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unconventional【スキル・メイク・オンライン】 作者:紺藤シグル
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40話 恐れ

 ハーヴェストが消え去ったあと、何かを確認するように右手を開いたり閉じたりしている零の姿を見つめながら、リアは驚愕から抜け出せないでいた。

 自分と沙織の2人掛かりで苦戦していた相手を、あっと言う間に倒してしまったその強さに驚いていたのだ。

 零が倒したという見たことのないエリアボスの素材を見せて貰ったり、本人の口からも自分がソロでエリアボスを倒しているプレイヤーだとは聞いていた。
 そこから彼が強いということは想像出来ていたが、自分とそこまでの差があるとは思っていなかったのだ。

 だが今回初めて実際に戦っている姿を見て、自分の考えが愚かだったことを思い知らされた。

 完全に自分よりも格上。

 自分が苦戦した相手を一瞬で倒したことも、零の強さを認めざるを得ない要因の一つだったが、零の戦っている姿を見ている時、リアは彼が何をしたのか分からなかった個所まであったのだ。

 彼がハーヴェストの剣を受け流したところまでは自分にも視認出来た。
 しかしその後にハーヴェストが紙一重で避けたはずの零の攻撃が届いたところ。

 あの時、彼が両手で剣の柄を持っていたのを、片手にしたところまでは見えた。
 しかしそれだけでは深々とハーヴェストの胴を斜めに斬ることは出来なかったはずだ。

 明らかにそれ以外の力で剣が伸びたとしか思えない。
 しかしそんな魔法のようなスキルは聞いたことも見たこともない。
 存在するならもっと騒ぎになっているはずだ。

 (一体何を……)

 頭の中で様々な疑問が浮かんでは消えているリアと同じように、零の周りで暫し固まっていたプレイヤー達だったが、船内に入るためのドアが開き、中からダインが出てきたことで時が動き出す。

 「流石だね」

 「大したことじゃないさ」

 ダインからの賞賛の言葉を受けても、零は謙遜なのか本当にそう思っているのか、特に興味も無さそうに答えるだけだった。
 そして零は床に落ちているアイテムに目を移し、帆を固定しているロープが斬られないようにと見張っていたNPCの乗組員に向かって声を掛ける。

 「この床に落ちてるアイテムは、あんたらに預かって貰って持ち主に返せたりするのか?」

 「無理だな。もし次に停船する第1の港町に着くまでに残っているようなら、船の整備時に全てこちらで回収させて貰うことになる」

 乗組員の言葉を聞いて少し思案した零が、周りで零に声を掛けたそうにしながらも、怖いのか遠慮しているのか、近寄って来ないプレイヤー達に向かって語り掛ける。

 「この落ちているアイテムは皆で均等に分けてくれて構わない。俺は必要ないからな」

 その言葉を聞いた瞬間、プレイヤー達の意識が零から床に落ちているアイテムに移り変わる。
 零はこれで一先(ひとま)ず自分が質問攻めにされることは無いだろうと一安心し、船内に向かって歩き始めた。
 その後ろにダインも歩いてついてくる。

 「ダインはアイテムは要らないのか?」

 「うん。アイテムボックスは一杯だしね。それにがっつく程に困っても無いしね」

 「そうか」

 ダインの言う通り、他の町に移動するにあたってアイテムボックスに必要な物を詰め込んでいるプレイヤーは多いだろう。
 だとすると、どうやってアイテムを均等に分配するのか話し始めた彼らが、アイテムボックスに入りきらずにどんな方法で持ち運ぶのか思案することになるのも、また必然だ。


 零が船内に入るためのドアの前に辿り着きドアを開けると、避難していたプレイヤー達が零に気後(きおく)れしたのか一歩後ろに下がる。

 「床に落ちているアイテムを均等に持って行っていい。必要な人は取りに行け」

 零の言葉に頭を縦に振って(こた)えたプレイヤー達は、ぞろぞろと外に出始める。
 そんな中、彼らが出終わるのをドアを開けて待っていた零に、声を掛けてくるプレイヤーがいた。

 「助けてくれてありがとう」

 「ありがとうございます」

 感謝の言葉を伝えて来たのは、硬直から立ち直り零の後を追ってきたリアと沙織だった。

 「感謝されるようなことはしていないさ。それより2人も同じ船だったんだな」

 「本当凄い偶然ね」

 示し合わせてもいないのに同じ時間に乗るだけでも可能性は低いが、さらに何隻も出ている船の中で同じ船に乗船するのは偶然にしては出来過ぎている。
 お互いにその事実に対して苦笑(くしょう)し終えると、リアが零に向かって問いかけてきた。

 「聞きたいことがあるから、ゆっくり話せるところはないかしら?」

 「なら俺の部屋に来たらいい」

 あの豪華な部屋なら何人も入れるし、鍵も掛かるので誰かが入って来る心配もない。

 「じゃあお邪魔するわ。それともう一人連れて行きたい子が居るんだけれど、良いかしら?」

 「誰だ?」

 「私たちの武器を作ってくれた子なんだけど……」

 そう言ってリアが視線を零から船内に移す。
 そこには壁から顔だけを出して零を覗き見ている、金髪の女の子の姿が映し出されていた。

 「あの子か」

 「そうなの。貴方の秘密を教えることになってしまうかもしれないけど良いかしら」

 「口外しないのなら問題ない」

 「真面目な子だから大丈夫だと思います」

 沙織が自信を持って答えたのを聞いて、零は彼女たちを信じて了承する。

 ダインを除いた3人よりも金髪の女の子――真希は1つ年上なのだが、今の会話では小さな子供のような扱いを受けてしまっていた。
 もしも本人に聞こえていたら、今頃プンプンと怒っていたことだろう。

 そんな真希に零が近寄って行くと、怖かったのか走って零の横を通り過ぎ、沙織の後ろに隠れてしまった。

 「真希。大丈夫ですよ。零さんは私たちのフレンドです」

 「本当に?」

 「はい」

 真希は零が怖かった。
 それは彼が余りにも強かったことで、自分たちとは違う、未知なる存在を見た時の恐怖感に近いものを感じてしまったから。

 余りにも強過ぎたり、余りにも頭が良過ぎる相手を見ると、自分とは違うと感じてしまう事がある。

 それに元々日本という安全で危険の少ない場所で育ち、しかもスキル・メイク・オンラインを始めてから1度も戦闘をしたことの無かった真希には、人と人が殺し合う光景は刺激が強すぎた。
 狂人としか思えなかったハーヴェストを簡単に倒してしまったことも、零に対する恐れに拍車をかけていた。

 真希の心の壁を取り払うには少し時間が掛かりそうだと感じた零が、彼女との挨拶を後回しにして口を開く。

 「取り敢えず俺の部屋に行こう。話はそれからだ」

 「そうね」

 このままここに居たら他のプレイヤーが色々聞いてくるかもしれない。
 それは面倒だったので、一度落ち着くためにも零の部屋に行こうと、5人は船内の階段を降り始めるのだった。
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