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unconventional【スキル・メイク・オンライン】 作者:紺藤シグル
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27話 誓い

 ゼオン、大和(やまと)、ガッザ、マーセルの4人に続くように、他のプレイヤー達も続々と村に到着していく。
 その中の1人に、短い黒髪を短髪にした優しい顔つきの男の子がいた。

 彼の名前はシン。
 以前零が助けた少年だ。

 彼はブルーウルフの皮で作ったパーカーを着用し、腰にはブルーウルフの爪で作ったロングソードを携帯しているため、以前とは様相が変わっていた。
 その見た目は(さなが)ら小さな盗賊とでも言うべきだろうか。

 そんな彼は現在ニコニコと笑いながら、村の入り口に向かって歩いていた。

 「ダメ()さん。お腹が空いて来たので、村に着いたら食事にしませんか?」

 「私は構いませんよ」

 シンの提案を、ダメ男と呼ばれた中年太りのオッサンが承諾する。
 ダメ男は腹がどっぷりと出ている下半身太りのオッサンだが、鉄製の騎士風装備のためか、意外と味がありカッコ良く見える。
 それはビール腹のマイナスを補うほどに洗練された所作の影響もあるかもしれない。

 「紙装甲さんはどうですか?」

 「問題ない」

 シンに紙装甲と呼ばれた男は、名前とは違い全身フルアーマーの装甲兵だった。
 頭から足の先まで鉄製の鎧で隠れてしまっているため、顔を確認することもできない。
 さらに全身を全て覆い隠せるほど大きな盾を片手に持っているため、動きが少し遅い。
 しかしその分防御力は高そうだった。

 そんな2人とシンが出会ったのは、零と別れて装備を作った後のことだった。

 シンは零と別れた後、ブルーウルフで作ったパーカーとロングソードを(もち)いて、暫くの間ソロで戦っていた。
 始まりの草原で、練習も兼ねてホーンラビットと戦っていると、偶々(たまたま)エリアボスであるレッドゼブラがシンに向かって走って来たのだ。

 シンは軽くパニックになりながらも、彼に気づいて左に曲がり始めたレッドゼブラを追いかけて、剣を横腹に深々と突き刺す。
 初期装備なら斬れ味が悪いため深く刺さることは無かっただろうが、ブルーウルフで作ったロングソードだったことが幸いし、致命傷を与えることに成功したのだ。

 そのまま止めを刺すと、メールの着信音が鳴り響いた。
 メールの内容はランキングに入ったため、1カ月のゲーム無料券が配布されるという内容だった。
 それを見てシンは大喜びする。
 これで夏休みの8月中は、父に金銭的な迷惑を掛けることが無くなる。

 この調子で賞金を手に入れて、母の病気を治す手伝いをするのだと、自分に言い聞かせた。

 シンがレッドゼブラを剥ぎ取ろうとしていると、此方(こちら)に向かって来る人影が2人ほど目に入って来た。
 彼らはシンの近くに行くと、レッドゼブラの死骸を発見し、少し肩を落とす。

 「仕方がないですね。切り替えて次に行きましょう」

 「そうだな」

 2人の男、中年太りのオッサンと、フルアーマーの装甲兵は、軽く声を掛けあいシンの前から立ち去っていく。

 (もしかして僕が2人の追っていたレッドゼブラを横取りしちゃったのかな?)

 確かに思い出してみれば、レッドゼブラは何かに追いかけられているような動きをしていた。
 そもそもレッドゼブラがシンに気が付くのが遅れたのも、レッドゼブラが後方を振り返っていたからだ。 

 シンは申し訳ない気持ちで一杯になり、2人を追いかけて謝罪する。

 「すいません。お2人の追いかけていたエリアボスを横取りしてしまったみたいで……」

 「気にしないでください。どちらにしても機動力が我々には足りませんでしたから、どうせ逃げられていました」

 オッサンが微笑みながら暖かい口調で、気に()まないでくれと言ってくれたお陰で、少し気持ちが軽くなる。

 「貴方(あなた)はソロで戦っているのですか?」

 「はい。そうです」

 オッサンからの唐突な問いかけに、疑問符を頭に浮かべながらシンは答えた。
 シンが頭を傾げているの見て、オッサンは唐突過ぎたことに気づいたのか、何故ソロかを訊ねた理由の説明を始める。

