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孤高の青年は飽くなき強さを追い求める ~unconventional【スキル・メイク・オンライン】~ 作者:紺藤シグル
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28話 PKシステム

 「(ようや)く着いたわね」

 ピンク色の髪をポニーテールにして腰まで伸ばした少女は、村の入り口が見えたことで安堵の溜め息を吐いた。

 「思ったよりも時間が掛かりましたね」

 ロングストレートの黒髪を腰まで伸ばした少女が、何時(いつ)敵が出て来ても対応できるようにと構えていた木製の弓を下ろし、ポニーテールの少女の横に並ぶ。

 「取り敢えずお腹が空いたわ。早く中に入って食事をしましょう?」

 「そうですね。でもこれだけ人が集まっていると、お店が満席かもしれませんよ」

 視界に入って来るプレイヤーの数を見て、難しそうに眉を寄せる2人は、零と最初に接触したプレイヤーであるリアと、その親友である沙織だった。

 既にゲームの中は昼の時間になっている。
 村まで辿り着いたプレイヤーたちは、昼食を食べに向かっているだろう。

 2人は同時に深く溜め息をつき、何故こうも遅くなってしまったのかを思い出していた。

 そもそも2人の装備は初期装備のままだ。
 村まで辿り着いたプレイヤーの中での割合で見れば、初期装備のプレイヤーは1割にも満たない。
 初期装備の武器は、斬れ味が悪く攻撃しても急所以外通り難い。
 さらに防御力は普通の服と変わらないため、一撃でもくらえば致命傷だ。

 特に2人はエリアボスであるレッドベアを倒すのに時間が掛かり、村まで辿り着くのがこうも遅れてしまったのだ。

 「取り敢えず中に入って様子を見ましょう」

 「そうですね」

 何時までもここで立ち往生(おうじょう)している訳にもいかないと、2人は動き出す。
 村の入口へと歩く2人には、多くの男性プレイヤーが熱い視線を向けていた。

 スキル・メイク・オンラインは、ネカマプレイが出来ない。
 つまりこのゲームの女性プレイヤーは、全員現実世界でも本物の女性だ。

 キャラクターメイキングで外見を変えることが出来ることが分かっていても、可愛くて美しい少女たちを目で追ってしまうのは男の(さが)なのだ。
 そして現在村に辿り着いた女性プレイヤーは、男性プレイヤーと比べて2割程度。
 そもそもスキル・メイク・オンラインの全プレイヤーの男女比が現在7:3であり、男性プレイヤーの方が多いのだ。

 だからこそ数少ない女性プレイヤーは、オタサーの姫のように、はたまた何処かの女性アイドルのように、男性プレイヤーからチヤホヤされる。

 しかし現在村まで辿り着いた女性プレイヤーは、大抵が純粋にゲームを楽しんでいるか、賞金目当てに戦っている俗に言うガチ勢ばかりだ。
 チヤホヤされたい女性プレイヤーは、始まりの街でキャアキャアと騒いでいるのが大半で、わざわざ怖い思いまでして此処までは来ない。

 でもそれはそれでゲームの楽しみ方の1つではあるので、そんな楽しみ方をわざわざ否定する必要も無いのだが……。

 「やはり何処も混んでますね」

 「最悪露店で売ってるおにぎりでも食べましょうか」

 村の中に入り幾つかの食事処を発見するが、何処も満席で入れそうもない。
 しかし村の交差点には露店があり、そこでおにぎりや串焼きの鹿肉などが売っていた。 

 結局開いている店が見つからず、2人はオジロジカの串焼きとおにぎりを購入して、近くにある木製のベンチに腰掛け、食事を始めた。

 2人が鹿肉の味の感想を言い合ったりしながら食事を続けていると、メールの着信音が鳴り響く。
 他のプレイヤーにもメールが来たようで、近くに居たプレイヤー達も立ち止まり、メールをそれぞれ確認し始めていた。

 2人も彼らとほぼ同時にメールを開き、内容を確認する。

 【※重要 全プレイヤーの皆様へ】

 『この度はスキル・メイク・オンラインをご利用頂きまして、誠にありがとうございます。
 第一の村のネーミングライセンスが購入されましたので、新しい名前に変更されます。

 新しい村の名前は善茶村です。

 さらに、今からPKシステムと、決闘システムを開始いたします。

 PKシステム――つまりプレイヤーキルシステムは、他のプレイヤーを攻撃しキルすることで、キルされたプレイヤーの所持金を全額手に入れることができ、(さら)に現在所持していた初期装備以外のアイテム全てをその場にドロップします。
 ドロップしたアイテムは、キルしたプレイヤー以外のプレイヤーが取っても問題ありません。

 また他プレイヤーをキルしたプレイヤーは、PKプレイヤーとして犯罪者になります。
 犯罪者になると頭上に名前を表示する際、名前が青色から赤色に変わります。

 名前を赤から青に戻すには、今までキルしたプレイヤーに、奪った総額を返済しなければなりません。

 (さら)に、悪意のある攻撃をしたと判断されたプレイヤーも犯罪者プレイヤーになります。
 悪意の判断方法は、脳から発せられる電気信号などによって、運営側が判断いたします。
 悪意のレベルによって、運営側が罰金の額を決め、攻撃しようとしたプレイヤーに支払うことで、名前が赤から青に戻ります。

