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孤高の青年は飽くなき強さを追い求める ~unconventional【スキル・メイク・オンライン】~ 作者:紺藤シグル
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49話 空の王

 上手くドラゴンから逃げ切った零は、新しく隠れられそうな穴を見つけ、暫くの間その場所を拠点にドラゴンの様子を窺っていた。

 ドラゴンは風のブレスを吐くために傷口を開きながらも無理をして腹を膨らませたためかダメージを受けたようで、積極的に零を探そうとはせずに、空中で何をする訳でもなく(ただよ)っている。
 零もまた、遠距離攻撃用の武器を持っていないため、ドラゴンに攻撃することも出来ず、只々見つからないように隠れながら観察しているだけになっていた。

 (ダインに遠距離用の武器でも作って貰うか……)

 どんな武器を作って貰うか思案しながら、何時まで続くか分からない膠着状態を維持し続けている。

 遠目に見ていたプレイヤー達も、ドラゴンは何時まで飛んでいるのだろうかと、食傷気味になってしまうほどだった。


◆◇◆◇


 一方その頃、リアと沙織が最強トーナメント決定戦にエントリーするために、船に乗って第2の港町を目指しているところだった。
 また、リアと沙織が第2の港町に行くということで、第2の港町に拠点を移すことにした真希も同行していた。

 夜の静寂な海を眺めながら3人がゆったりとしていると、何かに気付いた真希が顔を上げる。

 「あれって何?」

 真希が質問しながら山の上の方を指差すと、リアと沙織も顔を上げて山の方向を見る。
 するとそこには1体の巨大なモンスターが空中を漂っていた。

 「ドラゴン?」

 「そう見えますね」

 ちょうど山の側面を船で移動している最中だったため、零が戦っているドラゴンとの距離が近く、夜ではあったが緑の鱗に覆われたその姿を、しっかりと視認することができていた。

 「こっちを襲って来たりしないよね?」

 「たぶん大丈夫だと思うけど……」

 恐怖から真希は慌ててリアの腕を握り、安心しようと質問するが、リアの返答は歯切れの悪い物だった。

 「あのドラゴン。こちらを見向きもしませんし、山の斜面に居る何かを警戒しているように見えます」

 「そうね。何かと戦っているのかも」 

 希望的観測でしかなかったが、実際に2人の予想は間違ってはいない。
 自分を傷つけるほどの敵を放置することは出来ないドラゴンは、他の些細なことに関心を持つ余裕が無かったのだ。

 「もし戦っているのがプレイヤーなら、零かもしれないわね」

 「零ってこの前船で助けてくれた人?」

 「そうよ」

 真希は船でオレンジ色の髪をツンツンに逆立てた狂人に襲われた時、一瞬でその男を斬り伏せ生き残っていた人達を助けてくれた1人のプレイヤーを頭に思い浮かべる。

 「確かに零さんでないと、対等には戦えなさそうな見た目はしていますね」

 目の前にいる訳では無いのに恐ろしく感じてしまうほどの大きさをしたドラゴンだ。
 山の斜面にある木々が一部分無くなって地面が見えてしまっているが、もしこのドラゴンがそれをやったと言うのなら、人間が勝てる生物とは思えない。

 「零が勝てなければ、今このゲーム内で勝てるプレイヤーなんて存在するのかしら?」

 「ソロなら誰も居ないでしょうね」

 既にドラゴンと戦っているのは零だと決め付けてしまっているのは、今まで彼が起こしてきた数々の事件のせいかもしれない。
 ソロで誰も倒していないエリアボスを一番最初に倒し、新しい町に一番乗りし、海運システムを解禁させ、船の上ではプレイヤーキルをしていたオレンジ頭の男――ハーヴェストを倒して生き残っていたプレイヤーを救ってしまう。