 「かなり良い装備を使っているようだったので、ソロなら凄く強い方なのかと思いまして。最近噂になっているじゃないですか。エリアボスを次々と一番初めに倒していく謎のソロプレイヤーの存在が」

 「僕じゃないですよ!それにこの装備も僕が倒したんじゃなくて、僕を助けてくれたプレイヤーが、餞別(せんべつ)でくれたんです」

 シンはキョドキョドと落ち着かない仕草をしながら慌てて否定する。

 「そうでしたか。良いプレイヤーと出会えたんですね」

 「はい!」

 シンはオッサンの言葉で零のことを思い出し、目標だったエリアボスの討伐ランキングに入れたのは、彼のくれたブルーウルフの餞別のお陰だと、心の中で感謝する。 

 「貴方はパーティーを組む気は有ったりしますか?」

 「はい。有ります」

 「でしたら私たちとパーティーを組みませんか?こうして出会ったのも何かの縁ですし、それに我々は見ての通り機動力が無いので、遊撃兵のような、相手を攪乱(かくらん)する動きのできる人を探していたのです」

 オッサンは自分の鉄製の騎士装備と、隣のフルアーマーの装甲兵をそれぞれ指で差し、装備が重く動きが遅くなりがちだと暗に伝える。

 「僕で良いんですか?」

 「貴方だから誘ったんですよ。優しい性格をしているように思えたので、仲良くなれそうだと思ったんです。勿論私たちと合わないと思われましたらパーティーを抜けてしまっても構いません。オンラインゲームではよくあることです」

 シンが心配そうにオッサンを見上げると、彼は微笑んでもう一度「どうですか?」と誘ってくれた。

 「役に立たないかもしれませんが、よろしくお願いします」

 「こちらこそよろしくお願いします」

 「よろしく……」

 シンがぺこりと頭を下げて、オッサンが美しい動作で一礼する。
 最後に装甲兵の男が、ガチャガチャと金属音を鳴らしながら頭を下げていた。

 「自己紹介がまだでしたね。私はダメ()と言います」

 「――僕はシンです」

 「俺は紙装甲だ」

 シンはダメ男の名前を聞いて一瞬呆気に取られ、自己紹介が遅れる。 

 「紙装甲の紙は、神様の神では無くて、ペラペラの紙の方なので、お間違いなく」

 何かのポリシーなのか、全身フルアーマーの装甲兵である紙装甲は、誇らしげに左手に持っていた盾を掲げた。
 月下に照らされて、全身を覆うほどの鉄盾が(にぶ)い光を反射する。

 「――分かりました。間違えないように気を付けます」

 変な人たちとパーティーを組んでしまったことに、一抹の不安を感じながらも、シンは彼らと共に戦って行くことに決めたのだった。

 それから朝日が昇るまで、3人は始まりの草原で戦う(さい)の動きの確認や、実際にホーンラビット相手に戦って連携を高め合っていた。

 そして朝日が昇り始めたころに始まりの森へと入り、現在村の入り口付近まで来ている。

 (この人たちとパーティーを組めて良かった)

 自分1人では決して此処(ここ)まで辿り着くことは出来なかっただろう。
 シンはあの時誘ってくれたダメ男に感謝しつつ、村の中へと3人で入って行く。

 (零さん。僕はパーティーを組んで目標に順調に近づいています。まだまだ2人の足を引っ張ってばかりですが、いつか貴方のように強くなって2人に恩返しして見せます!)

 小さく握り拳を作りながら、シンは心の中で誓いを立てて進んで行く。
 いつかまた零と再会し、彼に立派な姿を見せようと意気込んで。 

 
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