 実際に達人級とは言わなくても、それなりに剣術が使えるようになるには時間が掛かる。

 だったら技スキルを育てて格闘ゲームなどのように技の組み合わせで戦うほうが、結果的に強くなるという意見だ。
 それに技スキルはどれだけあるのか解明されていない。
 もし強いスキルなどが発見されれば、それは大きなアドバンテージになる。

 両方を鍛えれば良いという意見も出たが、器用貧乏になる可能性がある。
 どちらかに特化した方が強いという意見。
 両方をバランス良く鍛えるという意見。

 結局決着がつかずに議論が終わるのは、ご愛嬌だろう。

 そうやって実況と解説が注目プレイヤーについて話している中、隣にサブ画面を開いて他の視点のカメラをチェックしていた零に、ダインが声を掛ける。

 「零は誰か気になるプレイヤーは見つけたかい?」

 「ああ」 

 パソコンのウインドウのように複数画面が出せるようになっているため、メインの実況をしている画面とは別に2つほど更に画面を出した零は、その内の1つに映っているプレイヤーを指さす。

 「リヒトって名前のプレイヤーだ。かなり強い」

 「この人は盾で戦っているのかい!?」

 ダインが驚きを示したように、リヒトという名前の青髪の青年プレイヤーは、両手にそれぞれ逆三角形の盾を持って戦っていた。

 「確かに盾だが、側面が全て(やいば)状になっているんだ。トンファーを盾バージョンにして戦ってるっていう表現が一番近いかもしれないな」

 「確かに盾の先端部分を殴りつけて相手プレイヤーを突き刺したり、側面で斬り付けたりしているね」

 「面白い試みだ。トンファーのように棒状じゃない分空気抵抗は増すだろうが、その分防御力は上がっている。本人も何かしらの格闘術を使うようだし、そこら辺のプレイヤーじゃあ相手にならない。今実況や解説が注目していたプレイヤーよりもたぶん強いな」

 「凄い評価が高いね!」

 リヒトという名前の青髪のプレイヤーをべた褒めする零にダインが驚いていると、零が次の画面を指さした。

 「こっちもかなり強い。この刀を使っている爺さんだ」

 そう言って零が指さしたプレイヤーをダインが目で追うと、そこには口髭を生やし、長髪の黒髪を結って、紺色の半着に黒の袴を穿いた、侍のような風貌の70代くらいに見えるプレイヤーが、流れるような太刀捌きで敵プレイヤーを斬り伏せていた。

 「名前は鉄次(てつじ)。剣術は俺より上かもしれない」

 「お爺さんのプレイヤーは珍しいね」

 「本来ならもっと増えても良さそうだけどな」

 年配のプレイヤーが増えてもいいと零が言ったのは理由がある。
 このゲームの中ならば例えリアルでは身体が弱くて動けなくても、元気に動き回ることができる。
 ある意味新しい肉体を得たといっても過言ではないからこそ、需要はあるはずなのだ。

 「この人の戦い方……。なんて言うか綺麗だね。無駄が無いっていうか……」

 「無駄な身体の力が抜けているからだろうな。難しいことを簡単にやってのける人間こそが一番強い。この爺さんは是非手合わせして欲しいくらいだ。本当にこのゲームを始めて正解だった」

 そう呟いて零は楽しそうに笑った。
 戦う価値のある相手、自分の力を最大限引き出してくれるであろう相手を見つけたことが嬉しかったのだ。
 零が真剣に画面を見る隣で、チラッと経過時間を見たダインが零に問いかけてくる。 

 「制限時間は30分だよね?」

 「ああ。これからもっと膠着してくるだろうな。30分間戦い続けるのは体力的に厳しくなる。上手くペース配分しないといけない」

 後先考えずに全力を出すプレイヤー達を見ながら、後半どう状況が変化していくのかを楽しみにしつつ、零たちは観戦を続けるのだった。 
 
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