 そんな多くの人々に注目される騒動を巻き起こし続けてきた同い年の青年。

 彼の事を思い出せば思い出すほどに、リアと沙織の2人は零こそがドラゴンと戦っているプレイヤーだという確信は強くなっていく。

 2人がそんなふうに零の事を思い浮かべていると、ドラゴンが動きを見せ始めた。

 「見てください。ドラゴンが山頂に飛び立って行きます」

 沙織の指摘通り、ドラゴンはゆっくりと山頂に向かって羽ばたいて行く。
 その姿はまるで巣に帰る鳥のようにリアと沙織には感じられた。

 「負けちゃったのかな?」

 ドラゴンが倒されることなく帰って行く姿を見て、零が負けてしまったのではという疑惑が出てくる。
 真希が心配そうにリアと沙織を見るが、2人はその問いに答えることが出来ず、沈黙してしまうのだった。


◆◇◆◇


 まだドラゴンが山頂に飛び立つ前、ドラゴンが地上に降りてくるのを待っていた零の元に、メールの着信音が響いてくる。

 (何だ?)

 今は戦闘中だぞと文句を言いたかったが、冷静になって状況を俯瞰(ふかん)すると、ドラゴンとの距離が離れていて、尚且つ周囲に敵が存在しなかったため、通常通りにメールが届いてしまったのだと結論付ける。

 (確認するか……)

 とりあえず着てしまった物は仕方がないと、ドラゴンに注意を払いながらもメールを開いた。

 【生態系調査のスキルが発動しました】 

 『【ウインドドラゴン】
 通称【空の王】。
 巻き起こす風によって気流を乱し、空を飛ぶものを地に落とす。
 空を飛ぶもの達の天敵。

 体内に空気を溜めて吐き出す風のブレスは強烈で、大抵の物を吹き飛ばし、吹き飛ばしたスピードによって凶器に変える。
 身体を覆う鱗は外敵から身を守る役割と同時に、鱗で覆われた尻尾によって攻撃することで、相手を粉々に破壊する。
 また、鋭い爪で地上に居る敵を空中から飛び降りて押さえ込み、強靭な歯で噛み切ってしまう。

 空の王と呼ばれるに相応しく、3年間空を飛び続けることも可能。
 その際は空中で眠る。

 しかし実際は縄張り意識が強いため、空中で過ごすことは少なく、狩りの時以外は決めた場所から動こうとはしない。

 肉食であるが、その強さゆえに周りにモンスターが生息し難い。
 そのため遠く離れた場所に生息するモンスターを狩りに行き、食料を調達している』

 零はドラゴンについて詳細に書かれたメールを一通り読み終えると、何故このスキルが今発動したのか考察を始める。

 (生態系調査のスキルを手に入れたのはレッドゴブリンを倒した後だった。それまでの行動と今現在の行動を照らし合わせると、相手に気付かれない状態で一定時間観察し続けることが発動条件か?)

 スキルの説明を見ても、敵の詳細な情報を入手できるとしか書いていない。
 不親切極まりないが、教えてくれないなら自分で考察するしか方法は無い。

 取り敢えず今考え付いた方法が最も答えに近いはずだと無理やり自分を納得させ、ウインドドラゴンに意識を向ける。

 生態系調査で得た情報が正しいなら、相手はずっと飛び続けることが出来る。
 空中に居る敵に決定打を与えられる手段を現在零は持っていないため、このままだと時間がただ無駄に過ぎていくだけだ。

 (仕方がない……)

 今回の戦いはこれで終わりだと決めた零は、自身が初めて倒すことが出来なかったドラゴンの前に姿を見せる。
 すると零に気付いたドラゴンはその場で停止し、零と睨み合う形になった。

 お互いの間に静寂のひと時が流れるが、それも長くは続かない。
 しっかりとウインドドラゴンの姿を目に焼き付けた零が、山を下り始めたからだ。

 (いつか必ず倒す)

 静かな闘志を燃やしながら、零はわざとドラゴンが目で追えるように木と木の間を通って山を下って行く。
 その姿をジッと見つめていたドラゴンは、零が自身の縄張りから抜けた直後にゆっくりと山頂に向かって羽ばたき始めた。

 自身にとっての最大の脅威が去ったことで、傷ついた身体を回復させることを優先させたのだ。

 こうして多くのプレイヤー達に目撃されたドラゴンは去って行き、再びプレイヤー達はドラゴンが山頂に戻って行った理由を考察して盛り上がり始める。

 町でそんな出来事が起きているとは知らない零は、猛る思いを鎮めながら第2の港町に帰って行くのだった。
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