 返済の仕方はホームページに詳しく載せています。

 また、犯罪者プレイヤーをキルした場合や、正当防衛だったと判断された場合は犯罪にはなりません。

 町や村は安全地帯になっており、PKすることはできません。
 初心者狩りを無くすため、始まりの草原と始まりの森でもPKはできません。

 そちらも詳しくはホームページをご覧ください。

 決闘システムですが、こちらはどんな場所でも行うことができます。
 決闘は両者合意の元で、プレイヤー同士が戦います。

 何かを賭けて戦うことも、何も賭けずに戦うことも可能です。

 勝敗は相手をキルすれば勝利となります。

 その際キルされたプレイヤーは、その場で蘇生されます。
 また、消耗した装備やアイテムは元に戻りませんが、身体的な負傷は回復します。

 詳しい内容はホームページに載せておりますので、そちらをご覧ください。

 最後に、犯罪者プレイヤーの武器や防具などのアイテム、決闘時の敵プレイヤーの武器や防具などのアイテムは使用可能になります。

 以上でお知らせを終わります。
 分からないことがございましたら、お問い合わせボックスにメールをお願い致します』

 全てを読み終わり、リアは深い溜め息を吐く。
 周りでは他のプレイヤーたちが騒いでいたが、彼女の耳には入って来ない。

 リアが硬い表情で考え込んでいるのは、このゲームの製作者についてだった。

 彼女は憶測でしかないが、スキル・メイク・オンラインを作ったのは、自分の伯父ではないかと疑っているのだ。

 スキル・メイク・オンラインの製作者は、実際に(おおやけ)の場に出たことはない。
 公表されていることは、このゲームをたった1人の男性が作り上げたことと、ホームページに記載されている内容、そしてメールでやり取りされたインタビューなどだけだ。

 しかしリアはこのゲームの存在を知ったとき、昔伯父と話した内容をふと思い出したのだ。

 それは彼女が小学生の頃、家のリビングのソファーに寝転がりながらクラスで流行っていたソーシャルゲームをやっている時だった。

 「何をしているんだい?」

 優しい口調で尋ねて来たのは、扉からリビングに入ってきた1人の男性。
 グレーのスーツを着て、短髪の黒髪に優しい瞳をしたその男性は、リアの父の兄だった。

 「クラスで流行ってるゲームをやってるの。伯父さんはどうして此処(ここ)に?」

 「これから(しばら)く研究に集中したくてね。お父さんに会ってちょっとしたお話をこれからするところなんだ」

 「そっか」

 「だからお父さんが来るまでちょっと待たせて貰うね」

 「うん」

 彼はテーブルを挟んでリアの向かい側にあるソファーに腰を下ろし、その長い足を組む。
 リアは久々に会った伯父とお話をしようとゲームを止めて、寝転がっていた身体を起こす。

 「伯父さんもゲームとかするの?」

 「ゲームかい?勿論するよ」

 「どんなゲームをするの?」

 「シミュレーションゲームが好きで良くやるね。今作っているゲームがあるんだけど、それもシミュレーションゲームだよ」

 シミュレーションゲームがどんな物なのかがリアには分からなかったため、困ったように頭を傾げていると、それを察したのか伯父は静かな口調で説明を始める。

 「僕が作っているゲームは、本物の人を使ったシミュレーションゲームなんだ」

 「本物の人?」

 「そう。オンラインゲームは分かるかい?」

 「分かるよ。ネットを使って他の人と一緒にゲームすることだよね」

 伯父と話し始めるまで遊んでいたソーシャルゲームを思い出しながら、伯父の質問に答える。

 「仮想空間で本物の人を使って、彼らがどうやって生きていくかを見たいんだ。まあ今私が言っている内容は、最早シミュレーションゲームでは無いかもしれないけどね」

 「見てて楽しいの?」

 「楽しいよ。ルールやシステムを追加していって、それに対して彼らがどうやって対応してくるのかを頭の中でシミュレーションするんだ。私の想像を超える事をしてくれたら最高だね」

 子供のように無邪気に笑う伯父に、リアは子供ながらに違和感を感じていた。
 上手く彼女には表現することが出来なかったが、何だかとても危うく感じられたのだ。

 その後すぐに父が帰って来たので、話はそこで終わったが、彼女の中で伯父に対しての違和感が消えることは無かった。

 そして時が流れ、世界初のVRMMOが発表される。

 リアがその内容を聞いて最初に思い浮かんだのは、無邪気に笑う伯父の顔だった。
 直ぐに父から伯父の居場所を聞いて会いに行こうと思ったが、父は伯父が今何処(どこ)に居るのか分からないと言う。

 別に伯父が悪い事をしているわけでは無いし、会って何を話すのかも決めてはいなかったが、何となく会って話さなければという義務感が彼女の中で生まれていたのだ。

 結局伯父の居場所が分からなかったので、リアは取り敢えずスキル・メイク・オンラインをプレイすることに決める。
 それはもしも伯父がこのゲームを作ったのなら、一体何をしようとしているのかを、実際に体験して確認するため。

 もちろん伯父では無い可能性も高いので、折角やるなら全力で楽しもうと考えていたが、次々と新しく追加されているルールやシステムに、やはり伯父ではないのかと、疑惑を抱かずにはいられなかったのだ。

 そしてもしそうなら、伯父は一体何を考えているのか、深い理由は無いのかもしれないが、あの時感じた違和感を払拭するために、彼女は理由が知りたかった。    

 「リア!リア!」

 沙織に身体を揺さぶられて、ハッと意識を戻す。

 「考え込んでいたようですけど、大丈夫ですか?」

 「ええ。大丈夫」

 心配そうに顔を覗き込んでくる沙織に、リアは笑い掛ける。

 「どうします?これから」

 「このままの装備だと危ないから、一旦始まりの街に戻って装備を整えましょう」

 初期装備のままでは流石に不味いので、時間のロスにはなるが仕方がない。
 沙織も頷いて同意し、彼女たちはおにぎりと串焼きを食べきって立ち上がる。

 他のプレイヤーたちが騒いで動かない中、彼女たちはいち早く村を出て、始まりの街へと戻って行った。
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